ティーンスピリット代表tmiyachiが初
めて語る、“新年号世代”女性ダンス
ボーカルグループ「SPECIAL NIGHT」
の全貌とは

2019年に新元号へと移行するこの国で、“新年号世代アーティスト”への取り組みが既に始まっている。現在メンバー育成・選抜中の女性ダンスボーカルグループ・SPECIAL NIGHTはいち早く名乗りをあげたグループだ。仕掛け人となった総合プロデューサー・tmiyachi氏は音楽業界では異色ともいえるIT起業家としての経歴をベースに、SPECIAL NIGHTについて「境界線を曖昧にする(ことで生きやすい社会を創る)」という活動コンセプトを掲げた。
SPECIAL NIGHTは音楽とダンスという手段を用いて、どのように日本のシーンへと響いてゆくのか。BARKSではグループデビューに先駆け、tmiyachi氏へのインタビューを行なった。


■8トラックしかないところで宅録していました。曲を作ることが好きだった

▲tmiyachi氏(SPECIAL NIGHT総合プロデューサー/株式会社ティーンスピリット代表)

──今日はtmiyachiさんがプロデュースされる、新年号世代の女性ダンスボーカルグループ・SPECIAL NIGHTのお話をお聞きしていこうと思っていますが、その前に、まずはtmiyachiさんがどんな方なのかお聞きしたいです。音楽を好きになったのはいつでしたか?

tmiyachi:小学4年生ぐらいですね。90年代でJ-POP黄金期だったので、ビーイング系とかいろんな音楽を聴いていたんですが、作曲の真似事みたいなことも小学生ぐらいから始めて、中学校のときはもうどっぷりやっていて。今みたいにDAWがなかったので、YAMAHAのQYシリーズやBOSSのBR-8とかを使って、8トラックしかないところで宅録していました。高校や大学に行ったら本格的にバンドをやろうかなとも思ったんですが、演者でやるよりも曲を作ることが好きだったので、ピアノやギターが弾ける方と一緒に曲作りしたりしていました。

──その頃からクリエイター気質というか、表に出るよりもバックアップするほうが好きだったんでしょうか。

tmiyachi:そうですね。そこまで出たがりでもなかったし、パフォーマンスも得意でなかったので、自分はそっちじゃないかもなって。大学時代は、情けないのですが、「“やります”とは言うけど本気でやっていないような状態」だったんですよね。卒業間際になって、こっちの道で食べていくのも難しそうだし、就職活動も特にしていなかったので、さてどうしようと思って。

そこで初めて自分の甘さに気づいて、このままじゃダメだと思ったときに、会社やサービスを作ることも、音楽と同じくらいものづくりとしておもしろそうだなと思ったんです。それでまずはビジネス系の資格を取ろうと思って、会計士の勉強を始めたのが23歳のときでした。そこで一度、音楽の道を諦めたんです。

──そうだったんですね。

tmiyachi:それから社会人を10年ぐらいやっていたんですが、2011年に初めて起業した会社では、オンラインで英会話ができるサービスを作ったんですね。それは、私は英語が大好きで勉強もしていましたし、日本人が英語を喋れない問題を解決したくて始めたのですが、その会社が大きくなって大手予備校に売却して、人生を一度リセットした形になったんです。ここから何にでもなれるというか、どんなことでもできるなと思ったときに、自分にとって一番大切なものってなんだろうと考えてみたら、やっぱり音楽だなって。

──社会人になってからは、音楽にはまったく触れていなかったんですか?

tmiyachi:学生時代に失敗したなと思ったのは、すべて中途半端にやったことでした。だから社会人になったら仕事に集中しようと思い、休日もずっと働いていたので、土日にバンドをやって……というわけでもなくて。ただ、毎日音楽をエンドレスに聞いて、フェスやライブには行っていたので、好きという気持ちがここまで続いているということは、やっぱり音楽は自分にとってよほどのものなんだろうなと。

自分が起業した会社を売却して、そこからいろんな方々と出会えたことも大きかったんですが、音楽理論や楽器をいちから勉強し直して、それなりに思うように曲を作れるようになってきたので、今年の2月に株式会社ティーンスピリットを設立しました。


■音楽業界自体がテクノロジーやインターネットに弱いことが課題点
──現在、tmiyachiさんはティーンスピリットで作詞・作曲・編曲はもちろん、アーティストのコンセプトメイク、プロモーション企画まで担当されていますね。

tmiyachi:会社に関しては2本柱でやっていまして。SPECIAL NIGHTのような自社アーティストのプロデュースと、他社IP・アーティストの共同プロデュースです。自社アーティストについては後ほどお話しするとして、他社IPの共同プロデュースに関して直近で手がけた仕事としては、バーチャルYouTuber・天神子兎音ちゃんのオリジナル楽曲を出したいというお話をいただいたので、作曲・編曲をボカロPとしても有名な和田たけあきさんにお願いし、歌詞は私が書かせていただきました。

──自社アーティストを手がけるのみでなく、外の人達とも関わっていきたいと。

tmiyachi:そうですね。自分達のノウハウを貯めたり、人脈作りという面もあるんですが、IT業界には音楽業界とコネクションがなかったり、そもそも音楽制作のノウハウがない会社さんが多いんです。ティーンスピリットの強みは、音楽とテクノロジーの中間にいることなので、エンタメ業界・IT業界の両方からいろんなお引き合いをいただいています。

──自社アーティストの第一弾として手がけられるのがSPECIAL NIGHTなわけですけども、立ち上げるにあたって、まずどういうグループにしようと思いましたか?

tmiyachi:まずは、音楽業界のみなさんが思っていることでもあると思うんですが、音楽業界自体がテクノロジーやインターネットに弱いことが課題点としてありますし、かつ、ワールドワイドで見たときに、そこが弱みになっていると思うので、そういったテクノロジーを活用することを強みにしたグループにしたいなと思っています。

あとは、僕が歌詞や曲を作るときに、男性アーティストの場合だと、僕がそう言いたがっているような感じになってしまうのが嫌だなと思ったんですよね。でも、女性であれば完全に表現として作り込めるので、やりやすいです。

あと、7月末にオーディションをして、メンバー候補の子達が今は9人いるんですが、全員高1から高3なんですけど、その時期のキラキラ感って半端ないじゃないですか(笑)。

──眩しいですよね。

tmiyachi:これは古今東西変わらないと思うのですが(笑)、その時期だけ放つオーラというものがある。今は15歳から18歳の子達が、ここから何年続けるのかはわからないですけど、たとえば20歳を超えて、25歳ぐらいまでやったとして。そのあいだの成長と、僕が作っていく曲で取り扱っていきたい人生のテーマの変化をきれいにリンクさせることができるんじゃないかなと思ったところもありますね。

──メンバー候補である9人の子達は、現在はレッスン期間中とのことですね。SPECIAL NIGHTは4人組と伺っていますが、ここから4人が選抜されるんですか?

tmiyachi:はい。僕らとしては、SPECIAL NIGHTをダンスボーカルグループにしたいんですが、女性で、高校生で、グループとなると、どうしてもみんなから「アイドルでしょ?」って言われてしまうんですよ。

──そこは時代なんでしょうね。

tmiyachi:僕自身はアイドルも好きで、TIFや@JAM EXPOにも行きますし、時代的にも今はそれぐらいアイドルが強いということでもあると思うんですが、「アイドルです」と言ってしまうと、リーチできなくなる層が間違いなくあるんですよね。なんか、「アイドルとアーティスト」みたいな議論をすると、いろんな人に何か言われそう気もするんですが(苦笑)。

──そうですね(笑)。ただ、より多くの人に届けるためにも「ダンスボーカルグループ」という枠組みは大事にしたいと。

tmiyachi:そうですね。僕らのイメージに一番近いのは、90年代に活躍したSPEEDなんですよ。あのグループをアイドルという人はあまりいないじゃないですか。もしかしたら、それも時代の話なのかもしれないですけど。最近だとPerfumeBABYMETALでしょうか。そんな時代を代表するビッグアーティストと同じくらい歌って踊れるグループを目指しています。アイドルではなくアーティストを名乗るのであれば、圧倒的な歌唱とダンスを見せないといけないですが。

◆インタビュー(2):「こういうこともありなんだ」と思えることを増やしていきたい
■「こういうこともありなんだ」と思えることを増やしていきたい

──あと、SPECIAL NIGHTは、活動コンセプトに「境界線を曖昧にする(ことで生きやすい社会を創る)」というものを掲げていますよね。

tmiyachi:自分が音楽から受けた一番大きな影響は、思い込みを壊してくれたことなんですよね。「こういうのもありなんだ」という。それは主にロックやパンクから感じたものなんですが、やはりそういったものは、カウンターカルチャーというか、音楽のひとつの力だなと思っていて。

たとえば、仕事をオフィスでやるのかリモートワークでやるのか、契約形態が正社員なのか業務委託なのかみたいに、昔は比較的認められていなかった働き方がOKになったり、あとはLGBTといった性別のことや、日本円やドルではなく、ビットコインみたいな仮想通貨が出てきたりして。そういった第三世界というか、前まではここの世界じゃないと生きられなかったけど、別の世界もありで、その世界でもそれなりに生活ができるようになってきたということが、各レイヤーで起こっていると思っていて。

僕らとしては、「こういうこともありなんだ」と思えることを増やしていきたいんですよね。そのために今いろんな方法を考えているんですが、活動を通して、ファンの方が気が楽になったり、社会現象までいって世の中の雰囲気的に生きやすくなったら最高だなと思っています。

──音楽を用いて、社会をよくしていきたいと。

tmiyachi:そうです。僕らがやろうとしていることをたとえると、昔の劇団の立ち上げみたいなイメージなんですよね。ある叶えたい思想があって、表現活動をするという。それを、テクノロジーを使って、いろいろなことをしていこうと思っているんです。

もちろん音楽活動になるので、音源とライブで勝負していく形にはなるんですが、それに加えて、プロモーションや活動内容も「こういうことをするんだ?」「こういうこともありなんだ」と思えるようなことをしていこうと思っています。昔の話でいうなら、ジョン・レノンとオノ・ヨーコがベッドで寝ていて、世界平和を訴えたりとか。そういった、いわゆる音楽活動ではないことも含め、自分たちの思想に沿って活動していきたいです。

──今考えている音楽以外の活動というと、具体的にどんなものがありますか?

tmiyachi:VTuberなどのバーチャルタレントと、リアルタレントのSPECIAL NIGHTの融合みたいなものはもう進めていて、これは直近でできそうです。あとは、仮想通貨やトークンエコノミーみたいな文脈で、グループ自体が発行体となった経済圏というか。その経済圏でなければ使えないんだけど、その経済圏にいる人であれば、法定通貨からそれに変えて使うことでもっと楽しめるというのが、今までにない世界観だと思うのですが、それをある会社さんと一緒にやろうと思っています。

既存大手のプロダクションさんやレコード会社さんだと、ブロックチェーンとかバーチャルタレントとかの話をしてもあまりピンとこない感じらしいんですよね。そこは僕らにとってチャンスだと思っているので、SPECIAL NIGHTで成功事例を作って、既存のエンタメ業界のみなさんに面白いと思ってもらえたらいいなと思っています。

──最新テクノロジーに既存のエンタメ産業がついていけていない部分はありますが、それを使うユーザーにとってもまだわからないことが多いと思うんですよ。それこそIT系の話になってくると、身構えてしまう方も少なくないと思うのですが。

tmiyachi:そうですよね。そこに関しては、SPECIAL NIGHTは完全に中高生にターゲットを絞っていこうと思っているので、その世代がわかる説明をしていきます。あと、SPECIAL NIGHTのメンバーは中高生で、ダンスはもちろんうまいんですけど、芸能界にずっといたみたいな特殊な人間ではないんですよ。だから、メンバーが理解できれば大丈夫だろうと思って、メンバーの反応を見ながら、現在様々なパートナー企業様といろいろと調整しています。
──「新年号世代」とうたっているとなると、SPECIAL NIGHTは来年の5月1日から動き出すんですか?

tmiyachi:活動自体は来年の1月から始めようかなと思っています。「新年号アーティストって誰?」と言われたときに、真っ先に想起されるような存在になればいいなと思っているので。

──先手を打とうと。

tmiyachi:そうです。楽曲も来年1月から毎月1曲ずつ配信できたらいいなと思っているんですが、先日SPECIAL NIGHTのコンセプトムービーを公開しました。まだメンバーも決まっていないし、楽曲も出していないんですが、まず先にコンセプトだけを出そうと。

これはIT系のスタートアップがWebサービスやスマホアプリをリリースするときによく使われる手法で、サービスをリリースする前にコンセプトムービーを出して、事前登録を募るやり方に近いですね。スタートする前にYouTubeのチャンネル登録数を温めておきたかったのもありますし、あとはプロジェクトメンバーの意思統一の意味もあります。

「僕らがやりたいのはこのコンセプトです」ということを全員で握ったうえで、それに沿った企画を考えたり、タイアップや提携をしたりしていかないと、結局何をやっているのかわからない人達になってしまうので。

──最後に、SPECIAL NIGHTの将来像や目標としては、どういうものを思い描いていますか?

tmiyachi:活動コンセプトにもあるように、僕らが活動することでいろんな境界線や思い込みがなくなって生きやすい世界になることが、目指している将来像ではあるんですが、そういった抽象的なものとは別に、音楽活動という観点から3つの目標があります。

ひとつは、基本は配信でいきたいんですけど、いつかCDも出そうと思っているので「オリコン1位」を獲りたいです。あとは、「武道館ワンマン」と「紅白出場」という、ものすごく既存の指標ではあるんですけど(笑)。

──確かに王道ですが、新しい考え方を持っている人達が既存の指標で結果を出すことは、成功したことのわかりやすいひとつの形ではありますよね。

tmiyachi:そうですね。カウンターカルチャーでありたいと思ってはいるんですが、やはり夢は大きくといいますか。音楽活動だけの話で言うのであれば、その3つが目標です。

──今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。今まさに内容を温めていて、これからスタートしようと思っているプロジェクトに関して、プロデューサーの方が直にお話しされるというインタビューも、なかなかないなと思います。

tmiyachi:そうですよね(笑)。本来であれば、アーティストや音源で勝負しなければいけないところですし、そもそも「音楽自体はカッコいいの?」という話にはなると思うんですが、そこは大丈夫です。もちろんそこが一番大切で、本質であるということをしっかりと理解しているうえで、今回はお話しさせていただきましたし、また活動が始まったときに楽曲自体についてもお話しさせてもらいたいなと思っています。

取材・文◎山口哲生

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◆株式会社ティーンスピリット

SPECIAL NIGHT 活動コンセプト

境界線を曖昧にする(ことで生きやすい社会を創る)
- 線引きが曖昧になりつつある時代にも関わらず、過去から続く概念等に囚われ自由に生きづらい方に対して、境界線を曖昧にしたり壊していく活動をみせることで、生きやすい社会を創っていく -

境界線の例:
リアルとバーチャル
家族と他人
正社員と業務委託
法定通貨と仮想通貨
男と女
アイドルとアーティスト
ロックとポップ
仕事と遊び
新しさと懐かしさ
自国と他国
テレビとスマホ
芸能人とバーチャルタレント

コンセプトムービー詳細

監督:山崎連基
video director
1984〜、東京在住
2007 平成19年度(第11回)文化庁メディア芸術祭 アート部門 審査委員会推薦作品 : 空中ファンデーション
主な仕事 でんぱ組.incZEN-LA-ROCK岡村靖幸乃木坂46、相対性理論、クラムボン、ABCHO、タニザワトモフミ、YAPAN、杏窪彌(アンアミン) 、むせいらん、TOKYO2020オリンピック招致映像など
http://www.renki.jp/

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BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

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