【インタビュー】vistlip、花を主人
公に描いたニューSG「薔薇は人のため
に咲くんだろうか?と考えた」

ニューシングル「BLACK MATRIX」がテレビアニメ『千銃士』のエンディングテーマとしてオンエア中のvistlip
切なさを含んだ美しいメロディ、構築されたサウンド、人間ではなく“花”を主人公にして一途な想いを綴った歌詞もいかにもvistlipらしい。ミュージックビデオのショートヴァージョンがすでに公開されている。今回のインタビューではナチュラルメイクの智(Vo)が演技シーンで意識した人気俳優の名前も挙がった。

結成11年目を迎え、バンドをやる楽しさが増しているというvistlipがメンバーチェンジなしで続いてきた秘訣から、制作中のアルバムのことまで智、海(G)、瑠伊(B)の3人がvistlipの今現在を語り尽くす。

   ◆   ◆   ◆

■主人公を花にすることによって僕が描く世界に落とし込める(智)
■深読みしてくれる人がいたら、それでいいかなと思った(海)

──テレビアニメ『千銃士』のエンディングテーマとしてオンエア中のシングル「BLACK MATRIX」は構成は凝っているのにvistlipならではの美しくて強いメロディが飛び込んできます。アニメのテーマということで意識したことがあったら教えてください。

智:アニメのお話をいただいて、曲や歌詞のイメージの要望もあったので、それをTohya(Dr)に伝えて制作し始めました。「なんで1人だけなんだろう?」って感じなんですけど(笑)。

瑠伊:ちょいちょいあるよね。誰かにだけ密告する(笑)。
▲智(Vo)
──(笑)密告って。

智:適している人にね。

──アニメサイドのリクエストを聞いて、だったらTohyaさんの曲が合っているかなと?

智:そう思ったんですよね。僕は曲を作ることができないけど、ピアノから始まってデジタルな要素があって“Aメロ、Bメロ、サビはこんな感じ”っていうのが頭の中にあったのできっとTohyaが自分が思っていることを具現化してくれるんじゃないかって。

──かなり具体的ですね。そこまで伝えるのは珍しい?

海:Tohyaには明確に伝えることがちょいちょいあるよね。

智:ほかのメンバーが作る曲はそれぞれの色が濃いんですよ。Tohyaは器用なタイプだっていうのもあって。

──Tohyaさんの曲を聴いて“今までと違う”と思った部分はあります? それとも“らしい”と思いました?

瑠伊:らしさもありますね。展開の多さ、綺麗なメロディは今までのvistlipらしいところなんですけど、Aメロに移行するまでのインターバルのちょっと妖しい雰囲気は今までと一味違うのかなって。

海:Tohyaらしさは全開なんですが、今まで作っていなかった系統ではあるなって。Tohyaの曲って展開が変わるからノリがとりにくいんですけど、この曲は案外ノリやすいですね。
▲Yuh(G)
──智さんは曲をどう受け取って歌詞を書き始めたんですか?

智:どういう歌詞にするかはボンヤリ考えていたんですけど、期待以上の曲が上がってきたのでデモを聴きながら書き始めて……。先方からいただいていたテーマは憧れの人に対する想いや姿勢だったんですけど、いろいろ悩んだ結果、人間じゃなく、花を主人公にしてみました。

──薔薇が主人公の歌詞になっていますよね。

智:そう。薔薇ってvistlipにあまり合わないんじゃないかと思って使ってこなかったんですけど、アニメのストーリーも考えていく中、主人公を花にすることによって僕が描く世界に落とし込めるかなと思ったんです。庭にいる俯いている女性がいて、人のために薔薇は咲くんだろうか、どう動いていくんだろうかって考えて書きました。

──薔薇は孤独な女性を愛し、害虫から守るためにツタを絡めていくわけですが、最後は“花言葉も示している様に1人1人に大切な役割。やがて君も強く咲いてほしい。”という歌詞で終わりますね。海さんの公式コメントによると、エンディングの歌詞は2パターンあったとか?

海:そうですね。どっちにするか迷っていて。

智:最終的に前向きヴァージョンのほうにしたんです。とは言え、自分の中では決して明るいわけではなく、主人公は花なので想いは届かず“君も強く咲いてほしい”と願うしかないんですね。「“したい”ばかりが膨らんでいく蕾。」っていう歌詞は君に近づきたくても花は無力なので、欲求が花を咲かせる力に繋がっていくイメージで書いていったんですけど、この主人公には君のためを思っているだけではなく、黒い部分もあるなって。黒い薔薇の花言葉は、“独占欲、束縛”なんですが、例えたら赤い薔薇の中に黒い点がポツッとあるようなイメージ。最後に薔薇を咲かせたら、かわいそうな内容になっちゃうんですよ。なので、もう1つのヴァージョンは黒い薔薇が最後に出てくるミュージックビデオのほうで表現しました。

海:Tohyaが前向きに終わらせるイメージで曲を作ったと言っていたので、智から「どうする?」って相談された時に「だったら、もう1つのエンディングはミュージックビデオで使おう」って。深読みしてくれる人がいたら、それでいいかなと思ったんです。
▲海(G)
──ハードな部分と繊細さが同居している曲だと感じましたが、この曲をプレイするに当たって音作りなど、どんなところに気をつけました?

瑠伊:アニメのタイアップなのでTVのスピーカーからベースが少しでも聴こえてほしいなって。隙間を縫ってヌルッと出てくるようなフレーズを考えて弾きました。

海:ギターはいわゆるギターロックのような分離のいい音を鳴らしたら、ほかの楽器と合わさった時にまとまらなくなるなと思って、シンセとの相性も考えてラウド寄りの少しまとまった音にしました。あとはピックひとつで音の感触が変わるので硬いピックを使っています。

──先ほど話に出たミュージックビデオは智さんがコールドスリープのケースから目覚めて彷徨うイメージシーンと演奏シーンで構成されていて、薔薇の花びらが効果的に使われていますね。見どころは?

智:今まででいちばんメイクが薄い(笑)。それと海の私服を着ています。

海:上はビデオ用の服。パンツと靴は俺の私物。

瑠伊:階段をのぼっていくシーンとか?

智:そう、そう。菅田将暉さんのイメージでやってみたんだけど(笑)。

海:オマエがやると綾野剛さん寄りになる(笑)。
──(笑)それは真剣にならざるをえない。トップバッターは?

瑠伊:Yuhです。いちばん踊らなきゃならない。

海:いちばん出番が少ないのは最後に踊る智だった。

智:案外みんな失敗しちゃって待ち時間が長かった(笑)。

海:フツーに面白い映像になっていると思います。

──じゃあ、カップリングに収録されている「Original Words Complex 」はライブでその踊りをみんなにやってほしいと?

瑠伊:そういうわけではない(笑)。

海:それは無理だと思います。

智:フツーにダンスっぽいからね。
▲LIMLTED EDITION
──でも、ライブでみんなが跳ねたりクラップしたりする絵が浮かぶ曲になっていますよね?

智:カップリングに関してはみんなで話してライブで映えるような曲をどんどん入れていこうということになったんです。ウチはカップリングはlipper盤にしか入っていないんですけど、広く届かなくて埋もれちゃうのが悔しくて、残る曲にしようって、今までにない曲になってますね。

瑠伊:「Original Words Complex 」はライブで演奏したとき、オーディエンスが今までにないノリ方をするんじゃないかなって。楽しくなりそうだなって思いましたね。

海:ギターは難しかったですね。丁寧にしっかり弾いてノリを出そうと。

瑠伊:そんなにカッチリやったんだ? 僕は割と勢いに任せて弾ききりました。

海:そのラフなベースが良くてうらやましかったですね。存分に暴れまわってるからキッチリ音に当てていかないとまとまってくれないんですよ。

瑠伊:まぁ、先にやった者勝ち(笑)。

──歌詞は遊び心がありつつ創作者の生みの苦しみを歌っている?

智:それも込みですけど、略して“オワコン”って読めるタイトルにしたかったんですよ。音楽シーン終わってるみたいに言われてるけど、やっている当人たちはギリギリのところで良いものを作ってファンと共にステージで輝いていると思うので“終わったもの”って捉えてもらっても構わないけど、僕たちはそんなふうに思ってないし、「楽しくやっていきたいね」っていう前向きな歌詞ですね。

──後半にそういう想いが表現されていますね。

智:そうですね。いちばん最後は言うことがなくなっちゃって“(もう云う事無い)”にしたんですけど。

──十分、長い歌詞ですけどね。

智:(笑)そう。もっと凝縮したいんですけど、音符的に無理でそれでもまだ書くところがあったのでちょっとイラッとしてこうしました(笑)。

瑠伊:最初聴いたときは最後だけ歌詞が決まってないのかと思った(笑)。
▲vister
──ははは。「The Other Side」はイントロからして血が騒ぐし、ラウドで絶対ライブで盛り上がるだろうなと。

瑠伊:ザ・Yuhっていう感じの曲ですね。

──歌詞もザ・ライブですかね。

智:そうですね。ステージから見るみんなのことを歌っています。ブラックジョークじゃないけど、いじってる部分もあって“まるで全員喰種さながら。”っていう歌詞は瑠伊が「『東京喰種トーキョーグール』面白いよね?」て言ってきたときに考えて。

瑠伊:その影響で?

智:影響受けた(笑)。

──ライブではふだん人に見せないような笑顔だったり泣き顔だったりが見られるわけですからね。

智:そう。それは特権だと思います。

──レコーディング中のエピソードは?

海:「The Other Side」はYuhらしい曲なので「ここはアイツ、ルーズに弾くだろうな」とか「ここはカッチリ弾くんだろうな」とかクセを気にしながらYuhと相談して7弦ギターで弾きましたね。

──海さんらしいギターなんじゃないかと。

海:そうですね。音作りも「こんな感じでいいんじゃない?」ってこの曲は特に何も考えてないですね。

瑠伊:あと、この曲ってvistlipのいつもの曲より1音チューニングが低いんですよ。リフも細かいのでベースの音が潰れがちになるから、ハッキリ響くドシッとした感じをいかに出すか音作りでは試行錯誤しましたね。突き詰めた結果、「Yuhこういうの好きそうだな」っていう音が作れて満足しています。
▲lipper
■メンバーがいて、ファンのみんなもいて、単純に楽しい(瑠伊)

──話は変わりますがvistlipは7月7日に結成11年を迎えましたが、10年以上バンドを続けられたのはなぜだと思っていますか?

海:ファンのコがいたからでしょうね。あと俺は「運が良かったんじゃねーの?」っていう気がしてます。メンバーの努力とかいろいろな要因があるだろうけど、それが全部噛み合ったのって運がいいからだと思うんです。みんな頑張ってるのは同じだし、ウチらよりスキルがあるバンドやもっと魅力的なバンドもいるけど、運が悪かったら噛み合わないで終わっちゃうと思うんですよ。メンバーと知り合ったことや時代にハマったことも含めて運やタイミング、センスが良かったんだなって。

瑠伊:それ言われたら何も言えないですね(笑)。でも、メンバーがいてファンのみんなもいて単純に楽しいですよね。だから、続けたいなと思うし、やる気も出てきますよね。

──結成当初からその楽しさは変わらないんですか?

瑠伊:変わらないというか、楽しさが増してる。

海:やれることが増えるからね。それとメンバー全員、ちゃんとしきれていないのもいいのかもしれない(笑)。根本的にみんなわがままだし、誰も仕事でやってるって思ってないから。「やりたいからやってるんだ」っていう連中の集まりだから。

瑠伊:語弊あるかもしれないけど、言ってしまえば趣味の延長みたいな。

──まぁ、サービス精神があるバンドじゃないですもんね。

一同:(笑)。

海:「これやったら絶対喜んでくれる!」ってわかっていても、やりたくないと思ったらやらないし。行き過ぎないテキトーさがあるのが続いている秘訣なのかもしれない。あと音楽性も特に決めてないし。

智:1つのことだけやってたら飽きちゃうもんね。

──そんな智さんは続いてきた理由をどう考えていますか?

智:何でしょうね。ファンが優しいんじゃないですかね。

海:それは大きいね。

智:迷惑とか心配とかいっぱいかけてきたバンドなので、みんながvistlipを献身的に支えてくれたからなんじゃないかな。
──では最後に今後のことを。12月2日からワンマンツアーがスタートしますが、アルバムも制作中だとか。

智:アルバムはこれから曲が集まってくるので(取材時)まだどうなるかわからないんですけど、今回のシングルのカップリングを聴いてもらったらわかるようにやったことがないことをどんどんやっていきたいですね。初期の頃みたいに何も気にせずに曲を持ち寄って作りたい。

海:ライブの絵を想定できるアルバムにしたいですね。

智:ただ激しいとかノリがいい曲じだけじゃなく、自分たちが最終的にステージでどう活かせるか考えながら。瑠伊さん、どんな曲できてます?

瑠伊:それ言葉で伝えるの難しくない?(笑)。

智:瑠伊っぽいの?

瑠伊:俺っぽい。激しくはないけど、ロックではありますね。自分の中では5〜6年前のvistlipっぽいかも。その曲を出すかわからないけど。

海:僕は今作っている曲が暗すぎてどうしようって(笑)。

智:どんな曲がきても最終的にvistlipとして仕上げる自信はあるから、単純に
みんなの色が持ち寄れたらいいかなと。そういう曲たちを全国でやる日が楽しみなのでぜひツアーに来てください!

海:まだタイトルも決まってないけど、アルバムのツアーです!

──暴れられそうなスタンディングの会場ばっかりだし。

智:そう。来てくれなかったらやだ(笑)。

海:言葉をもう少し選べ(笑)。

取材・文◎山本弘子

「BLACK MATRIX」

発売日:2018年8月29日(水)

■LIMLTED EDITION(初回生産限定盤)(CD+DVD)
品番: MJSS-09227~8
価格: ¥1,800+税
・(CD) 「BLACK MATRIX」 ※TVアニメ『千銃士』エンディングテーマ
・(DVD)ROUGH the vistlip

■vister(CD+DVD)
品番:MJSS-09229~30
価格:¥1,800+税
・(CD) 「BLACK MATRIX」 ※TVアニメ『千銃士』エンディングテーマ
・(DVD): 「BLACK MATRIX」Music Video +Making映像 収録予定

■lipper(CDのみ)
品番: MJSS-09231
価格:¥1,200+税
・CD(全3曲収録)
M1:「BLACK MATRIX」 ※TVアニメ『千銃士』エンディングテーマ 
M2:「Original Words Complex」
M3:「The Other Side」

※初回封入特典:
・トレーディングカード(ランダム封入)
発売元:マーベラス
販売元:ソニー・ミュージックマーケティング


<A9 vs vistlip TOUR「V.A.」>

2018年10月8日(土)新宿BLAZE
2018年10月19日(金)名古屋E.L.L.
2018年10月21日(日)梅田TRAD

<vistlip oneman tour 2018>

2018年12月2日(日)福岡BEAT STATION
2018年12月8日(土)金沢EIGHT HALL
2018年12月9日(日)大阪BIGCAT
2018年12月14日(金)仙台RENSA
2018年12月17日(月)札幌ペニーレーン24
2018年12月22日(土)名古屋DIAMOND HALL
2018年12月26日(水)新木場STUDIO COAST

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着