『NAOTO LIVE 2018 "SUMMER" FULL B
LOOM』レポート 様々なエッセンスが
濃厚に溶け込んだヴァイオリニストN
AOTOの音楽

ヴァイオリンという小さな楽器に、無限に広がるイマジネーションを詰め込んで、あらゆるジャンルを軽やかに飛び越えてゆく音楽家。NAOTOの活動は、クラシックのみならず、ロックバンドやポップ・シンガーとのコラボレーション、さらに近年は“ROCKIN’ QUARTET”と題し、ロック・ボーカリストと弦楽四重奏との斬新な共演を打ち出すなど、活躍のフィールドをさらに広げている。そんな彼にとって、自らのバンドを率いて臨むソロ・ライブは、ホームグラウンドであり、同時に新たなアイディアを披露する挑戦の場。しかも8月15日は、NAOTOの45回目のバースデーだ。何か素敵なことが起こりそうな予感と共に、午後4時、期待に満ちた幕が開く。
NAOTO
「みなさん、こんばんは、NAOTOです。1曲目から、回していくぞ!」
ヴァイオリンのコンサート、というイメージでここに来た人がいたとすれば、最初のシーンで度肝を抜かれるだろう。「Fantasista」の、ドラムス、エレクトリック・ギター、キーボードが奏でるダンサブルなビートに乗り、タオルをぶんぶん振り回す、金髪のNAOTO。観客は総立ちで、「Before the Wind」では、全員参加のクラップと、手を大きく左右に振るワイパーで盛り上がる。「tomorrow」は、ギターがワウを効かせたファンキーなフレーズを繰り出し、観客を踊らせる。これはロック・ライブですか? ある意味正解。NAOTOのライブには、ロック、ダンス、フュージョン、クラシックなど、様々なエッセンスが濃厚に溶け込んでいる。
NAOTO
NAOTO『NAOTO LIVE 2018 "SUMMER" FULL BLOOM』
「いい光景を、ありがとうございます。“SUMMER”FULL BLOOMは、夏満開です。みなさんが盛り上がるライブをやりたいと思います」
「Southern Cross」では、フュージョン・ロック的な鋭いカッティングを、「strings shower」では、チェロに持ち替え高速4ビートを刻む、伊藤ハルトシの華麗なプレーが冴えわたる。負けじとドラムスの伊吹文裕、ベースの山田章典、キーボードの松本圭司が、ジャズのインタープレーを思わせる、伸びやかなソロをつないで盛り上げる。踊るようにステップを踏みながら、心弾むメロディを歌いあげるNAOTOは、バンドのコンダクターであり、フロントを飾るボーカリストの役割だ。ひとことで言えば、強力な華がある。
伊藤ハルトシ
伊吹文裕
山田章典
松本圭司
シンフォニーに例えるなら、ここまでが第一楽章。ここからは趣を変え、独りになったNAOTOが、左手でボディを叩き、右手で弓を操る、ヴァイオリンでは珍しいタッピング奏法を駆使して、メロディを奏で始める。この旋律は聴き憶えがあるぞ。そうだ、TM NETWORK「Get Wild」だ。4月に放送された「関ジャム~完全燃SHOW」のバイオリン特集で、金原千恵子とのコンビで奏でたパフォーマンスの単独再現。「92点かな」。弾き終えたNAOTOが笑う。続いてもカバー曲で、マイケル・ジャクソン「スムース・クリミナル」を。伊藤ハルトシのチェロとのデュオで、猛烈に速いテンポ、抑揚の激しいメロディを乗りこなす超絶演奏ぶりは、クラシックのコンサートなら「ブラボー!」の嵐は確実だ。
ジュリー(沢田研二)に憧れ、玉置浩二安全地帯)を好きになり、上京し、マイケル・ジャクソンに衝撃を受け、デビューする時にレコード会社の担当者に「マイケル・ジャクソンになりたい」と言って呆れられたこと――。愛を込め自らのルーツを紹介する、ユーモアたっぷりのMCが楽しい。クラシカルな格調の高さと、庶民的な親しみやすさ。やはりNAOTOの本質は、ヴァイオリンを持ったポップ・アーティストだ。
「ここから、ガツンと盛り上がっていくけど、いいか!」
ドラムス、ベース、キーボード、ギターの編成に戻り、アップテンポのダンスチューン「悪童」から、ハッピータイムが再開。TEAM NACS 最新舞台のテーマ曲「PARAMUSHIR」は、どことなくアイリッシュ的な、郷愁を誘うメロディと、アップテンポに疾走するパートを組み合わせ、ぐんぐんと観客を引き込んでゆく。ライブでの絶対定番曲「Si-So♪Dance」では、ステージに寝転がって弾きまくる、NAOTOオリジナルの“ブリッジ奏法”も飛び出した。会場内は完全にライブハウス状態で、歓声と拍手のやむ隙間がない。素晴らしい熱気、素晴らしい一体感だ。
NAOTO
「45歳初ライブですが、いつもより8小節多く飛びました。ブリッジも2回もやりました(笑)。全然つらくないです。50になってもできる!」
頼もしいブリッジ続行宣言に続き、ライブは最終楽章へ。マイナー調のアップテンポ、愁いを帯びた饒舌なメロディが耳に残る「GRASSHOPPER」から、三味線をサンプリングしたキッチュな和風ダンスチューン「GE・I・SHA」へ。全員揃っての三三七拍子も、ばっちり決まった。終了間際にE線が切れるハプニングも何のその、バックの演奏を止めず、素早く張り替えて続行する。ハッピーな時間は、一秒たりとも途切れない。途切れさせない。
「Precious Day」は、テレビ新広島「ひろしま満点ママ!!」のオープニングテーマとして昨年の4月から使用されている楽曲。明るく弾むリズムに乗せ、NAOTOが教えた簡単なリフレインを大合唱する、客席のどの顔を見ても笑顔しかない。そのままグッとテンポを上げ、「HIRUKAZE」では盛大な手拍子とワイパーを。「Glowing」では、息を揃えて一斉ジャンプ!を。NAOTOのライブは、黙って聴いているだけじゃもったいない。全身を使って、参加することに意義がある。
NAOTO『NAOTO LIVE 2018 "SUMMER" FULL BLOOM』
「飛んで、跳ねて、楽しむ、これが僕の好きなライブのスタイルです。ずっとこういうことができるように、健康に気を付けて、頑張っていきます。これからもよろしく」
アンコール1曲目、「Diary」を弾き終えたNAOTOが、ニューアルバムのリリース(発売日未定)と、来年春からツアーを行うことを発表した。そして「最後、盛り上がっていくぞ!」と、ヴァイオリンを構えた瞬間--突然鳴り出す、「Happy Birthday」のメロディ。大きな拍手に送られて、おごそかに運び入れられる、バースデーケーキ。想定外のハプニングに照れながら、元気よくロウソクの炎を吹き消すNAOTO。心あたたまるひとときとは、こういう時を言うのだろう。明るいダンスチューン「Let’ s Party!!!」も、ほとんどハードロックな「TWIN DRAGON」も、すべてがNAOTOの世界の中で仲良く共存している。こうして、一つずつ年を重ねながら、楽しい時間を続けていくこと。今年のバースデーライブもまた、ファンとの間に結ばれた固い絆を確かめ合う、素晴らしい時間になった。
NAOTO
「これからも、みなさんと一緒に、楽しくライブができるように。僕に元気をくれるみなさんに、感謝しています。今日は、ありがとうございました」
およそ2時間15分、ハッピーなダンスチューン、哀愁のメロディ、思い出のカバー、怒涛のロックなど、バラエティに富んだ、心踊る18曲の音楽の旅。この後もライブ出演は続き、特に大規模なものとしては、9月23日に横浜赤レンガ倉庫で行われる「STAND UP! CLASSIC FESTIVAL’ 18」への出演も決まった。唯一無二のポップ・ヴァイオリニスト、NAOTOの音楽を、まだ見ぬあなたへ。それはきっと、いや必ず、あなたの生活に豊かな彩りを添えるものになるはずだ。
『NAOTO LIVE 2018 "SUMMER" FULL BLOOM』
取材・文=宮本英夫

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