松岡昌宏に草笛光子がラブコール!「
ここにマイケルがいた!」~『新・6
週間のダンスレッスン』製作発表会見
(ほぼノーカット)

2018年9月29日(土)より、東京・よみうり大手町ホールでの上演を皮切りに、金沢・福岡・大阪を巡演する舞台『新・6週間のダンスレッスン』の製作発表が、8月21日(火)都内にて行われ、主人公のリリーを演じる草笛光子と、リリーのダンスパートナー・マイケル役を演じる松岡昌宏(TOKIO)、そして演出の鈴木勝秀が登壇した。
本作は、2001年に米・カリフォルニアで初演され、日本初演は2006年。68歳の未亡人リリー・ハリソンと、45歳のダンスインストラクター マイケル・ミネッティが、6週間のダンスレッスンを通じて心を通わせていく二人芝居。リリーとマイケルが織りなす美しいダンスとウィットに富んだ会話が高い評判を呼び、何度となく再演を重ねてきた名作だ。
主人公のリリー役を演じる草笛は、2006年の日本初演以来リリー役を演じ続け、この作品で第14回読売演劇大賞優秀女優賞、また第29回松尾芸能賞演劇大賞を受賞。本作を『ライフワーク』と自ら語っている。そして今回初めてマイケル役を演じる松岡は、今春、舞台『江戸は燃えているか TOUCH AND GO.』(演出・三谷幸喜)に出演した他、TVドラマにおいても時代劇から現代劇まで幅広く出演、常に高い演技力を示してきた。草笛とは2013年に『ロスト・イン・ヨンカーズ』(演出・三谷幸喜)にて、草笛演じるミセス・カーニッツの息子ルイ役を演じた“親子の間柄”。5年ぶりの共演となる今回は、ダンスパートナーとして草笛と大人の心の通い合いを演じていく。
今回演出を務めるのは『ディファイルド』『欲望という名の電車』『ノー・マンズ・ランド』ほか多くの翻訳劇を手掛ける一方、『ウエアハウス』『MYTH』などのオリジナル作品も多数生み出し高い評価を得ている鈴木勝秀。鈴木の手により、舞台セットや衣裳、音楽などが一新され、この度再演されることとなる。
この会見の模様をほぼノーカットでお伝えしよう。
鈴木勝秀
まずは、演出の鈴木が呼び込まれ、ご挨拶。「この作品は200回を突破していくという、長きに渡るロングラン作品です。だから完成度も認知度も高い作品なのですが、それを“新・6週間のダンスレッスン”でやろう、と発案されたのは他でもない草笛さん。ここにきて今までの事を捨て去ってでもよりエンターテイメント性の高い作品にしていこう、というそのエネルギーに動かされまして、この作品の演出を務める事を決めました。音楽は生演奏で、これまでと同じ普遍的なテーマを掴みつつ、新しく現代に合う作品にしたいと思います」と決意を明らかにした。
大嶋吾郎
ここで本作の音楽監督であり、舞台ではギター&ヴォーカルを務める大嶋吾郎が、劇中でも流れる「God Only Knows」を生演奏でしっとりと歌い上げる。美しい音色が奏でられるなか、草笛が松岡にエスコートされて登場すると大きな拍手が沸き起こった。
草笛光子
草笛は「もう10年近くこの役をやらせていただきましたが、プロデューサーの江口(剛史)さんから『とっても私に似合うから』と外国からこの作品を持ってきてくださって、それからずっとやらせていただいています。本当に幸せな10年でした。ありがとうございます。今回また新しいメンバーとなり、ドキドキ、ワクワク、心配しています。どうなりますか(笑)」と笑顔で挨拶。
そしてその新しいメンバーとなる松岡は「実はお客さんとして前回の公演を拝見しておりました。『こういう素敵な舞台があるんだな…』と思っていました。そして今度自分がマイケル役をやるということで、いい意味での緊張感と共に新しく始まる『6週間のダンスレッスン』のマイケルとして、松岡らしいマイケルを演じたいと思います。皆さんのお力をお借りして楽しくやりたいと思います」と語った。
現在、稽古が始まっているそうだが、その様子について鈴木は「本読みの段階からものすごく二人のテンポが合っていて。演劇というのはもともと書かれている台詞を言葉で言っていくものですが、“書かれている感”がなくなっていくことが重要なんです。でも、今回最初から二人の呼吸が合っているので、僕はこれから何をしていけばいいのか、と思うくらい驚いています」とまるでいち観客のように楽しそうに説明した。
松岡のマイケル役について、実は草笛からのラブコールで実現したという話になり「詳しい経緯を」と、司会から振られると草笛は松岡に「いろいろなことを言っていい?」と声をかける。「どうぞ」と笑顔で返す松岡。その言葉を受けて草笛は「もう5年前ですか。『ロスト・イン・ヨンカーズ』で私の息子役をやっていただいたのですが、なんか『あ、ここにマイケルがいた』って思いました。でもその場でそれを大きな声で言う訳にもいかず、気持ちを抑えて抑えてその場を終わらせました。その後、当時やっていた『6週間のダンスレッスン』を観てちょうだい!」と誘いまして、彼は忙しいなか観に来てくださったんです。観終わった後『なんで俺に観てって言ったのか、分かった!』『何が分かった?』『あの役をやれ、って言うんだろ?あの役、俺に合っているだろ?』…その時から自信満々でした」と、草笛が松岡の発言をそのまま再現すると、隣で顔を赤くしながら苦笑いの松岡。続けて草笛は「あなたはマイケルそのままなんだから、何も演じなくっていいのよってずっと言ってて」その後、しばらくしてから二人で銀座デートをしている際に「本当に(マイケル役を)やりたい?」「やりたい!」と意思確認をして、出演が決まった…と非常に詳しい経緯が語られた。
松岡昌宏
草笛の話を聞いていた松岡は「楽屋にお邪魔した時に、そういった匂いがちらほらとしてまして。役者、プレイヤーとしては、他人の舞台を拝見した時に『自分だったらどう演じるか』を考えることが多々あるんです。『もし自分だったああして、こうして』って。で、楽屋にお邪魔した時に『どうだった?』と聴かれたので『素敵でした…僕だったこうしたいな』って事も伝えて。その後僕はママ(草笛)と何度もデートしているんですが、その時にも『本当にできる?』と聞かれて『やらせていただきます』と。嬉しかったですね。その時に拝見したマイケル役の方も素敵だったんですが、自分がマイケルをやる以上はまた違った松岡の味を出さないとな、と当時から考えていました。今、稽古でそこを考えています」と心情を口にした。
この舞台の振付を担当するのは、日本を代表する振付家の一人である名倉加代子。草笛にとっては「『光子の窓』(1958~60年に日本テレビ系列で放送)の時に一緒に踊っていたんです。大変な生番組で厳しい現場でした(笑)。リハーサルに遅れると罰金で1000円出さなきゃいけない。今の名倉さんはシュッとしていますが、当時は三つ編みをして学校にいるお嬢さんのような人で、芸能界にいる人とは思えなかった。その彼女がいろいろな精進をされて、こんな大きな振付家になって、今も踊っている事を遠くから尊敬しながら見守っていました。今回何年かぶりの一緒のお仕事でとっても嬉しいです」と懐かしそうに話した。
一方、松岡にとって名倉の存在は「僕が生まれて初めてミュージカルというものに出たのはTOKIOがデビューする前の1990年(『僕のシンデレラ』)でした。その時に初めて名倉先生にお会いしまして。『あなたはいくつ?』『13歳です』『私は○歳よ!』ここで年齢をハッキリいうと後でぶっ飛ばされるので(笑)、そのやり取りを今もはっきりと覚えています。あれから最後に先生に振付をしていただいたのは少年隊の『PLAYZONE』が最後ですから…僕らがダンスを踊らなくなってから約25年近く経っているので(笑)、果たして名倉先生の振付が、僕にできるのか!?なんせ名倉先生は厳しい方でしたので、僕らの中では、先生の名前を聴くと背筋がピッとなるので、ジャニーズJr.に戻った気持ちで臨みたいと思っています」と懐かしいエピソードを交えつつ、心境を吐露した。
以下、質疑応答についてご紹介。
――演出という面から見たこの舞台の魅力は?
鈴木 この作品の中にあるのは、誰もが経験する老いていく事に対する不安や孤独である各個人が血縁関係もない中でどのように結びついていくのかが描かれます。これは日本が直面している問題にもつながっている普遍的な問題で、それがどのような形で解決するのか、そのヒントも提示しているんです。特に若い人に観てもらいたいんです。草笛さんと松岡さんがものすごいエネルギーを持っていて、そのエネルギ-を持った人を観ることで必ず新しいエネルギーが生まれてきます。それが僕が今稽古場で感じていることなんです。これから舞台をご覧になる皆さんにそれが伝わるといいですね。
鈴木勝秀
――二人芝居の魅力について
草笛 二人芝居は…三人芝居とは違うわね(笑)。(※松岡が「漫才じゃないんだから」とすかさず突っ込みを入れる)。二人芝居は逃げ場がないですね、もう一人いると楽なんですが、二人だと自分と相手との台詞が錯綜して非常にエネルギーが要ります。芝居は2時間くらい喋りっぱなしのすごい労力が要る芝居です。でも初演でこの作品の台本をいただいた時、このリリーという女性は私に似ている!って思ったんです。それでやらせていただいたんです。今度は松岡さんというチャーミングな役者さんとご一緒できるのがいいですね。(ふと思い出したように)この人、私の事を「ママ」って言うの。これは困るのでこれからは「ママ」って言うな!(松岡が小声で「はい」と返事をしながら笑いをこらえる)これからは親子じゃないんだから。私もマイケルって呼ぶからね。あと、芝居の中で怒鳴り合う所も容赦なく怒鳴ります。この作品は役者のいろいろなものが出てくる芝居なので、以前から知っている間柄でも情け容赦なく、遠慮なしにやらせていただきます(笑)。
松岡 生活の短い時間、時間を切り取って観ていただくと、そこにはよりリアリティが必要になります。そのリアリティは作られたものではなく、それは呼吸だったり、目線だったり、動きだったり…その自然な動作で行われる事を生で観ていただくのが二人芝居の魅力なんじゃないかな。草笛さんがおっしゃるように、もう一人いたら逃げ場はあるんですけど、でも二人だからこそ通じるものがあり、おもしろい呼吸が生まれてね。二人だからこそ、通じる魅力がある。そこが二人芝居だからこその魅力なんじゃないかな。
――本作では、6種類のダンスを披露していくことになりますが、お二人がこの6種類の中でいちばんお好きなダンスは?
草笛 ワルツかな。リリーは軽やかに踊るワルツというイメージがあるんです。曲線を描くような、やさしいように見えて難しいダンスですね。
松岡 6種類ともまだ踊った事がないんです(笑)。僕らが踊っていたダンスはちょっと違う種類で、大体3拍子で踊るダンスは僕らはやってないんです。ジャズやヒップホップをやってた…というよりかは「動いていた」という程度で。でもやっぱり二人でリズムと呼吸を取って踊るのは楽しいですね。そこがお客さんに伝われば。どれがいちばん楽しかったか、という答えは、千秋楽でまた、皆さんに集まっていただきまして…(笑)。
草笛 二人でやっていますと、突然にアドリブも出てしまうかもしれませんね。突然何かが起こるかも。それも楽しい味かもしれませんね。書かれた通りのことだけではない。そこを私は狙っています。
松岡 ​…​…と、突然スイッチが入るんです(笑)。草笛光子は急にスイッチが入り、司会進行を始めるんです。その場合、僕はコメンテーターに変わらせていただきます(笑)。
――今回は男女の心の通い合いが描かれますが、もし松岡さんが草笛さんの心をつかもうとするならどのような方法でつかみたいですか?
松岡 ​僕が草笛さんのハートをつかむなら…「顔」じゃないですか(笑)?※ドヤ顔
草笛 もうつかまれてます。情け容赦なく!(笑)
草笛光子
――「ママって呼ぶな」と草笛さんに言われましたが、松岡さんはこれからどう呼びますか?
松岡 ​「光子」と呼びます(笑)。もしくは「リリー」で!役名で呼んでくれ、って。5年前に母子の役をやってからずっとママ、ママと呼んでいたんですが、急に変えろって言われましてもね。自分のおふくろを「ヨウコ」と呼ぶようなものですからね。うちの母、「ヨウコ」っていうんですが(笑)。でも慣れていこうと思います。稽古中にちゃんと「リリー」と呼べるようになろうと思います。
草笛 メールでも「リリーへ。マイケルより」って書いて、一生懸命努力していらっしゃいますよ。
松岡 ​一生懸命絵文字も使っています(笑)!頑張ってます!
…と、草笛と松岡が漫才のようなトークを繰り広げ、常に笑いが絶えない質疑応答となっていた。
会見終盤、今回の上演についての意気込みを聞かれると、鈴木は「作品の伝統を守りつつも、新たな切り口で現代にも通じる作品に仕上げたいです」、草笛は「10年近くやらせていただいてますと、どこか手垢がついちゃったというか、今回は改めて『え?6週間のダンスレッスンってこうなるの?』と思うくらいとっても違った新しい作品になると思います。私も舞台に出て迷うと思います。前からの残像が残ってますから。それを払拭して私が新しく生まれ変わる。この年になって初めて自分の殻を割って出てくるような気分です。あと何年女優生活ができるのかわかりませんが、死んでもいいから頑張ろうと思います」と、攻めの姿勢を見せた。そして松岡は草笛に目線を送りつつ「今までのマイケルをすべて忘れさせて、俺色に染めてみせます」と松岡節を炸裂していた。
草笛光子、松岡昌宏
取材・文・撮影=こむらさき

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