【インタビュー】VALSHE、音楽ルーツ
は“和”「神聖なもの、聖域のような
意識」

“和”をモチーフにきらびやかな世界観を打ち出したVALSHEの5枚目のコンセプトミニアルバム『今生、絢爛につき。』が、8月22日にリリースされる。デジタルサウンドに“和”のテイストを加えた前シングル「激情型カフネ」と今作のリードトラックには密接な繋がりがあり、VALSHEが和装でダンスする艶やかなミュージックビデオには「激情型カフネ」で掲げられていたキャッチコピー“千年あれば、ケリはつく”の謎を解くヒントが散りばめられている。
収録された全7曲は、デジタルロックあり、ダンスチューンあり、バラードあり、メタリックなギターリフありと実にバラエティに富んだもの。その表現の振り幅はこれまで以上に幅広く、たとえ“和”のエッセンスをそぎ落としたとしても各楽曲のクオリティは十分に高い。しかし、それを“和”というテーマでまとめ上げたところにこそ注目したい。今、VALSHEが“和”にフォーカスした理由とは? そのルーツと達観した人生観に迫りつつ、新たな“気づき”が多かったという楽曲たちについてたっぷり話を訊いた。

   ◆   ◆   ◆

■幼少期の体験がなかったら
■こういう作品を作っていなかった

──5thミニアルバム『今生、絢爛につき。』は前回のシングル「激情型カフネ」と繋がりもあるのかと思いますが、さらに“和”の色合いが増した印象を受けました。特にリードトラックの「今生、絢爛につき。」にその傾向が顕著に出ています。和をフィーチャーしようと思ったのはなぜですか?

VALSHE:「激情型カフネ」を助走の立ち位置として今回のミニアルバムの制作に取り組んだんですが、“和”をコンセプトにしたのは自分の音楽のルーツに立ち戻った部分もあるんです。初めて自分が音楽に触れたのが邦楽だったり和楽器だったので、神聖なもの、聖域のような意識が根づいていたんですね。なので、いつかは“和”の要素を中心に据えたものをしっかりとした形で発信したいとずっと思っていたんです。“和”に引っぱられすぎず、自分の色を出しすぎず、そのバランスのコントロールがきちんとできるようになったタイミングで作りたいと思っていました。

──VALSHEさんがずっと温めていたテーマというか、頭の片隅にあった音楽のスタイルでもあったわけですね。

VALSHE:はい。すごく漠然としたものではありましたが。
──ちなみに、小さい頃にどんな和楽器に触れていたんでしょうか?

VALSHE:ボンヤリした記憶のレベルですが、2〜3歳の時に初めて触った楽器が琴でした。当時、自分は演歌を歌っていたそうなんですけど、覚えているというより懐かしいような知っているような感覚なんですよね。

──お琴は家の方がやっていらしたんでしたっけ?

VALSHE:祖父が三味線のお師匠さんだったんです。家に遊びに行った時に琴は好きでいじってみたり。三味線は重くて持てなかったんですよね(笑)。

──2〜3歳じゃ重いですよね。演歌もそういう影響があるんですか?

VALSHE:演歌は歌うのを泣いて嫌がっていたらしいんですけど、人前で歌わされていたらしく、ホントに当時のことはあまり覚えていないんです。5歳になった時にようやく自分が好きな音楽を見つけて、自分から聴いたり歌ったりするようになり始めるんです。

──ようやくっていっても5歳は早いですよね。

VALSHE:ははは、そうですね。早かったと思うんですけど、振り返ってみると、もの心ついた時から切れ目なく音楽を聴いていたんだなって。母は音楽の仕事をしてはいなかったんですが、祖父母の影響はかなり受けていますね。

──ということはVALSHEさんの根っこにある音楽と今までに作ってきた音楽の融合が本作だと考えていいんでしょうか?

VALSHE:そうですね。小さい頃に親しんでいた“和”とは、かなり色を変えている音楽なんですけど、幼少期の体験がなかったら絶対にこういう作品を作っていなかったと思います。
▲『今生、絢爛につき。』【初回限定盤】

──実際、『今生、絢爛につき。』はどのような過程を辿ってできていったんでしょうか?

VALSHE:前回のシングル「激情型カフネ」のストーリーの“エピソードゼロ”としての位置付けに当たるのが「今生、絢爛につき。」なので、この曲から作っていきました。紐解いていくと「激情型カフネ」は「今生、絢爛につき。」の千年後の物語に当たるんです。今回のリードトラックは“和”が中心で外側をデジタルサウンドでコーティングした方向性。一方で、「激情型カフネ」はデジタルサウンドに“和”の要素を取り入れているイメージです。ただ、ほかの楽曲に関しては“和”はベースにあっても、そこに捉われすぎずに新しさを取り入れたり、挑戦していたりしますね。

──なるほど。実際、「今生、絢爛につき。」は三味線や琴の音色がフィーチャーされていますものね。色艶やかな曲ですよね。

VALSHE:この曲の色味だったり世界観はミュージックビデオに象徴されていると思うんです。昨年の段階から頭の中にヴィジョンは浮かんでいました。

──そのミュージックビデオの話もぜひお聞きしたいんですが、「激情型カフネ」のキャッチコピーは“千年あれば、ケリはつく”でしたよね。そこが、さっきおっしゃっていた千年後の物語ということですよね?

VALSHE:「激情型カフネ」をリリースした際に「キャッチに注目してください。このフレーズがどこで回収されるのかが今年のVALSHEの活動の中でわかっていくと思います」と話していたんですが、「今生、絢爛につき。」にはミュージックビデオにも歌詞にも前作を聴いた方が“ああっ!”って思うヒントやキーワードを散りばめています。

──ということは「今生、絢爛につき。」は今、VALSHEさんがいちばん表現したい方向の楽曲と捉えていいんでしょうか?

VALSHE:はい。いろいろな意味でそうです。
■「悪いことが起こったら楽しくない?」
■って聞いたら「いや〜」って言われて(笑)

──今作のキャッチコピーは“この世こそ、美しい”です。歌詞は“曇天の空も一興と言えるかが裁量 悔いのないようにシたいことをするだけよ”で締められていますが、これはVALSHEさんの人生観ですか?

VALSHE:自分の過去の作品を振り返ると、何かマイナスなことが起こった時には反骨精神を持って“やってやろう”っていうメッセージを書くことが多かったんですけど、ふと“自分の本質ってどこだろう? 今、何が言いたいんだろう?”って考えるタイミングがあったんですね。そうしたら、自分って悪いことが起こった時にどこかでウキウキしちゃうところがあるなって。状況を楽しんでいる別の自分がいるんです。

──起こったことを悲しんではいるんだけど、っていうことですか?

VALSHE:悲しいし、イヤだなと思っているんですけど、「さあ。悪いことが起こりましたよ」って実況しているみたいな自分もいるんですよ。みんなもそうなんだろうと思っていたんですけど、ある日、マネージャーに「悪いことが起こったら楽しくない?」って聞いたら「いや〜」って言われて、「違うんだ!?」って(笑)。

──はははは。その事実に、最近気づいたんですね。

VALSHE:そう。自分には極端に楽観的な部分があるんですよ。
▲『今生、絢爛につき。』【Musing盤】

──ふーむ。一見、そういうふうには見えないですけどね。むしろ、深く考えこんでしまいそうな。

VALSHE:そういう面もあるんですけど、壁にぶち当たってふっと1人になった時に「ゴハン食べるのに困ってるわけじゃないし、親が生きてるからいいじゃないか」で終わっちゃうんですよ。重い病気にかかっていたら、それどころじゃないと思うんですけど、「だから、そんなことでオマエは悩めるんだろ?」って思っちゃうんです。

──悩める余裕があるだろ?っていうことですよね。

VALSHE:そう。あと、今、生きてることに“余生”の感覚があるんです。

──余生? そんなに若いのに!?

VALSHE:はい(笑)。だからなのか、いいことも悪いことも取り返しがつかないことも大なり小なりありますけど、その全てを自分なりに楽しめたら最強だなって。よく“ものの見方次第” “考え方次第”って言いますけど、ホントにその通りだなと思う。そういうことを我流で書いてみたのが「今生、絢爛につき。」の歌詞なんですよね。これも少数派だと思うんですが、今、できないことは来世に振り分けたりするんですよ。

──生きていて実現できそうもないことということですか?

VALSHE:そう。「これ、やりたいな」と思って「今生ではできないか」ってなったら「来世でやろう」で終わっちゃうんですよ。これも、みんなはそう考えないんだって最近わかったので。

──ははは。いつ死ぬかわからないから生きている間にやっておこうという気持ちとは違うんですね。

VALSHE:そうですね。もちろん作品は今、発信したいものや作りたい音楽を「いつ終わってもいい」って気持ちで毎作つくってますけど、結局、どういう状況であれ「生きてれば楽しいじゃないか」っていうところに自分は本質的に立ち戻っていくのかもしれないなと思います。

──シンプルなところに立ち戻れるのはすごいと思いますよ。

VALSHE:そこに“絢爛”という言葉がピッタリ当てはまったんですよね。サウンドのテーマと自分が発信したいことがうまく合致した曲になりました。
──なるほど。今作の最後の曲はTVアニメ『信長の忍び〜姉川・石山篇〜』の第2クールオープニングテーマ「追想の理」で締められています。この曲はイントロのメタリックなギターといい、いちばんロック色が強いですね。

VALSHE:はい。今回、『信長の忍び』とコラボレーションさせていただくのは2度目になるので、サウンドも歌詞もアニメにもっと歩み寄れる曲にしたいと思って、何度も本を読んで考えた上で書きました。

──歌詞は本作のテーマと繋がっていますか?

VALSHE:本質的なところで繋がっていると思います。アニメのキャラクターの心情や情景とリンクできる言葉選びをしているんですが、自分自身への期待を込めて書いた歌詞でもあるので、そういう意味では『今生、絢爛につき。』をまとめるのにふさわしい曲になったと思っています。

──期待するというのは、想いが時を超えて未来に届いていってほしいというメッセージでしょうか?

VALSHE:そこは真逆で、これまで作品とコラボレーションさせていただく時は自分が共感できる部分を噛み砕いて歌詞にしてきたんです。今回は自分の中になかった感覚だけど、“こういう美しさもあるんだな”と感じた部分を書いています。“自分もそう思えるようになりたい”ということではなく“自分の中にもそういう気持ちが生まれてくるのかな?”という希望的観測を含めて書いているので、そういう意味で最後に持ってきたんです。

──自分の中になかった感覚というのは?

VALSHE:『信長の忍び』は戦乱の世が舞台なので、帰りを待っている人たちがいる中、戦っている人たちは未来を思って死んでいくんですよね。次の世代だったり、未来を生きていく人たちのために戦う人の姿が印象的なんですけど、自分自身はこの世からいなくなった後に誰かに遺志を継いでもらいたいとか、死んだ後に評価されたいと思ったことが1度もないんです。自分とまわりの人と想いや願いを共有することはとても重要だと思っているんですけれど、後の世代のことを考えたことはなくて、今回、テーマ曲を作らせていただくにあたって「こういう気持ちもあるのか」って。

──次の世のことに想いを馳せるみたいな?

VALSHE:例えば自分がいなくなった後の音楽シーンのことを思ったりしたこともなかったので、そういう気づきが次に繋がっていくのかなって。
■今回のツアーではみんなと一緒に
■初めてのことに挑戦してみようと

──いろいろな気づきや挑戦が含まれているミニアルバムなんですね。楽曲も1、2、3ではなく、“出雲”、“一雲”、“二雲”という表記ですね。

VALSHE:未来への小さな繋がりという意味で表記を変えているんです。ツアータイトル<VALSHE LIVE TOUR 2018 YAKUMO>まで連れていこうとしている楽曲たちなので。

──最初は表記を知らなかったので、なぜ“YAKUMO”なんだろうと思っていました。八つ目の雲みたいな意味ですか?

VALSHE:それも含まれています。

──ヴィジュアル面も含め、どんなライブになるんでしょう?

VALSHE:今回、コンセプトも視覚的にも“和”を打ち出しているので、ステージでもそれをしっかり表現したいと考えています。昨年のツアーの中で芽生えた気持ちを追求できたらいいなと思っていますね。それと今回のツアーではみんなと一緒に初めてのことに挑戦してみようと。

──みんなと一緒に、っていうのはヒントですか?

VALSHE:そうですね。

──予想としてはステージセットは和の雰囲気なのかなと。

VALSHE:そこもお楽しみに。予想外のことになるかもしれないし。

──セットリストも気になりますね。今回の曲とどんな過去の曲を組み合わせて見せるんだろうって。

VALSHE:既存曲とどう混ざって展開していくか。そこも面白そうだなと自分でも期待しています。

取材・文◎山本弘子

■5thミニアルバム『今生、絢爛につき。』

2018年8月22日(水)発売
【初回限定盤(CD+DVD)】JBCZ-9082 ¥3,000(税込)
<特典DVD>
・「今生、絢爛につき。」Music Video
・Making of 「今生、絢爛につき。」
【Musing盤(CD+DVD+グッズ)】JBCF-9010 ¥4,500(税込)
<特典DVD>
・「今生、絢爛につき。」Dance ver.
<グッズ>
・全員復唱!心に刻め!!推し七箇条豪華絢爛BIG扇子
【通常盤(CDのみ)】JBCZ-9083 ¥2,200(税込)
▼収録曲
出雲 まそカがミ照るべき月ヲ白タえの誰か隠せる天ツ君かも
music & arrangement by Shun SatoE
一雲 今生、絢爛につき。
lyrics by VALSHE music by バルと瞬さん★ arrangement by Shun Sato
二雲 激情型カフネ
lyrics & music by VALSHE arrangement by 齋藤真也
三雲 PERSONA
lyrics by VALSHE music & arrangement by doriko
四雲 インスタントセレブリティ
lyrics by doriko music by VALSHE arrangement by G'n-
五雲 夕暮花火
lyrics by VALSHE music & arrangement by Shun Sato
六雲 追想の理
lyrics by VALSHE music & arrangement by 本田正樹
▼全共通封入特典
アナザーJK 全4種類のうち1種類ランダム封入


■<VALSHE LIVE TOUR 2018 YAKUMO>

9月23日(日) 大阪・梅田バナナホール
OPEN 17:00 / START 17:30
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400
9月24日(月祝) 愛知・名古屋SPADE BOX
OPEN 17:00 / START 17:30
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
10月6日(土) 東京・マイナビBLITZ赤坂
OPEN 17:00 / START 17:30
(問)ディスクガレージ 050-5533-0888
▼チケット
オールスタンディング(東京公演 全自由) ¥6,480(税込)
一般発売日:2018年9月8日(土)

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