ゴジゲン『君が君で君で君を君を君を
』松居大悟×本折最強さとしインタビ
ュー!「来てくれた人みんなに、幸せ
になってもらおう」

10周年を迎える劇団ゴジゲン。2008年に旗揚げ後、2011年から活動休止し、2014年に再開してからは劇団員それぞれが各方面で活躍している。今回は、劇団主宰の松居大悟と、2017年に入団した本折最強さとしに話を聞いた。
本折は近年、シアターコクーン『プレイヤー』(主演:藤原竜也)、『薔薇と白鳥』(W主演:Hey! Say! JUMP八乙女光/高木雄也)など話題作に出演。松居は、ドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズの監督などで一般的にも知名度を上げ、今年7月には劇場映画『君が君で君だ』(主演:池松壮亮)を公開。この映画と対をなす(が全く別物語である)舞台『君が君で君で君を君を君を』の上演を10月に控えている。30歳過ぎの彼らが思い描く「愛」の物語。一体どのような作品になるのだろうか。
劇団10周年目。3年間の休止後を経て変化したゴジゲン
――10周年はゴジゲンにとってどんな位置づけですか?
本折 それ、俺も聞きたいです。
松居 そもそも10周年ということはそんなに意識していないのですが、何かやってみようと思ったのは、去年ゴジゲンが6人になったからなんです。2011年の劇団休止までは作品性について考えたり、いろんな創作を試していました。けれど2014年に活動再開してからは、ゴジゲンを観てくれる方や外部出演や映像作品まで追って観てくれる方がたくさんいることを実感して、ただただ嬉しかったんです。そして何よりも「これから6人でやって行くぞ!」という気持ちを共有したいな、と思い、10周年と称して各メンバー発信で過去作品上映会や、「ゴジゲンラジオ」(ゴジラジ)のネット配信や、先日はオールナイトイベントも開催しました。
本折 俺も、団員になったのは去年だけど、結局10年くらいゴジゲンに出演してるんですね。初参加の2009年は自分にとって「本格的に俳優でやっていこう」と思った頃だったので、役者人生10周年と重なります。でも俺は、10周年企画はほぼやる気がなかったんですよ。だから最初は嫌がってたんですけど、最年少のテツ(奥村徹也)を使って「10周年の企画やらないのかなー?」みたいな空気を出してきたんですよね。
松居 最強は役者としていろんな公演に出演しているから、邪魔したくないな、という気持ちがありながらも、最年少からぶっこんで聞いてもらおうかなと(笑)。
松居大悟
――外での仕事を重ね、ゴジゲンに対して周りの反応は変わってきましたか?
本折 劇団名を知ってくれる人は増えた気がします。この間、藤原竜也さんが出演する舞台『レインマン』を観に行った時、竜也さんが「ゴジゲン主宰の松居さんってドラマ『バイプレイヤーズ』の監督してたよね。すごいね」と言ってくれたんです。
松居 映像の反響はありますね。映画上映後のロビーで「ゴジゲンも観ました」と言われるとすごく嬉しいです。「過去のあの作品観てます」というのももちろん嬉しいですし「こないだ初めて観ました」とか「次、観に行きます」とか、新しく知ってもらえているのも嬉しいですね。
本折 周りの反応だけではなく、自分も変わったかもしれないですね。最近はさらっと「ゴジゲンの本折最強さとしです」と言うようになりました。前は「ゴジゲンの〜」と言っても相手も「はい?」という反応でしたが、自己紹介で所属を名乗ってもすんなり受け入れてもらえるなと実感しています。
――最近は劇団以外の活動もかなり増えてきましたよね。その中でゴジゲンは自分にとってどういうポジションですか?
本折 いろんな舞台に出演する機会が増えると、壁にぶち当たることもあるんです。そんな時に「早くゴジゲンやりたいな」と思います。良くも悪くも、楽なんですよ。「仕事」という感じじゃないんです。自分のやりたいようにやれるし、何ができるか全然予想がつかないワクワク感もあります。
松居 自分たちの劇団なので、丸腰で挑めるんですよ。他の現場は仕事なので、初めてご一緒する人に「こういう作品を作ります」とプレゼンしたり、丁寧にコミュニケーションを取る必要がありますが、ゴジゲンは長年付き合ってきたメンバーなので、稽古場で「本は?」と言われても「うるせー」と言える(笑)。
本折 おい!(笑)
松居 あはは(笑)。どこかでなんとかなると思ってるんですよ。不安がない。「作らなきゃ。疲れる。嫌だな」という気持ちは一切なくて、いつの間にかできている。やらなきゃいけないことはもちろんあるけれど、デリケートなことでもみんな意見を返してくるし、安心しているんでしょうね。
(左から)本折最強さとし、松居大悟
30代男たちの「愛」のハッピーエンド
――今回は、映画と連動して舞台を上演します。タイトルも似ていますが、10周年をこの題材にしようと思ったのはなぜですか?
松居 映画『君が君で君だ』は去年撮影したのですが、元になった舞台『極めてやわらかい道』は2011年に上演しました。自分の中では一番苦しかった時に作った作品で、周りの声も聞こえなくなって「とにかく自分がやっている事が正しい」と言い聞かせて、自分を掘り下げていたんです。
出来上がった作品は好きでしたが、結局、みんなボロボロに。その後、 目次立樹も演劇を辞めたいと言ってきて劇団は休止になってしまいました。特別だけれど、ちょっと危険な公演。
でも3年後、公演を観ていた大学時代の同級生、阿部広太郎君が映画プロデューサーになり「あの作品を、映画にしようよ」と言ってくれました。その時に、時間が経っても誰かの心に作品が残っていたんだということが嬉しかったですね。あの時は誰の言葉も聞けなかったけど、今の僕は人の話も聞けるようになってきたから、もう一度いろんな人を巻き込んでしっかり作ろうと思ったんです。
公開がゴジゲン10周年になったのは偶然ですが、ゴジゲン休止直前の特別な公演が10年目に映画になったのは一つの運命かなと思って、舞台上演もすることにしました。多分ですが、再演だと当時とは考え方も熱量も違い、初演には敵わないと思うので、今回はあえて新作にしました。
――映画と舞台は別の話だそうですが、どちらも『愛』がテーマですね。映画ではただ何もせず見守るストーカー的な愛を描きましたが、舞台はどんな作品になるのでしょうか?
松居 舞台は、映画とはストーリーも登場人物も違う独立したものですが、より強度は上がるような気がしています。映画は、密室を舞台にした閉鎖的な空間で自分達の愛を貫く物語でした。見る人によっては異常なことだけれど、「あなたおかしいよ」と言った人の「おかしい」という価値観が逆転することはできないのかなと考えています。
当事者同士でしか成立していない愛に、いろんな人が登場してきて「それは違う」「それは正しい」といろんな事を言うのも含め舞台上に乗せられたらと思います。『極めてやわらかい道』の時とは違う、愛についての考えを、このメンバーで掘り下げていきます。
本折 だから、俺のゴジゲン10周年企画は「最強の愛を取り戻せ!」にしたんですよね。
松居 最強、誰よりも作品に歩み寄った企画をしてくれますね。最初は劇団に協力するのも嫌がってたのに(笑)。
本折 やるからには意味のあることをやらないと。「愛」がなんなのか昔よりよくわかんなくなっちゃってるから、皆に助けてもらいながら愛を取り戻そうかな(笑)。
松居 次の舞台は、誰が見てもわかるハッピーエンドにしたいです。これまで観る人によってはハッピーだし、人によってはアンハッピーみたいな終わりかたが多かったけれど、もうそういうのはいいから、お金払って劇場に来てくれた人にはみんな幸せになってもらおうよ、と思っています。
(左から)本折最強さとし、松居大悟
ゴジゲンを日本代表に例えると!?
――劇団ゴジゲンの魅力や特徴は?
松居 自分では、とくにテイストは固まっていないと思うんですよね。いつもシチュエーションコメディをやってるわけでもないし、その時々でいろいろ。劇団として他の劇団さんとの繋がりはほぼないから、小劇場の中でどういうポジションなんだろうなぁ。
本折 自分で客観的には見れないですね。
――では、どういうところに魅力を感じてゴジゲンに所属したんですか?
本折 なんだろう……何も別に目指してない感じがいいなと思ったからですかね。
松居 ええっ、どういうこと!?
本折 「俺達は将来こうなることを目指してるから入ってくれ!」みたいな感じじゃなかったんです。それだとモチベーションがついていかなかったと思いますが、いつの間にかずっと一緒にいて、所属しても何かが変わるわけじゃないから、「別にいいよー」という感じでしたね。
本折最強さとし
――そもそも最初に出演するきっかけはなんだったんですか?
本折 10年くらい前のワークショップオーディションですね。当時ほかの劇団にいたので、そこの劇団員に誘われて付き添いで参加して、ただ暴れてきただけなのですが、受かっちゃった。
松居 付き添いくらいの気持ちで参加してくれたのが良かったんじゃないですかね。でもとにかく芝居が上手くて、間もすべて理解していて、おもしろかった。でも後で本人を知れば知るほど、「あれ、この人はだいぶ根暗だぞ」と(笑)。
本折 そうでしょ、そういうヤツでしょ。
松居 ゴジゲンに出るときはあまり芝居の上手さを見せるわけじゃないから、他の舞台に出ているのを見ると「あ、本当に上手いんだなあ」と実感します。
本折 確かに、ゴジゲンじゃない作品を観た人に「最強さんって実はうまいんですね」って言われます(笑)。
松居 映像作品にも安心して呼べますね。劇団員だけど、劇団の運営に関わることはこっちで全部やるので、とにかく外に出てお芝居をしていて欲しいです。大人計画の阿部サダヲさんのようになってほしいですね。一番年上の最強が一番のびのびしてると、僕らもほっとしていられますし。
本折 確かになんのストレスも感じてないですね。だから、今回のゴジゲン10周年ではちょっと亀裂が入りかけましたね。だって、なんか、俺にやらせようって空気出してくるから(笑)。
松居 あははは(笑)。
――舞台上では「男たちがワチャワチャするコメディ」が多いですが、普段も仲が良いのでしょうか?
本折 仲が良いってどういう状態なのか、はありますが、とりあえず昨日は善雄(善雄善雄)と飲みました。
松居 善雄とはみんな飲むね(笑)。
本折 誘いやすい。昨日も、近くにいるだろうと思って連絡したら、もう家に帰ってたのにわざわざ来てくれました。他のメンバーとは二人で飲むことないけど、善雄となら飲みますね。
松居 善雄以外で、サシで飲むってのはないですね。
本折 松居が俺をゴジゲンに誘う時も、呼び出されて二人で飲みに行きましたが、入団が決まったらもう話すことなくてただご飯食べて帰りましたもんね。
松居 そうそう、確かに善雄以外と飲まない。でもそれぞれの活動は楽しみにしてますよ。
――ゴジゲンは現在、男6名。それぞれ劇団内ではどんなポジションなんですか?
松居 最強は一番年上の自由人で、作品の中では司令塔。サッカー日本代表に例えると、乾(乾貴士)ですかね。左サイドを引っ張っていく。で、目次が大迫(大迫勇也)。
本折 無理やりゴール決めてくる感じね(笑)。本田圭佑は?
松居 うーん、 本田は善雄かな。最後の方にバッと出てきて良いところ持っていく感じ。
本折 (爆笑)まあ、性格的にはそうかも!
松居 東(東迎昂史郎)が川島(川島永嗣)でしょ、体質的に。奥村は長友(長友佑都)。で、俺はキャプテンの長谷部(長谷部誠)ぐらいかなぁ…?
本折 うーん……。
松居 あ、納得いかないか(笑)。でも、それぞれ普段は別々の場所でバラバラに活動しているのがいいんですよ。僕は映画もテレビも撮るし、奥村は劇団献身を主宰しているし、東は10ヶ月普通に働いて2ヶ月ゴジゲンやっている。そういう関係がゴジゲンなんです。
ゴジゲン
取材・文・撮影=河野桃子

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