【サマソニ東京ライブリポート】PAL
E WAVES

まだアルバムデビューもしていないが、間違いなくその将来を約束されているバンド、Pale Waves。その証拠に、彼女たちが今回のサマーソニックで用意された舞台は、マリンステージに次ぐキャパシティを誇るマウンテンステージであった。そのスケールに見合うだけの実力とカリスマ性を、このバンドは既に備えている。

 インディーポップやシンセポップと形容されがちな彼女たちのサウンドであるが、決して狭義のジャンルには回収されないだろう。その意味では、先日開催されたフジロックに出演したCHVRCHESに通ずるものがあるかもしれない。ロックバンドの持つスケール感と、肉体的な躍動感。Pale Wavesの場合はより繊細でダークなところがあるが、こちらに関してはレーベルメイトのThe 1975と共振している(共振も何もThe 1975のマット・ヒーリーとジョージ・ダニエルはPale Wavesのプロデュースに一枚噛んでいるが)。
 さて、前置きが長くなってしまったが、Pale Wavesの概観は大体掴んでいただけただろうか。肝心なライブだけれども、一刻も早い単独公演を心待ちにしてしまうほど、素晴らしかった。一発目に披露された『Television Romance』から最後の『There’s A Hone』に至るまで、彼女たちの音楽は一貫している。「一貫」というのは世界観だけにとどまらず、もっと根本的で全体的な話だ。曲のプロダクションも一貫して同じアイデア(80’sを席巻したThe CureCocteau Twinsを想起させるような)が採用されている。これについて“ワンパターン”と揶揄される場合もあり得るだろうが、このワンアイデアにこそ彼女たちが大切にしているものが詰まっていると考えるとどうだろうか。屈指のキラーチューン『Eighteen』も漏れなく80’sシンセの雰囲気を感じ取ることができるが、素晴らしいアレンジも相まって、ライブでは涙腺を大いに刺激された。たとえ80年代を知らない世代が聴いたとしても強烈に郷愁を煽られる。この魔力は何だろう。
 80年代のダブリンを舞台にした音楽映画『シング・ストリート』の言葉を借りれば、“Happy Sad(劇中でThe Cureを説明するときに使われた表現)”ってヤツかもしれない。繰り返すが、一刻も早いPale Wavesの単独公演を待つ。

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