浅利陽介「俳優人生・第2ステージの
幕開けになるかも!」新感線☆RS『メ
タルマクベス』disc2 グレコ役

2018年7月23日(月)から12月31日(月)まで「ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』 Produced by TBS」が、東京・IHIステージアラウンド東京にて、disc1、disc2、disc3の3チームに分かれ、連続上演される。現在はdisc1が絶賛上演中だが、その背後では9月15日(土)からスタートするdisc2チームが着々と準備を進めている。
『メタルマクベス』とは、シェイクスピアの四大悲劇の一つ『マクベス』を、劇団☆新感線の主宰であり演出家のいのうえひでのりと人気脚本家・宮藤官九郎とがタッグを組み、大胆に脚色が施されて生まれた新感線の代表作の一つ。2218年の人類が衰退した世界と、空前のバンドブームに沸く1980年代の日本を行き来しながら、ヘヴィメタルサウンドと共に、いのうえ✕宮藤流『マクベス』が描かれる。
主人公・ランダムスターとランダムスター夫人をdisc2で演じるのは、尾上松也と大原櫻子の若きコンビ。そしてランダムスターが命を狙うレスポール王(木場勝己)の忠実な臣下・グレコ役を演じるのが新感線初参加となる浅利陽介。4歳から子役として芸能界に入り、数えきれないくらい様々な作品に出演した、弱冠31歳のベテラン俳優だ。そんな浅利が『メタルマクベス』にどのような期待をして臨もうとしているのか。

取材部屋に入ってくるなり、『メタルマクベス』のチラシを目に留めた浅利は「この撮影、楽しかったんだよなあ」と嬉しそうに語り始めた。
■『メタルマクベス』出演オファーに「やっときたか!」
ーービジュアル撮影の時、どのような感じで撮影されていたんですか?
撮影スタジオの中はヘヴィメタルっぽい音楽が流れていて、それに合わせて次々とポーズを取っていきました。それこそロックスターみたいなノリで(笑)。本当に楽しかったんですよ。
ーーそもそも浅利さんの過去の出演作を全部振り返って、こんなビジュアルの役はやった事がありますか?
なかなかないですね(笑)。しかもこれだけ変身できる役ってね。
ーーヘヴィメタルと聞くと、どのようなイメージがありますか?
ブラックサバス、メタリカ、鋲、トゲトゲ……ってイメージですね(笑)。自分の人生にはそこまでメタルというジャンルは入ってこなかったんです。以前映画を観ていて「この曲カッコいいなあ」と思って、後ほど調べたらブラック・サバスの「Iron Man」だったってくらいですね。
ーーそんな浅利さんが今回初めて新感線の舞台に出演されることになりますが、そもそも劇団☆新感線や、作品について、どのような印象を持っていらっしゃいましたか?
劇団☆新感線の芝居って楽しそうだし、いろいろな先輩たちが出演していて、なんだかキラキラしていて楽しそう! ってちょっと嫉妬するくらい羨ましかったんです。実際、皆楽しそうに芝居をしているから。
初めて劇場で観たのが『乱鶯(みだれうぐいす)』でした。大東駿介くんが出ていると聞いたので観にいったんですが「あれ? 結構オーソドックスな芝居もやるんだ!」と驚き、これはこれでめちゃくちゃおもしろいと思ったんです。「劇団☆新感線って、こういう芝居もやり、また『メタルマクベス』のような激しいザ・エンターテインメントな作品も両方やるんだ!」と知り、そこで新感線のイメージが大きく変わりました。
浅利陽介
ーーさて、ザ・エンターテインメントな方の『メタルマクベス』に出演を、とお話をいただいた時の率直な心境は?
「やっときたか!」という気持ちで本当に嬉しかったです(笑)。こういう舞台をやってみたかったんですよ、楽しそうですし。『髑髏城の七人』は“花・鳥・月(下弦の月)・極”を拝見したんですが、あのステージの上を歩いてみたいですね。捨之介が歩くその後ろから敵兵が「待てー!」って追いかけてくる、ああいうのをやってみたいです(笑)。
唯一の心残りは古田新太さんが出てない事。いつかどこかで古田さんと共演してみたいですね。
ーーちなみに原作となるシェイクスピアの『マクベス』は、どこで知りましたか?
僕は漫画で読みました。その方がきっと分かりやすいだろうなって思って。すーっと頭に入ってきました。この『マクベス』という物語が『メタルマクベス』になることで、原作の内容が曲や歌詞に変わったのが、またいいですね。難しい台詞や設定が多いと、役者だけでなく、観るお客さんも大変だと思うので、それが音楽になったことで『マクベス』やシェイクスピアの世界観がすーっと頭に入ってくるんだろうなと思いました。
ーー『メタルマクベス』の初演を映像でご覧になったそうですね。いかがでしたか?
あんなに内野さんがアゴを出しておもしろ顔になっているのに、パール王役の粟根(まこと)さんがそれを見てよく笑わないなーって思いながら観てました(笑)。
映像を観ている時は、すでに僕がグレコ/マクダフ役をやると分かっていたので、初演でその役を演じている北村(有起哉)さんを「すごい頑張ってるなー」ってまだ他人事のように思いながら観ていたんですが、いざ自分が出演するとなると、この芝居、長いしキツそうだなって感じますね。
ーー今回、disc1で山口馬木也さんがグレコ役を演じています。他の人が自分と同じ役を先に演じる状態は、役者としてはどんな心境なんでしょうか? やりやすいのか、やりづらいのか……という点で。
僕はやりやすいと考えるほうですね。「ああ、あれはやらない方が良い」「ああ、すべった」「あそこは気を付けよう」とか対策を打てますから(笑)。でもあえてその危なそうな部分に突っ込んでいこう、と思う事もありますね。いい所は真似して、そして自分のモノにしていきたいと思います(笑)。
浅利陽介
ーーズバリ、浅利さん的『メタルマクベス』のおもしろさは?
まだ稽古前なので、「脚本」ですね。僕は宮藤さんの書くギャグや小ネタが大好きなんです。「これは舞台じゃないと言えないよね」っていうギリギリアウトな内容を書いているところとか。観ていても思わず笑ってしまうし、演じる側としてはああいう部分を大事にしてやりたいと思います。『メタルマクベス』の台本を実際に読んでいると、宮藤さんのギャグを見つけてはニヤニヤしています。この作品は、台本の段階から相当楽しいんですよ!
宮藤さんの作品は、心あたたまる内容が本筋となるものが多いと思うんですが、そのちょっと脇のところで見せる言葉のチョイス……例えば「クソ! 死ね!」ってハッキリ言っちゃうところが特に好きなんです。
『マクベス』自体は実は暗い話だし。ロックの歌詞も暗いイメージがあるので『メタルマクベス』となった時にその暗い部分同士が合わさって強みとなるんでしょうね。
■何かあったら岡本さんのせいにしようと思います(笑)
ーーdisc2の出演者についてお伺いします。過去、共演経験がある方は?
高田聖子さんと岡本健一さん。その他の方は初めまして、です。聖子さんとは今回夫婦役。聖子さんがしれっとおもしろいことを言ったりするのが大好きなんです。そこは芝居中でもしっかりチェックしておきたいです。
主人公の(尾上)松也くんは『メタルマクベス』だけじゃなく本来の『マクベス』も似合いそうですよね。“揺れ動く人間像”を演じるという点で。いつか本物の『マクベス』をやる姿も観てみたいな。
浅利陽介
ーー今回はdisc1、2、3とどのチームも“歌える”人ばかりですし、3チーム合同か選抜で「メタルマクベスLIVE」を開催して欲しいなあとひそかに願っているんです。
実際にやりそうじゃないですか? 新感線の舞台って遅刻や小道具忘れなど、何か粗相をすると「罰ゲーム」っていうシステムがあるんですよね? 舞台の終演後とかに。どうせやるならそこで「メタルマクベスLIVE」を提案したいですね。
ーーそれはおもしろいですね! 粗相はないに越したことはないですが、その一方で何か起きてほしいな、とも願いたくなります(笑)。
もし僕に何かあったら全部、岡本さんのせいにしたいと思います(笑)。
ーーひどい濡れ衣を(笑)。でも岡本さんのライブ演奏は観たいですね! そういえば浅利さんご自身が“歌う”姿、ましてやメタルな楽曲をシャウトする、というイメージがまだ湧かないんです。歌う場面がほぼない映像作品に出演しているイメージが強いからなんだと思いますが。
一応ミュージカル経験はあるんですよ(笑)。でも、僕が“歌う”というイメージがあまりないとしたら、それはきっとおもしろい舞台を見せることができそうです。僕は雰囲気を掴むのが上手い方なので、メタルっぽく見せられるようにしていきたいです。喉をつぶさないように稽古しないと。
ーー歌もそうですが、体力面の準備も必要そうですね。今の時点で特別なトレーニングなど、考えていますか?
普通に鍛えるくらいにしたいです。というのも、太腿が太くなりすぎると衣裳さんに怒られてしまうんです。この身長とこの顔で筋肉がっちり付けて身体が1サイズ大きくなってしまうと、なんだか鬱陶しい存在になりそうじゃないですか(笑)。
浅利陽介
■『メタルマクベス』が俳優人生・第2ステージの幕開け!?
ーー浅利さんはこの夏で31歳。20代に出演した作品の中で自分のランドマーク的作品を挙げるとしたら?
20代は本当にたくさんの作品に出演しましたが、自分のランドマークとなると、『コードブルー ~ドクターヘリ緊急救命~』シリーズ(2008~)、舞台『おのれナポレオン』(2013)、舞台『クレシダ』(2016)が出てきますね。
そして、30代になって『メタルマクベス』に出演することが、僕の俳優人生の第2ステージの幕開けとなるのかも、と感じています。この人が出たらおもしろい、笑える……どんな芝居にもそういう人が一人はいると思うんですが、僕もそんな存在になれたら、と思います。
ーー今後、俳優業に限らず挑戦してみたい事ってありますか?
映画を作ってみたいです。そしてその演出をやってみたいですね。文才はあまりないので、誰かが書いたものを自分が演出する様を想像していますが。大学に入った時に、授業でカメラを渡されて「好きなものを撮ってこい」って言われてやったのがすごく楽しかったんです。縁があって脚本を書く機会もありました。そのときは幕末ものを書いて、そのロケハンで京都に行ってみたり……一人遊びに近いですけどね。
ーー演出に興味があるということですが、自分の目標、あるいはこの人と仕事がしたい、と思う演出家さんはいらっしゃいますか?
千葉哲也さんですね。舞台『怒りをこめてふり返れ』の演出でお世話になったんですが、稽古の時、僕ら若者4人が千葉さんの話をずーっと聞く、という変な時間があったんです。作品のイメージについて共通認識を持とうというのが目的だったんですが、最終的に「今、何の話をしていたっけ?……よし、休憩!」ってことがたびたびあって。そのゆる~い進め方がすごくおもしろかったんですよ(笑)。
浅利陽介
取材・文・撮影=こむらさき

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