シンガーソングライター・大原ゆい子
インタビュー「自分が歌っても歌わな
くても、アニメに添った面白いことが
たくさんできればいい」

『リトルウィッチアカデミア』、『宝石の国』、『からかい上手の高木さん』とアニメテーマソングを次々と担当しているシンガーソングライター・大原ゆい子。そんな彼女の待望の6枚目のシングル「ハイステッパー」もTVアニメ『はねバド!』EDテーマになっている。今回はシンガーソングライター・大原ゆい子の音楽との出会いから、最新シングル『ハイステッパー』について、そして今後の活動について訊いた。

シンガーソングライターとしてのこだわりは
自分の言葉以外は使わないということ
――大原さんの音楽との出会いはいつ頃なのでしょうか。
3歳の時に母が音楽教室に入れてくれたのが一番のきっかけなのですが、もともと歌うのがすごく好きだったみたいで、それを見て母が音楽教室に入れてくれたのが始まりですね。
――バイオリンをやられていたとお聞きしました。
小学校5年生の時に部活で管弦楽部があって。5年生から専門学校を卒業するまでずっとバイオリンをオーケストラでやっていました。個人的に習ったりというよりも、オケのなかでみんなで一緒に演奏していましたね。
――そこから音楽を続けていって、音楽専門学校に行かれたと。
そうですね。絶対シンガーソングライターになるんだという思いがあってずっと音楽を続けていたわけではなくて、音楽が好きで続けていて、気がついたら中学校の時にうちにあったギターを弾き始めて、高校になってからオーディションを初めて受けて、やっぱり曲を書きたいとなって専門学校に通い始めて、という流れだったんです。
――ギターを弾いてみようと思ったきっかけは?
MDプレイヤーを中学生の時に買ってもらったんですが、それで音楽を聴くのが楽しすぎて、スピッツさんとかYUIさんとか、フォーク系、ギター系のサウンドがものすごく好きで、自分もギターを弾きながら歌ってみたいなというのが芽生えたんです。うちにたまたま母のフォークギターがあって、カビが生えていたので一生懸命カビを落として、ゴーゴーギターという雑誌を買って、分からないなりにずっとスピッツさんの曲とかYUIさんの曲とかをカバーしていました。
――やはり最初はCのコードを抑えるところから、ですか?
そうですね。でもこの記号なんなんだろうな、みたいな。タブ本でこれはどこをどう見たらおさえられるんだろうと思いながら、Cとか、でもFがおさえられなくて、Fっぽい音を探したりとか(笑)。 あとGは未だに全然違う押さえ方してるんですけど、本に書いてある指どおりにおさえられなくて、独自の指順でやってます(笑)。
――オーケストラよりはソロで音を奏でることに徐々に惹かれていったんですか?
はい、バイオリンを始めたときは、本当に演奏するのが楽しいなという感じだったんですけど、ギターを始めて体育館とかで自分が歌ってみたらどんな反応してもらえるんだろう、みたいな発想が芽生えたんですよね。
――学祭に出演したりとかはされたのですか?
いや全然です、何もしたことないです。でもオーケストラで弾けるからいいやと、そういう考えではありました。
――では、音楽専門学校ではかなり環境が変わったかと思いますが、いかがでしたか?
もともと全然行く気は最初はなくて、自分でやればいいやとずっと思ってたんですけど、高校の時のオーディションで(音楽)専門学校から出場している人がいて、その女性が本当にすごく素敵で自分もあんなふうになりたいって思ったんです。その人に聞いたら、専門学校いいよと言ってくれて。
――素晴らしい出会いですね。
そこから専門学校に通って、それまでは音楽してる友達ってオーケストラの子ばっかりだったので、アンプの使い方とかライブハウスの行き方とかスタジオの借り方がまったく知らなくて、そういうのも専門学校で教えてもらった感じですね、周りの子はみんなそういうのやってるから分かるんですけど、私だけ「シールドって何!?」みたいな(笑)。
――専門学校に行くにあたりご両親はなにか言われたりされたのでしょうか?
両親は全然反対とかなくて、むしろ私のほうが大学とかに行って資格を取ったほうがいいんじゃないか、という考えだったんですよ。警察とか看護師さんとかそういう職業になりたいなという気持ちもちょっとだけあったので。そういう学校に行って音楽を続けるのもいいんじゃないかなと思ったら、せっかく続けてきたことがあったから、専門学校に行って勉強したら、みたいな感じで後押しはしてくれました。
――実際、音楽専門学校に入ってみて大変だったこととかは?
今までと環境も変わりますし、クラスメイトとも最初は仲良くなれないかなと思ってたんです(笑)。最終的には普通に話せたんですけど、そこが最初の壁だったかな。クラスに7人ぐらいしか女子がいなくて、男子ばかりなので話せないし金髪だし赤髪だし、うーんみたいな(笑)。
撮影:福岡諒祠
――そこからオーディションを受けられたり、ミスiDもファイナリストになられてますよね。
そうですね、当時色々とオーディションを受けていて、ミスiDもシンガーの大森靖子さんが審査員をやってたんですよ。私アイドルのオーディションというものがよく分かっていなくて、ジャンルフリーでシンガーソングライターでもいいみたいなことを書いていたんです。それで受けに行ったんですけど、あなたにとってアイドルとはと言われて、アイドルはちょっとよく分からないですけど、自分はシンガーソングライターになりたいみたいな話をしたんです(笑)。
――ミスiDはファイナリストまで行ってますよね。
そうなんです。主催者の方がすごく気に入ってくださって。でも、うまくいかないで終わることが多くて、自分自身が何か足りないんだろうなって考えて、これじゃだめなんだな、というふうに切り替えはすぐしてます。
――大原さんの中で、こうなりたい、という目標はあったんでしょうか。
私、坂本九さんにすごい憧れていて。日本だけじゃなく海外でも誰もが知っている歌謡曲。ご自身が亡くなられたあとでもずっと歌われて残っているというのがすごいと思うんです。自分もそういうふうになりたいというのが昔からもずっとあって。なのでその気持ちは曲げずにずっとやっています。
――では、シンガーソングライターとして曲を作ることへのこだわりはどのようなものがありますか?
自分の言葉以外は使わないというのはあります。たとえば英語の歌詞を書いたりする方もいらっしゃると思うんですけど、私はすごい英語は苦手なので、そういう自分が苦手で分からないようなものを使わないとか、思っていないことは書かないということが一番ですね。『Magic Parede』がデビュー曲で書いていただいた曲なので「Magic Parede」という歌詞があるんですけど、それ以外はほとんどないですね。
――作詞曲を手がけることが多いですが、アニソンシンガーとしてステージに出るようにもなり、楽曲提供をもっと受けたいとか思うことはあるのでしょうか?
今まで2曲楽曲提供をしていただいて、その曲を歌うことによって、自分が学べることもあるんです。自分では作れない世界を開いてくれる、というのは大きくて。
――やはり楽曲提供された曲を歌うときはスイッチの入り方も違ったりしますか?
そうですね。やっぱり自分の言葉を言いながらもちょっと客観的に感じ取りながら歌えるので、スイッチは違う感じはありますね。
――今、憧れているアーティストさんはいらっしゃいますか?
小さい時から聴いていて、今もずっと憧れなのは松任谷由実さんです。あとアニソンとかに携わっていたシンガーソングライターとしては小松未歩さんは憧れですね。『名探偵コナン』の曲が本当に好きで! 小松さんの歌詞って、小さい時に一回見ただけで憶えられるぐらい本当に素敵だし。すごくそれは憧れますね。
――ライブ活動に対する立ち位置や考えもお聞きしたいです。ご自身のなかでライブはどういうポジションにあるのでしょうか?
もともと自分の曲を聴いてほしいって気持ちはあったんですけど、ライブ自体にすごく盛り上げていくぞ! というのはあまりなかったんですよ。最初に一人で活動をしていた時はどちらかというと一方的な感情でライブをしていて。でもアニソンに携わるようになって色んな方のライブとか刺激を受けるようになってからは、どういうふうにパフォーマンスしたら楽しんでもらえるんだろう? というのを考えてやるようになってきたので、最近は自分も楽しんでライブをしていますね。
撮影:福岡諒祠
撮影:福岡諒祠
『はねバド!』の良いところを引き伸ばして、最後まで面白かったなという気持ちになってもらいたかった
――新曲の『ハイステッパー』は今までよりもアッパーな一曲となっていますが、もともとアップテンポな楽曲でいこうというお話だったんでしょうか。
優しい曲で、とかそういう依頼をいただくんですけど、今回は任せていただいて。じゃあ何もないってことで自分の思ったように作ろうと思ったんです。『はねバド』の原作を読んだ時に一番好きなのは試合のシーンで、“全力で熱くぶつかっている女子の試合の格好良さ”が伝えたい部分でもあったので、EDまでそういう『はねバド!』の良いところを引き伸ばして、最後まで面白かったなという気持ちになってもらいたかったので、ハイテンポなBPMの曲になりました。
――OPっぽいかっこよい楽曲ですが、3話に挿入されていたアコースティックバージョンもすごく良かったです。
今回シングルのカップリングには入るんですけど、私の楽曲で連想するのがああいうテイストの曲だと思うんです。自分としては『ハイステッパー』は新しい大原と言いながらも、わりと自分の気持ちが前面に出た楽曲なので、自分らしさはかなり出ているんじゃないかな。
――ブログも拝見しているんですが、いろいろとお仕事の幅も広がっている中で、アーティストとしての大原ゆい子像は理想に近づいているのでしょうか?
そうですね……自分が死んでからも曲があるというのが理想であって、自分が歌うとかじゃなくても全然構わないんです。なので私という存在だけを見て曲の価値を決められたらいやだなと、もっと曲だけ見て、これすごい良い曲だな、大原ゆい子さんが作ったんだ、やっぱりすごいな、と思ってもらえるようになるのが目標です。
――アニソンという世界に足を踏み入れられて今どういう思いがありますか?
すごく楽しいです! みんながどんなふうにこの曲を愛してくれたり作品のことを思い出してくれるんだろうというのがあります。自分としてはスタンダードに良いものを届けられるように頑張りたいなと。
――J-POPとアニソンでいうと、大原さんの立ち位置はどちらが近いと思っていますか?
なんと言われても別に自分は困らないので、アニソンと言われてもJ-POPと言われてもいいんですけど、どっちにも置けない微妙な存在なので、どっちかでちゃんと認められたいなという感じですね、欲深い(笑)。
――他ジャンルから来た人がアニソンの文脈で曲を作っているのが面白いなと思いますね。これからどういう曲を作っていきたいと思っていますか?
自分が作るものは自分らしさが絶対に出るので。でもどんなものにも逆に対応できるような作品づくりはしたいな、というのが一番の気持ちですね。自分が歌っても歌わなくても、アニメに添った面白いことがたくさんできればいいなと思っているので。
――大原ゆい子がすごいのか、大原ゆい子の作った曲がすごいのかって話にもなりそうですね。
人生の一曲に選んでもらえるようになりたいので、どちらかというと私がすごいじゃなくてこの曲が良いみたいなほうが嬉しいかも。
――大原さんのなかでそういう「人生の一曲」を選ぶのであれば?
「見上げてごらん夜の星を」(坂本九のヒット曲)ですかね。小1か小2ぐらいの時に初めて聴いて、それからずっと初めて聴いた時のことを思い出せて、本当にすごい素敵な曲だと思います。
――それこそご自身が大好きと公言されている『ドラえもん』の曲を担当できるくらいまで行きたいところですね。
『ドラえもん』は本当に大好きなので! ご縁あってアニソンシンガーになれたので、いつか『ドラえもん』の歌を歌うことができたら嬉しいです。
――『ドラえもん』のどのあたりに魅力を感じられているのでしょうか?
私、“ドラえもん”自体が好きなんですよ。『ドラえもん』の話も大好きなんですけど、“ドラえもん”の存在が好きで。短足で顔が大きくてだみ声なのがすごい好きで(笑)。
――じゃあ、『ドラえもん』劇中歌のオファーが来たら……?
死にます(笑)。 多分3年ぐらい考えて曲作るんじゃないかな(笑)。
――同じ作品の曲を担当されたり、近いポジションにいるYURiKAさんを意識されるところはありますか?
意識はしないですけど、自分にはない魅力を持っているので尊敬しています。私とYURiKAちゃんは全然違うんです。本当に仲良いんですけど、ジャンルとか人物的にもまったく真逆なので、良い距離感でやっています。ただミュージシャンとしての葛藤みたいなものは持っていないとだめかなと思うときもあります。
――ライバルという意識はやっぱりある。
人物としてはないんですけど、ミュージシャン、一歩置いた曲とかの部分で、一応自分としては全員ライバルなので、基本的には比べないようにはしていますけど。
――意識してるアニソンの人は他にもいらっしゃいますか。
あまりいないですね。逆に普通にシンガーソングライターでも自分と似ていると思う人いないので、周りから見たら似てると思うアーティストの方もいらっしゃるのかもしれませんけど、自分では全然思わないので。
――では最後に今後の活動についてお聞かせください。
去年1年は楽曲を作るということにフォーカスして動いていたので、逆にライブなどで色んな人をどれだけ楽しませることができるか? ってことをやっていきたいなと思います。もっと「楽しかった!!」 と思ってもらえるように頑張ります!
大原ゆい子「ハイステッパー」ミュージックビデオ/TVアニメ『はねバド!』EDテーマ

インタビュー・文:加東岳史 撮影:福岡諒祠

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