Anly アルバム『LOOP』挑戦の1枚を携
え“音楽が生まれる瞬間”を目撃する
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沖縄出身、21歳のシンガーソングライター・Anly が、7月25日、2ndアルバム『LOOP』をリリースした。サウンドも歌詞も、1stアルバム『anly one』とイメージを変えるナンバーが並ぶ今作には、ドキッとさせられたファンも少なくないだろう。そんな変化の理由を、本人に直接インタビュー。進化した音楽性もブレないアイデンティティも、どちらも飾らず話してくれた。
――ニューアルバム『LOOP』は前作『anly one』とは、また雰囲気が違いますね。
1stアルバムは、父の影響でよく聴いていたロックやフォークのバンドサウンドが多かったんですけど、今回はロサンゼルスでセッションレコーディングをしたり、Jeff Miyaharaさん(プロデューサー)と一緒にやらせてもらったりしたので打ち込みもあったり。ロサンゼルスではコロンビア出身で23歳のJuan Ariza(プロデューサー)にお願いしたのですが、その場で机を叩く音やシンバルを叩く音をサンプリングして使っているので、オリジナリティあふれる音が入っていると思います。だからブルーヴ感も1stアルバムとは全然違いますね。すごくチャレンジさせてもらえたなと思います。
――そんな変化のきっかけとは?
Ed Sheeranの影響で、私が高校生くらいから始めたループペダルという装置があって、それで歌を作ったり練習したりしているうちに、リズムにギターのフレーズがのっかって、それがループしているような楽曲を作るようになったんです。あと、歌詞に関しても前よりも変化があって、今回はもっと自分の気持ちにストレートに書くことができたんじゃないかなって……。だからラップとか、気持ちを詰め込んでいるものもありますね。
Anly 撮影=森好弘
――特に5曲目の「Manual」は、校則に対する反発を強い言葉で表していますね。
「Manual」は高校生の時に作った曲です。私は日本とアメリカのクォーターなので髪の毛が茶色いんですよ。で、入学した時に地毛申請をして、毎月生徒指導室で頭を見せて地毛点検っていうのもして……。その度に、このルールって本当に正しいのかな?と思ってたし、アイデンティティを否定されているような気持になったんです。去年、実際に大阪の女子高生が同じ理由で学校を訴えたニュースもありましたよね。実は私、自分だけがそういう気持ちになってるのかな?と、歌いながらも不安があったんです。もちろん信念を持って歌ってはいるんですけど、この気持ちに共感してくれる人っているのかな?って……。でも、やっぱりそういうことがあるんだと知って、この曲をもっと歌っていきたいなと思いました。それに今は、曲を聴いた人が、自分が従っているルールが本当に正しいのかな?と考えるキッカケになってほしいなと思って歌ってます。
――反響も大きかったのでは?
そうですね。この曲を歌っている動画を撮ってSNSで拡散してくださる人がいました。でもいずれは、こういう曲を歌わなくていい世の中になってほしいなとも思います。
Anly 撮影=森好弘
――「Manual」同様に「ENEMY」の詞もパンチ力がありました。《やたら道ですれ違うのはリア充 こんな暑いのになぜ手を繋ぐ?》にはニヤリとしました(笑)。
私も歌うのがちょっと恥ずかしいです(笑)。でも正直に書いてみたというところですね。“正直に、ありのままに”というのが今の私のテーマなんです。
――1曲目の「DREAM ON」も、ちょっとクスッときますね。若い女の子が恋人との未来を夢見て、ほらお金が大事!と言うのかと思いきや……。
お金じゃないです(笑)。お金をたくさん持って、2人の夢をいつか叶えて、こんなことしたいよねというような、そんな今の2人の関係がずっと続いてほしいっていう……。どんなにお金がなくても、今の状況が悪くても良くても、あなたと一緒にいるんだったら上を向いて暮らせるよっていう曲です。
――詞には故郷・沖縄の伊江島に、スタジオを作りたいという一文もありました。この夢は本当ですか?
あ、それ、本当です! 作りたいです。ゆったりとしたなかでなら、どんな曲ができるのかなって思って。絶対に(できる曲は)変わると思いますし、ルーツミュージックがあふれてくるはず。伊江島にスタジオを作って、お父さんとお母さんが隣でカフェをやっていて、疲れたら何か飲みに行こうかな……って、そういう感じになったらいいなって思ってます。
Anly 撮影=森好弘
――伊江島は、以前「IE SOUND JAMBOREE」という野外フェスもあったすてきな所ですよね。
それ、私、行きました! でも台風が多くてフェスができなくなって、結局今はなくなっちゃったんですよ。だから、私が復活させたいと思っているんです。
――それは楽しみ! そして今作にはそんな故郷・沖縄をテーマにした「OKINAWA SUMMER STYLE」も収録。
あの曲で最初に聴こえてくる波の音は、実は伊江島の波の音なんですよ。今回はサウンド面も変わって進化した私を見てもらえると思っているんですけど、やっぱり、伊江島のことは忘れてないよ! 沖縄の人だよって。私自身も、みんなにもそれを忘れてほしくないので、こうやってちょこちょこと沖縄のことを入れています。やっぱり正直に書くと自分のアイデンティティが出てきますよね。
――この曲は沖縄のムードですが、民謡ではなくポップ。ハッピーなムードですね。
私は沖縄の人ではあるけど、世界を目指していきたいので、何と言うか……にじみ出るものを収録していきたいんです。あ、この人、沖縄の人かなと思ってもらえるくらいがいいなって。今回は“ハーイヤ”とか“イーヤ、サッサ”とかのかけ声も入ってはいるんですけど、それも意図的ではなく、自然にそんな感じがするなと思ったから入れたんですよね。
Anly 撮影=森好弘
――にじみでる沖縄人のアイデンティティですね。これもアイデンティティにつながると思いますが、最後の曲「北斗七星」では、Anlyさんが生まれる前に亡くなったお兄さんのことが書かれています。
これは16歳ぐらいの時に作った曲で、ずっと歌っている曲です。一人っ子で寂しいなって思ってた時に、お兄ちゃんが天国にいるんだよって教えてもらって、悲しいというよりも嬉しかったんですよね、私も兄弟がいたんだ!って。それで作ったんですけど、いつでも歌えばお兄ちゃんの存在を感じられるような、家族にとってもそんな曲になったらいいなと思って作ったので、どちらかというと希望を感じられる内容にしようって思ったんです。実は今回のマスタリングが終わった日が、お兄ちゃんの誕生日だったんです。だからお兄ちゃんが、“やってることは間違いじゃないよ、頑張って”と言ってる気がして……。いつもそうなんですよね。お兄ちゃんの誕生日には何かいいことがあるんです。
――運命的ですね。この「北斗七星」や一つ前の曲「Beautiful」は、1曲目「DREAM ON」から続く前半のアッパーな感じと差があって、美しく壮大なイメージ。ボーカルの質感も違います。
歌によって声が変わることは多いので、私とってはどの曲のボーカルも自然ですね。楽に歌うと「DREAM ON」みたいな感じになります。
Anly 撮影=森好弘
――しかも「Beautiful」は、「DREAM ON」や「Manual」の個人の思いとは異なり、俯瞰した大きな世界観の詞です。
どちらかと言うと以前は「Beautiful」みたいな曲をよく書いてたんですけど、周りの人に、もっと半径を縮めた、等身大の曲を書いた方がいいよって言われて。いろんなやり方を試してもいいかなって思ったんです。どちらの書き方も好きだし、今後もたぶん変化していくと思います。
――その方が聴いている方も楽しいですよね。
ずっと短編映画ばかりを観ていると、たまには超大作が観たい!……みたいなことですよね(笑)。
――そうです(笑)。等身大のことを書くためには、日頃メモなどを取っているんですか?
実際に(曲に)使ってはないんですけど(笑)、なんとなく見えてきた景色を書いたりするようなことはしてます。あとは、結構日本のラップを聴いたりしますね。それにラップはトラックがおもしろいんですよ。自分でループペダルを使うようになってから、いろんなグルーヴとかリズムとかを聴くようにしてます。
――なるほど。それは参考になりますね。Anlyさんはこれから先もジャンルにこだわらない幅広い音楽をやっていきそうですよね。
はい。ドア、開け放ってます。なんでも来い!です(笑)。だから聴いてくださる方もドアを開けておいてもらえると嬉しいですね。なんなら、家の中からチラッとのぞくだけでもいいです(笑)。楽しく聴いてもらえればいいです!
Anly 撮影=森好弘
――では最後にツアーのことを。リリースツアーが8月末からスタート。東名阪の公演はバンドセットで、ほかの公演はループペダルを使ったパフォーマンスが軸となるループペダルセットという構成です。
ループペダルセットは15か所です。初日はたぶん勢い余っておもしろくなるだろうし(笑)、またそれを改善していって、もっとおもしろいものになってくだろうし。トラックを重ねるように、自分もライブを重ねて成長できたらいいなと思います。それに、音楽が生まれる瞬間が見られると思うので楽しみにしていてください。バンドセットの方は、できるだけ音源に近い、それ以上のもので届けられたらなって思っています。なので、出来たらどちらも見ていただけるとうれしいですね。ループペダルとバンドでは、全然アレンジが変わってくると思いますよ。両方を見たら、きっと、“え~!”となったあとにまた、“え~!”ってなる(笑)。あと、高校生以下は2000円キャッシュバックの学割があるので、学生さんもぜひ遊びに来てください! 
――楽しみにしています。今日はありがとうございました!
取材・文=服田昌子 撮影=森好弘

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