【V系世代ギャップ】昔と今の“バン
ギャル界”はどう違う? 平成生まれ&
昭和生まれ座談会!

「ヴィジュアル系」というジャンルが誕生してはや四半世紀。では、それ以降に生まれた「平成生まれ」のヴィジュアル系ファン…バンギャルさんは一体どんな風にヴィジュアル系を楽しんでいるのか?漫画家の蟹めんまさん(29)と筆者(34)が根堀り葉堀り聞いてきました。

――本日は「平成生まれ」のバンギャルさんに集まっていただきました。まずはみなさん自己紹介からお願いします。
朝までバンギャル会議! 「Alice Nine」ファン白熱座談会
かえで:かえでです。関西在住20歳の大学生です。バンギャルになったきっかけは、中高で仲の良かった男の子がいたんですね。ほら、男子ってLUNA SEAとかX JAPANを聴き出す時期ってあるみたいじゃないですか。
めんま:うちらの頃はあった気がするけど…今も?
かえで:あるみたいですよ。その男の子は元々B’zや聖飢魔IIみたいな昔からいるバンドも好きな子で。それで「かえではこれ絶対好きだと思う!」とX JAPANのラストライブの映像を見せてくれて。
そこで『Rusty Nail』のギターソロを引くhideちゃんを見て「何!この人!かっこいい!」ってなって。理科室で(笑)。
一同:理科室!
――ちなみに再生メディアは?
かえで:ウォークマンで動画を再生できるものもあるじゃないですか。それで理科室で生物の授業が2限続いてたから休み時間にコッソリ見てたんです(笑)。それがきっかけでその男の子よりも私のほうがX中毒、hideちゃん中毒みたいになっちゃって。「hideちゃんのことが好き」って言ってる最近のバンドマンにも興味を持ったり。それが2010年か11年ですね。
めんま:わかる…。布教された側の方がハマることってありますよね。
元々「ヴィジュアル系」の存在は知っていた?
――ちなみに、今20歳の子の入り口がX JAPANというのが意外に感じました。ちなみに前から「ヴィジュアル系」というジャンルの存在は知っていたんですか?
かえで:the GazettEは普通にTVで流れてたので知ってましたし、そうそう、私が最初にヴィジュアル系のことが気になったのは09年に配布されたタワレコのV系フリーペーパーなんです。このころはRADWIMPSBUMP OF CHICKENばっかり聴いてましたけど、なんとなく気になって持って帰ってたみたいで。
――中高生の頃って音楽は気になったものはなんでもチェックしちゃうと思うんですよ。
かえで:そんな感じでヴィジュアル系を聞くようになって。友達に詳しい子がいたんで、「SHOXX(音楽専科社)」とかも読むようになり、そこに今の本命になってるバンドが載ってたんです。白黒ページなんですけど。それにビビっときて(笑)、今に至る…って感じです。
――雑誌を買っても好きなアーティストの記事しか読まないっていう人も多いじゃないですか。全部読んだんですか?
かえで:なんかこの頃はとりあえずヴィジュアル系についてたくさん知りたかったから、ぜんぜん知らないバンドのインタビュー記事も全部読んでました。
――まだまだ雑誌の影響力って強いことがわかりますね。では次はさき子さん。
さき子:今年22歳で社会人です。きっかけはですねえ、アニメの『DEATH NOTE』の主題歌…の。
一同:ああ~!NIGHTMARE!
さき子:そうです。その時に、中1だったんですよ。はじめて買ったヴィジュアル系のCDはNIGHTMAREの『the WORLD(06年)』です。ちなみにそれまでは普通にHYとか好きでした。あとWaT。
――たしかに私のまわりでもアニメの『DEATH NOTE』からヴィジュアル系に入った若い人、多いです。
さき子:まわりにも結構いるんですけど。でも、当時は「アニソンからの新規はにわか」みたいに思われたくなくて、あんまり周囲には言ってませんでした(笑)。最近は普通に言うようになりましたけど。
――それまではヴィジュアル系に対してどんなイメージを持ってましたか?
さき子:3つ上の兄がJanne Da Arcが好きだったのもあるし、親がXのCD持ってたんです。
――親御さんが?
さき子:私、出身が館山なんですけど、お父さんがXのTOSHIとYOSHIKIと同じ高校だったんです。
一同:!!
さき子:学年はかぶってないんですけど、お父さんとお母さんが一緒に母校の文化祭行ったらToshlが歌ってた、みたいな。
めんま:すごい時代だ…。
さき子:だから元々家にCDもあったりして。親も別に反対することもなく「そうなの」みたいな。誰にも文句を言われず。
漫画から始まったバンギャルの道
めんま:これまでの話を聞いて思ったんですけど、ふたりともXが絡んでるのがすごいですね。
しほ子:私Xの「エ」の字もないんですけど、いいですか(笑)。しほ子です、大学生です。私がヴィジュアル系を聴くようになったきっかけはちょっと不純で、全部姉の影響なんですけど。姉が「少女コミック(小学館)」の読者で(ココで新條まゆ先生の『快感フレーズ』の単行本を取り出す)。
めんま:出た~~~~!私もコレ持ってるよ!
しほ子:だから最初は…Λuciferです。この頃まだ小学校1年生で。歌詞とか漫画の内容の意味も正確にはわかないのに読んでる小学校低学年時代でした。
めんま:やばい。小1で快フレはなかなか刺激が強いですね。
しほ子:そして姉がΛuciferからJanne Da Arcにハマって、一緒になって聴いてました。それで小さい時からそのふたつは聴いてたんですけど、だからといってそこからヴィジュアル系にズッポリわけではなくて紆余曲折…というか、小学校高学年のころはRAG FAIRにハマっていて、そこで若干母を巻き込んでおっかけをしてたんです。
それと平行して当時はお笑いブームということもあって、高校の時はNON STYLEのおっかけをしていました。
かえで:なんか同年代感がすごい(笑)。
しほ子:だから基本的におっかけ体質なんです。中学生の時は仲の良い友達がAlice Nineのファンで、登校中に延々とAlice Nineの話を聞かされてました(笑)。その当時はRAG FAIRのために「アリーナ37℃(音楽専科社)」を買っていて、そこにAlice NineやGACKTさん、MIYAVIさんも載ってて。RAG FAIRの記事を読むついでに「お、いるな」って感じで。友達の庭が近くにあるみたいな。かといってそこでヴィジュアル系にハマるわけではなく。
高校になってからは部活が忙しくておっかけは休んでて、KREVAやRADWIMPSとか聴いてたところに、まったくヴィジュアル系とか関係ない、お笑いが好きな友達に「ニコニコのゴールデンボンバーの動画がおもしろいんだよ」とおすすめされて…。その子はラーメンズのファンだったので、彼らのことは最初芸人だと思ってたんですよ。
――ラーメンズ、ゴールデンボンバー、並べるとたしかにちょっとそれっぽいですね(笑)。
しほ子:ニコニコ動画を初めて見た時に、その時の衝撃がすごくて、「なんなんだこの人たちは!」と『女々しくて』を10連続くらいで再生しました。
「これは素晴らしい」と胸を打たれて、そこからひたすら動画を漁って漁って、ちょうど「また君に番号をきけなかった」のリリース時期だったので、そのCDを買いに行き。高校生の時は部活があってライブには行けなかったんですけど、「メジャー行きま宣言」とかニコニコ動画で観てました。
めんま:懐かしい…。
しほ子:まだその時はチケットの買い方もわからないし、とりあえず家でニコ動を観て号泣して。その後大学に進学していろんな人に出会いインディーズを知り、今はそこににどっぷりという感じです。スタートが王道ではないというか。
――ヴィジュアル系文化の入り口って『快感フレーズ』や『DEATH NOTE』みたいにアニメの影響も大きいんですね。逆にXが入り口になってるのも面白いです。「そういうのは懐古主義なんじゃないかな」という声もあると思うんですが、そこを入り口にしてまた新しい若手バンドを知るっていうのはシーンの循環になっているというか。
かえで:Xのファンってすごく優しいんですよ。はじめてヴィジュアル系を好きになった時に「Xファンの友達を増やしたいな」と思ってアメブロを始めたんです。当時はアメブロが流行っていたので、コミュニティで友達を作ろうと思って。そしたら30代くらいののhideちゃんファンの人と知り合って、その人がすごいかわいがってくれて。「若い子たちに好きになってほしいから受け継いでいってね」ってCDやDVDを譲ってくれたりして。
一同:やさしい~!
かえで:だから「共同体(Xのファンのこと)すごい…」ってなって。
90年代の人気バンドに対するイメージは?
――この10年くらいで、90年代の人気バンドも色々と復活しています。あの時期のバンドに対するイメージってありますか?
さき子:私は黒夢や清春さんが好きです。theGazettEも好きだったので、RUKIが清春さんかっこいいと言ってたのがきっかけです。清春さんが黒夢の曲をセルフカバーしたアルバム(09年の『Melody』)をまず聴き始めたんですけど、その後黒夢復活したし行ってみようかなと、11年の代々木体育館のライブです。それを観て「やばい!」ってなって。でも、黒夢ってライブ終わるの遅いじゃないですか。
当時はまだ館山の実家だったので、終電があったからダブルアンコールが全部聴けなかったんですよ。
――それは悲しい…。
さき子:でも、LUNA SEAや黒夢も好きですけど、もっと昔から好きな人がたくさんいるから、こんな若造が「好き」とか言わないほうがいいのかなあっていう気持ちは少しあります。
――そんな、ウェルカムですよ…。
しほ子:上の世代のお友達もいないし、聴いていたわけでもないですし。一番上でヴィドールとかの世代かな…30前後のお友達がいるくらいで。XやLUNA SEAはTVに写ってるというか。あとはIZAMさん(SHAZNA)、みたいな。私が23歳で一番年上だとは思うんですけど。『金田一少年の事件簿』の主題歌でヴィジュアル系が流れていたイメージがあります。
めんま:Plastic TreeLaputaですね。
――ヴィドールが「上の世代」になるんですね…。
かえで:わたしはXから現代にバーンと飛んでるから中間が無いんですよね。
――今ってテレビにヴィジュアル系が頻繁に出たりしないじゃないですか。みなさんはどこでヴィジュアル系情報を知るんですか。
かえで:私はYouTubeですね。その頃はツイッターもやってなかったし、情報源はほぼYouTubeでした今はTwitterで色んなバンドを知るとかあるんですけど、あとは雑誌の「SHOXX」や「Cure」を読んだり。
――親や周囲の反応は?
かえで:私の親はそこまで(バンギャル活動を)肯定しているわけじゃないので、「バンドのライブばっかり行って~」と今も言われています。親や友達からはお化粧したお兄さんを疑似恋愛的におっかけてるみたいに思われてるから(苦笑)。そうじゃないのに!
肯定してくれるというか、わかってくれるのは、だいたい韓流と他のジャンルのファンだったりしますね。そういう趣味のない子とかは「そんなに同じバンドのライブに行く必要あるの?」と言われたりします。
めんま:そういうところはいつの時代も変わらんね…。
かえで:「超ちがうよ!何言ってんの!」って。
めんま:でも最近は「(ヴィジュアル系)気持ち悪い」って言われないですよね。
――たとえば「男が化粧なんかして」とか私の時代はよく言われたのですが、そういうことは言われますか?
かえで:親は49歳なんですけど、hideちゃんとも同世代だからヴィジュアル系自体には拒否反応はないかも。遠征したりすることに否定的なだけで。妹は女子大なんですけど、やっぱりバンギャルはいるみたいですね。
しほ子:私も女子大なんですけど、たまにライカの袋持って歩いてる人いますからね。
めんま:うらやましいなぁ、私まわりにバンギャルがあんまりいなかったんですよ。
しほ子:高校でも体育祭で創作ダンスの時にアンカフェの「ニャッピ~」というフレーズだけが使われていたり。マラソンのときにずっとJanneが流れてるとか。
めんま:たしかに、校内放送で「この学校にバンギャルいるな」ってわかりますね。
――私は逆にド全盛期だったので、ヴィジュアル系ばっかりかかってたような…。
めんま:私がちょうど小学生くらいの時は、LUNA SEAやSHAZNAが流行ってた時期で、その時は校内でも市民権があったんですけど、そのあと中学生になった時は、「ラルクやGLAYが好きな人と、PIERROTやDir en greyが好きな人は別」という価値観があったんです「J-POPとしてお茶の間人気があるヴィジュアル系と、ガチのヴィジュアル系は別」みたいな。
――へえ!
めんま:ラルク・GLAY派とDir・PIERROT派はあんまり近づかないというか…ぱっくり別れてました。ハタから見るとどちらも「ビジュアル系好きな奴」だったはずなんですけど、当の本人たちは相容れないというか。私は「『浸食 〜lose control〜』がOKなのに『残-ZAN-』が受け入れられないのはなんでだ…?」と思ってました。
――今もそういうのあるんですかね。
かえで:キラキラ系か黒いのが好きかみたいなのはあるのかなあ。
「金爆からヴィジュアル系」は言いづらい?
しほ子:でもインディーズ通い始めのころは「ゴールデンボンバーからヴィジュアル系入った」ってちょっと言いづらかったです。Janneも聴いてたけど、それはそれでまた一般的な感じになるじゃないですか。実際あったんです。「ゴールデンボンバーが好きで~」と話してたら、直後にmixiに「ゴールデンボンバー好きな人とは仲良くなれない」みたいに書かれたり…。
めんま:昔から、爆発的に人気が出たバンドのファンはそういう扱いをされがちでしたよね。分母が多いと無秩序になりやすいというか、ミーハー扱いもされるし、「○○厨」みたいなのがレッテルが生まれてしまって。
しほ子:でもやっぱり好きだから好きって言いたいし、でも円滑な人間関係のために抑えたほうがいいのかな?って。
――しほ子さんがバンギャルになった2010年前後が金爆に対してはそういう摩擦が一番あったかもしれないですね。
かえで:2012年…『僕クエスト』や『女々しくて』の再リリースくらいの時期かな。私もヴィジュアル系にハマった時期に一回ゴールデンボンバーのライブ行きましたし、歌広場のバンギャルの動画を参考にしてヘドバンしたり。
――あれで学ぶんですか?
かえで:わりとあれで学びましたね。
しほ子:基礎はそこで教えてもらったかも。
かえで:「淳子@れいたの嫁」は素晴らしいですよ。
しほ子:あの頃はやっぱり「金爆新規は~」みたいな空気を感じましたね。直接は滅多に言われないにしてもネットをみてるとそんな雰囲気が…。
さき子:でも実は私もちょっと思ってましたね。売れる前は「面白いな」って思ってたんですけど、ブレイクして市民権を得てきたところもあったじゃないですか。テレビにも出るようになって。「ヴィジュアル系エアーバンドです」と紹介されるようになると「あんなのヴィジュアル系じゃない」と思っちゃうようになって(笑)。
しほ子:客層はすごく広がりましたよね。私が最初にライブに行ったのが2011年のCCレモンホール(現・渋谷公会堂)なんですけど、まだ家族連れも少なかったし。次の年以降はこんなシモネタとかいっぱいやるのに家族連れが沢山!みたいな。
会場が大きくなるにつれてファミリーが増えてきて。私も金爆好きですけど、だんだんファミリーが増えてヴィジュアル系というより一般の方が増えていった時に、私も以前は言われる方だったけど、こっちも「(新規ファンが)増えすぎだよな」って思うようになったり…(苦笑)。
――まあ「あるある」ですよね。そこからしほ子さんはインディーズの方に。
しほ子:その時ちょうどRoyzにハマりかけてて。
めんま:一気にコテコテになりましたね。
しほ子:その時にRoyzの動画を色々見て「JOKER」の振り付け動画にすごく惹かれて。
当時仲良くなった友達から「今一番いい感じのバンドがいっぱい出るよ」みたいに誘われて「Stylishwave」へ行ったんです。そこでインディーズのヴィジュアル系の現場を知り…。Royzも誰が好きというよりは曲とノリが楽しいっていう。それでインストに行き、遠征をし、ライカに朝から電話!みたいな生活を…っていう。
バンギャルになった直後に出会う友達ってその後のバンギャル人生を左右しますね。
めんま:それはメチャクチャわかります。
しほ子:今はマイナーなインディーズバンドにはまっていて、そのバンドの関東ライブは絶対に行くみたいな感じになっています。
“バンドへの愛”の発散方法
――さき子さんは最近まで中規模インディーズのヴィジュアル系バンドをおっかけていたそうですが。
さき子:たしかきっかけは最初は雑誌のインタビューを読んで気になって、検索したらメンバーのアメブロがおもしろくて。それで館山から都内に移っていたもあって、高田馬場AREAに通うようになり、対バンのバンドも聴くようになって…。
――なるほど。
めんま:私が中高生の頃って、私の周りだけかもしれませんが、バンドを好きなことを創作でアピールしようみたいな雰囲気があったと思うんです。コスプレしたりミニコミや二次創作したり。最近はそういうのをあまり見なくなったと思うんですが、今の若いバンギャルさんはどこで「バンドが好き」っていう気持ちを発散してるのかなあと。
――そういえばライブ会場でコスプレしてる人もずいぶん減りましたしねえ。
めんま:今のバンギャルが昔のバンギャルよりも熱が低いとは全然思わないんですが、湧き上がるリビドー的なものをどこにぶつけているのか気になります。
かえで:私は完全にTwitterです。いわゆる「ツイ廃」ですから(笑)。寝てる時と授業受けてる時以外はずっとツイッターで「きゃ――!好き!」ってなってます。昨日好きなバンドマンのバースデーライブに超気合入れて行ったんです。それでライブ終わった後も「今日の◯◯が~~だった!!」とかレポを書いて、それを読んで喜んでくれる人もいるし。
しほ子:私それができないんですよね。通ってるのがマイナーというのもあって、メンバーにリプするアカウントも分けてますし。周りに「メン被りがダメ」っていう人が多いので…。でも本当は同じメンバーのファン同士仲良くしたいけど、ダメな人はダメじゃないですか。
ウレぴあ編集部篠崎:すみません、「メン被り」ってなんですか?
――同じメンバーが好きな人同士というか「好きなメンバーが被ってる」状態のことです。アイドルでも「推し被り」とか言うじゃないですか。でも被り無理って人も、本当に私だけのものにしたいっていうわけでもないと思うんです。現実的に考えたら無理じゃないですか。
めんま:「被り(が無理)」っていう概念は昔はあまり聞かなかったですよね。私がメジャーバンドしか知らなかったのもあるかもしれませんが…。
――LUNA SEAなら「○○スレ(SLAVE)です」とかDirなら「◯◯虜です」とか、メンバーごとのファンで集まっている空気すらあったような…。だから正直30代の私自身は「被り無理」を実感したことがないのでわからないところもあります。
かえで:今私が通ってるバンドはそういう空気があるかもしれない。私ボーカルファンなんですけど、友達もボーカルのファンの人が一番多いです。自分が行けないライブのレポをしてくれたり、ツアー中のMCの流れとかも共有できるじゃないですか。「昨日はこういうこと言ってたけど今日はこんなこと言ってたんだ~」みたいな。
しほ子:私もそういうのが本当はしたいんですよ…。
――こればっかりはバンドのカラーや規模の問題ですからね。
しほ子:違うメンバーのファンとライブを観ていても、同じライブでもみてる方向が結構違うじゃないですか。だから同じメンバーのファン同士で共有したいっていうのはあります。
さき子:私はまったく逆のタイプのバンギャルでした。
――そういう人の意見も聞きたいんですよ。「メン被り無理」って言う人はどうしても批判されやすいじゃないですか。
さき子:そうなんですけど~。
めんま:実は私も、出待ちとかができる規模のマイナーバンドを追いかけていたころは、メン被りが無理だったので気持ちはよくわかります。
「メン被り=出待ちのライバル」だったんですよ。ただ「イヤだ」って気持ちを露骨に出したら、友達からは嫌われるだろうし、メンバーからは「めんどくさいファンだな」って思われるのがわかっていたので、ひた隠しにしていました。…隠しきれていたかどうかは怪しいですが…。
さき子:私もthe GazettEやNIGHTMAREあたりは別に全然かぶってるの大丈夫なんですけど、インディーズバンドに通ってた頃は自分の好きなメンバーのファンの友達は一人もいませんでした。さっきおふたりが話してたような、所謂メン被りしている人と好きなメンバーの話をしたい、共有したい、っていう感覚が当時わたしには全然わからなかったですね。
めんま:応援の仕方が違うというか、宗派の違い?その人を独占したいとか恋愛目線でジェラシーっていうわけでもなくて。そういう人もいるかもしれないけど。
――もう概念ですね。
めんま:多分宗派の問題です。ただ、さっきしほ子さんも言っていたように「メン被りイヤを露骨に出すと周りとギスギスするし、バンドにも迷惑がかかるので隠してるけど、実は苦手」っていう「隠れメン被り無理層」は結構いるんじゃないかという気もします。
ヴィジュアル系は最高の文化!
――そろそろ関西在住かえでさんの新幹線の時間が迫っているので(笑)、この辺でお開きにしたいのですが、最後に皆さん何か一言お願いします。
さき子:今日はいろんなお話が聞けて楽しかったです!同世代でも、バンギャルになったきっかけや歴史ってやっぱり人それぞれなんですね。個人的には90年代とか、それこそ黒夢やLUNA SEAが流行っていた時代の話ももっと聞いてみたいなと思ったので、いつかそんな企画があったらまた呼んでください(笑)。今日はありがとうございました。
かえで:私はゴールデンボンバーのおかげでヴィジュアル系の間口は広がったと思うし、ファン人口も増えたと思うんです。ヴィジュアル系は多種多様なんで、みんな好きなものを探して聴いたらいいですよ!V系は最高の文化ですから!
しほ子:良くも悪くも近いし色んなメディアが近くになるからいい意味で距離感がないというか。
かえで:ネットがあるからね。
しほ子:動画もあるし地方でもツイキャスをやれば、声も聞けるし
かえで:今はツイキャス流行ってるしね。
しほ子:すごく距離は縮めてくれるじゃないですか。近いですよね。それが悪く取られることもあるけど。
――それでバンドマンにカリスマ性がなくなった…とかは言われてますね。
しほ子:でもそのおかげで知れる機会も増えてると思うんですよ。「日常が見える」というのが大きいし、ありがたいと思うんです。
かえで:メンバーがツイートしてくれてることで「生きてる!」みたいに思うし…。
しほ子:それで感情移入しやすいというか。バンドマンを神様みたいに褒めてたたえることはあんまりないですけど、だからこその魅力も多くて、楽しいです。メディア…ありがとうって感じです。
めんま:われわれ世代は「ネットが無い頃のバンドの方がカリスマ性があった」と言いがちですけど、あまり若い子は気にしないでほしいです。もちろん昔のバンドにレジェンド的なバンドが多いのは確かですけど、“ネットが無くて見る機会が貴重だった”というのを“カリスマ性があった”と混同しているフシがある気がします。
――ネットによってファン側が発信できるようになったことも大きいでしょうし。
めんま:あと今はネットができたことでバンドとの距離が近くなった分、嘘や噂も簡単に広められるし、バンバン収集できちゃうんですよ。バンド側も人気というか信用を維持するのがすごく大変だし、バンギャル側もバンドを信じてついて行くのが大変だと思います。だから単純に「近くなった」というわけでもないと思うんです。
距離が近い分、その間の障害はデカくなったというか、ファンとバンドの絆が試される試練が多すぎて。だからどうか引き裂かれないで欲しいと思っています。他人事のような言い方ですが…
――大変なことも多いけど、悪いことばかりでもないんですよね。
めんま:ただ知識を得ることにお金がかからなくなったのはネットの恩恵です。これは手放しに喜べますよ。昔は音源試聴ができないから、お金も音源を貸し借りできる友達もいないと、曲は一切聴けなかったんです。バンドを好きになれる機会が圧倒的に少なかったんですよ。
――情報格差というか。それに交通費も安くなりましたからね。
かえで:高速バスやぷらこだ(ぷらっとこだま)を使えば安く行けますからね。人気の高速バスでも平日は取りやすいし。しかも席も3列だし…。あ!もう行かなきゃ…。
一同:気をつけて帰ってね!
『バンギャルちゃんの挑戦』
著:蟹めんま
定価:本体1000円+税
発行:株式会社KADOKAWA
蟹めんまさんの新作コミック『バンギャルちゃんの挑戦』も好評発売中です!

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