【動画あり】伊礼彼方がスタクラフェ
スに参戦!「邪道を進んできた僕が、
王道のあの曲を歌います」~『STAND
UP! CLASSIC FESTIVAL 2018』<Wha
t’s “スタクラフェス”?>

<What’ s “スタクラ フェス”?>Artist Close-Up 伊礼彼方

2018年9月23日(日・祝)の横浜・赤レンガパークに若手実力派アーティストが集結し、3つの野外ステージで1日中さまざまなクラシック音楽を奏でる『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2018』(以下スタクラフェス)。そのプログラムのひとつである「クラシック音楽歌合戦!オペラからミュージカルへ」に、『ジャージー・ボーイズ』『レ・ミゼラブル』と大作への抜擢が続く伊礼彼方が参戦する。出演を決めた裏にあった、伊礼の“心境の変化”とは――。
王道を行きたい自分を受け入れる
――まずは、スタクラフェスへの出演オファーがきた時の率直なお気持ちからお聞かせいただければと思います。
あぁなんか……間違いなのかなぁと(笑)。クラシック音楽を聴くことはありますし、ミュージカルをやるなかで、弦楽器や管楽器の音を生で聴いて興味を持つようにはなりましたけど、クラシックと名の付く公演に出てきてはいないですからね。でもよく聞いたらミュージカル部門での参加ということで、間違いじゃなかったんだと(笑)。生の音が重なった時の音圧ってやっぱり感動的ですし、こういう素敵なフェスティバルの、しかも1回目に呼んでいただけてとても光栄だと思いました。
――『ジャージー・ボーイズ』東京公演(9月7日~10月3日)の真っ最中、というお忙しい時期にもかかわらずオファーを受けた決め手というのは?
最近ちょっと、心境の変化がありまして。僕は音楽(バンド)からこの世界に入りましたけど、今では芝居のほうが好きで、ミュージカルの歌も芝居だと思って歌ってるんですね。だからコンサートで歌だけを歌うっていうのは、なんだか軽々しいような気がして、積極的にはやってこなかったんです​。でも最近になって、例えば自分には演じられない役の歌を歌ったりするのに、コンサートはいい機会だと思うようになった。そんなことを思い始めたタイミングでお話をいただいて、ちょうど『ジャージー・ボーイズ』も僕が出演しない日だったので(笑)、ぜひやらせてもらいたいと思いました。応援してくださる方は、「芝居もいいけど歌だけも聴きたい」とずっと熱望してくださっていて、「いつかね!」って言いながら10何年経ってるわけですけど(笑)、その“いつか”がやっと、徐々に始まるという感じですね。
――その“心境の変化”は何がきっかけで……?
僕には昔から、どこかで「王道はカッコ悪い」と思ってるところがあって、カッコ悪いっていうと語弊がありますが、照れくさいというか自分の任じゃないというか。ミュージカル界でもどちらかというと邪道のほうを進んできたんですね。それにもともとパンク音楽が好きで、反骨精神みたいなものも身についちゃってるものだから、演劇界の色々な事情に対する反発心もありました。でも40歳という年齢が見えてきて、王道ミュージカルの曲を歌いたい自分を受け入れられるようになりましたし、「出れねー作品の歌なんか歌わねーよ!」なんて言ってないで(笑)、歌いたい曲を素直に歌えばいいんだって思えるようになったんです。僕もようやく大人になった、ってことですかね(笑)。
佐藤バルジャンと早くも対決⁉
――ソロ曲として、『エリザベート』の「最後のダンス」を選ばれた理由を教えてください。
『エリザベート』から何か1曲、というリクエストがありまして、共演者の方々が歌わなそうな、ドラムが鳴り響くリズミカルな曲は何かと考えてこれを選びました。歌ったことはないですけど、ルドルフ役で出演していた時、楽屋でモニターを見ながらよく一緒に口ずさんでいた馴染みのある曲ですし、家に譜面があってすぐに練習に取り掛かれるから、皆さんにご迷惑をおかけすることもないだろうと。あとは、(共演者である)LE VELVETSの皆さんに対抗するにはこういう色気が必要な曲じゃないとな、っていうのもありました(笑)。
――LE VELVETSの佐藤隆紀さんとは、来年の『レ・ミゼラブル』でバルジャン役とジャベール役として“直接対決”もされますね。
そうですね、負けてらんないです(笑)。初共演なのでとても楽しみです。まだ稽古が始まってない9月の段階で、バルジャンとジャベールとして歌うのは難しいですけど、せっかくだからMCでもいいから『レ・ミゼ』には触れたいですし、共演者の皆さんと一緒に何か歌えたらいいですよね。まだ決定ではないですけど、クラシックとミュージカルのコラボ曲はある予定で、もしかしたら僕がクラシックの歌手の方とミュージカルの歌をデュエットすることもあるかもしれないです。
――クラシックの方と歌うとなると、やはりそれなりの心構えが必要なものですか?
畑が違いますから、どう合わせればいいんでしょうっていうのはありますね。僕自身も何が違うのか厳密にはよくわからないですが、基本的にミュージカルはマイクで歌うっていうのが前提で、クラシックの方はマイクを使わない歌唱法。喉を後ろに持っていくとクラシックっぽい感じ、前に持ってくるとミュージカルの発声になるのは分かるんですけど、僕は後ろの状態でハイトーンは出せないですし、逆にLE VELVETSの宮原(浩暢)さんは『グランドホテル』で同じ役を演じた時、前に持ってくるのに試行錯誤されてたような記憶があります。個人的な意見ですが、クラシックの歌い方は、音楽としてはもちろん素敵なんだけどそのままの歌唱法でミュージカルをやってしまうと、芝居歌としての表現がまた違うので、そのスイッチが押せるかどうかが、ミュージカルで歌う時の技術だと僕は思っています。
ベースにあるのは、結局音楽
――スタクラフェスの出演者のなかで、特に気になっている方はいますか?
実は「世界まるごとクラシック」に出演される宮本笑里さんが、僕が路上ライブをやってた頃にたまたま通りかかって何回か見てくれているんですよ。後々デビューされた時、「あ、あの時の彼女だ!」って思って、いつか共演できたらなあと思ってました。ヴァイオリンケースを抱えて路上に立っている姿を思い出します。もう15年近くも前の話だから、彼女が覚えているかどうかは分からないですけど(笑)、今回こうやって、共演ではないにしても同じステージに立ててうれしいです。長い路上ライブ生活のあと、僕も屋根のあるところで歌えるようになったのに、今回また野外っていうところがまた面白いなと(笑)。
――そう考えると、ほかの皆さんにとっては珍しい経験であろう野外ステージは、伊礼さんにとっては“ホーム”なんですね。
……まあそうですね、路上は二度と戻りたくはないホームですけど(笑)。雨の日も雪の日も路上で歌って、ライブのチケットも全然売れなかったあの頃のことは、今思い出してもやっぱり苦痛。芝居という新しい道が開けた時、音楽はもう諦めよう、コンサートもやらないことにしようと決めたのは、あの頃には戻りたくないって気持ちがあったからでもあると思います。でもやっぱり、つらくても路上ライブを続けられたのは音楽が好きだったからだし、今でも音楽を聴くとすごく興奮する自分がいる。なんだかんだ言っても結局、僕のベースには音楽があるんでしょうね。さっきの“王道を行きたくなった自分を受け入れる”って話じゃないですけど、音楽が好きな自分も、そろそろ解放してあげる時期なのかもしれません。こういう野外ステージは雰囲気も解放的だし、廻り合わせを感じています。​
――今回のスタクラフェスは色々な意味で、転機のさなかにいる伊礼さんが観られる公演になりそうですね。最後に開催地である横浜について、小さい頃に住んでいらした伊礼さんから、オススメの楽しみ方などをご紹介いただければと思います。
僕が育ったのは赤レンガ倉庫みたいに素敵な横浜じゃなくて(笑)、鶴見区っていう川崎寄りのところなんですよ。だから、本当は赤レンガでデートしたいのに「赤レンガなんか!」って突っぱねちゃってたっていう、また王道への反発の話になっちゃうんですけど(笑)。僕が知ってるあの界隈の楽しみ方って言ったら、ディナークルーズくらいかな。僕は気持ち悪くなっちゃって、結局降りてから普通に牛丼を食べることになったんですけど(笑)、すごく素敵なので船酔いしない方にはオススメです。僕も今回の出演を機に、赤レンガに憧れる自分を素直に受け入れて、新たな楽しみ方を見つけたいですね(笑)。
【動画】伊礼彼方さんよりメッセージ
取材・文=町田麻子  写真撮影=山本れお

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