旅育のプロに聞く!なぜ「可愛いベビ
ー&キッズには旅をさせよ」なのか【
実践編】

旅を通じ子どもの成長を促す注目の育児メソッド「旅育」。とはいえ子連れ旅には不安を覚えるのも正直なところです。自らも3人のお子さんと世界を飛び回る、旅行会社「たびえもん」代表・木舟周作さん&雅代さんご夫妻に「0歳からの家族旅行」のススメを聞きました!

旅を通じ子どもの成長を促す注目の育児メソッド「旅育」。とはいえ子連れ旅には不安を覚えるのも正直なところです。
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自らも3人のお子さんと世界を飛び回る、旅行会社「たびえもん」代表・木舟周作さん&雅代さんご夫妻に「0歳からの家族旅行」のススメを聞きました!
いざ「旅育」へ!目的地は?子どもの年齢別の対応は?etc...質問すべて答えます株式会社たびえもん代表で旅育プランナーでもある木舟周作さんは、度々マスコミや講演会等に登場され『海外旅行で子供は育つ!! (子供の人生を豊かにする“旅育"のススメ)』(イカロス出版)を出版するなど「旅育」の専門家でいらっしゃいます。
ご自身もこれまで五大陸およそ70カ国を訪れ、ご結婚後は共同経営者でもあるパートナーの雅代さんと3人のお子さんと、すでに10カ国・地域以上を回られたとか。
インタビュー前編では【イントロ編】として「旅育」のメリットについてお伺いしましたが、では実際に「旅育」を実践するとして、具体的にはどのように進めたらよいのでしょうか。
――まず旅先には、どんなところを選んだらよいのでしょう?オススメの国・地域があれば教えてください。
木舟周作さん(以下、周作):「どこへ行けばいいですか」というのは、よく聞かれる質問なんですけど、必ずお答えしているのが、「ママ、パパの行きたいところに行くのが一番ですよ」ということです。
特に0歳や1歳であれば、子どもの意志も逆にありませんから(笑)子どもに合わせよう合わせようと考える必要はありません。
ママやパパが普段、育児や仕事でいそがしいので、リフレッシュのための旅行、子どもも家族なのでもちろん一緒には行くんですけど、まずは“親のため”の旅行でまったく構わないと思います。
「どうぞ、好きなところへ行ってください」ということですね(笑)
木舟雅代さん(以下、雅代):だってママが楽しくてリフレッシュできて、笑顔でいれば、それが子どもにとっていいことじゃないですか(笑)
周作:ただ行き先によって、注意点というのは異なります。ビーチリゾートに行くのか、アジアの雑踏に行くのか、ヨーロッパの街に行くのかによって注意すべきポイントは違うので、それぞれ事前に確認しておけばよいと思います。僕たち「たびえもん」でも目的地に応じたアドバイスをしています。
――ちなみに木舟家では、どんな風に旅先を選んでいるんですか。
周作:我が家は旅行会社の仕事をしているということもあって、仕事に役立てるという意味でも、いろんなところに足を運ぶようにはしています。
もちろん、ハワイが大好きで毎回ハワイに行くという方もいらっしゃいますよね。それもそれで素敵なことだと思いますよ。
親としての自分ということでいえば、子どもになるべく、いろんな文化圏を見せたいという思いが強くあって。
例えば“欧米”と一括りにしても実はヨーロッパとアメリカって全然違ったりとか、同じ“アジア”でもいろんな国・地域があって、シンガポールなどは日本よりむしろ先進国なところがあったりとか。テレビのニュースで見たり、学校の授業で習った話と、自分の目でみたら印象がまるで変わったりとか。
「百聞は一見に如かず」というのは自分自身でも、大学生の頃に行ってみて初めて分かったことだったので、そんな体験を増やしてあげられたら。それをどう理解して吸収するのかは子ども次第ですが。
――いま「どう理解して吸収するのかは子ども次第」というお話がありましたが、木舟家にも3人お子さんがいらっしゃいますよね。連れてゆく年齢や兄弟構成によって、旅の内容や「旅育」としての取り組み方に、違いのようなものは出るのでしょうか。
周作:年齢に応じて、それぞれ段階のようなものはありますね。
まず0~1歳の時は・・・荷物みたいなもんで(笑)
――前回の【イントロ編】で教えていただいた、生きる力=「非認知能力」を育てるという側面があるとはいえ、子どもが赤ちゃんのうちは大人がメインの旅行になりますよね(笑)
いわゆる、物心がつく年齢になると如何でしょうか。
2歳~&小学生~の旅育
ベビーからキッズへ!未就学児の「旅育」
周作:物心がつくといわれる3~4歳、それよりちょっと早い2歳にもなると、そこが「日本じゃない」ということは分かるようです。
国の概念はないにしても、周りの人が話している言葉が自分の知っている言葉ではないということは分かるから、その反応が面白いですよ。
そこで暮らしている人の外見が自分の知っているものとはまるで異なることに驚いたりもします。「なんでこの人は真っ黒なの?」なんて、親からするとドキッとするようなことを聞かれたりだとか。
雅代:2歳、3歳になると「楽しかったね」だとか「おいしかったね」だとか、帰ってきてからそんな会話もできるようになりますね。
周作:印象に残っているのは、うちの上の子が4歳くらいの時にドバイに行ったんですね。それでメトロに乗っていて、アナウンスがアラビア語と英語の2言語で流れるんですが、それが2種類の言葉で放送されていることは理解していたんですよ。
英語なんて分からないし、アラビア語ももちろん分からないんですけど、どっちも日本語ではない言葉が2つ流れている、それは4歳の子どもにも理解できるものなんですね。
言語ということでいえば、その旅行の時に家族でショッピングセンターへも行きまして、そこの休憩スペースで自然とほかの子どもたちと我が家の長男・長女が遊んでいたなんてこともありました。
相手のお子さんの話しているのは英語でもなくて、どこの国の言葉かも分からなかったんですけど、テーブルと椅子を並べて電車ごっこをしていて、誰が先頭になるかで大ゲンカ(笑)
お互いがお互いで言葉は分からないけれど、コミュニケーションは取れている。あちらのお子さんも男の子と女の子で、全員が「電車」という設定にしていることは理解していて、そのうえできちんと言い争っているというのが、すごい興味深かったですね。
小学校に上がった今となっては、むしろ逆に、そこまでのコミュニケーションはできづらくなっているようですけど。
小学生になってからの「旅育」
雅代:小学校に上がる程度の年齢になると、なかなか自分からは行かなくなっちゃいますね。
テレているとかではなくて、言葉が通じないから、最初からコミュニケーションを取らない。大人と一緒で「前提」ができちゃうから、小さな頃のようにはいかない、というのはあります。
例えばイギリスに出かけた時にはホームステイをしたんですけど、その頃には長男も「前提」ができちゃっているので、ホストファミリーといっぱい話したりはしませんでした。でも帰国後、家でよく話題にしていて「すごくよくしてもらった」という気持ちはコミュニケーションとしてきちんと伝わっている、汲むべきところはちゃんと汲んでいるんですよね。
周作:この段階になってくると逆に「字が読める」というのは大きくて、旅行前にガイドブックを買って一緒に読んだりして。情報を子ども自身でキャッチできるようになる。
雅代:オススメとしては、細かい字で細かく書いてあるタイプのガイドブックじゃなくって、ビジュアル重視の大判のものを買って渡して、広げて、一緒に予習してみる。
周作:子どもが1年生か6年生かによっても変わりますけど、肌の色が違うとか人種が違うとか食べているものが違うとか、さまざまな違いを最初から理解できるようになるので、それはそれで違う楽しみ方になるということでしょうね。帰国してからも行ったことのある国や地域への関心は高いので、授業やニュースなどでも積極的に注意を向けるようになるようです。
そしてここまで来れば、どこへ行くかとか、現地でのスケジュールとか、家族会議をしたり、子どもに決めてもらったりもできるようになってきます。
――それもまた新たな「旅育」のステージですね!
子どもにプランを立ててもらおう
名プランナーは小学生?家族会議は大紛糾!
雅代:旅先や現地でのスケジュールについては、家族会議をするんですけど・・・それは「旅育」ということももちろんありますが、そうしないと、だんだん収まらなくなってくるので(笑)
周作:大まかなところは一応、大人がある程度決めますけど、でも例えば現地で4日間くらい時間があるとしたら、1日ずつ行きたいところを提案してもらったりします。
で、結構ケンカになります(笑)
妻は、博物館とか美術館とか行きたいタイプで・・・でも、子どもたちは行きたくない。
雅代:ふざけんな!とかなるんですよ(笑)
周作:ミュージアム系は、お好きなお子さんならともかく、半日が限度ですよね。
雅代:美術館好きのママは、家族に付き合ってもらう代わりの何かを用意する必要がありますね。アメをいっぱいカバンに入れておいて、子どもが飽きてきたら「ハイ!」って口に入れて。順路の途中にカフェがあるところなら「ほら!カフェあるから!パパとジュース飲んでて!」と座らせて、自分だけ走って見に行くみたいな(笑)
ところがそんなミュージアムが好きな自分が、子どものリクエストがあればプールとかにも行くワケですよ・・・外国の、クネクネの、激しいウォータースライダーを「滑りたい!お母さん、競争だよ!3、2、1、ゴー!」と言われれば「アー!」って・・・悲鳴をあげながら一緒に滑りました。
独身時代なら絶対に行かなかったようなところへ足を運ぶようになる「子連れ」の旅は、ママにとっても未知への挑戦、なところがあるのかもしれません(笑)
周作:いま妻が話したのはシンガポールのプールなんですが、その日のプランは小学生の長男に任せたんです。そうしたら「このプールに行きたい!」と。
行き方も考えてみてって言ったら、そこへ行くには橋を渡る必要があってモノレールも走っているんですけど、行きはモノレールで、帰りは歩くというプランにしてくれました(笑)
――プランとしては完成されているのかもしれませんが、親としては、逆の方がうれしくないですか。水遊びして疲れた子どもたちと、徒歩で帰ってくるのはちょっとキツイような・・・
周作:僕も、普通は逆じゃないのかなって思ったんですけど(笑)
雅代:水で重くなった荷物を、引きずりながら帰りました(笑)
周作:でも夕暮れ時、その橋を歩きながら帰ってくるというのも、結果的に悪くなかったですね。
雅代:すっごく、キレイだったよね。
――素晴らしいプランナーだったということですね!
雅代:学校の社会科見学などでもすることだと思いますが、子どもも大きくなってくると、現地の地下鉄の地図を見ながら、どういう風に乗り換えたらいいか、どのあたりが日本の地下鉄と似ていて、どのあたりが違うのか、そういったことも考えられるようになるので、それもまた「旅育」になるんです。
周作:ご兄弟がいて、年齢差があったら、それぞれが家族会議でプレゼンする。家族で話し合ってプランを決める。そういうプロセスも「旅育」の一環と言えるかもしれません。
雅代:私の話なんて、誰も聞いてない感じですけどね・・・美術館とかいくら言っても、誰も聞いてくれない。下の子が大きくなってきたら、発言権争いもますます大変になりそうですし。
周作:でも例えば妻に3カ所巡りたいところがあったとして、そのうちの1カ所くらいは行けるように、なるべくフォローはしているつもりですけど(笑)
――「旅育」には0歳~小学生まで、子どもの成長に沿ったひとつひとつの段階、楽しみがあるのですね!
とはいえご家庭によっては、ママは行きたいけれどパパが反対して踏み出せないケースもあると聞きます。家族会議ならぬ「夫婦会議」が必要な場合もあるかと思いますが、うまく「旅育」をスタートできるコツのようなものはありますか。
雅代:我が家は【イントロ編】でお話したように、ママが反対する側でしたが(笑)
周作:ご夫婦のどちらか、とりわけパパが反対するというのは、よく聞きますよ。
夫婦会議でのパートナー説得術?
パパをどう説得する?夫婦で「旅育」を始めるために周作:僕たち「たびえもん」では、ハネムーンの手配もさせていただいているんですけど、女性の方がリードしているケースが多くて。
「私はヨーロッパも結構行っていて英語もしゃべれるんですけど、彼は・・・」
というカップルも少なくない。そうするとその後お子さんを授かっても、海外ではパパは絶対に主導権を握れません。
なので「旅育」にしても、男のプライドはうまく守ってあげられるような、かつ乗っかってきやすいようなプランを考えるのがいいかもしれません。
――乗っかってきやすいようなプラン、ですか。
周作:例えば「たびえもん」でご相談に応じた際にご提案しているのは、行き渋っているパートナーがサッカー好きなら現地で必ずサッカー観戦を組み込むとか。あるいは野球ファンならアメリカでメジャーリーグを観にゆくとか。何かポイントをひとつ入れると、重い腰が上がりやすくなるかもしれません。
お子さんがある程度大きければ、父と子で趣味を語り合う機会にもなりますから。
雅代:あるいは海外ではなく、日帰りの温泉旅行とかでもいいので、スモールステップを踏んでいくのもいいのかもしれません。
女性の方が旅好きというデータもあるそうで、女の人は旅先で「分からないことがあったら聞けばいいじゃん」と、むしろ分からないことを楽しめちゃうところがあるらしいんですけど。
一説によると男性はとっても縄張り意識が強いので、知らないところへ行って、道とかがよく分からない状況に対して、不安を強く持つらしいんです。見知っているところじゃないと怖い、弱い立場になってしまうことが本能的にイヤだと。
であれば、いきなり言葉の通じない外国とかじゃなくて、国内から。
周作:沖縄とか?
雅代:隣町の温泉とかでもいいので、徐々に慣らしていったらいいのではないでしょうか。
周作:また、食べ物の合う合わないを気にする方もいらっしゃいますが、前回の【イントロ編】でも触れたとおり、例えばアジアなら日本のコンビニもずいぶん進出していますから、いざとなったらおにぎりでもお寿司でも、コンビニで買って食べられます。うちの子も「お寿司だーっ」なんてコンビニに走ってゆくことがありますよ(笑)
雅代:そうはいっても海外旅行には、必ずトラブルとか、思い通りにいかないことがあります。こんなことを言うとちょっと尻込みさせちゃうかもしれませんが、でも、それをできるだけ避ける方法も、またピンチをチャンスにできることもあるのではないでしょうか。
「旅育」流トラブルの捉え方
家族でトラブルを回避するには?そして「旅育」最大のメリットとは?雅代:木舟家の海外旅行最大のピンチは・・・香港でした。
空港に降り立ったら、とっぷり夕暮れていたんですね。それで香港の空港から市街地まで出るのって、地下鉄とかバスとかいろいろ手段があるんですけど、値段が高いからという理由でローカルのバスに乗ったら、思っていたのと全然違うところに連れてゆかれて降ろされちゃって・・・
「香港ってネオンがギラギラしているイメージなんですけど、でもアレレ?ここ暗いんですけど?誰も、いないんですけど?」
みたいな感じで、ポツーンッと、・・・あの時ほど「ヤバい!」と思ったことはないですね。一人旅ならそれなりに笑える状況ですけど、家族全員で暗闇に立ち尽くしていて「いま全然笑えなーい」って思って。
周作:結果として方向は間違ってなくて、ちょっと歩いたら地下鉄の駅などもあって大丈夫だったんですけど。
雅代:あとになって考えてみたら、香港空港から市内まで直通の特急に、お金のことはグチャグチャ言わないで素直に乗っちゃえばよかったんです。トラブルの多くはそういう、なんかワケ分かんないことをしようとすると起こるんです。
子連れの時は「余裕」をお金で買おうって、それ以来思うようになりました。コレ、すごく大事だと思います。
――それは海外旅行に限らず、日本で通常の子育てをしていても言えることかもしれません。「節約しなくちゃ!」「無駄なくこなさなくちゃ!」のために頑張りすぎない、というか。
周作:日本は子育てにしても何にしても、社会全体で「予定調和」を求めるところがありますよね、電車もすごく正確だし。だからその中で、きちんきちんと過ごしてゆくようなところがありますけど。
トラブルがあると、家族旅行中ならなおさら、みんなで「どうしよう」と知恵を絞ります。チームプレーになるんです。
雅代:良くも悪くも「予定調和」のない場所で、家族の結束が高まります。
「旅育」にはたくさんのオススメしたい理由がありますけれども、もしかしたら家族の結束や、みんなで過ごしたかけがえのない時間が、一番のお土産なのかもしれません。
周作:そして「旅育」が拡がってゆくなかで、たくましい子どもたちが育っていって・・・日本がもっともっと元気になったらいいな、と願っています。
まとめ「旅育」について今回、株式会社たびえもんの木舟ご夫妻に前後編にわたり【イントロ編】【実践編】とお伺いしてきました。0歳からの旅にも教育効果がある!ママが笑顔になることが大切!そして家族のチームプレー!子どもにも家族にも、内向きになっているといわれる社会にもパワーを与えてくれそうな「旅育」、これからますます大きなムーブメントになりそうです。
ハピママ*でも引き続き「旅育」に関わるトピックスを発信してゆきます。どうぞご期待ください!
【取材協力】株式会社たびえもん 木舟周作さん・雅代さんご夫妻
「旅の力でみんなの夢をかなえる会社」として2012年4月、株式会社たびえもんをスタート。創業理念として「旅育」を掲げ、メディアや講演を通じて旅の楽しさと「旅育」を発信中。周作氏の著書に『海外旅行で子供は育つ!! (子供の人生を豊かにする“旅育"のススメ)』(イカロス出版)がある。

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