gibkiy gibkiy gibkiy 初の全国ワン
マンツアーを前に、現在のバンドのモ
ードと未来の展望を語る

kazuma(Vo)、aie(Gt)、kazu(Ba)、sakura(Dr)からなるgibkiy gibkiy gibkiyが今秋、初の全国ワンマンツアー『scar』を開催する。二度に渡る全国カップリングツアーを経て、満を持してのワンマンツアーに向けて、現在のバンドのモードと未来の展望をメンバー4人に訊いた。
――昨年(2017年)は夏に2ndアルバム『In incontinence』を発表してから対バンツアー、今年も2月からMerry Go Round Respects、6月にはHOLLOWGRAMとカップリングツアーを行ってきましたが、一連の流れはいつ頃に決められていたんでしょう?
sakura:去年の秋から暮れくらいですかね。アルバムを引っ提げてツアーを廻っている最中に、“来年はどうしようか?”っていう話し合いが持たれたんです。で、aieとkazuから“ワンマンツアーはどうでしょう?”と提案されたんで、“あ、いいじゃない”と。
aie:HOLLOWGRAMと全国5都市6公演、60分で魅せるステージをやるんだったら、年内に同じ箇所で120分のステージもやりたいなぁと思ったんですよね。ツーマンも面白いけれど、できれば1日の思い出を我々だけで刻みたい。今までワンマンは東京と名古屋でしかやれてなかったから、そんなワガママがあったんです。
kazuma:最初、ワンマンだとは僕、思ってなかったんですけどね。“次、誰と回るの?”って聞いたら、“いや、ワンマンですよ”って言われて。“あ、わかりました!”って、前回のツアー中に知りました。
――なんで皆さん、kazumaさんにだけ黙っていたんですか?
aie:黙ってはいないです! ちゃんと4人で話した日はありますから!! ただ、そのときkazumaさんの中でワンマンっていうのが、そんなに大事なトピックスじゃなかったんですよ。きっと。
sakura:そのへんは、まぁ、kazumaなりのボンヤリさ加減で。それでも僕らが提示したものに対して、kazumaは残さず食べてくれますからね。それがツーマンだろうとワンマンだろうと、フラットな状態で“わかった、やるよ”って言ってくれる。
kazuma:そういうバンドの流れだったり戦略的なことは、メンバーのほうが僕より長けているので、基本丸投げなんです。“こういうのやりたい”とか“このバンドやアーティストとやりたい”みたいなことは言ったりするんですけど、あとはメンバーが上手くバランスを考えてやってくれるんで。
kazuma & aie
――Merry Go Round Respectsとのツーマンでは皆さん、両方のライブに出演されていたわけで。トータルすれば120分ステージに立っていたわけですが、やはりワンマンとなると気持ちは違いますよね。
aie:うん、違いますね。
kazu:モチベーションが全然違う。
sakura:この4人は変わらなくても、Merry Go Round RespectsになるとMUCCのミヤくん(Gt)がいるし、やっぱりモードが違うかな。
――皆さん、複数の活動を同時並行でされていますが、gibkiy gibkiy gibkiyのモードってズバリどんなものなんでしょう?
kazu:若いときに感覚が近いというか、“あのときやりたかったバンドだ!”っていう感じですね。今は、お仕事としてやっているサポート業もあれば、趣味の延長線上で音楽を本業にしていない人と一緒にやっている活動もあるんですけど。gibkiy gibkiy gibkiyに関してはバンドマンの集団ですし。だから自分が良いと思う音楽を作りたいという気持ちもあれば、もっと多くの人に見てもらいたいっていう野心もある。
――いわゆる“これで一旗あげてやるぞ!”的な?
kazu:うん。っていうのが、すごく強い。ワンマンツアーで北海道や九州を廻るバンドをやれているのも久しぶりだし、そういう意味では一番自分がやりたかった形が、今やれているっていう感じですね。ワンマンツアーもワクワクしてます!
aie:はは!(笑) 俺にとってはスポーツというか格闘技というか……暴力ですかね? ライブが終わったときに、お客さんが“俺が観たかった仁侠映画はこれだった!”って思えるようなスッキリ感。gibkiy gibkiy gibkiyのライブってMCもないんで、それぞれの解釈でしかないんだけど、そこで“うわ!”と圧倒されてくれれば正解かなっていう。
――暴力とはいえ、単に暴れて人を傷つけているわけではないと。
aie:ではない。インテリヤクザな感じ。
sakura:aieの言葉を借りて自分がやってるバンドを例えるなら、Rayflowerはガチに近いプロレス、ZIGZOは格闘技で、gibkiy gibkiy gibkiyはガチの暴力……なのかな? 同じ人間がやっていてもバンドによってルールが違ってくるし、ルールが違うことによって出てくる感情も違うから。誤解を生むかもしれないけど、そういう感じ。
――ガチの暴力ということは、感情をセーブしないで剥き出しにできるということ?
sakura:うん。だから自分の核の部分が一番出てるのは、gibkiy gibkiy gibkiyかもしれないなぁ。お客さんに対して歩み寄りはしないから、ヘラヘラしてるヤツがいたら“出てけ!”ってなるし。ま、最近はルールのある暴力になりつつあるけどね。
kazuma:僕の場合はほぼgibkiy gibkiy gibkiyしかやってなくて、aieとやってるhighfashionparalyzeもあんま変わんないんですよね。変わんないっていうか……。
aie:変えてるつもりがない。だから去年、機会があってhighfashionparalyzeをやったときも、“あれ? なんか違うな?”って二人とも思っちゃって。もう、体がgibkiy gibkiy gibkiyになっちゃってるんですよ。“あれ、highfashionparalyzeって何だっけ?”って、答えが出ないまま終わってしまった。
kazuma
僕の言葉で突き刺したい……という想いは変わらない。トータルで80点を狙うんじゃなく、100か0か?っていうのがカッコいい。(kazuma)
――では、kazumaさんにとってのgibkiy gibkiy gibkiyというバンドは、どんなものなんでしょう?
kazuma:意識としてはナチュラルに、どんどん削ぎ落としていって。もっともっと獣に近いものであり、もちろん僕の観点でカッコいいもの……っていう感じですかねぇ? だからgibkiy gibkiy gibkiyが何かになるのではなくて、gibkiy gibkiy gibkiyのままカッコよく、もっと売れればいいかなって。
――TPOで服装を変える人間ではなく、生まれてから死ぬまで毛皮で過ごす獣のように、ありのままでいたいと。だからsakuraさんやaieさんからも“暴力”という言葉が出たんでしょうね。
kazuma:そうあることって、すごく難しいじゃないですか。だけど、それに限りなく近くいようという意識でないと、たぶん、こういうバンドってできないだろうし。それに……野蛮なものってカッコいいじゃないですか? 何かを突き動かすものとして。だから、もっとエッヂの利いたものというか、ソリッドなものを求めていきたい。でも、観てくれる人に対しては全開で“ありがとう”とは思ってますよ。“てめぇ、この野郎!”とは思ってない。
――だから、お客さんには安心して会場に来てほしいと。
aie:旅の安全は保証します。ツーマンだと相手方のお客さんもgibkiy gibkiy gibkiyというバンドに対して準備してきてくれるけど、それこそ10バンドとか出る大きなイベントになると、知識ナシで我々を観ることになっちゃうから。30分間うつむいてる人とかもいるんですよね。だけど、そっちのほうが燃えるっていうか、“ああ、これだこれだ!”ってなる。もちろん苦手なら出ていって構わないし、僕たちにも歩み寄る気は一切ないけど、“あなたが知らない世界を見せてあげてるのに”っていう想いはあって。実際、10年経ったら“あ、昔は何も思わなかったけど、こんなにカッコよかったんだ!”ってなるパターンもあるじゃないですか。
kazu:ある、ある!
sakura:多くの人に聴いてもらいたいっていう野心はありながらも、こっちは野性でやってるから、そこに靡かない人にまで歩み寄る気はないからね。
kazu:それこそ最初にバンドを始めたときって、たくさんの人に聴いてもらいたいって絶対思うけど、だからって“リスナーが喜んでくれる曲を作ろう”っていう発想は無いじゃないですか。自分自身、共感を求めてくるアーティストというより、ちょっと暴力的だったり悪そうなものに惹かれたから、そういう自分と同じような感性を持っている人たちの前でやりたいっていうのはありますね。
aie:できるだけ多くの人が喜ぶ曲をやろうとすると、いろんな音楽の平均値にいくから、どんどんつまんなくなっていくし。だから我々みたいに極端になるわけだけど。せめて、そんな我々を好きでいてくれるフォロワーは永久に満足させていきたい。
sakura:ただ、これはあくまでも僕の主観なんだけど、お客さんに歩み寄った曲をやったのをキッカケに動員だとかが増えたときに、“ああ、そうなんだ”って納得して、かつて“ポップすぎないか?”と感じた曲も自分のものになっちゃう場合もある。
――ありますね!
sakura:で、それ以降はそのポップ性が備わった状態で楽曲に取り組むから、それはそれで本物なんです。だから一概に“歩み寄る”ってことが悪いとは思わないけど。そうなるには一回“歩み寄る”というのを覚悟しなくちゃいけないタイミングがあって、今のところgibkiy gibkiy gibkiyにはそれが無いっていうだけ。もちろん我々の野性に靡いてくれた人達に対しては、良くも悪くも予想を裏切るような楽曲を常に提供していきたい気持ちはあるし、そういう人達を見つけるキッカケって、やっぱり対バンのライブじゃないですか。そのチャンスが一切なく、外界と遮断した世界になるワンマンツアーっていうのは、一つの賭けですよね。
sakura
多くの人に聴いてもらいたいっていう野心はありながらも、こっちは野性でやってるから、そこに靡かない人にまで歩み寄る気はないからね。(sakura)
――ある意味このインタビューだって、gibkiy gibkiy gibkiyの野性に靡いてくれるかもしれない人を取り込むためのものですよね。
sakura:そうですよ! で、我々も考えたんです。最近(L’ Arc~en~Cielの)Kenちゃん主催の『PARTY ZOO』に出演させてもらったり、MUCCのトリビュート盤に参加させてもらったりとかで多くの人たちの目に触れてきて、ささやかながらもバンドが右上がりになっているんですね。じゃあ、ワンマンツアーという一つの賭けに出てみようかというところで、とにかく少しでも気になる人たちには来てほしいという願いはすごく強いから、そのための施策として各会場で来場者に無料音源を配布しようと。
――それは新曲で?
sakura:もちろん書き下ろしの新曲です。それとは別にワンマンでお披露目できる新曲も、今、作っておりまして。
aie:まぁ、片手くらいの曲数はありますね。従来のファンは驚くかもしれないけど、単純にカッコいい曲たちですよ。
sakura:ドラムのアプローチでいうと、割とシンプルかもしれないですね。心はちゃんと忙しいんですけど、別に超絶テクをやってるとかってわけじゃない。
――歌詞も既についているんでしょうか?
kazuma:いや、これからですね。ただ、僕の言葉で突き刺したい……という想いは変わらないんで、やっぱりブレちゃいけない。トータルで80点を狙うんじゃなく、100か0か?っていうのがカッコいいんで、バランスを取るとかってことは考えないようにしてます。そこで何か問題があればメンバーが……特にsakuraがアドバイスをくれるので。
――確かに音も言葉も、平均値からは程遠いバンドですからね。
aie:昨日4人で新曲の音を合わせていて、“この曲でMVを撮るとしたら、俺たちアロハ着るかもしれない”って思った瞬間があったんですよ。アロハで、レイバンのサングラスかけて、水をパシャッ!とやるような感じ。
――ええ!? アロハのgibkiy gibkiy gibkiyは逆に怖いですよ!
aie:怖いですよね。ちょっとラムシュタインっぽいっていうか、そこがgibkiy gibkiy gibkiyのヤバいところじゃないですか? そういうね、やらないことを想像するのがスゲェ好きなんですよ。例えばCDジャケットで、我々の顔をマンガ家さんに描いてもらうとしたら誰がいいだろう? とか。最終的に“あだち充じゃない?”って話になったんですけど。『ドラえもん』なら誰がどのキャラかとかもよく話してますね。しずかちゃんは、今のところkazuさんとkazumaさんの取り合いです。
kazu:sakuraさんだけは、いつもすぐ決まるんですよね。『北斗の拳』だとサウザーで……。
aie:『(魁!!)男塾』だと江田島平八!
――いわゆるラスボス的な立ち位置ですね。
sakura:かもしんない。プライド高い系。
aie
『ドラえもん』なら誰がどのキャラかとかもよく話してますね。しずかちゃんは、今のところkazuさんとkazumaさんの取り合いです。(aie)
――いや、今のお話を聞いただけで、gibkiy gibkiy gibkiyというバンドの特殊性がわかります。
kazu:新しい曲を作っていて、よく“これだとちょっと普通っぽくない?”っていう話になることもあるんですけど、正直、自分たちの思う“普通”っていうのが、もうわかんなくなってるんですよね。前作を先輩に聴いてもらったときも、“1枚目よりだいぶ聴きやすくなってポップな感じになったと思います”って言ったら“どこが? ちょっとマニアックすぎるかなぁ”って返ってきて。
sakura:ただ、曲を作るときのローカルルールはあるんですよ。まずはkazumaとaieでスタジオに入ってもらって、二人が作ったものを4人で完成させていく。最初から4人前提で作っちゃうと、なんだか“普通”に感じちゃうから。
aie:別に難解にしようとは思ってないんですけどね。ただ、それが客観視できてないんで、現状が正解なのかどうかもわからない。まぁ、ステージでやったらまた変わるかもしれないですけど。
kazu:なんか、曲に可能性がありすぎるんですよ。どこにでも行けるっていうか……。
aie:“どこにでも行ける”ってカッコいいな。
kazu:kazumaさんの歌とかも、僕の感覚だと瞬間のパッケージなんですね。音源で出てる曲もライブになると、その日そのときで歌い回しも歌詞も変わったりするから、俺たちの演奏やフレーズも変わっていってしまう。
sakura:Merry Go Round Respectsと廻ったツアーの岡崎公演を音源化して6月にリリースしたんですけど、それを聴いても音源とは全く形が違うんですよね。思い返せばどのライブも一つとして同じものはなくて、常に変化し続けてる。それが進化なのか退化なのかはわからないけど、そうやって変化していく曲たちに、今度のツアーでも新たな仲間が加わっていくということですね。
kazuma:漠然とした目標ですけど、最終的に傷は残していきたいですよね。自分たちの音楽に関しては、どうしても客観視できない面もあるので、そこで自分がくるかこないか?っていうところだけでやってる気もする。もう、それってあくまでも感覚的なものなので、ベースの音が一音バン!と出ただけで“あ、もう大丈夫だな”って思えるときもあるし。
kazu
曲に可能性がありすぎるんですよ。どこにでも行けるっていうか……。kazumaさんの歌も、僕の感覚だと瞬間のパッケージなんです。(kazu)
――傷を残したい。だからツアータイトルも『scar』なんですね。
sakura:どのバンドの人間も、みんな自分のバンドの楽曲が良くなるために演奏してるわけで、それはウチも変わらない。ただ、ちょっと違うのは……頑張らないんですよ。gibkiy gibkiy gibkiyにおいて、こういう表現をしたいから頑張ろうって思うことはあるけど、歳とってから自分のキャパシティって、もうなんとなくわかるんですよね。例えば俺、今48なんですけど、ブラストビート叩けって言われたら、たぶん無理ですよ。だけど、自分の持ってる材料と奏法を駆使して、どうすれば叩けるようになれるか?ってことは考えられる。
――ただ、ひたすらガムシャラに練習したりはしない、と。
sakura:しない。そうやって無い風呂敷を広げたり、背伸びしたりするんじゃなくて、個々が持ってる材料で落としどころを探すっていうのは、イコール“らしさ”だと思うんですよ。この4人がお互いに影響し合いながら、この4人だからこそ作れる形を探してる。まぁ、ウチらは4人が4人、もう酸いも甘いも知ってるんでね。
aie&kazu:“甘い”はあんまり……。
sakura:あ、“酸い”ばっかだ。前回のツアーでもコアなフォロワーたちに驚いてもらおうと、新旧織り交ぜたセットリストで廻ったんですよ。そこで今までの流れは一段落というか、句点をつけられた感があったので、ワンマンツアーが次の新しい段落の始まりになるんだと思う。だから今も新しく曲を書いてるわけだし、当然3rdアルバムっていうのも自ずと視野に入っているので、その布石となるのが今度のワンマンツアーなのかなと。
――そのワンマンは、どんな120分になるでしょうね?
sakura:なんでも押し込めばいいってことじゃないんで、120分じゃなく90分、60分で終わっちゃうかもしれない。逆にkazumaが言ってた、傷痕がガーッ!と詰まって、3時間になっちゃうかもしれないし。
aie:ほっときゃやりますからね、俺たち。なかなか帰んないですから。
sakura:音源では14分というキラーチューンもあるしね。ライブになると、もっと長い。
kazuma:ま、いずれにせよ緊張感は大事ですよね。ライブは闘いですから。
――闘いって、何との?
kazuma:自分ですね。まずそうならないと、オーディエンスとも闘えないんで。それで“何これ?”とか“無理”って感じてもいいから、とにかく一度観てほしい。まぁ、あるレベルを超えると拷問も快感になるんで……。
aie:拷問が前提なんですね。
kazuma:いやいや! でも、それがエンターテインメントになる可能性もあるし。
aie:アロハ着てる可能性もある。
sakura:ちなみに、黒いアロハってあるのかな?
aie:sakuraさん用に!?(一同笑)

取材・文=清水素子
kazuma , aie , sakura

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