【インタビュー】ましのみの頭の中は
どうなっている…?新作「どうせ夏な
らバテてみない?」大分析

現役女子大生のましのみは、キーボードの弾き語りからスタートしたシンガーソングライターだ。2018年2月にアルバム『ぺっとぼとリテラシー』でメジャーデビュー。見た目は普通にかわいい。やっている音楽もポップ。だが彼女、なにかひっかかる。自己プロデュース能力に長けた ましのみ はよくしゃべる。しゃべるとなぜか手が忙しく動く。取材場所にも2リットルの水が入ったペットボトルを持参、ステージと同じようにグイグイ飲む。ライブでは“ましラップ”を使った自己紹介や寸劇など、独自のパフォーマンスを展開。ピコピコした遊び心満載のエレクトロサウンドに、新作「どうせ夏ならバテてみない?」など独自のワードセンスを感じさせる歌詞、“ぷるるる〜”と擬音まで歌にしちゃうところや水の上に布団を敷いた部屋を思いついちゃうぶっ飛んだ感性……。

いったい彼女の頭の中はどうなっているのか。夏ソングを集めた1stシングル「どうせ夏ならバテてみない?」の話とともに、ましのみの感性を大分析する。
■キレイなだけじゃない部分にキュンとくる。でも、あくまでもポップ・ミュージック

──1stシングル「どうせ夏ならバテてみない?」は収録曲3曲とも夏ソングですけど。シチュエーションは夏でありながらも、歌詞は全曲、太陽の下で夏をエンジョイしてるようなはしゃいだものではないんですね。
▲「どうせ夏ならバテてみない?」初回限定盤ジャケット

ましのみ:私は日光が苦手で、インドア派なんですよ(笑)。でも、インドアにも夏はあるなと。私、ましのみが夏を描くならどう書くかということで、生まれたのがこの3曲で。まず、私にしか書けないものということ、あと今回特に意識したのは同世代の女の子に聴いてもらいたいということ。歌詞では同世代の女の子のリアルを書いてるんですよ。私に実際に起きたこと、起きてないこと関係なく、起きてもおかしくないことをこれまでも書いてきてて。だから、どこかでカブってる経験ってあるはずなんです。同世代の女の子は。今回はそこをより強く意識して。さらに、前回のアルバムを出した後にライブをやってみて、みんなと盛り上がれる曲ってめちゃくちゃ楽しいなと気づいたんで。そこも意識して曲も書いたし、アレンジもそうやっていきました。

──それで、タイトル曲の「どうせ夏ならバテてみない?」は楽しい振り付けをつけてみた。

ましのみ:ええ。そういう考えが根底にあるから、ああいうものがでてきました。ライブであれをみんなやれたらいいなと思ってます。

──「どうせ夏なら〜」は、まず冒頭からこの歌の男女が置かれた状況にドキドキさせられましたね。そのなかで“カチカチと2回紐引いて さっさと豆電にした君”という1行がまずひっかかって。電気って、いまはスイッチとかリモコンで切り替えません?

ましのみ:ウチはカチカチなんですよ! 家で書いてるとき、実際に目の前にあったんです。

──フォークっぽい描写で、より夏のねっとりした夜の雰囲気がするなと感じました。

ましのみ:えー! そうなんですか? 私は音楽に詳しくないから、ジャンルを意識して書いたことがないので分からないんですけど。

──そうですか。テーマとして女の子がこういうちょっとエグいところまでいっちゃう歌詞を書くのって、抵抗なかったですか?

ましのみ:私は21歳なんですけど。この付近の世代って一番こういうきわどいところにキュンとくるのかなっていう感覚があるんです。そこを避けすぎちゃうと浅く感じてしまう世代なんじゃないかな。私付近の世代は、そういうリアルなこともありきで恋愛があるから。そこで感じる汚い感情とか汚い部分、怒りとか。そういうキレイなだけじゃない部分にキュンとくると思うので、そこは変にキレイにしないように。でも、あくまでもポップ・ミュージックなので生々しすぎないように。そこを自分なりに探って書いたつもりです。

──同世代にはこういうきわどいものが響くだろうと。

ましのみ:でも、私がここで表現したいのはそこの描写だけではなくて、メンタルの部分。それに伴ってくるのがそういう現実ということだから。この曲は、女の子の好きの度合いが重くなっていく状況で、“好きだから構ってよ”というのがどんどんエスカレートしていく曲なんです。始めは首をくすぐるぐらいだったのが。(笑)

──せっかくのお泊まりなのに、なんで“もう寝るの?”ってゴネながら。

ましのみ:それがどんどんエスカレートしていく。そういう心のキュンキュンを書きたかったんです。

──その、どんどんエスカレートしていく気持ちと、サビの最後に出てくる「違う?」の歌い方、比例してますよね? 

ましのみ:そうです。だんだん強くなってますよね。始めは首くすぐって「ちがう〜?」ぐらいの甘えた感じなんだけど、どんどん怒っていって。

──圧が強くなっていく。

ましのみ:そうそう(笑)。

──それで、“確かあの子の誕生日だったよね?”って探りまで入れちゃう。

ましのみ:私の場合は、元々根がそんなに楽観的ではなくて。いつも深い部分まで暗いこと、マイナスなことまで考えてしまうタイプなので。そうなると、単純にものすごいポップでも、自分の世界のものではないように感じてしまうんですよ。聴いてて疎外感を感じる。

──ああー。だから、曲はハジけてるのに歌詞はハジけてないインドア夏ソングという構図が生まれてきたんですね!

ましのみ:そう。だから、いつも暗い曲にいきがちなんですけど。そうなると救いがなくなってしまう。そう考えたとき、私は歌詞は寄り添ってくれるけど、そこから自然にポップなところへ自分を持って行ってくれる曲がすごい救いになるなと思ったんですよ! だから、彼氏との関係がいまネガティブでも、こういうことを私が歌うことで、聴いたら爽快な気持ちになったり、ちょっとでも明るくポジティブになったり。

──ポップな曲調と、自分と同じような人もいるんだって思える歌詞で、自分の彼氏に対しての不満、ストレスを発散できるというか。

ましのみ:そうそう! マイナスがちょっとでも減るとかでいいんですけど。せっかく聴いてもらえるなら、プラスの要素を与えられる音楽を発信したいんですよね。

──なるほど。あと、曲の冒頭に“ぷるるる〜”、“はあ〜”という擬音を入れるアイデアもポップで面白いなと思いました。

ましのみ:あー嬉しい。私はイントロが面白いってならないと、そもそも次を聴くに至らないんじゃないかなって思ってるんですよ。いまって、サブスクに1つ登録するとパンパンパンパン音楽聴けるじゃないですか? ちょっとつまんないって思ったらすぐ次にいっちゃうんですよ。だから、タイトル、イントロから「なんか引っかかる」ってなって、サウンドも全体的に引っかかるってなって、初めてもう1回聴き直して歌詞まで到達する。そういう段階があると思うんですね。CDショップだったらジャケットとタイトル見て。じゃあ視聴してみようってとこから始まる。まずそこで引っかかりを作らないと、曲を聴いてもらうにも至らない。そのために私はタイトルもジャケットもサウンドも気ぃ配って配って、できることはなんでもやる。そのなかで一番大事な要素としてイントロをとらえています。私は声とか音で遊ぶのが好きだから、いろいろ試した結果、夏バテっぽい要素もあって耳を引くというのでこれにしました。
──MVも面白かったですね。相手役の男性がいたり、お布団入ったり、と思ったらいきなりプールサイドで踊り出したり(笑)。

ましのみ:これは、室内のお布団敷いた部屋が水の上にあるという組み合わせがめちゃくちゃシュールで面白いなというイメージしか私にはなかったんですけど。そうしたら監督さんがいろいろアイデアを出して下さって。私的にはめちゃくちゃ面白くて。笑えるし、飽きないし、聴いてほしい歌詞も届くし。たくさん観てほしいなと思いましたね。

──C/Wの「海水掛け合いっこ」はタイトルにキュンとしました。

ましのみ:ありがとうございます。この曲は女の子が全編意地をはってるんですよ。浮ついてる相手方がいらっしゃって。その人の浮ついてるところを簡単に許しちゃったら治らないからっていう意地の張り方をしてるんだけど。でも海行ってるし、海水掛け合いっこしてるし、最終的には許してるし。幸せなんですよね。だから、結果的にそれこそ“青春”っていっていいような映像が浮かぶんだけど。でも、精神的なところまで掘り下げてみてみると、楽しいだけじゃない。好きだからこそ意地を張ってたり。あとは、落ちサビのところで、ただ意地を張ってるだけなんじゃなくて、見えてないところでも信じていたいから治して欲しいんだよとせつない気持ちになったり。そういうのがキュンキュンくるなと思って書きました。1曲目は夏の夜から朝にかけて、2曲目は昼から夕方にかけての曲ですね。

──3曲目の「コレクション of コネクション」はガラッと雰囲気が変わって。しっぽりとひとりで夏の夜に想いを馳せる曲でしたね。

ましのみ:これは、私が思い浮かべているのは、花火大会の日の夜、家に帰ってきてひとりのときの場面。この曲は恋愛の曲であると同時に人間関係全部に通じる考え方だと思ってて。人と人の価値観って絶対に同じように共有はできないと思うんですよね。そのなかで、この歌に関しては、好きとか一番好き、大好きという感覚が同じように共有できる訳がなくて。そのなかで「一番好きだよ」っていった側と、それを受け取った側の「好き」の強さ、種類、とらえかたが違ったとき。どっちも嘘もついてないし悪いこともしてないのに、「なんか裏切られた」と思って傷ついたりモヤモヤが生じるじゃないですか? 

──好きの度合いが違ったりすると。

ましのみ:ええ。例えば、こっちは一番好きでも、受け取った側は一番好きではなかった場合とか。っていうのが、私的には人間関係の面倒臭い、疎ましいところで。しかも、誰も悪くないから相手を責められない。これは、好きな人に悲しい思いを抱いてる子だから、そこに寄り添える曲にしたいと思って。ピアノも素朴な音にして、ミックスする段階でもホールで弾いてるような音ではなく、部屋で弾いてて、情景が思い浮かぶような音に仕上げました。1、2曲目で夏の高揚したウキウキ、わくわくみたいなところを書いた分、孤独の部分にもスポットをあてたのがこの曲です。
▲「どうせ夏ならバテてみない?」通常盤ジャケット

■自分は“才能”でいけるタイプじゃないんだって思いました。だから、才能も『努力』で引き出す。

──ましのみさんって、ちょっと変わった人なのかなと思ってたんですけど、全然違いました。

ましのみ:最初の頃は、変なキャラを作ってると思われるのがコンプレックスでした。だけど、作ってないから、困ってたんですよ。いまはそう思うんなら思ってくれてOK、自然体でそれができてるならラッキーじゃん! ぐらいの考え方になりました。

──音楽を表現するにあたって、ましのみさんが一番大切にしていることは?

ましのみ:自分が表現することでリスナーの感情が動く、そのなかでも、感情がゆらゆらした結果「なんかワクワクした」とか「楽しい」というのが残る。楽しませたいというのが私は一番なんですよ。だから、ライブとか曲を作る上でも「面白いな」、「楽しいな」というものが残って欲しいなというのが一番おっきなところにあった上で、いろんな曲を書きたいんですよ。

──ライブで紙芝居や寸劇をやったりしているのは、それを残すため?

ましのみ:そうですね。そこに軸を置いている訳じゃなくて、それも全部私はMCととらえてるんです。私はずっと常になにかにワクワクしてたいんですね。ディズニーランドが好きなので例えると、入ったときからあの空気自体が楽しくて、次から次へのいろんなものがあって、ずっと頭も心もワクワクできて楽しいじゃないですか? そういうものを自分のライブでも提供したい、そういう空間を一緒に共有したいと思ってるので、ただしゃべって歌ってしゃべって歌ってというライブはやりたくないんです。例えば、寸劇とかやると、次の曲により深く入れたりする。そう考えると寸劇もMCと同じ立ち位置なんですね。だから、そういうところにも気を配っていたいんです。さっきのタイトルとかイントロと同じように、MCとかSNSもそうですけど、私が気を使えるところは全部こだわっていたいんですよ。こうやって音楽を生業にしているからには、最低限それはやらないといけないなと思ってます。

──楽しませるためにそこまでやれてしまう自分は器用な方だと思いますか?

ましのみ:えぇー! 簡単にできる訳じゃないです。めちゃめちゃどうしようかなっていろいろ考えるし。紙芝居を取り入れるのもすっごい考えて、めちゃくちゃ時間かかったし。でも、裏でそういうことをやるのは当然のことなので、別にそこを大っぴらにする必要はないのでいわないですけど。

──この先、楽しませるアイデアが枯渇してしまったらと考えることはないですか?

ましのみ:枯渇なんてしないと思いますよ。毎回苦しむから。ポンポン出てくる人は枯渇しそうだけど、毎回苦しんで、身の回りにあるものとか、いろんなところから引き出しを持ってきて考えるから。枯渇することはないんじゃないかな。

──と考えると、ましのみさんは天才肌ではなくて。

ましのみ:違います。“コツコツ派”ですね。天才じゃないって理解したのは、初めは私も歌が上手いと思ってたんですけど。録音した歌を聴いたとき「ヘッタクソだなー」って思ったところで、自分は“才能”でいけるタイプじゃないんだって思いました。だから、才能も『努力』で引き出す。アイデアとか考え方って、結局は努力だと思うんで。だから、私は自分のなかで自分をストイックに突き詰めるんです。そうやって引き出さないといけない。自然に出てくるタイプじゃないから。

──分かりました。では最後に、9月8日に東京・代官山ユニットで開催されるワンマンライブへの抱負も含め、BARKSの読者の方々にメッセージをお願いします。

ましのみ:夏っていうことで、夏の作品を出して。ライブは、前回のワンマンライブよりもさらにアゲアゲで、いい意味で期待を裏切るような刺激的なものにしたいと思ってるし。初めての人でも、いままで応援してくれた人でも、同じようにワクワクできるものにしたいと思ってるので。このCDを聴いて、ワンマンライブにきて、今年の夏をましのみで一緒に楽しんでバテきって欲しいなと思います!

取材・文◎東條祥恵
▲「どうせ夏ならバテてみない?」初回限定盤ジャケット

メジャー1stシングル「どうせ夏ならバテてみない?」

2018年8月1日(水)発売
2018年7月16日(月・祝)よりiTunesほかにて先行配信開始
【初回限定盤】CD+DVD PCCA-04686 2,000 円+ 税
【通常盤】CD Only PCCA-04687 1,200 円+ 税
【CD】
M-1 どうせ夏ならバテてみない?
M-2 海水掛け合いっこ
M-3 コレクション of コネクション
M-4 どうせ夏ならバテてみない? (Inst.)
M-5 海水掛け合いっこ(Inst.)
【DVD】
V-1 どうせ夏ならバテてみない? Music Clip
V-2 どうせ夏ならバテてみない? Making
V-3 Digest of「 ぺっとぼとリテラシー~別途ほとばしるショータイムへようこそ~Vol.1@Shibuya WWW X」


<ぺっとぼとリテラシー ほとばしるバテで夏を締めくくりまショータイム Vol.2>

【日程】2018年9月8日(土)
【会場】東京 代官山UNIT
【開場/開演】 16:00/17:00
【チケット料金】前売り¥3,500(税込:D別) *学生は500円キャッシュバック  (当日、学生証をご提示ください)
8月1日より一般発売開始

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