SOLEIL “さよなら14歳、こんにちは
15歳。” マージ―ビートの妖精が代
々木に降臨 新作からの曲も交えて超
満員オーディエンスの心を射抜く

7月29日、東京・代々木Zher the ZOOにて『SOLEIL「さよなら14歳」バースデーライブ』が開催された。SOLEIL(ソレイユ)は2017年に発足したユニットで、メンバーは、ボーカル&グロッケンのそれいゆ、ギターの中森泰弘(ヒックスヴィルましまろ)、ベース&プロデュースのサリー久保田(元ザ・ファントムギフト、les 5-4-3-2-1)の3人。今年3月21日、ファースト・アルバム『My Name is SOLEIL』でメジャー・デビューを果たした。「さよなら14歳」というライブ・タイトルは、7月20日にそれいゆが15歳の誕生日を迎えたことにちなむ。
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ゲスト・アーティストのザ・ペンフレンドクラブが「Love's Lines, Angles and Rhymes」(オリジナル・アーティスト:フィフス・ディメンション)、「Don't Take Your Time」(同:ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ)などを軽やかに演唱して会場にソフト・ロックの風を吹かせた後、いよいよマージ―ビートが響き渡る時が来た。今回のソレイユはドラマーにサンコンJr.(ウルフルズ)、コーラスに星野みちる、レモンを迎えた6人編成でのステージだ。オープニングはインスト曲「ソレイユのテーマ」。それいゆの叩くグロッケンシュピール(と、正式名称では書かずにはいられないのだ)が発する、独特のグルーヴ感と玉を転がすような音色に引き込まれる。「ああ、自分はソレイユのライブにいるんだ。今日はここが俺の心のフジロックだ」と、しみじみ思った。
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続いては楳図かずお『わたしは真悟』へのオマージュ「MARINE I LOVE YOU」。鮮やかに音階を上昇下降させる弦楽器たち、手旗を振りながら熱唱するそれいゆに会場が沸く。エンディングのコード(和音)に「そう来るか!」と軽い衝撃を味わいつつ、気が付くと誰も彼もがそれいゆの手のひらの上だ。その歌声は、レッドゾーンを振りきるほどの初々しさ、無垢さ、イノセントさを伴って聴き手の心を潤しにかかるのだ。
MCでは近況も報告された。ひとつは、河崎実監督の映画『永遠のルンナ』の撮影が終了したこと。「監督とカメラマンがヒルにかまれて血だらけになっていた」と淡々と語った。もうひとつは近田春夫のアルバム・レコーディングに1曲、ドラマーとして参加したこと。セッションでは、ギターで起用された創作あーちすと“のん”との初共演も実現したという。
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その近田春夫の提供曲「姫林檎 GO GO!」はどこかグラマラスなブギ調ナンバー。スカ風にアレンジされた「恋のハッピー・デート(Gotta Pull Myself Together)」(オリジナル・アーティスト:ノーランズ)では石野真子ヴァージョンの訳詞を採用、それいゆは美声と共にクリスタル・クリア―なグロッケンシュピールの演奏も聴かせた。「青いインクのラブレター」における中森泰弘の三連コード・カッティング、強靭なビート感覚とメロディアスなフレーズを併せ持つサリー久保田のベースはまさに職人技。びくともしない演奏力がまた、心地よい揺らぎを持ったそれいゆの歌声を引き立てるのだ。
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中盤では、9月19日にリリースされるセカンド・アルバム『SOLEIL is Alright』から「太陽がいっぱい」と「恋のはじまり」を一足先に披露。「太陽がいっぱい」はビートルズの税金男+スパイダースの心が燃えるやつ+タイガースの黄猫などを彷彿とさせる曲調もキャッチ―だし、ゴーゴーダンス風の振り付けを取り入れながら歌うそれいゆもキュート(スキャットも最高!)という、目と耳の両方を満足させるナンバー。いっぽう「恋のはじまり」は切なさいっぱいのメロディを持つ一曲。低音のシングル・ノートを中心に綴られるギターの間奏もこよなく美しい。
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バンド・セットが終わったあと、レモンの音頭取りで始まったのは「ハッピーバースデートゥユー」。ステージにはザ・ペンフレンドクラブの面々も集まり、誕生日を迎えたばかりのそれいゆを祝う。ケーキにはイラストと“さよなら14才”という文字が大きくデコレートされていた。そしてアンコールでは、ゲストを加えないソレイユ単体の演奏を3曲披露。それいゆはドラム兼リード・ヴォーカルという、ドン・ヘンリーやバディ・マイルズ級の高度なポジションを、実にスウィートにこなしていた。バスドラのアクセントにはオヤ?というところもあったが、トップ・シンバルの音色は粒が揃い、スネアの響きも抜けが良い。マージ―ビートの新たな王道と呼びたくなる「恋するギター」、デビュー・シングル「Pinky Fluffy」というソレイユの大定番を、それいゆの歌&ドラムで聴く喜びはひとしおだ。
9月には東名阪で『SOLEIL is Alright』ツアーが行なわれるが(詳しくはウェブサイト参照)、それいゆの受験勉強のため、バンドはそれを最後に“自由登校期間”なる休息期間に入る。活動再開は来年3月の予定。“開花の美”を伝えるソレイユをお見逃しなく!

文・撮影=原田和典

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