【インタビュー】ザ・デッド・デイジ
ーズ「若い音楽ファンに名曲の数々を
紹介したい」

2018年6月、ザ・デッド・デイジーズが来日公演を行った。
ハード・ロック界のスーパーグループとして注目を集めた彼らだが、めきめきとバンドとしての一体感がアップ。創始者デイヴィッド・ローウィー(G)ががっちり土台を支え、ダグ・アルドリッチ(G/元ホワイトスネイク、ディオ、バッド・ムーン・ライジング)、マルコ・メンドーサ(B/元ホワイトスネイク、シン・リジィ、ブルー・マーダー)、ジョン・コラビ(Vo/元モトリー・クルー、ザ・スクリーム)がロックンロールの魂を解き放つ。それに加えて今回のツアーではディーン・カストロノヴォ(Dr/元ジャーニー、オジー・オズボーン)との合体が実現、さらに強靱になったサウンドで観衆を魅了した。

日本公演を終えたザ・デッド・デイジーズのジョン・コラビとディーン・カストロノヴォが日本公演を振り返り、またバンドの未来への展望を語った。

──ディーン・カストロノヴォは一時体調を崩していたそうですが、ライヴでのプレイは100%以上の絶好調ぶりでしたね。

ディーン:うん、もう3年間クリーンだし健康には問題がないよ。最高のコンディションで日本に戻ってくることができて嬉しい。日本に来るのはいつだって喜びだよ。俺は『チープ・トリックat武道館』を聴いて育ったんだ。少年時代に聴いたアルバムは一生頭から離れないものだ。ずっと日本武道館は聖地だったから、ジャーニーでステージに上がることができたのは最高の経験だったね。

ジョン:俺にとっても武道館は憧れだった。チープ・トリックもそうだし、KISSやクイーンが武道館でプレイしている写真を雑誌で見たよ。彼らが日本のキモノみたいな衣装を着ているのを見て、最高にクールだと思った。俺もモトリー・クルーでも武道館でプレイすることができたんだ。『モトリー・クルー』(1994)に伴うワールド・ツアーの最終公演だった。「遂に武道館まで来たんだ」って感無量だったよ。バックステージに巨大な太鼓があって、トミー(リー)が「叩きたい」と言っていたのを覚えている。武道や宗教的儀式に使うものだし、それは許されなかっただろうけどね。武道館はお客さんの歓声がこだまするようにできているし、すごい盛り上がりだったよ。もちろんどの会場でも日本のファンは素晴らしい。日本で失望させられたことは一度もないよ。

──ザ・デッド・デイジーズの初来日は<ラウド・パーク16>の午前枠で、2回目がクラブクアトロ、そして今回が恵比寿リキッドルームと、会場の規模が毎回アップしていますね。いずれザ・デッド・デイジーズで武道館ライヴというのも...?

ジョン:そうなったら最高だね(笑)。ザ・デッド・デイジーズは日本に加えて、世界規模でファンが増えているんだ。ライヴを見に来た人たちが「すごく良かった」と言って、次の公演には友達を連れてくる。その彼らも友達を連れてきて...という感じで、さらにインターネットで噂を広めてくれる。俺たちは彼らを“ファン”とは考えていないんだ。みんな俺たちと音楽を共有する“友達”だよ。今回のジャパン・ツアーでも、わざわざアメリカやイタリアから来てくれる人がいる。彼らはインターネット経由で連絡を取り合っていて、お互いのことを知っているんだ。俺たちの音楽にそれだけ熱意を持ってくれるのは嬉しいし、感謝している。

──ライヴのアコースティック・コーナーでディーンがロッド・スチュワートの「マギー・メイ」を歌っていましたが、あなたの“持ち歌”なのですか?

ディーン:いや、「マギー・メイ」をライヴで歌ったのは今回の日本公演が初めてだよ。

ジョン:「マギー・メイ」はディーンが加入する以前から、ザ・デッド・デイジーズのライヴ・レパートリーのひとつだったんだ。その頃は俺が歌っていたけど、ディーンの方が声質が向いている。今回の日本公演ではディーンとマルコのヴォーカルをもっとフィーチュアしたかったんだ。2人とも素晴らしいシンガーだというのが第一の理由だけど、ザ・デッド・デイジーズのショーは約2時間あるから、俺の喉を休めるコーナーも必要なんだよ。

──ザ・ビートルズの「レット・イット・ビー」をアコースティック・コーナーでやるようにしたのは?

ジョン:「レット・イット・ビー」をやるようになったのは去年(2017年)、ディーンが加わる前だった。ポーランドのフェスで、60数人編成のオーケストラと共演したんだ。“ラヴ&ピース”をテーマとするフェスで、プロモーターから平和を歌った曲のリクエストがあったんだ。それでジョン・レノンの「平和を我等に」、ニール・ヤングの「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」、ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」の強烈なロック・ヴァージョン、それから「レット・イット・ビー」をやったんだ。その中でも「レット・イット・ビー」にはポジティヴな反応があったから、それを日本でも再現したかったんだ。
──ザ・デッド・デイジーズはすでに4枚のオリジナル・アルバムを発表しており、オリジナル楽曲だけで強力なライヴ・セットが組めると思いますが、これからもカヴァー曲をプレイし続けるでしょうか?

ジョン:もちろん!ロック・クラシックスをプレイするのは楽しいからね。クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルの「フォーチュネイト・サン」やセンセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドの「ミッドナイト・モーゼス」は初期からやっている曲で、俺たちのオリジナル・ソングだと思い込んでいるファンもいるほどだ。ザ・ローリング・ストーンズの「ビッチ」は『バーン・イット・ダウン』(2018)でレコーディングした曲だよ。単に自分たちが好きな曲だということもあるけど、若い音楽ファンに名曲の数々を紹介したいという意図もある。若いロック・リスナーだとセンセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドを知らなかったりするからね。

──ストーンズの「ビッチ」にしても、もう48年前の曲ですからね。

ジョン:30歳過ぎのロック・ファンであっても、リアルタイムでは聴いていないんだ。だから知らなくても責めることはできない。俺はソロ・アコースティック・ショーでエアロスミスの「折れた翼」やKISSの「ハード・ラック・ウーマン」、デヴィッド・ボウイの「レディ・スターダスト」もプレイしているよ。

ディーン:ジョンの凄いところは、さまざまなロック・クラシックスを自分のスタイルで歌えてしまうところなんだ。曲に自分を合わせようとすると、ただのカラオケ・パーティーになってしまう。ジョンは自分らしく歌っているよ。過去の歴史に埋もれてしまうかも知れない名曲を、現代のナンバーとしてプレイするんだ

──若いロック・ファンへの啓蒙を、自分の任務と考えていますか?

ジョン:うーん、そんなに堅苦しくは考えていないけどね。俺が若い頃に重要な位置を占めていた曲だし、それをあらゆる世代・あらゆる国籍の音楽ファンと共有したい。たまに言われるんだ。「『ミッドナイト・モーゼス』の歌詞、最高ですね。書いたとき、どんな心境だったんですか?」って(笑)。もちろん誰だって知らないことがある。だから、ちゃんと「あれはカヴァー曲だよ」って教えてあげるんだ。センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドのファンを1人増やすことができたら、俺自身すごく嬉しいからね。

──ディーンはプロングのTシャツを着ていますが、その時期のヘヴィ・ロックも聴いていたのですか?

ディーン:プロングは最高だ。彼らの『ベッグ・トゥ・ディファー』(1990)は俺にとって、1990年代のメタルの扉を開いた存在だった。それでマシーン・ヘッドやフィア・ファクトリーにもハマったんだ。彼らのドラムスには気を付けないと轢かれてしまうようなマシーン機関のような勢いがある。スリップノットやストーン・サワーも大好きだよ。コリー・テイラーがやることには間違いがない。いつか共演したいミュージシャンの筆頭だよ。俺がジャーニーにいた頃、ニール・ショーンと一緒にスリップノットのライヴを見に行ったことがあるんだ。バックステージに行ったら、彼らがニールを見て「おおッ!」ってどよめいていた。みんなジョーニーのファンだったんだよ。実際ニールのギターは最高だ。俺も長年いろんなギタリストと共演してきたけど、ニールとダグ・アルドリッチはトップの一角を占めている。

ジョン:ジャーニーの「ライツ」のギター・ソロは俺のオールタイム・フェイヴァリットだよ。完璧なギター・ソロだ。

ディーン:あるときジャーニーのバックステージをクイーンのブライアン・メイが訪れて、やはり「ライツ」が好きだと言っていたよ。ニールに「あのソロはどうやって弾くの?」って訊いていた。

──ジョンは十代の頃、フィラデルフィアにいた頃からダグと知り合いで、ディーンはマルコとソウル・サーカス、ダグとラヴォリューション・セインツで一緒にやっていたり、バンド全員がお互いのことを知っていますが、ジョンとディーンはこのバンド以前にお互いのことを知っていましたか?
ジョン:もちろんディーンという凄腕のドラマーがいることは知っていたけど、直接会ったのはザ・デッド・デイジーズに加入する話が持ち上がったときだった。それは他のメンバーについても言えることだ。ダグは16~17歳の頃から知っていたけど、一緒にやるのはこのバンドが初めてだった。マルコともこれが初共演だよ。全員がお互いのことを知っているのが、このバンドの良いところなんだ。それぞれのメンバーが過去にいたバンドのリストを見るとスーパーグループ扱いされるのもわかるけど、みんな直接的・間接的な友人なんだよ。

ディーン:俺がジョンのことを知ったのは、モトリー・クルーの最高傑作で歌っていたからだった。『モトリー・クルー』は過小評価されているアルバムだよ。俺の息子は27歳だけど、俺がザ・デッド・デイジーズに参加すると聞いて、「えっ!?ジョン・コラビと一緒にやれるの?」と驚いていた。息子のカイルはウェンズデイ13でやっているんだ。

ジョン:前のドラマーのブライアン・ティッシーがツアーに参加できなくなって、「ディーン・カストロノヴォはどう?」と提案してくれたんだ。マルコもダグも彼とプレイしたことがあったし、「いいね。連絡してみようか」ということになった。とても自然なプロセスだったんだ。溢れるエネルギー、ポジティヴな姿勢、高度なテクニック...しかもディーンは素晴らしいシンガーでもある。彼は完璧にバンドにフィットしたんだ。

──ディーンが加入する前はダグ、マルコ、ブライアンと、バンドの過半数が元ホワイトスネイク組でしたね。

ジョン:うん、“デイヴィッド・ローウィー、ジョン・コラビ&ザ・ホワイトスネイク・ガイズ”というバンド名にしても良かった(笑)。デヴィッド・カヴァーデイルがこう言っていたよ。「ホワイトスネイクよりもホワイトスネイクのメンバーが多いじゃないか」ってね。まあ、ハード・ロックをやっているミュージシャンだったら大抵、一度はホワイトスネイクに在籍したことがあるからね。ただ、俺たちはザ・デッド・デイジーズをホワイトスネイク・パート2にしようと考えたことは一度もないよ。

──ザ・デッド・デイジーズとしてヨーロッパでいくつもの夏フェスに出演して、北米ツアーも行いますが、その後の予定は?バンド外の活動はありますか?

ジョン:2018年9月中旬までツアーをやって、10月中旬までオフがある。それからKISSクルーズに同行するんだ。オフの間はそれぞれが別々の活動をすることになる。ディーンも俺も、そのオフを利用して引っ越しをする。俺はツアー・バスのサイズのモーターホームを買うことにしている。ザ・デッド・デイジーズの北米ツアーが終わったら、俺が運転して、今住んでいるナッシュヴィルからカリフォルニアまで嫁と一緒にモーターホームで行くつもりだよ。自分たちのペースでロード・トリップするんだ。シャワーもベッドもあるし快適そのものだよ。それは俺にとってセラピーでもあるんだ。ドライブが好きなんだよ。ナッシュヴィルから嫁の母親が住むフロリダ州デイトナビーチまで14時間かけて車で行ったりする。

ディーン:俺はモーターホームではないけど、やはりドライブは好きだよ。自動車と大音量のカーステレオは、俺にとって世界最高のお医者さんだ。運転しているときにバスドラムのパターンを練習したりするんだ。

ジョン:ドライブ中だとソングライティングのアイディアも浮かぶよね。左脳は理性、右脳は創造性を司る。脳は左右のバランスが大事なんだ。だから運転という左脳的な作業をしているとき、右脳がクリエイティヴになる傾向があるわけだ。トミー・リーに勧められた『The Artist's Way』(ジュリア・キャメロン著、邦訳『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』)はすごく参考になったよ。脳にクリエイティヴな流れをもたらすには、朝起きたらすぐに頭に浮かんだことを紙に書きつけるんだ。話をまとめようとせず、とにかく思いつくままにね。この本によって、ソングライティングで目を開かされたよ。次のアルバムにはモーターホームで書いた曲が入るかも知れないね。

文:山崎智之
写真クレジット:Yuki Kuroyanagi

ザ・デッド・デイジーズ『バーン・イッ
ト・ダウン』

2018年3月21日発売
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1. レザレクテッド
2. ライズ・アップ
3. バーン・イット・ダウン
4. ジャッジメント・デイ
5. ホワット・ゴーズ・アラウンド
6. ビッチ
7. セット・ミー・フリー
8. デッド・アンド・ゴーン
9. キャント・テイク・イット・ウィズ・ユー
10. リーヴ・ミー・アローン
11. レヴォリューション(ビートルズ カヴァー)※ボーナストラック

【メンバー】
ジョン・コラビ(ヴォーカル)
ダグ・アルドリッチ(ギター)
デイヴィッド・ローウィー(ギター)
マルコ・メンドーサ(ベース)
ディーン・カストロノヴォ(ドラムス)

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