『プロ野球向上委員会』[新書](洋泉社)/著:野村弘樹、仁志敏久

『プロ野球向上委員会』[新書](洋泉社)/著:野村弘樹、仁志敏久

「田中と稲尾はレベルが違う」プロ野
球OB選手の暴言が止まらない!

ダルもマー君も全然ダメ!?

 現役時代に打撃を極めて「ボールが止まって見えた」という発言を残している打撃の神様・川上哲治氏が昨年(2013年)10月28日にお亡くなりになった。享年93。川上氏は「日本プロ野球の生き神様」とも呼ばれ、あの世界の王貞治やスーパースター長嶋茂雄でさえ頭が上がらなかった人である。
 その川上氏が亡くなってからタガが外れたのか、プロ野球OBたちが現役選手に対する批判に満ちた暴言が止まらない。
「ダルビッシュ!? 田中マー君!? あんなの全然だろ! ワシが今、全盛期の現役だったとしてメジャーいってたら30億プレイヤーじゃ。最低で200勝はする。だいたいワシに匹敵するピッチャーがおるんか?」といつものように吠える、日本プロ野球史上唯一の400勝投手である金田正一氏。
 厳しい管理野球でヤクルトや西武を優勝に導いた広岡達朗氏も「いまの阪神や横浜のGMが仕事してますか? 全然してないよね。私があのままロッテのGMを続けていれば、いまごろは常勝軍団ができあがりロッテ王国ができてたよ」と語った。
 2006年に野球殿堂入りした豊田泰光氏も「稲尾和久と田中将大の連勝記録を同じに扱うな。ジャンルが違うと言っても良いぐらい価値が違う。レベルが全く違う次元なんだ!」と『週刊ポスト』でコメントしている。
 あまり現役選手に批判的な意見を言わない“世界の盗塁王”福本豊氏も「今、現役やったら簡単にタイトル獲れそうやね。だって楽そうやもん」と、珍しく語気を強めている。

OB選手たちが築いた古き良き時代の功績

 どうにも年配OBたちの戯言に思えてしまうのだが……。金田氏の400勝は監督として采配よりも自分の勝ち星や勝率を上げることに血道を上げてなかっただろうか? 4回まで投げていた先発投手を降板させて自分が登板し、勝ち星を稼いでいたなんて話もよく聞く。技術的にもストレートとカーブしかなかった古き良き時代だったと思うのは筆者だけだろうか。
 広岡氏の常勝軍団「ロッテ王国」を作れたというのも眉唾だ。広岡氏といえば先を見通す野球観はあったが、常勝軍団を作れるほどの人望ではなく、ロッテGM時代にはボビー・バレンタイン監督と衝突して解任。その後復帰したバレンタイン監督がロッテを日本一に導いているのを見れば、いかに広岡氏が力不足だったかがわかる。余談だが広岡氏は西武時代に玄米食を選手に強要して、自分は痛風になったりしている。
 今のプロ野球と昔のプロ野球を比べるのは、技術や環境が変わりすぎていて意味のないことかもしれない。「昔はよかった」と懐かしむだけのOBを見て、天国から川上哲治氏はどう思っているだろうか。

(文・編集部)

オススメ新書:『プロ野球向上委員会』[新書](洋泉社)/著:野村弘樹、仁志敏久

タグ

    ブッチNEWS

    新着