FINLANDSインタビュー 1年中モッズ
コートの話題の厚着女性2人組に注目
塩入冬湖(Vo.Gt)新アルバム「BI」
について直撃

歌が気になる、歌詞がやたら刺さる、声がいつまでも残る、正直初めて彼女たちの音楽を耳にしたとき感じたことがそれで、つまり自分が気になる要素が満載で飛び込んできたのがFINLANDSの音だった。印象的なルックスもあいまって一気にきになり、そのうちフェスなどにも顔を出してきた彼女たちはじわじわと浸透してきているのも当然のように思える。そんな中新作をドロップするとあって、Vocal&Guitarの塩入冬湖に直撃した。
――まずFINLANDSといえば、二人とも冬でも夏でもモッズコートというスタイルがリスナーの目を引きますが、あのスタイルができたきっかけを教えて下さい。
初めてのオーディションで、映像を撮っていただくことになり、何かインパクトが必要だと思った時に、くるりの「ロックンロール」のMUSIC VIDEOを思い出しました。メンバーが厚着をして、冷凍庫の中で白い息を吐きながら演奏をしていて、これだ!と思いやってみたんです。そうしたら入賞することができたのはとても嬉しかったのですが、そこから私たちは「厚着をしているバンド」って書かれるようになり、書いてもらった以上はやるしかないかなと思って、それからずっとこのスタイルです。夏はもちろん暑いですけど、でもこの衣装を着ると、ライヴだ!という、わかりやすくスイッチが入りやすいんです。
――バンド名と衣装は合っていると思いますが、元々北欧ポップスが好きだったとかは…。
じゃないです(笑)。バンド名を考えているときに、国名を複数形にするのがいいなと思っていたので、一番フィットしたのがフィンランドで、FINLANDSという名前にしました。
――ライヴを観ていても、とにかく言葉が突き刺さってきますが、一見冷静で、でも腑が煮えくり返っている歌詞が、ものすごい熱量を持って伝わってきます。
歌詞はデビューした頃の方が、むしろひねくれていたと思います。既存のものに対するヘイトじゃないですけど、わかりやすいことや、ストレートなことをストレートに歌うことに対する嫌悪感が凄くあって。
――なるほど。言葉の部分で影響をうけたアーティストがいたんですか?
pillowsの歌詞がすごく好きでした。一見しただけではわからないけど、もの凄く捻くれていたり、キツイことを言っているんですよね。こういう一周回った悪口みたいのを書くのが凄く好きです(笑)。曲作りは、最初にノウハウを学ばせていただいたのはスピッツです。スピッツの曲をコピーしてよく歌っていました。
――塩入さんが全作詞・曲を手掛けていますが、曲先ですか詞先ですか?
どちらのパターンもあります。ひとつのワードができて、そこから枝分かれして作っていった歌詞に、曲を乗せることもあります。
なんかもうスライムみたいな感じなんですけど(笑)
FINLANDS
――2ndフルアルバム『BI(バイ)』(7月11日発売)はどういう心持ちで制作に臨んだのでしょうか?
今回はこのアルバムに用に全て書き下ろしました。今まで作ってきた曲も聴き返して、入れたい曲もありましたが、『BI』に関しては明確なものが私の中にあったので、あれよあれよと12曲できてしまったという感じです。自分の中では、去年が転換期だったと思っていたんです。それで、変わったことによって自分が他人と関わりをすごく持つようになったんです。それまでとは違い、人と関わりを持つようになると、逆に自分のことも見つめ直すことができるというか、自分の内側を掘ることが増えてきました。その中で自分の中に浮かんできたキーワードが二面性でした。それをテーマにした曲を作りたいと思いました。FINLANDSを6年間やり続けたことで、自分が戻る場所みたいなものが見えてきて、ストレートな表現で解放してもいいんだよっていうところが見えてきたので、そこは変わったと思います。
――曲を作って、ベースのコシミズ(カヨ)さんとディスカッションしながら、仕上げる感じですか?
いえ、やってないです。全部自分です。カヨはいい意味で、作品に関しては全幅の信頼を置いてくれています。
――二人の信頼関係は、ライヴのMCからも伝わってきました。
そうですね。いいやつというのがわかっていただけたと思いますが、もうあのままなんですよ。いつも「冬湖がそう言うんだったらそうしよう」って言ってくれて。
――コシミズさんが塩入さんを守ってくれている感じ。
そうですね。なんかもうスライムみたいな感じなんですけど(笑)、守ってくれているみたいなところはありますね。それが私の中でメンタルの部分の支えになってます。絶対信じてついてきてくれるから、きちんとしなきゃって思っています。
――曲はアレンジまでなんとなく出来上がった状態で、コシミズさんに聴かせるんですか?
ベース部分だけを空けた音源を作って持っていって、ベースに関しては彼女に全部任せています。彼女のベースラインは自由であることが一番だと思うので、そこは一任しています。
現実的な悲しみや、どうにもならないことが詰め込まれている
FINLANDS
――アッパーな曲もいいのですが、あの高い声と、バラードとかスロータイプの曲の時の低い声との対比が、コントラストとしてすごくいいですよね。1曲の中で色々な表現方法を駆使して歌っているから、一曲一曲に深みを感じます。
ありがとうございます。歌い方の表現のことを言っていただくことってあまりないので、すごく嬉しいです。
――英語がほとんど登場しない歌詞は、日本語が強く、優しく、時に怖く、繊細な表現がその歌によって、聴き手の心に刺さる感じです。塩入さんが書く詞を読んで、女性は失恋とかしていないのに、失恋した気になるくらい浸れそうですよね。
そうですね、地獄に落としてやろうと(笑)。疑似失恋できる曲たちなのかもしれないですね。もしかしたら怨念はこもってるかもしれないですね(笑)。
――リアルストーリーですか?それとも、経験や誰かの話を元に、想像を膨らませていった歌詞なのか、どちらですか?
今まで作ってきた曲は、全てではないですけど、人の話を聞いたり、ネットを見て、得た物語を私だったらどうするんだろうとか、私だったらどういうエンディングが待っているんだろう、バッドドエンドなのかハッピーエンドなのか、そういうのを考えるのがすごい好きです。でも今回は、100%自分のことだったり、身近で起きている、自分が一から十まで目の当たりにしたことだったりを、自分で解釈した上で歌詞にするということをやってみたかった。だからリアリティというか、現実的な悲しみや、どうにもならないことが詰め込まれていると思います。
――一枚通して聴き終わった後、色々な意味ですごく残ります。
色々な意味で、ズーンってきますよね(笑)。
――ズーンってくるし、もう一回聴いてみようって思います。
それは嬉しい!
――ライヴは女性ファンが多いですよね?
最近女性の方が凄く増えました。女の子が来てくれるようになってから、歌詞を見返してみても、共感してもらえているのかなって。どうしても女性目線で曲を書くので、そこに何かを感じてもらえているのかなと思うと、凄く嬉しい。
――男性ファンも多いです。あの歌詞をどう思っているのか、聞いてみたくなります。
どういう気持ちなんですかね(笑)。でもFINLANDSのお客さん、皆さんすごくいい方が多くて、とりあえず騒げばいいとかではなくて、曲によってはおとなしく、きちんと聴いてくれます。だから暗い曲の時は、女の子は泣いてくれてたり、男の人はじっと聴いてくれていて、そういう時どう思っているんだろうなとは思います。
――恋人とか、元彼とかのことを考えて、それがストレスになって怒っている曲とかもあるし。
あります。それを考えるとなんか申し訳ない気持ちになりますよね。でも男の人でも、恋愛中だったり、生活の中で感じる悲しみは、男女関係なくわかってもらえる部分もあると思っています。
ずっとフラットなんです。落ち込んだりとかもあまりなくて
FINLANDS
――『BI』は全曲、自分の子供のような存在だと思いますが、中でも特にお気に入りの曲を教えていただけますか?
「プリズム」と「BI」が個人的に凄く好きな曲で、両方ともスローテンポなんですけど、自分自身で特にいいなと思っている曲で、アルバムのエンディングを迎えるということをやりたくて。「ハイライト」も自分の中ではかなりしっくり来ている歌詞というか。
――これもスローテンポですが、そこに激情が迸っている感じです。
その通りです。最後のサビのところが「可哀想でもいい」という歌詞で、自分がこの歳になってこういう言葉を使うと思っていませんでした。自分にプライドのない言葉を使うと思っていなかったので、でもそれをストレートに言える年齢にもなっているんだなということを考えながら作りました。人生で一度くらい自分が誰かのために、すごくかわいそうな存在になっても、立ち直れるし、悪くない、大丈夫という意思表明でもあって。だから悲しい気持ちではなく、結構パキッとパリッと乾いた気持ちで「可哀想でもいい」って言っている歌です。
――気持ちの浮き沈みが激しいタイプですか?
それが私、ずっとフラットなんです。落ち込んだりとかもあまりなくて、ずっと同じで、それは20歳くらいから変わらないです。あまり気分屋というのも好きじゃなくて、ずっと同じテンション感でいたいです。曲を作り始めると、たぶん自分とは違う、架空のメンタルを持ってるものが出てくると思います。自分が明るいからこそ、暗いものに対する耐性があるのではないかと。
――FINLANDSの将来像を教えて下さい。
一生音楽をやって、生活をしていきたいんです。そのためには自分で昔のことを振り返った時に、例えばあの時なんで人の意見に流されたんだろうという過去を作りたくなくて。色々な人から色々な話を聞くにつれ、それを受け入れていって今のFINLANDSを良くしていくのだとしたら、バカみたいに売れるというよりも、ずっと音楽を聴いてくれる人がいてくれて、それを長く続けて、作品を作り続けていくというのが理想だと思っています。
――“ガールズバンド”と呼ばれるのはどうなんですか?
ガールズといっていいほど若くはないですが、そう言っていただけるなら全然ガールズバンドで(笑)。ガールズバンドと言われる人たちの中には、やっぱりどこかで女だからってナメられたくないとか、ガールズバンドって呼ばれることを良しとしないという人もいると思いますが、でも私は女で、そこでいい思いができるんだったらそれでいいと思うんです。別に贔屓してくれても構わないし、それは私が女性として生まれた運命なので。でも世の中では、その部分を請け負い過ぎていることが、裏目に出ている人、ことも多いと思う。
――FINLANDSも男性アーティストも、同じように強さと弱さを曝け出しているという意味では、変わらないですよね。
みんな人間なので、根本的には性別関係なく感じるものってあると思う。それをどれだけ出しているかというのが、バンドの色になると思っています。
――9月から対バンツアー『BI TOUR』と『BI TOUR ワンマン』がスタートします。
対バンツアーは自分達が大好きなアーティストをお誘いしているので、負けないぞという気持ちよりは、恥ずかしくないライヴをやらなければ、と思っていて、ワンマンは10月16日の渋谷クラブクアトロを、何が何でも売り切ります!

FINLANDS

取材・文=田中久勝  撮影=三輪斉史

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