2次元をぶち壊す2.5次元!?『宇宙戦艦
ティラミス』、校條拳太朗×高本学×
米山和仁インタビュー

2016年7月「このマンガがすごい!WEBオトコ編」第3位の漫画『宇宙戦艦ティラミス』の舞台が、7月25日(水)に開幕する。宇宙戦争が繰り広げられている壮大な背景の中、戦闘ロボットのパイロットらが繰り広げる日常を描いたギャグ漫画で、アニメ化もされている。
今回、漫画ともアニメとも違う、舞台(ステージ)ならではの“ティラステ”を目指した。一体どんな仕掛けがあるのか!? 稽古場にお邪魔し、主役のエースパイロット・スバルを演じる校條拳太朗、スバルの兄イスズ役の高本学、演出の米山和仁に話を聞いた。
ペースメーカー校條、ムードメーカー高本
--かなり実写化が難しい作品だと思いますが、舞台化の話を聞いてどう思いましたか?
校條 これどうやるんだろう、とビックリしました。みんなで台本の読み合わせをしたら謎が解けるんだろうなと思いながら、実際に読み合わせをしたら……謎が深まった。
高本 登場人物が15人くらいいるのに、出演者が7人しかいないんですよね。これはどうなるんだ!?と思っていたら、稽古に入っていろいろ解明されています。
米山 読み合わせではみんなが「これはやばい」という空気になっちゃったよね。だから俺だけは「これはいけるぞ」というハッタリをかましたけど、内心ドキドキしていました。今だから言えるけど(笑) 最初は出演者ももっと増やすか悩んでいたけど、7人でギュッとまとまって良かったです。
--ますますどんな作品になるのか興味が湧きます!
米山 大きなテーマは、演劇のエッセンスを存分に入れることでした。アニメ化も舞台化もしているので、舞台ならではの感覚をお客さんに味わってもらいたい。全員でセリフを喋るという古典的な演劇の要素といったような、僕が高校の頃から見てきた演劇のブームみたいなものを散りばめて、2.5次元のエッセンスも入れて、極力、俳優の肉体とスタッフ力で創ります。役者さんは大変ですけれどね。もともと原作の宮川(サトシ)くんが地元も同じで飲み友達なので、つまらないものを創って呆れられないようにと気合が入っています。最後のシーンでは大仕掛けをしたいなと目論んでいますよ。
校條 へえ、どうなるんだろう!米山さんからは僕らが発想していないような演出がくるので、予想外で楽しいんですよ。他の方とはまた違うパンチのきいた演出です。
高本 稽古の早い段階から本番で使う曲をかけるのが新鮮でした。気持ちの盛り上がりがわかりやすく、プランが明確なので、演じやすいですね。
校條 どういうシーンにしたいのかイメージできるので、こちらも思い切りやれるんです。「この場面はものすごくくだらない内容だけど、すごく悲しいシーンにするつもりなんだな」と共有できて、みんなの空気が一つになります。
校條拳太朗
--米山さんから見たお二人はどんな俳優ですか?
校條 怖いな〜!
米山 校條くんは物語のペースメーカー。主人公なのでほぼ舞台上にいるんですが、だれることなくずっと気持ちいいリズムでお芝居を進めることができる。でも実は、校條くんに主演のスバルを演じてもらうかどうか、最初は迷ってたんですよ。他の役になる可能性もあった。結果的に校條くんが主役に決まったことで、脚本家、主演、演出家が岐阜出身者という、グランドクロスが起こった。まさに運命。これは、岐阜公演で何かが起こるかもしれません!
--高本さんはどんな俳優ですか?
米山 高本くんはね、ポンコツ。
高本 あはははは(嬉しそう)
米山 「俺は今、不安です」という気持ちがすぐに出るから、早く不安をなくして欲しい。でも最近なくしつつあるね?
高本 少しずつ慣れて来ました。舞台の稽古はいつも不安なんですよ。
校條 まあ確かにペースをつかむのは遅いんだけど、でもそれが役とリンクしていて素敵ですよ。本人と役が合っていてナチュラルなんです。僕が演じるスバルはお兄ちゃんに対して憧れがあるんですけれど、ある時兄への幻想が崩れるんです。その時に「兄さん……」とショックを受けるシーンがすごくやりやすい(笑)いや、ポンコツだって思ってるわけじゃないですよ!
高本 あははは。僕もやりやすいですよ。劇中では兄役だけれど、実際は僕の方が年下。校條さんは普段から座長として引っ張ってくれます。
米山 ランニングから始まったり、「みんなちゃんとやろうよ!」と言ったりしてくれるよね。
校條 したことないですよ!(笑)
高本 引っ張ってくれるのは本当ですよ。座長の人がしっかりしている現場はいいですねぇ。
米山 校條くんがペースメーカーで、高本くんがムードメーカーだね。
高本学
新しい台本を印刷する“ティラステ”稽古場
--ここが面白い!ここを見て欲しい!というところはありますか?
高本 宇宙空間をどう表現するかは見どころの一つかな。
校條 ですね。宇宙という壮大な背景がある。でも内容は家の中で起きているような身近なことというギャップが面白い。「なんでそこにそんなにこだわるの!?」と思うようなくだらないことを僕らは真剣にやっています。
高本 舞台はナマなので、目の前で僕たちが一生懸命に生きている様子がアホなギャグになるんですよね。
校條 人と人とのコミュニケーションも面白いですよね。スバルは最初コミュ障なのに、他の人と触れ合って変わっていく。スバルだけでなく、それぞれに物語があるので、いろんなキャラクターの目線で何度も見て欲しい。一度じゃ足りない舞台だなって思うんですよ。一度見ただけじゃ追いつかないかもしれない。あえて7人でやるということも楽しんでいただけるポイントかな。それに磯貝(龍虎)先輩を筆頭にみんな自由なので、舞台上でのハプニングも起こりそうですね!?
--お気に入りのシーンはありますか?
校條 原作にないオリジナルのシーンがあるんです。主人公がある感覚に目覚めて、新たに見えてしまう世界がある。そのシーン、台本には「上司が部下から虐げられている」としか書いてないんですけれど、最終的に、本編を脅かすほどのインパクトになりましたね。舞台“ティラステ”ならではのシーンなので、楽しみしていてください!
米山 原作関係者やアニメ関係者が「変えてもいいから面白くしてください」というスタンスなんです。見たことないものを見て欲しいという気持ちがあるので、役者たちも「仕掛けてやろう」という意欲が強いですね。現場で作って行くので、稽古場にプリンターがあってリアルタイムで新しい台本を刷っていくんですよ。
校條 あっ、もうひとつ個人的なお気に入りのシーンがあって、それは原作にある「陰毛」との会話。スバルにとって自分の隠毛は、ほかの宇宙船乗組員とうまくいかなくて引きこもっている中での唯一の話し相手なんです。その陰毛と話す楽しそうなスバルを演じられるというのが、僕はすごく嬉しい。
米山 校條くんは普段から陰毛と会話してるからね。
校條 (米山の冗談に乗っかって)そうなんですよ〜。「お前なんでそこにいるの!?」とかってよく言っちゃうんです。
米山 いるいる。体育館とかにね。
高本 あははは。
--なんだか中学生男子の休み時間みたいなノリですね。物語だけでなく、稽古場も“男子感”があるんですね!
校條 そうかも。物語のエピソードも男なら「わかるわかる〜!」って言っちゃうようなことがあって楽しいですよね。こじらせ男子がいっぱい登場する。
高本 みんな変なところをこじらせてますよね。コックピットを掃除しているところを「やだ、勝手に見ないでよ!」とかね。めんどくさいんだけど、わかるし、笑っちゃうんですよね。
米山 そういう、漫画に登場するくだらないエピソードもちりばめながら、スバルの成長や兄弟の関係を軸にしています。漫画は1話完結なので、2時間の舞台にするにあたって「成長」をキーワードにしました。
米山和仁
--この舞台を通して、俳優として、演出家としてご自身が「成長」したい課題はありますか?
校條 きちんと笑える舞台にしたいです。笑いの多い舞台なので、笑えないと寒くなっちゃう。力のあるキャストさんたちに学びながら、脚本や原作から笑いを勉強しています。
高本 キャストの皆さんや米山さんから学べることが多いので、僕も今まさに吸収している最中です。笑いを中心とした舞台は初めてで未知の世界ですが、笑わせようと力むのではなく、その場を真剣に生きることが自然と笑いにつながる気がします。
米山 僕は、二人にも言ってないんだけど、クライマックスで新しい試みに挑戦しようと思ってる。宇宙空間とロボットと巨大な犬を同時に表現するという、大きな課題があるんですよ。やるからには面白くしないと行けないから、強烈なパンチを入れたい。これからまだ台本の追加があるよ。
高本 は、はい!
米山 でも幕が開いたら、きっとみんな好きなようにやるだろうからね。こっちも自由にできる余白を作っているので「好きにしなさい」と。でも退館時間は守ってね、お客さんが帰れなくならないように。
--公演ごとに変わっている可能性もありますね!しかも期間も長く、3ヶ所で公演がありますから、どんどん進化するかも。
米山 またそれぞれの公演の間が1週間もあいてますからね。みんな変えてくる可能性がありますね。校條くんなんて岐阜は地元だから、気合い入ってるんじゃない?
校條 どこでやるにも気合は入っていますよ! でも、生まれて初めて地元で公演するのは純粋に嬉しいですね。育った地元で、変化した自分が、仕事で恩返しができる。岐阜の方は、東京と大阪に比べると舞台を観る機会が少ない方も多いと思うので、楽しんでいただきたい。他の地域の方も、ぜひこの舞台をきっかけに岐阜に来て、岐阜のいいところを知っていただけると嬉しいです。また大阪は大阪で笑いに対して貪欲で、身を乗り出してくださるので、楽しみですね。
--“ティラステ”、一体どんなステージになるのか楽しみです!
校條 まったく想像がつかないと思いますが、ナチュラルな気持ちで来ていただけると素直に楽しんでいただけるのでは、と思います。「2.5次元」という枠にはまらない、ほかにはない要素や演劇くささも強いので、演劇として楽しめる作品です。
高本 「この2時間楽しかったな」「観てよかったな」と思える舞台になるよう、熱量を持って頑張りたいですね。今まで僕がやって来た舞台とは違う光景が広がっているので、お客さんも新しいものが観られるんじゃないかと思える魅力があります。
米山 最近、アニメや舞台の原作舞台が多いですが、その中でもまた違ったアプローチの舞台になっているはず。「原作、壊してもいいですね?」「いいですよ」と許可もいただいたので、原作といい関係の上で壊して、新しい作品にしたいです。
校條拳太朗
取材・文・撮影=河野桃子

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