FIVE NEW OLDがStampとDATSを迎え、
新体制のキックオフ 渋谷クアトロ公
演をレポート

"Easy Come, Easy Go vol.11" 2018.7.6 渋谷CLUB QUATTRO
Easy Come, Easy Goとは、“簡単に手に入るものはすぐに出ていく”という英語のことわざ。その言葉をタイトルに冠したFIVE NEW OLDの企画イベント“Easy Come, Easy Go”が、7月6日に東京・渋谷クラブクアトロで開催された。ゲストはタイのシンガーソングライター・Stampと、盟友と言っていいバンド・DATSの二組。一夜限りで消えるものではない、確かに残り続ける音楽と人。そこにあったのはその場にいなければ感じ取れない、国もカテゴリーも超える喜びの絆だった。
Stamp 撮影=umihayato
Stamp 撮影=umihayato
「コンバンワミナサン! タイカラキマシタ! ヨロシクオネガイシマス!」
FIVE NEW OLDのHIROSHIいわく“タイの星野源”あるいは“タイの福山雅治”、Stampのライブはとことんハッピーなエンタテインメント精神あふれるものだ。キーボードの入った4ピースのバンドを従え、エレクトリックギターを抱え歌うシルエットは紛れもなくロックスターだが、常にニコニコしっぱなし、ひょうきんな日本語MCでどっと湧かせる姿にスターの気どりはまったく無し。タイ語、英語、日本語を駆使する楽曲は、ソウルやディスコなどダンサブルな要素を取り込んだ、ちょっと懐かしい感じのポップな正統派歌ものロック。ジャンプ! テビョウシ! イッショニウタッテ!と、あまりのノリの良さに誰も彼もが引き込まれ、最後は盛大な拍手と大歓声に包まれる、さすがタイNo.1と称される人気者ならではの圧巻のパフォーマンス。ほほ笑みの国からやってきたアーティストは、すべての人を笑顔にしてしまう天才だった。
Stamp 撮影=umihayato
DATS 撮影=umihayato
「俺たちと一緒に楽しんでいこうぜ。アーユーレディ?」
ドラム1台にキーボード3台、DATSのスタイルは生のグルーヴとループミュージックを合体させた、レトロフューチャー感覚のダンスミュージック。端正なテクから躍動感あるトライバルビートまで、ルーパーを駆使して次々とビートを重ね合わせ豊かな音像を構築し、ボーカル・MONJOEが荒々しいほどエモーショナルな歌声を聴かせる。曲によってドラム、ベース、ギター、シンセ&ボーカルのスタイルにも変貌し、パンクバンドのように熱狂を煽るシーンもある、DATSの音楽はナマ感とループ感のバランスが最高だ。しかも曲が短くて飽きさせない。あっという間に残り2曲になったところで、MONJOEが語りだす。数年前にHIROSHIと、日本の音楽を活性化させようと誓い合ったこと。“Easy Come, Easy Go”の意味の通り、一過性のBUZZではなくバンドのケミストリーそのもので大きくなっていくこと。最後は“いいこと言ってんな、俺”と照れてしまったが、さすがは盟友。FIVE NEW OLDとの精神的なつながりの強さを感じさせる、120%のパフォーマンスでフロアを沸騰させてくれた。
DATS 撮影=umihayato
DATS 撮影=umihayato
時刻は21時を回り、いつの間にかフロアは溢れんばかりの人で埋まった。この時を待ちわびたオーディエンスの、この日一番の大歓声に迎えられ登場した4人が、ハッピーな解放感を身にまとい「By Your Side」を奏でだす、その瞬間に“今までのFIVE NEW OLDとは違うぞ”とピンときた。音に力がある。プレーに躍動感がみなぎる。子供のように跳ね回るHIROSHIのアクションがピュアすぎる。「Hole」はフロア全体がワイパーで左右に揺れ、「Foxtrot」は心地よくソウルフルな風がフロアを吹き抜ける。WATARUとSHUNが目くばせをしてニコリと笑う。いいグルーヴ出てるよね、という心のやりとりが言わずともわかる。
FIVE NEW OLD 撮影=umihayato
「いつもより世界が違って見える、いつもより自分が好きになれる。そんな感覚を僕たちの音楽で届けられたらと思います」
力強いファンクチューン「Gold Plate」はWATARUがフロアに飛び降り熱いソロを弾きまくる。スムーズ&メロディアスな「Dance with Misery」はリズム隊の息の合ったコンビが素晴らしい。「The Dream」はタイトなビートと鋭いカッティングに乗せHIROSHIが男らしく吠えるように歌う。ブラックミュージック・ベースのスマートなロックサウンドの中で、1曲ごとに見せ場を変えながらグルーヴが持続する。1月に出た傑作アルバム『Too Much Is Never Enough』の制作と、その後のツアーでの経験が彼らを変えたのだろう。以前はあった線の細さが解消され、バンドはたくましく成長している。
FIVE NEW OLD 撮影=umihayato
「今日を持ちまして、メンバーに加入したSHUNくんです!」
オーディエンスへの感謝の言葉を告げたあと、HIROSHIがさらりと重大発表を口にした。フロアを包み込む拍手と歓声は他人のそれじゃない、身内を祝福する親密さだ。「これからは4人とスタッフ一丸となって、みなさんの生活に彩りを添える、ワンモアドリップできる音楽を作っていきます」と、SHUNが照れながらもしっかり締める。バンドの結束が固まったことで新しいビジョンが開ける、今日のライブはその記念すべき第一歩だ。
FIVE NEW OLD 撮影=umihayato
本邦初披露、4人になって初めて作った新曲「Gotta Find A Light」は、ミラーボールがぐるぐる回るハッピーなディスコチューン。「Black & Blue」から「Sunshine」へ、ぐんぐん早まるスピードに乗ってステージを駆け抜け、フロアを指さし、笑顔でサムアップするHIROSHIの姿を見ているだけでウキウキする。ふんわりメロウな曲調と情熱的な歌のバランスが素晴らしい「Stay(Want You Mine)」、そしてシュ―ゲイザーばりのノイズギターの壁が立ちはだかるインスト「My Sacred Chamber」から「Liar」へ。こうしたラウドなロックチューンも彼らのルーツの一つとして、ライブで絶対の力を発揮する大きな武器の一つだ。
FIVE NEW OLD 撮影=umihayato
「ささやかな日常の繰り返しの中で、いいことも悪いこともある。今日ここで過ごしたことが、明日のあなたの力になれば」
HIROSHIの熱い言葉を受け、ラストチューン「Ghost In My Place」の軽やかなディスコ調のグルーヴに乗ってフロアの全員が手を上げる。盛大なクラップが一体感を生む。ミラーボールがきらきら輝く。もはやステージの上も下もない、一緒に揺れるのがFIVE NEW OLDのライブ。SHUNを正式メンバーに迎え入れた4人は、最強の武器を手に入れたゲームの主役のように自信に溢れ、フロアを完全にロックしている。
FIVE NEW OLD 撮影=umihayato
アンコール。ステージに呼び込まれたStampからFIVE NEW OLDへの「FIVE NEW OLDノキョクハスバラシイ。ホコリニオモイマス」というメッセージに続き、アルバム『Too Much Is Never Enough』に収められた両者の共演曲「Good Life feat. Stamp」の、本人を迎えての再演が実現した。Stampの持ち前の明るさが、バンドの持つポジティヴなエナジーを何倍にも増幅する。演奏が終わっても元気いっぱいのStampが、スマホでみんなの写真を撮ってはしゃいでる。FIVE NEW OLDの4人も屈託なく笑ってる。終わってみれば3時間を軽く上回るロングパーティーだったが、退屈や疲れとは無縁のとことんエネルギッシュで前向きなヴァイヴスに満ちた充実の時間。THE BEST IS YET TO COME。ここから始まる新しい4人のヒストリーの1ページ目に立ちえた幸せを、これを書いている今もまだかみしめている。

取材・文=宮本英夫 撮影=umihayato
FIVE NEW OLD 撮影=umihayato

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