CHAI 大盛況ツアーの追加公演で見せ
た、タフな愛が溢れるCHAIワールド

3rd EP「わがまマニア」リリース記念「Because ウィーアー・CHAIトゥアー~ワンマンだよ~」

2018.7.14 渋谷クラブクアトロ
CHAI初の全国6ヶ所7公演のワンマンツアー『3rd EP「わがまマニア」リリース記念「Because ウィーアー・CHAIトゥアー~ワンマンだよ~」』。全公演SOLD OUT、各地大盛況で、2日前の恵比寿リキッドルームも完売し、追加公演となったこの日も完売の満員御礼。CHAIのコスプレと思しき10代から、かなりオシャレな20代女性、ニューウェーヴ現役世代と見受けるミドルエイジの男性まで、まるで洋邦混交フェスのようなオーディエンスのダイバーシティにわくわくする。お客さんはバンドの鑑と言うけれど、CHAIのライブは中でもそのことを見事に体現している。
CHAI 2018.7.14 渋谷クラブクアトロ 撮影=中磯ヨシオ
テーマソングに乗ってバンドネームをあしらった電飾が点滅するのに合わせてクラップが起こる中、メンバーが登場すると、男性女性問わず大きな歓声が上がる。ピンクの衣装をまとった小柄で黒髪、赤いルージュでキメたあの4人を、テレビ以外で初めて見る人も多そうで、4人の存在感に思わず声が出た人もいそうだ。
オープナーは、EP「わがまマニア」同様「We Are Musician」。キャラや発言がキャッチーゆえにピックアップされることも多い彼女たちだが、この曲のテーマ通り、何と言っても曲がかっこいい。マナ(Vo / Key)のハイトーンなのにふんわりした声質と抜群のリズム感、カナの辣腕ギタリストぶり、そして男前なユウキ(Ba)とユナ(Dr)のリズム隊が叩き出す強靭なビートの気持ちよさ。ノンストップで「Sound & Stomach」「ボーイズ・セコ・メン」「あのコはキティ」と、カラフルなのにクールなCHAIワールドが展開していく。USインディーもポストパンクもヒップホップも完全に消化しきっている印象は、演奏の緩急や、より磨きがかかったマナ&カナのマジカルなコーラス、スムーズなラップのせいだろう。
CHAI 2018.7.14 渋谷クラブクアトロ 撮影=中磯ヨシオ
CHAI 2018.7.14 渋谷クラブクアトロ 撮影=中磯ヨシオ
USツアーをやったとしたら、おそらく世界のどこでも通用するであろう英語での自己紹介。「初めてCHAI見る人は色々と思うことがあると思う」とメンバー自らのコンプレックスをMCで披露。ユニークなのが、マナの英語をユウキが訳していくスムーズさが、ショーの見せ場の一つになっていること。
インディロックもソウルレビューもDEVOみたいなシュールさも全部インクルードしつつ、CHAIでしかないライブの流れを作っていける強みは、この1年で凄まじい勢いでパワーアップされていた。さらに「わがまマニア」の宣伝をお立ち台からアピールしたり、全員前に集合して敬愛するABBAの「ダンシング・クイーン」の替え歌をアカペラで歌いながら踊ったり、自己紹介の最中も音楽が止まることはない。
CHAI 2018.7.14 渋谷クラブクアトロ 撮影=中磯ヨシオ
CHAI 2018.7.14 渋谷クラブクアトロ 撮影=中磯ヨシオ
笑顔のたえない自己紹介タイムから、ユナのキックから歓声が上がった「N.E.O.」に突入。『ミュージックステーション』でも披露されたこのナンバーでのフロアのうねりがすごい。つづく「ハイハイあかちゃん」は双子のマナ・カナがお立ち台でパフォーマンスする、ドラムとベースだけでアレンジされたライブver.で魅せる。さらには攻撃的なデジタルなエフェクトがフレンチエレクトロあたりと共振するEP「ほめごろシリーズ」時代の「クールクールビジョン」。お立ち台からフロアを煽るマナのカリスマ性に瞠目しつつ、続く「フライド」ではふんわりしたボーカルとブライトなエレクトロサウンドでEDM以降のポップソングを体現していく。サウンドがエッジーなだけでなく、マナの歌メロがはっきり聴こえることはやはり強みだ。
CHAI 2018.7.14 渋谷クラブクアトロ 撮影=中磯ヨシオ
長めのMCでは「わがまマニア」にちなんで、CHAIの言う“わがまま”は“そのままの自分”のことと説明した後で、マイわがまま=やってみたいことやこだわりをメンバーも喋り、フロアにも聞いていく。前方の女の子は「青春したい」と言い、メンバーに「キュンキュンする! かわいい!」と絶賛され、「風呂上がりにアイスを食べたい」と言う男性には、「CHAIも食べてる、食べてる。絶対、アイスと餃子の皮はストックしてるから」と、まるでCHAIハウスの会話なんじゃないか?という内容で笑わせる。そのMCからの流れでさらに納得の「アイム・ミー」、サングラス装着でフロアも一体となってブーイングの嵐が巻き起こる「ぎゃらんぶー」、メジャーとマイナーを行き来するメロディラインや高度なコーラス、カナのノイジーなギターがサウンドの渦を作る「FAT-MOTTO」で、ロングセットならではのCHAIの音楽的なレンジの広さも存分に楽しませてくれた。
ユナのMCに絡めたグッズ紹介をテンポよく挟みながら、本編の終盤はCHAIが音楽的によりスケールアップし、大きなグルーヴでオーディエンスを揺らす「ほれちゃった」、さらにBPMを落としスペイシーなムードも漂わせる最新のポップチューン「フューチャー」でフィニッシュ。世界の今のシーンで戦えるタフさを備えたナンバーを本編ラストにセットした彼女たちの意志に感銘を受けた。
CHAI 2018.7.14 渋谷クラブクアトロ 撮影=中磯ヨシオ
アンコールではユウキ・デザインの紙製サンバイザーを装着してステージに登場し、「Center of the FACE!」、そしてCHAIの根幹にあるメッセージを言語化した「sayonara complex」で、充実したツアーファイナルは満場のキラキラした笑顔とともに終演した。
すでにキャパを増した秋のツアーも発表され、7月末の『フジロック』では重要な時間帯を任されているCHAI。“NEOかわいい”“わがままは自己中とは違う”というテーマはライブでこそ、母性的とすら言える大きな愛とタフだからこそ生める笑いで実感できる。ここでは誰も疎外されないし、だからこそ誰もが優しい。自由のために音楽を柔らかく研ぎ澄ますという離れ業をやってのけるCHAI。彼女たちが今必要とされている理由が120%ぐらい伝わるライブだった。
取材・文=石角友香 撮影=中磯ヨシオ
CHAI 2018.7.14 渋谷クラブクアトロ 撮影=中磯ヨシオ

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