石井竜也がポップスについて語る「良
い言葉で歌詞を作り、記憶に残す音楽
を作ることが一番難しい」

2020年の東京オリンピックが近づくにつれ、日本と海外諸国との距離がどんどん縮まっている昨今。私たち自身も改めて日本の文化、歴史と向き合う機会が増えている。そんな中、ミュージシャン・石井竜也が「ネオジャパネスク」「ヒューマン」をコンセプトに掲げて企画・演出するコンサートツアー『陣-JIN-』が、4月の東京・明治座からスタート。そして8月4日から、いよいよ大阪・新歌舞伎座で14公演がおこなわれる。

第1部のエンターテイメントパフォーマンスステージ「将軍たちの午後」では、「もしも日本の鎖国が戦国時代から2120年まで続いていたら……」というアナザーストーリーを背景に、陣取り合戦を繰り広げていた7人の将軍たちが、他国の脅威を前に一致団結。歴史モノでありながらSFでもあるということで、鎧兜を身に纏った将軍たちがSNS用に自撮りをするというユーモラスな描写をまじえながら、石井竜也ならではの眼差しで“日本”をもの語っている。第2部のプレミアムコンサート『天龍降臨』では、4月にリリースされたアルバム「龍」の曲を中心に、石井のヒットナンバーのアレンジなど、いずれの楽曲も“和テイスト”で堪能できる。今だからこそ「日本」について意識を深めたいと思わせる、コンサートツアー『陣-JIN-』。その世界を形作っているアルバム『龍』を通して、長年にわたる石井の音楽づくりについて迫った。
――まず4月に発売されたアルバム『龍』についてお伺いしたいのですが、CD3枚組39曲というかなりボリュームある作品になりましたね。
(楽曲制作に関しては)多産な方なのですが、でも和テイストの曲はそうそう、まとめて作れないんです。時間をかけてバラバラで作ってきました。3年くらい前から「和のアルバムとして一つにしたいな」と考えるようになりました。
石井竜也 撮影=森好弘
――米米CLUBの活動初期から、“和”という部分はかなり意識していらっしゃいましたよね。
そうそう、やっているんですよね。米米CLUBはハレのバンドなので、和の中でも祭り感がある。でも、ソロとして自分がやるなら、ケの部分を出していきたかった。人生の機微とか、楽しいだけじゃなく辛い部分も表現していきたかったんです。
――石井さんのソロ活動は音楽だけではなく、美術、映画監督などもありますが、それらもケの表現と言えますか。
そうかもしれないです。音楽なら、僕はマイナーな曲が好きだったりもするので、誤解を恐れずに言えば、米米CLUBの方向性に辛さを感じたときもありました。格好をつけていたところもあるし(笑)。だけど米米CLUBをやっていて楽しいのは、破壊があるところなんです。既成のものを壊していくところがおもしろい。うわーっと勢いで勝っていけちゃう。泣ける物事であっても、泣いたままにせず、最終的には違う感情を与えられた。それが米米CLUBなんですよね。一方、ソロは派手さはなくても、自分らしい姿が出せるという満足感があります。
――『龍』もそうですし、あと『-陣JIN-』の演目に関しても徹底的に“和”の味わいがありますよね。まさにこれが今の石井さんの自分らしい表現ということですね。
僕も間もなく60歳になるので、自分が興味のあることをちゃんとまとめたかったんです。
――石井さん、もう60歳なんですよね。言われて気づいたんですけど、驚きました!
よく言われますよ(笑)。
――でも、60歳を迎える石井さんが収録曲「おいら・の・まつり」で、<夢のような事言ってんじゃねえなんて大人たちゃ言うケド とんでもねえよな デッケエ夢くれえ見てもバチャ当たらねえ>と若い目線で歌ってくれるのは、すごく嬉しく思えます。
夢くらい、でっかく見てもいい。コンピュータやスマホの中だけで成立する夢じゃなく。今は、何かやらかしたら炎上だとか、社会問題だとか、間違いなく窮屈になっていて、自分で自分の首を絞めちゃっている時代。でも若者の特権ってやっぱり、僕らが米米CLUBでやっていたような、破壊行動なんですよ。で、壊ししてもまた構築できる力を若者は持っている。僕らのようなジジイがやってきたことを、どんどん壊して、更新できるんですよ。そうしないと、若い人も老人のようになってしまいます。
――石井さんは現在でも破壊衝動に駆られることはあるんですか。
若い頃は反逆がモチベーションにあったけど、今となっては破壊と構築は同じようなものなのかもしれないと気づき始めました。作り上げたものをちょっと崩すとか、そういう作業を必ずやるようにしています。きれいなものを作り上げて、でも焦げ茶色であえて汚してみるとか。そういう“汚しの美学”にこそ深みがあると分かってきた。そういうことに気付いたりすると、「年齢を重ねることも良いもんだな」って。歌詞を書くときも、若い頃を振り返り、その上で今の考え方を交えられる。バカも感動も全部できる。そうやって作った曲を、これまでは、「自分が歌わなきゃ」って考えていた。でも現在は、「いつかこの肉体がなくなっても、歌は残ってくれる」と思えるんです。誰かが僕の歌を拾って、歌い継いでくれたら嬉しいなって。歳を取ることに焦りがなくなってきたんですよ。
――歌い継がれること、それがすなわちポップスってことですよね。
ポップスという言葉は親しみがあるから、簡単に言葉に出来ちゃいます。でも、ポップスって一番難しいんです。歌の上手い、下手もすぐ見抜かれる。メロディー自体も、決して難解ではない。だからこそ、聴いた人にちゃんと覚えてもらったり、歌ってもらったりしなきゃいけない。ちゃんと記憶に残るものを作らなきゃいけないし、ちゃんと良い言葉で歌詞を作らなきゃいけない。でも、それってもっとも難しい。
石井竜也 撮影=森好弘
――それこそ米米CLUBの1980年代、1990年代の楽曲って、今でもすらすらと歌えちゃうんですよね。「君がいるだけで」や「FUNK FUJIYAMA」とか昨日のことのように新鮮。リリースから20年、30年が経っても歌詞を覚えていて、メロディーに乗ってちゃんと歌えるなんて、これぞまさにポップス。
確かにいろんな時代観がある中でポップスは作られるし、聴く人たちの感じ方も変わる。米米CLUBもいろいろと見直されている部分もある。そんな中で僕自身、音楽や芸能の世界でちょっと特異というか、おもしろい存在で活動を続けることができた。だからこそ、今は純粋に歌いたいことを歌ってみたい。良いバランスでキャリアを重ねられている気がしています。
――今回のコンサートツアーも、やはり10年、20年先まで評価されるようなものを意識していらっしゃいますか。
もちろん。というよりも僕自身、どんな物事でもそうなのですが、決して瞬間的な高評価を必ずしも求めてはいないんです。今回の和テイストの楽曲にしても、30年くらい前に作ったものもありますし、そう考えると感覚が早かったのかもしれない。ピアノをちゃんと弾いてみたら、日本をテーマにしたいろんな曲とは明らかに違うことが分かる構成。でも、当時は「きっと伝わらないだろうな」という雰囲気があったんです。実際、自分が作ったものと周囲の反応の違いに対するジレンマもありましたから。だから、発表できませんでした。
――今は、東京オリンピックも近づいていますし、和を強調した楽曲も増えていますよね。
ただ、僕は和テイストの曲をずっとやってきたし、そこにプライドを持っている。だからこそ、いろんなミュージシャンに『龍』を聴いて欲しいんです。ポップス的要素に三味線など和楽器を入れるだけではダメだし、メロディーをしっかり構成しないと日本的なポップスにはならないよって。一方で、もっともっと勇気を持って和の曲にみんな取り組んで欲しい気持ちある。そういう意思を今回のコンサートツアー『陣-JIN-』で伝えていきたいです。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=森好弘

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