[第51回]宮澤佐江「ミラチャイ」連載
の6年、200回も続いた理由がインタビ
ューでみえたー仕事、境遇、思いに向
き合う

48グループと舞台。2本の軸を歩むなかで出会った人たちが、佐江ちゃんにもたらした、卒業後の大きな変化とは。「ミラチャイ」連載を彩った数々の写真やエピソードで当時を振り返っていくと、約6年にわたる長期連載になれた理由が見えてきました。

ーーさあ、佐江ちゃん。今回もよろしくお願いします。
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はい! よろしくお願いします!
ーー前回に引き続き、今回も「ミラチャイ」連載の約6年間の軌跡を振り返っていきたいと思います!
はい!
ーーこの回を更新する頃には、4月から公演が続いていた、地球ゴージャス『ZEROTOPIA』の舞台も、大阪公演で大千穐楽を迎えていますね。
そうですね!
ーー地球ゴージャスの舞台には、これまで二度出演した佐江ちゃん。初回は2014年の『クザリアーナの翼』でしたね。あのときも大阪公演があって。「ミラチャイ」取材のため、舞台中の佐江ちゃんを訪ねて、大阪にうかがいました。(第56回)(第57回)(第58回)(第59回)
そうでした。組閣でSKE48に入ることが決まった後の頃ですね。あのときは、大阪まで来てくださってありがとうございました!
ーーこちらこそ、貴重な機会でした。「ミラチャイ」連載では、あの大阪取材から、屋外撮影が始まりました。
あのときの撮影、覚えてるよぉ。大阪では、橋の上で撮影したりしましたよね。
あの頃は毎日、舞台メイクを自分でしていたから、メイクの感覚がいつもと違っていて。「ミラチャイ」取材でも、メイクがめっちゃ濃くなっちゃったときでした。
ーーその取材で、佐江ちゃんが話してくれたことで、とてもうれしかったことがあるんですよ。
実は、話したことって、記憶にないんですよね。それがまたいいというか。
今までの取材だと、「この質問で、こう答えたな」と、自分で覚えているんです。でも、『ミラチャイ』だと、自然とありのままの自分をしゃべってるんだと思います。(第57回)
いつも「そんなに話す必要ないぞ!」っていうくらい、たくさん話してます(汗)。こんなにしゃべったら、編集が大変だろうなと思いながら。でも、気を使わずにしゃべらせてもらってます! すみませんッ!!
ーーいえいえ、うれしい限りです。最大のほめ言葉ですよ。多くの取材では「何を聞かれるのだろう?」と、聞かれる側が身構えてしまうものです。
ああ、嬉しいな。ありのままなのは、今も変わらずって感じです。
ーー佐江ちゃんは根っこにブレがないので、聞き手としても、とても質問しやすかったです。
ぶっつけ本番でも、答えられる
ありがとうございます。これまでに何度もそう言ってくださいましたよね。これだけ長い間、いろんな話を聞いていただいて、「ブレてない」って言われるのは、やっぱりうれしいです。
でも自分的には、「ブレっ、ブレだな」って、思ってるんですよ! 三日坊主で、何事も続かないのはしょっちゅうだし、好きな食べ物もしょっちゅう変わる。
ーー根っこより上の部分でブレるのは当然のことだと思います。なかには、根っこの部分がブレてしまう人もいますから。
そういう人に会ってみたい! どうしたら、そんなにコロッと変われるのかな?
ーー佐江ちゃんのなかで、根っこが固まってないと、ぶっつけ本番で突然された質問には、なかなか答えられないと思うんです。
なるほど、なるほど。
でもいつも、だいたいどんなことを聞かれるか想像しているんです。「今月はこういうことをしていたな。だからきっと、このことを聞かれるな」って。毎月1回、取材をしてもらって、習慣になっているのも大きいと思います。
ーー以前言っていた、「ひと言日記」は、今も変わらずつけていますか?(第62回)
はい。たまにやってますよ。でも、携帯のデータが消えちゃって。だから、前の日記はなくなっちゃったんです。今は、「痩せたい」とか、「今日の体重○kg、あ〜あ…」とか書いてます。
たまに「すっごくムカつく!」とか、腹が立ったときに、バァーっと書いたりしてます。でも今は、そういう愚痴や不満も話せる誰かがいるから、ひと言日記をつける率は、前よりも低くなったかもしれません。
何かがあったら、ひと言日記じゃなく、携帯で誰かにメッセージを送っちゃいます。
ーー確かに、48グループを卒業後は、「ひと言日記」の話題は少なかったですよね。
卒業後の大きな変化
昔、”自分が言ってたことにつながるな”って思ったのは、48グループにいたとき、"今起きてることを、グループ以外の人に話したところで伝わらない"と思っていたんです。だからしゃべれなかったんです。
それは今も同じで。48グループを卒業して、悩むことといえばやっぱり舞台のことで。でも、今何が起きているかを、現場にいる以外の人にしゃべっても、伝わらないと思うんです。(第3回前編)
今では、何かで悩んだとき、「この思いはこの人にはき出そう」とか、プライベートでうまくいかないことがあったら、「この人に聞いてもらおう」とか。自分の周りに、そういう人がちゃんといるようになって。
あと、いつも一緒に海外へ行かせてもらっている、友だちというより、お姉さんがいて。その方が、いろんな視野でものを判断できる方なんです。
そのお姉さんが、芸能のお仕事をしている方の、「ここをもっとがんばろう」とか、「こういうやり方もあるよ」っていう言葉とは、また違った言葉をくれるんです。
例えば、「佐江ちゃんは、芸能の世界にいるからそう思うだけで、一般的に見たらそんなの全然普通だよ」とか。芸能のお仕事をやっている方ではないからこそ、一般的なことを教えてくれるんです。
だから、芸能の世界の考え方や、ものの見方しかないと、これまで思い込んでいた自分を気づかせてもらえたんです。なので、お姉さんと出会って仲良くなってから、ストレスがすごく減って、すごく救われているんです。
親に言うと心配してしまうことも、このお姉さんには何でもはき出させてもらってます。
ーーそれは、卒業後の大きな変化ですね。
そうですね。ひと言日記をあまり書かなくなった理由ですね。話したことで、がっつり同情してくれるわけではないんです。でも、「それは、佐江ちゃんが悪いよ」って、冷たく突き放されるわけでもなく。
「そういう人もいるよね。でも、こういう考えの人もいるからさ。こういう考えもあるってことを頭に入れておくだけで、楽にならない?」って、言ってくれて。話をしていると、すごく心が和む方です。
ーー悩みを誰かに話すというところでは、48グループにいたときの佐江ちゃんと、後輩メンバーとのやりとりについても話してくれたことがありましたよね。佐江ちゃんの考えが、とっても新鮮だったのを覚えています。
私は、相談にのってるつもりは全然なくて。後輩にとっては、ただただ、話してる言葉が「相談にのってもらった」っていう感覚になってくれているみたいなんです。
「相談にのってもらった」という言い方にするんじゃなくて、「刺激をもらった」とか、ちょっと言い方を変えるだけで、「箱に入れるものが違う」というか。
自分の中にある、「吸収したものを入れる箱」っていうのかな。「刺激をもらった」っていう引き出しに入れるもの、「相談にのってもらった」っていう引き出しに入れるもの。整理整頓されるな、と思って。
(第138回)
うん、言った、言った。覚えてる。
それは今も変わりません。「そうなんだ。マジかぁ? へえーっ!」って、言いながら話を聞いただけなのに、「相談にのってくれてありがとう」って、言われることがあるんです。
自分は相談にのってるなんて、まったく思っていないから「ええ?」って、思っちゃうこともあります。でも、相手がそれですっきりするんだったら、それはそれでいいと思うんです。
ーー佐江ちゃんに話すことで、話した人は、自分の考えを整理できるんでしょうね。
刺激、相談、新しい「箱」
そう思います。話すときの心持ちというのかな? それが、話を聞いてもらいたい人と、刺激をもらいたい人とでは、違うと思っているんです。
話を聞いてもらいたい人って、たぶん自分がどうしたいかはもう、自分のなかで決まっていると思うんです。ただ話すことで、背中を押されたいというか。
刺激をもらいたい人は、”自分ではどうしたらいいかわからない”とか、”自分とは違う意見を聞きたい”と思っているんじゃないかな。いずれにしても、相談とは、また違うと思うんです。
ーー佐江ちゃんは今、誰かに相談にのってもらうことはありますか?
「相談」っていうワードは最近全然使ってないですね。相談はしてもいないし、されてもいないかな。
ただ、「これ、どう思う?」「私は、こう思うんだよね」って、言ったことに対して、相手が「それはこうだよね」って、言ってくれることはあります。「なるほどな」と思うので、それは意見を聞いたことになるのかな。
あと、「刺激」かな。知らなかったことを知れるというか。大きく言ってしまえば、どれも「相談」なのかもしれないけれど。
ひと言日記の話につながるけど、愚痴や不安や、そのときのちょっとした感情を、昔ほど自分のなかにため込むことはなくなったと思います。感情をはき出せる場所は、友人、家族問わず、以前よりすごく増えたと思っています。
なので、今は、新しい「箱」も増えましたよ。
ーー「刺激をもらった」「相談にのってもらった」の他に?
そう! 「話を聞いてもらった」っていう、新しい箱です(笑)
ーー(笑)。まだまだいろんな「箱」や「引き出し」がありそうですね、佐江ちゃんには。
うーん、どうだろう(笑)
ーー(笑)。さあ、話をどんどん先に進めていきましょう!
はーい!
ーー「ミラチャイ」連載史上、佐江ちゃんがもっとも疲れていたであろう取材がありました。それは、舞台『AKB49 〜恋愛禁止条例〜』を、終えたばかりの頃の取材でした。(第80回)(第81回)(第82回)(第83回)
今となっては思い出せない。記憶がない
あ! あのときは、マジで…、疲れていたときです。
ーーあの日は、「ミラチャイ」取材の前に、DIVAのイベントもあって。なので、夜の撮影だったんですよね。と
覚えてる、覚えてる!
舞台が終わったばかりで、声帯のためのお薬がまだ身体に残っていて。『AKB49』は、1週間で、毎日、昼夜2回公演。休みなくやっていたから、よくやった自分、よくやったよねぇ!! って、言いたい。
ーーまだ製本されていない台本を見せてくれましたよね。分厚さに驚きました! (第76回)
台本に書いてある「実と、みのり、どっちも私の台詞なんですよ(泣)」って、言いながら見せたのを覚えてます。あのときは、本番ギリギリまで台本を持ち歩いていたからなぁ…。自分は座長なのに、ダメだったなぁ。
どうやって、あの台詞を覚えたのか。。今となっては思い出せない。記憶がないんです。
稽古場にも行きたくなくて、「インフルエンザにならないかなぁ」って思ったり(笑)。でも、結果的にやってよかったと思っている作品のひとつなんです。
あのとき声帯のためのお薬を飲んでいて。声を出すためのお薬なんですが、効果もあるけれど、強い薬なので身体がむくんじゃって。あのときは、何かを食べるというよりも、まるで薬を食べていたような感じでした。
千穐楽でパタッと飲むのをやめたから、それまでに蓄積されていたものが、ブワァーッと一気に出てきちゃって。公演中はアドレナリンも出ていたから、それも千穐楽と同時にプツっと終わって、脱力して疲れちゃってたと思います。
ーー本当に疲れているのが見てとれました。でも、だからといって、不機嫌になったり、しゃべりたくなくなってしまうこともなく。取材にはまったく支障はありませんでした。
私、しゃべるの好きだから(笑)。しゃべりたいから。あはははははっ!
ーー約6年間の取材で、佐江ちゃんが不機嫌だったことは、一度もなかったと思うんです。「どんなときも機嫌よくいる」というのは、簡単ではないと思います。
いや、いや、いや(汗)。自分の話をさせてもらえるのが、「ミラチャイ」取材でしかなかったから。他では自分の話は一切しないし。前も言ったけど、基本的に誰かの話を聞くことが多いんです。
「ミラチャイ」で毎月起きたことを話しているから、誰かとカフェとかに行く必要がないの(笑)。本当に、ここでしかしゃべってないもん。
例えば、製作発表とかで、記者の方たちを前にすると、「難しいことをしゃべった方がいいのかな?」とか頭を使いすぎて、かえってぎこちなくなっちゃうけど。「ミラチャイ」取材では、言い間違っても、
「ほら、アレ! アレ…、何でしたっけ? 」
とか言えるから。単語も気をつけずにしゃべれるもん(笑)
ーー(笑)。佐江ちゃん自身、連載がこんなに長期にわたって続くと思っていましたか?
「取材は、1カ月を振り返る場なんだ」
中国に行けない、舞台にも立てないとなったときは、マネージャーさんに聞きました。「ミラチャイの取材、今月もあるんですか?」って。
毎月取材があっても、中国に行けてないから話すこともないし、ましてやAKB48と兼任になっちゃって。元々は、中国に行って活動したことを、日本に帰国してから話す予定だったから、月に1回の取材なんて無理だと思ったんです。
連載の序盤の取材は、そういう気持ちで臨んでいたから、終わるも何も、「連載」っていう感覚がなかったんです。
今月も、来月も中国へ行けない。SNH48が中国で何をやっているかも見えない。でも、「ミラチャイ」では中国語を学ばなきゃいけない。秋には月餅を食べるとか、新年にはこういうものを食べるとか。。
言葉や習慣を教えてもらっても、知識を生かしたり、言葉を使ったりする場所がなくて…。学ぶモチベーションも保てなくなってきて、どうしたらいいんだろうって思ってたんです。(第30回)(第47回)
でも、そのときは気づいてなかったけど、途中で連載の方向性をシフトしてくださって。「取材は、1カ月を振り返る場なんだ」って感じはじめてからは、ずっと連載が続いていってほしいなって思っていた気がします。
ーーそう思っていてくれたのは、とてもうれしいです。取材では、お話を聞くことはもちろん、写真についても、毎回いろんな思い出がありますね。ここからは写真を見ながら振り返っていきましょうか。
はい!
ーー2015年になって、連載も第100回を迎えて。テーマ性を持たせた「衣装シリーズ」がスタートしたのもこの年でした。(第120回)
そうですね。
ーー「衣装シリーズ」は、最初、佐江ちゃんのマネージャーさんから「衣装にテーマをもたせてやりたいんですが、どうですか?」と、連絡をいただいたところから始まったんです。とてもうれしい提案でした。
とっても刺激のある提案でした
季節にそった衣装の方が写真を見ても楽しいし、文字を見ながら一石二鳥で楽しめていいんじゃないかなと思ったんです。それでマネージャーさんに、「ダメもとでいいので、聞いてみてください」って、お願いしたんです。
気づくのが遅かったんですが、「ミラチャイ」では、毎月撮影してもらって、相当いろんな写真を撮っていただいてたから。
撮影は、近場で撮ることが多かったけど、車で移動していろんな場所にも行かせていただいて。
ーーそうでしたね。写真については、編集側でテーマを設けて撮影するのは、1回だけならまだしも、定期的にやるのはなかなか難しいんです。なぜかというと、取材される本人がやりたくない場合もあるからなんです。
そうなんですね。
ーーでも、佐江ちゃんみずからが提案してくれて、さらに前もってテーマがわかると、今回はこの質問をしてみようとか、小道具を前もって用意するとか、取材にも幅ができて。なので、とっても刺激のある提案でしたよ。
ああ、よかった。
ーー「前世はフランスの画家だった?」っていう話をした次の回で、画家の衣装を着て。連載をやっていて、つながりが気持ちよかった回でもありました。(第131回)
あ! つながった! っていう感じですよね。確かに!
ーー「フランスには一度も行ったことがないんですけど、行ってみたいなぁ、フランス」とも、話していて。(第133回)
本当にフランス行ったぁー、また行くんですよ、フランス!(第15回)
ーーつながりがありますよね。そしてあのときは、小道具もたくさん用意しました。
あの小道具は、「ミラチャイ」のトークセッションで、クイズの景品にしたんですよね。
ーーそうですね。こう振り返ってみると、佐江ちゃんが連載のなかで話してくれた、いろんなことがつながっているんです。もしかしたら、この他にもまだ、拾いきれないつながりが、まだあるんじゃないかと思います。
そうですね。衣装シリーズに関しては、夏からだったから、期間にしたら半年間くらいしかできなかったけど。。 いやぁ。。 いいねぇ。。
ーー旧連載の最後はチャイナドレスでしたよね。(第152回)(第153回)(お知らせ)(第154回)。だからよかったと思います。こういうテーマがあったからこそ、卒業発表直後の私服も、また違った意味合いのあるものになったと思います。(第144回)(第145回)(第146回)(第147回)
うん、うん。
最後..........?
ーー衣装シリーズを始めた頃から、写真の掲載枚数も増やすようになって。増やしたことによって、正面を向いてるカットだけじゃない、視線をはずしたカットなども載せやすくなりました。
なるほどぉ。。
ーー写真は、毎回数時間かけて選ぶのですが、1枚目の写真は、基本的にSNSで見たときに一番映える、できるだけアップ気味のカットを多く使ってきました。
へぇぇ!! そうだったんですね。
ーー掲載写真は、毎回2、300枚のなかから選んでいて、最初100枚にしぼって、50枚にしぼって…、と作業を繰り返します。旧連載だと4回、今だと2回分に分けて、掲載順を考えてという具合です。
愛です。もう、愛しかないですよぉ。今は、月に2回更新だけど、以前は毎週更新だったんだから。。
ーー毎週更新だったからこそ、佐江ちゃんが寝ている「おやすみ」ポーズも挿入するようになったんですよ。
えっ!?
ーー「毎週金曜日に何かがある」という、読んでくださる皆さんの習慣を壊したくないという気持ちがあって。何かやりたいなと思って、佐江ちゃんに協力していただきました。
すごいね、連載をやるって。。
ーー改めて6年間を振り返るととても貴重な経験でした。ところで、佐江ちゃん。連載の振り返りが終わらないです…。最終回は、来週金曜の7/27(金)に、特別更新にさせてください!
はい!
ーーそれでは、今回もたくさんのお話ありがとうございました。次回もまた、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました! 自分のありのままでお話できる「ミラチャイ」は、本当に、私の1カ月を振り返らせてくれる場所でした。
次回はいよいよ連載の最終回です。たくさんの写真を見ながら連載をふりかえっていきます。そして、最後は連載をしめる前向きなお話も。次の金曜日をお楽しみに、またお会いしましょう。
撮影:山田大輔 スタイリング: 藤井エヴィ ヘア&メイク:伊藤遥香
最終回の更新は、7/27(金)予定です。

アーティスト

ウレぴあ総研

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