前向きな「後悔」を歌う橋爪もも。逆
境をプラスに変える生き方と、スタイ
ルのルーツ。
異色のシンガーソングライター・橋爪も
も。独自のスタイルのルーツと、最新作
『夜道』に込めた想いとは?
Photography_Takuma Toyonaga
text_MEETIA
Edit_ Kenta Baba
ハードな家庭環境から生まれた広大なメ
ンタル
橋爪 : わぁ、よろしくお願い致します。
――いきなり込み入った話になってしまいますが、小学生の頃から大変な家庭環境だったようで。
橋爪 : ハハハハ。そうですね……大変でした(笑)。
――お父さんがだいぶパンチのある方だとお聞きしました。
橋爪 : はい、すごかったです(笑)。子供相手でもハードな言葉使いだったのと、当時は理解してあげられなかったですが化学物質に過敏に反応してしまう症状があって具合の良くないこともありました。
――父親だけでなく、お兄さんも橋爪さんには当たりが強かったとか?
橋爪 : 強かったです。言葉もですが手が出てしまうタイプでした。彼自身当時色々あったようで、感情のあてどころがなかったのか、妹の私への当たりがなかなかハードでした。
橋爪 : 何も理由がないわけではなくて「みんな何かしら外でフラストレーションを溜めているんだ。私は受け皿になっているけど、それは仕方ないのかな」と幼いながらに理解していたので、そう思って耐えていましたね。
――小学生にして大人…!
橋爪 : 変わった人が周りに多かったので、「もっと広い心を持って生きていかねばならない」って考え方になりました。
ひょうきんな語りは照れ隠し?
橋爪 : そんなに難しいことは考えず、普通に遊んでいたと思います。……ただ、その内容が公園の砂場で遊ぶとかではなくて、1日中、知らないお姉さんの後をついて行って。そのお姉さんが自宅に着いたら、今度は別のお姉さんの後を追いかけて。気づいたら隣の町まで行ってしまって、迷子になったことがあります。
――えっと...なかなか斬新な遊び方ですね。
橋爪 : いま考えると危ないですよね(笑)。
――どうしてそのときは女性について行っていたのですか?
橋爪 : とてもキレイな方で、お尻の形も美しくて、歩くたびに「良い形だなぁ」と思って。気づいたら隣町でした。その性癖が膨れ上がらなくて良かったとおもいます。
――そうですね(笑)。でもラジオ番組(『橋爪ももの生乾き放送』)でよく下ネタを話されていて、小学生の頃からエロティシズム?があったのかなと。
そわそわ…
今夜7月1日24:30〜は!
NACK5
『橋爪ももの生乾き放送~終わりよければ〜』です!2週間ぶりとなる放送…>_<
抑えてはいるものの、ちょこっとテンション高いですが、よろしくお願いします´`#生乾き795↓からスマホアプリ「radiko」で簡単可聴!https://t.co/VfUE6aWDcR
— 橋爪もも*6月20日MiniAlbum『夜道』発売!! (@HasidumeMomo) 2018年7月1日
あまり生々しいのも好きじゃなくて、、そういったことに寛容なのだろうと、たまに下ネタを振られることもあるんですけど、いざ話すとタジタジになります。
――自ら下ネタを言うのは良いけど、急にフラれると困っちゃうよと。
橋爪 : そうなんです(笑)。本来、人に言ったら「それ愚痴でしょ?」と言われるような、素直に口に出せないことを曲にしているところがあるので、それを歌い終わった後の「あぁ、言っちゃった」という、なんとも言えない恥ずかしさをひょうきんなMCの下ネタで濁しているんだろうな、と思います。
ロリータファッションのきっかけとなっ
た1冊の雑誌
橋爪 : そうですね。強烈に好きになったのは中学1年生の頃で。『KERA』という雑誌の表紙を観て「可愛い!」と思って、「私もこうなりたい! こう見られたい」と憧れを持ちました。ただ、ロリータ服って高いんですよね。とても中学1年生には手が出せず、見よう見まねで衣装を作り始めて。当時の友達に「こんなの作ったの」と2人だけでキャッキャしてました。
――その頃って、ロリータに対する世間の認知はいかがでした?
橋爪 : まだまだ偏見が強かったです。映画『下妻物語』が公開されるまでは、甘ロリに世間がギョッとするものがありましたね。ロリータという、ジャンルや名前も認知されてないので、何だ、あれは?!と陰口を言われたり・・・
――『下妻物語』が上映された後は、僕の地元でも甘ロリの服装をしている同級生が数人現れました。やっぱり、あの映画以降と以前は違いますよね。
――ちなみに、学校のクラス内ではどのようなタイプでしたか?
橋爪 : あまりどこのグループにも属していないようなタイプでした。寂しいなーとはうすうす思うのですが、辛いとは思わなかったです。むしろ、周りに合わせることが辛かったですね。それなら、教室の隅で静かに本を読んでいる方が楽だなーと思ってました。その中でも仲の良い子は1人、2人いたので、思春期や学生時代がつまらないと思ったことはないです。
橋爪 : 中学生の頃に1回お付き合いしたんです。だけど理由も分からずにフラれて、友達伝いに理由を聞いたら「こんなに下品な女だと思わなかった」って(笑)。
――アハハハハ、下品って(笑)! 彼は橋爪さんに対して、どんなイメージを持っていたんでしょう。
橋爪 : 「僕は教室の隅で本を読んでいる姿や、音楽の授業で一生懸命歌う姿に惚れたんだけど……いざ付き合ってみたら、すごい下品だった」って。付き合って2週間で疎遠になりました。中学生男子は、女性そのものに幻想を抱きがち、というのもありますけどね。見事に幻想を打ち砕いてしまったという。
橋爪 : そうなんです(笑)。なんだか騙したようで、申し訳なかったです。
ルーツは、家で鳴っていた「THE YELLO
W MONKEY」と、友人がすすめてくれた音
楽
橋爪 : 大事な友人と出会ったことで、本格的に音楽をやってみたい!という夢が叶ったんです。というのも、通っていたのが音楽と演劇に盛んな学校で。バンドの照明機材、ステージ機材も全部あったんですよ。友達が「やっちゃいなよ」と背中を押してくれて、その時に初めて歌いました。
――当時はどんな音楽を聴いてました?
橋爪 : 友達が音楽をたくさん薦めてくれたおかげで、今まで聴いてなかったSyrup16gさんとかTHE BACK HORNさんなどのロキノン系を聴くようになり、一気に男性バンドが好きになりました。
――今、名前を挙げていただいたバンドはダークな世界を表現する歌が多いですよね。
橋爪 : そうですね。
橋爪 : もともと家の中で、よく流れていた音楽がTHE YELLOW MONKEYさんや、L’Arc~en~Cielさんや、さだまさしさんで、その影響が大きかったと思います。そしてもうひとつ、すばらしい友人がいて、私の好きなバンドとか歌手の方の話をしたら「ももちゃん、こういうのも好きだよ」とCDを並べて貸してくれたんですよ。そのときおすすめしてもらったものは、全部好きになりました。
――いいですね。SpotifyやAmazonで出てくる“こちらもおすすめ”もいいですけど、そういった友人を持つのが一番良い気がします。
橋爪 : そうですね。振り返って考えると、音楽の好みを育ててくれたのは兄の部屋から流れてきたやL’Arc~en~Cielさん、 THE YELLOW MONKEYさん、その友人の教えてくれた音楽が大きかったです。
「このままだと、悔いが残る」。服飾か
ら、音楽の道へ。
橋爪 : 手に職をつけようと思って服飾の学校へ進みました。「このまま、洋服の世界へ入っていくんだろうな」と思っていたんですけど、2011年に地震があって、そこから考え方がガラッと変わりました。もしも私が死んだとして、それで悔いがないのか?と考えたら、死ぬまでに人前で歌ってみたいと思ったんです。それで、服飾学校卒業後は本格的に音楽活動を始めました。
――その後自主盤で『青のワルツ』をリリースしたのが、2014年?
橋爪 : はい。ライヴハウスで知り合ったレコード会社の社長さんから「君のCDを出してみたいと誘ってもらって作りました。
――かなり反響がありましたよね。
橋爪 : そうなんですよね。その日の渋谷タワレコのインディーズランキングで8位になったんですけど、当時はその凄さもわかってなくて。ただ周りの方に感謝して終わりました。インストアライヴも80名くらい集まっていただいて。
橋爪 : 当時はそこまでパッとしてなくて……あんまりライヴのやり方もわからないから、お誘いがきたらとりあえず出るっていう感じで「このまま同じことをやっていても、何も広がらない」と限界を感じたんです。そんな矢先、今の事務所から突然『MUSICにゅっと。』のオーディションの連絡がきて。
――なぜ、所属していない事務所から橋爪さんに連絡が来たんですか?
橋爪 : その辺は私も謎で。「なんで私に連絡したんですか?」と聞いたら、「弾き語りでシンガーソングライターの女性を探したら、ももさんが引っかかりました」って本当に偶然。
――その後出演が決まったということはオーディションに合格したということですよね。
――その後、2017年にメジャーデビューが決まったときはどんなお気持ちでしたか?
橋爪 : メジャーデビューと聞いてビックリ8割、プレッシャー2割でした。状況がステップアップしたことにビックリしましたし、あとは「こんなに関わる人が増えるんだ」と。しかも、私の作品の売れ行きによって、皆さんの生活の大なり小なり関わってくると思ったら死にそうなぐらい背負ったものが重く感じて。今は関わってくださるスタッフさんが本当に素敵な人ばかりで、プレッシャーというのが辛くなくなりました。
後悔することで明日につながる。
落ち込むからこそ、前に進める。
橋爪 : 私の書く曲は常に後悔がつきまとっていて、『夜道』はそれを色濃く描いてます。だけど、ただ暗い気持ちになってほしいわけではなくて、後悔をした時に無理やりポジティブになるよりも、しっかり落ち込んで心の整理をつけることが重要だと思うんです。だからこそ、前進するための1枚になっていると思います。
――1曲目の「自由」は、橋爪さんの楽曲の中でも珍しいタイプなのかなと思いました。曲調も歌詞も含めて。
橋爪 : 「自由」はちょっと異端ですね。アルバムの中でも一番アッパーだし、歌詞もかなり前のめり。後悔というテーマにした時、全部悔やんでいる内容だと聴いていて辛くなると思ったので、背中を蹴り上げるような曲があっても良いな、と思って挑戦しました。
――最後は対照的な「独身」を収録しているのが面白かったです。
――改めてお話をきくと、すべての曲が『夜道』につながっているなーと思いました。
橋爪:「独身」を聴きながら帰れば、今日の出来事を反芻する日になるだろうし、「自由」を聴きながら帰って「明日に向けて頑張ってみようかな」と思ってもらえてたら嬉しい。どのような気分で帰るのかは人それぞれで、いろんな方の感情に寄り添う、夜道に合う曲たちを作れたと思います。
――今日は幼少期からお話を聞かせていただきましたけど、今後の展望についてはどのようなことを考えていますか?
橋爪 : もっともっと多くの方に届けたいし、届いて欲しいですし、そこから応援してくれる方と一緒に成長して、いつか、幸せな曲をかけるようになったら素敵だなって。私自身、そんな日が来ることを楽しみにしています。
橋爪 : ロリータファッションって、今はものすごくジャンルが広がっていて。大人が着るためのロリータも開拓されてますし、クラシカルロリータから、ヴィクトリアンロリータ、そこからカジュアルになったものが、今日私が着ているような服装だと思います。確かに当時は派手な印象がありましたけど、大人のロリータはシックで、着やすくて、女性を魅力的に引き立てるスパイスを加えたものも存在しているんです。なので、今は大人が着ることができる服装として、もっともっと認知されたらいいなと思ってます!
橋爪もも 最新リリース情報
『夜道』
【CD】TKCA-74664 1,667円(税別)
1.自由
2.依存未遂
3.小説家
4.ドッペルゲンガー
5.僕は知らなかった
6.独身
詳細はオフィシャルHPをチェック!
橋爪もも オフィシャルホームページ
橋爪もも 公式ツイッター
前向きな「後悔」を歌う橋爪もも。逆境をプラスに変える生き方と、スタイルのルーツ。はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
関連ニュース
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。