『BLEACH』福士蒼汰×[ALEXANDROS]川
上洋平インタビュー 2つの視点で語
られるアクションと演技、映画音楽へ
の想い

『BLEACH』は、久保帯人原作で『週刊少年ジャンプ』で2001年から連載を開始し、単行本全74巻で累計発行部数1億2,000万部を記録する漫画。霊が見える高校生・黒崎一護(くろさきいちご)が、ある日突然現れた死神・朽木(くちき)ルキアから、死神の力を与えられ、家族や仲間たちのために悪霊・虚(ホロウ)と戦う物語だ。同作の初の実写映画化作として7月20日(金)に封切られる『BLEACH』では、主人公・黒崎一護を福士蒼汰が演じ、朽木ルキア役で杉咲花が出演。メガホンを『GANTZ』や『アイアムアヒーロー』の佐藤信介監督がとり、佐藤作品で長らくタッグを組んできた下村勇二氏がアクション監督を務めている。
CGとアクションの融合が生み出す独特の映像表現や、キャスティング、実写映画化ならではの原作の再解釈など、みどころも多い同作。そんな中でも、[ALEXANDROS]による主題歌「Mosquito Bite」、そして挿入歌「MILK」の果たす役割は大きい。定番のエンドロールだけでなく、登場人物の感情や物語とリンクする形で楽曲が使用されているからだ。年間100本以上の映画を鑑賞し、映画コラムも連載していた[ALEXANDROS]川上洋平(Vo/Gt)は、どんな想いで楽曲を手掛け、完成した作品をどう観たのか? そして、主演の福士蒼汰は楽曲から何を感じ取ったのか? 2ショットインタビューで語ってもらった。
"熱い"黒崎一護と"冷たい"福士蒼汰のギャップ
福士蒼汰 撮影=岩間辰徳
――『BLEACH』の原作は、日本以外でも有名な漫画です。福士さんは、実写化作品で主演を演じるプレッシャーみたいなものは感じられましたか?
福士:プレッシャーは、もちろんありました。世界的に人気のある作品の実写化なので、責任をすごく感じました。自分が一護を演じるには覚悟が必要だと思っていましたし……ただ、楽しみでもありました。「一護になれるんだ」という喜びや楽しさがあったので。だから、現場にはワクワクしながら入りました。
――完成したものをご覧になって、感慨のようなものはありますか?
福士:この作品だけじゃなく、いつもそうなんですが、本来の自分から遠いキャラクターを演じているのを観ると、違和感が満載で。なかなかまともに観られないんです。周りの方に言われることと、自分の思うことのギャップが結構あるので、いつまでもその感覚が追いつかないところはあります。
――福士さんと一護の性格はそんなに違うんですか?
福士:そうです。一護は熱血で明るいですが、自分は冷たいほうですし。
一同:(笑)
福士:どちらかと言えば、熱くはないと思います(笑)。そういう部分を観ていると、「自分じゃないけど、自分だ……」という不思議な感覚が、毎回あるんです。
――佐藤監督と下村勇二アクション監督は『図書館戦争』でご一緒されているので、やりやすかった部分もあったのでは?
福士:撮影現場の安心感はありました。楽しみな気持ちと、「絶対にイイものになる」という確信はあったので、お任せできる、という感覚はありました。
――川上さんは、2017年だけで170本もの映画をご覧になったそうですね。ご自身のブログで“カワカミー賞”選出されていらっしゃいますし、映画コラムを書かれることも多い。『BLEACH』はいかがでしたか?
川上:いやもう、カワカミー賞作品賞と主演男優賞間違いないです。
左から、[ALEXANDROS]川上洋平、福士蒼汰 撮影=岩間辰徳
――2018年上半期が終わったばかりですが、評価が高いですね! 川上さんはコラムなどでは邦画にあまり深く言及されていませんが、何か理由があるのでしょうか?
川上:基本的には観ていますよ。むしろ、邦画は面白いものが多くて、どちらかというとハズレがない。ただ、ぼくは評論家でもなんでもなくて、単純にどう思ったのかを書いているだけなので……洋画よりも近い分だけ失礼があったらダメだな、と思っていて。だから、邦画についてはなるべく書かないようにしています。後で何があるかわからないので(笑)。でも、福士くんが出演していた『イン・ザ・ヒーロー』についてコラムで書いていたのを思い出しました。
――「演技とアクションを両方こなせるからスゴイ」と、褒めていらっしゃいましたね。
川上:ですよね! よかった。結構前のことなので、変なことを書いてないか不安になりました(笑)。
――(笑) 『BLEACH』での福士さんはいかがでした?
川上:『イン・ザ・ヒーロー』のときは、主演じゃなくて、唐沢寿明さんの相手役だったんですよね。今回は“THE 主役”というか、主人公らしい役だったので、どう演じられるのか楽しみでした。本当に、一護はハマり役と言っていいんじゃないでしょうか。ご本人は「自分とはギャップがある」とおっしゃっていますけど……たしかにお会いしてみると違う部分もあるんだけど、一護には「福士蒼汰はこういう人なんじゃないか?」と思える、共通する部分もあって。しかも、物語の語り部として映画を主導していると思いました。
福士:ありがとうございます。
福士蒼汰 撮影=岩間辰徳
――よくご覧になってらっしゃいますね。『BLEACH』も含め、ここ数年で福士さんはアクション映画にかなり出演されています。アクション映画には、意識して積極的に出演されているのでしょうか?
福士:ええ。個人的にアクションがすごく好きなんです。動くのも好きですし、観ていても「カッコいい」という憧れもあります。だから、役が無くても普段から、ジークンドー(ブルース・リーが始祖の総合武術)とか、カリ(フィリピンの実践武術)とか、武術の稽古は取り組むようにしています。継続することで、レベルアップしていくので、いつか役にたったらいいなと思っています。
――『BLEACH』については、ただアクションするだけではない、感情のようなものも表現されているような印象がありました。
福士:もちろん、カッコいいアクションを見せるのもいいことだと思うんですけど、そのキャラクターが見えていったり、物語を語る部分が見えると、アクションはより面白いんじゃないかな、と意識しながらやっているところはあります。
――川上さんは、『BLEACH』のようなソードアクションはお好きですか?
川上:日本特有というか、日本人が得意とするものなんじゃないかな、と思いますね。こういう作品は、海外で期待もされているでしょうし、ド真ん中の作品なんだと思います。
福士蒼汰 撮影=岩間辰徳
「作品やキャラクターを思い起こさせる」映画音楽への想い
[ALEXANDROS]川上洋平 撮影=岩間辰徳
――主題歌「Mosquito Bite」と挿入歌「MILK」も、アクションと同じように物語に密接にリンクしていますね。なぜここまでハマったのか、すごく気になるのですが。
川上:「Mosquito Bite」は映画を拝見してから作った曲なんですけど、「MILK」のほうはデモ音源まで出来ていた曲なんです。最初のラッシュ(※編註:編集が加えられる前の未完成版)を観たときには、「MILK」が使われるシーンに、佐藤監督が趣味で当て込んだ曲が流れていました。観終わった後に、監督に「あそこに当ててほしいんです」とリクエストいただいたんですが、ちょうどその時に携帯に完成前のデモ音源が入っていたので、その場で「これ、どうです?」と提案したら、「いいですね!」とおっしゃってくださって。だから、「MILK」に関しては、ピッタリはまってよかったな、と思います。もともと、「映画に使われたら面白いよね」と話して作りはじめた曲でもあるので。
――主題歌の「Mosquito Bite」は、エンドロールだけではなく、福士さん演じる一護の感情が揺れ動く、重要な場面で使われています。楽曲が使われる箇所は、あらかじめ監督から聞いていらしたんでしょうか?
川上:いいえ、全然。ただ、映画を観てイマジネーションを膨らませて、どこに使われてもいいように作りました。お渡しして、「好きに使ってください」とお伝えしたんです。「エンドロールでも使います」とは聞いていたんですけど。

――楽曲が入った映画をご覧になって、どう思われました?
川上:すごくビックリしたし、「ハマってるな!」と思いましたけど……それはぼくよりも、監督の手腕なんだろうな、と思います。というのも、ぼくは「Mosquito Bite」を作っているときは、そんなに(映像は)意識しなかったんです。映画を観た後には、「一旦忘れよう、自分が最大限にカッコイイと思う曲を作ろう」と思っていたので。ほかの作品で主題歌を作るときもそうなんですけど、映画を観たらそれは絶対に吸収されているから、何かしらいいものが書けるだろう、と思っています。
――福士さんは、音楽がハマった本編をご覧になって、どう思われました?
福士:みなさんがおっしゃっているように、ピッタリだな、というのはすごく感じました。「MILK」に関しても、書き下ろしたんじゃないかと思うくらいマッチしていて。ハマりすぎていて、すごく自然に流れていた感覚があります。デモ音源があった曲だと聞いて、その流れも面白いな、と思いました。「Mosquito Bite」は、変化とか成長といったテーマがありますが、自分も後で歌詞をみて、「なるほどな」と感じました。『BLEACH』にピッタリな曲だと思いました。
左から、[ALEXANDROS]川上洋平、福士蒼汰 撮影=岩間辰徳
――「MILK」も劇判のような使われ方をしていて、非常に面白いですよね。川上さんは、映画音楽もやってみたいそうですね。
川上:そうなんです。主題歌はいままでもお話を頂いていたことはあったんですけど、ぼくは劇判がすごく好きで。やっぱり、主題歌とは違う形で映画を支えている、たずさわっているのが映画音楽だと思うんです。映画ファンとしては、いつかは本格的にやってみたいですね。
――俳優として、『きょうのキラ君』に出演されたときは、「笑わないでくださいね」ととても謙虚なコメントを出してらっしゃいました。やはり、こと音楽のことになると積極的ですね。
川上:『きょうのキラ君』の出演は、ほぼエキストラですから(笑)。ぼくはミュージシャンなので、役者さんをやるなんて恐れ多いです。
――福士さんにとっての映画音楽って、どういう存在なのでしょう?
福士:主題歌をあらためて聴いて、ぼくが小さい頃見ていたドラマや映画を思い出すことがたくさんあるんです。音楽によって、作品を思い起こさせる……だから、音の影響ってすごく大きいと思っています。そういう風に、映画や映像作品にとっての音楽の"存在の大きさ"は凄く感じていたので。今回の『BLEACH』は、まさにそういう楽曲が使われているので、本当によかったと思います。
――「Mosquito Bite」を記憶と、福士さんの戦う姿がどうしても浮かんできます。今後、川上さんが劇判を担当されるときは、そういうこともイメージされるのかもしれないですね。
川上:そうですね。今もお話に上がりましたけど、音楽が流れてキャラクターや画が思い浮かぶ……例えば『007』のジェームズ・ボンドだったり、『スター・ウォーズ』だったり、いわゆる"テーマ曲"になるようなものを作りたいと思いました。最初は、どちらかと言うと「MILK」がそういう曲になるのかな、と思っていたんです。でも、出来上がった作品を観たら、そこまで意識していなかった、「Mosquito Bite」のほうが『BLEACH』の"テーマ曲"らしくなっていて。リフの部分とか、特にそうなっているんですよね。
――『ロッキー』の「Eye Of The Tiger」のような使われ方をしていますよね。
川上:確かに(笑)。
[ALEXANDROS]川上洋平 撮影=岩間辰徳
――あまり深く触れてしまうとネタばれになるのでこのくらいで。最後に、音楽以外の見どころをうかがいたいのですが。
福士:キャストそれぞれの魅力がよく出ているな、と思います。杉咲花さんから始まるそれぞれの物語があるので、観ていただけると嬉しいな、と思います。キャラクターたちの関係性は、改めて観ていると面白かったので。恋次とルキアだったり、白夜とルキアだったり……もちろんアクションも必見なんですが、そういう部分も観ていただきたいです。
川上:ぼくは、サイドのキャラクターが結構好きになるタイプなんです。でも、今回は主人公のことを好きになっちゃって。一護という人物が成長していく様を見守り続けたいな、と思いました。そこが、この映画のもっともドラマチックな部分なんだろうな、と思います。まあ、ぼくが映画に出ているわけじゃないんですけどね(笑)。
――(笑)でも、楽曲がキャラクターのドラマとちゃんとリンクしているので。それは誇るべきところだと思います。
川上:そうですね。そこは楽曲で支えられたと思うので、是非注目して欲しいです。
[ALEXANDROS]川上洋平 撮影=岩間辰徳
映画『BLEACH』は7月20日(金)全国ロードショー。
インタビュー・文=藤本洋輔 撮影=岩間辰徳

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