注目度大爆発のエドガー・サリヴァン
 憂いを帯びた声をのせたテクニカル
なポップスを奏でる3人組に直撃

それぞれが違うフィールドで音楽活動をしていた3人が、東京・江戸川橋のあるスタジオで出会い、エドガー・サリヴァンは生まれた。あふれる3つの才能がぶつかり、ひとつになり、そしてはじけ、新しいポップスが生まれた。メロディセンスと演奏力の高さ、ボーカル佐々木萌のどこか憂いを帯びた声はすぐに評判となった。5月30日にミニアルバム『JAPONICA!!』をリリースし、6月2日には『Amuse Fes in MAKUHARI 2018』に出演し、2万人の前でパフォーマンスを披露するチャンスに恵まれた。そんな注目度上昇中の3人、佐々木(V)、坂本遥(G)、高木祥太(B)に話を聞いた。
――佐々木さんは元々ソロで活動していましたが、バンド志向でもあったんですか?
佐々木:フジファブリックに影響を受け、音楽を始めたのですが、最初はシンガー・ソングライターとして活動していました。でもバンドで色々な表現をしたいと思い、サポートとして参加してもらっていた現メンバーの2人と、もう2人メンバーを入れて5人組としてスタートしましたが、結局今の3人編成になりました。ドラムレスのバンドになったので、それを強みにして、打ち込みサウンドに生音が乗るというスタイルになって。曲は3人共好きな、80~90年代の音楽のエッセンスを融合させたポップスで、エレクトリックでちょっと未来チックな音、これが3人でできるスタイルだと思いました。
坂本:メロディに関しては2010年以降の音楽を追いかけようという意識が、メンバー3人ともあまりなくて。3人で音楽の話で盛り上がるのは2000年初め頃のGReeeeNORANGE RANGEの音楽についてで、音楽的な部分のベーシックにあると思います。僕は(佐々木)萌ちゃんをサポートしていた2013~2014年頃は、チャカ・カーンとかR&Bのコピーバンドをやったり、色々なところでセッションもやっていて、そこで出会ったのが(高木)祥太です。なので演奏にはそういうエッセンスが出ていると思います。バンドのスタイルとしては新しいかもしれないけど、ちゃんと老若男女に届く歌、J-POPであるということは揺らがないと思います。
――ギターはフュージョンっぽいというか、歌っている感じですごく立っています。歌も立っていて、ベースもうねりを感じる太く、立っている音で、3人共歌っているようで新鮮です。
坂本:そう言っていっていただけると嬉しいです。女の子一人の後ろに、男が二人いて、という感じのバンドはよくいますが、そうじゃないよっていう(笑)。プレイも含めて、3人とも目立ちたがり屋というのが、エドガー・サリヴァンのバランスに繋がっていると思います。
佐々木:Perfumeになりたいってずっと言っています(笑)。
――ポピュラリティーがあって、間口が広いんだけど、音楽にうるさい人からも評価されるという感じ?  
佐々木:そうです。こいつら意外とやるな、というところに落とし込みたいです(笑)。バンドでありユニットみたいなイメージで、めっちゃバンドのフィジカルも持ってるけど、イメージとしてはPerfumeのようなユニット感。
高木:フロントマンがいて、背中で引っ張るみたいなのは、曲ごととか、瞬間瞬間であると思うので、その部分ではバンドだと思います。意識として「どうやって3人で進んで行こうか」っていう意識があるから、そこはユニットとして揃っていると思います。
シンガーソングライターの部分とシンガーの部分が兼ね備わっていて
――楽器隊から見たボーカリスト佐々木萌の声というのは、最初はどんな印象でした?
坂本:最初萌ちゃんのライブを観た時は、超ロック野郎だなって(笑)。今は割とポップな声の出し方をしているし、意識していると思いますが、当時はもう力の限り歌っているという印象でした。そこがすごく好きで、一緒にやり始めたのですが、やっていくうちにどちらかというと、ボーカリストというよりは、作曲家 としての萌ちゃんの才能にどんどん惹かれていって。すごくエキセントリックっぽいことをやりつつ、意外とエキセントリックじゃないというか、人と被らないけどポピュラリティーがあるというか。聴いたことがない感じのメロディを作ってきても、どこか聴き馴染みがあっていいなと思わせてくれるんです。一緒にバンドやっていて、だんだんそういう視点になってきました。
高木:(坂本)遥も言っていますが、萌ちゃんは結構対極的に音楽を見るというか、シンガー・ソングライターでもあったから、自分の声のおいしい出し方を知っているという感じがしました。萌ちゃんが作る曲はレコーディングがめっちゃ早くて、僕が作る曲の時は時間がかかるという感じです。ボーカリスト、というよりはミュー ジシャンの感覚に近いと思う。でもその反面カラオケに行くと歌姫になる(笑)。シンガーソングライターの部分とシンガーの部分が兼ね備わっていて、バンドをやっていることでそれが融合しつつあると思います。
どうアレンジしてもいいものはいいということを再確認できました
――ミニアルバム『JAPONICA!!!』には3人の曲がバランスよく収録されていますが、自分の曲でもいいですし、メンバーが書いた曲でもいいので、それぞれの推し曲、「この曲のここは何が何でも聴け!」というこだわりが強い曲を教えください。
坂本:僕は「ミラクルショッピング~ドン・キホーテのテーマ~」で。あのハウスのキックの感じに、ゲイリー・ムーアみたいなギター重ねたのは世界初だと思います(笑)。そこだけ聴いて欲しいです。
――誰もが一度は耳にしたことがあるドンキのテーマ曲をあそこまでいじるというのは、勇気が必要だったのでは?
坂本:冒険でもあったし、でも受け入れられたらすごく嬉しいし、萌ちゃんがベーシックなアレンジと符割りを考えてくれて、その時点で「これはもうやったれってことだな」って思って(笑)。「ドンドンドン、ドンキー」を、「(アクセント強めに)ドンドンドンでしょう が!こっちの方が正解でしょうが!」みたいな(笑)、4つ打ちに変えて。しかも新しい歌詞も追加して(笑)。でもいいメロディ、いい曲って、どうアレンジしてもいいものはいいということを再確認できました。アルバムの中で一番満足がいくデキです(笑)。
佐々木:全国のドン・キホーテで流れるって、実感がないくらい凄いことだし、私たちの音楽に触れたことがない人たちにも聴いてもらえるので、エドサリへの入口になればいいなって。
高木:個人的なプレイの聴きどころでいうと、「JAPONICA!!!」のフレーズは、J-POPでは聴いたことがないフレーズというか、テクニックというよりは黒人的な奏法でスラップのアップダウンという弾き方をしているので、ちょっとコア過ぎるかもしれませんが、そこが聴きどころということでお願いします。でも「JAPONICA!!!」もそうですがメロディや構成も全然ブラックミュージックではないし、「MOONBEAM」という曲は、割とシンプルなポップス構成というより、逆にラップを入れたりして。大きな括りでいうとJ-POPな曲があるからこそ、僕はミクスチャーが好きなのでそういうエッセンスを入れたり、ブラックミュージック的なアプローチとかを入れると面白いんじゃないかな、という感覚でやっています。
坂本:この曲順は、今のエドサリの気持ちみたいものが多分反映されていて、こういう存在、こういう風になっていきたいという夢語りの「JAPONICA!!!」から始まり、「ミラクルショッピング」があって、「みんな普段考えてるけど、口にしないでしょ?」みたいなことだったり、内面を投影させた歌詞が出てくる三曲で締めています。A面B面のイメージで作った感じですね。だから「ミラクル~」と「マジックアワー」の曲間も、それを考えて空けています。
佐々木:この一枚がどれだけ聴き手に届くかというよりも、これで出会ってくださいっていう気持ちが強いです。 私の推し曲は5曲目の「マジックアワー」です。ギターとベースが入ってこれるスペースが二小節しかなくて(笑)、逆に限られた中で、らしさを詰めこんで欲しいと、二人にお願いしたので、ここが聴きどころです。エドサリで引き算的な曲は珍しくて、ライブでどうやるか物議を醸しています(笑)。でも私たちは「あなたの背中を押します」みたいな歌を歌うバンドじゃないんです。この「マジックアワー」という曲は、みんなそれぞれ一人で悩みを抱えながら街を歩いてる時に感じられそうな、トキメキを大きくするお手伝いが出来ればと思ってかいた曲なんです。聴いてくれる人が私たちに出会って、生活の中で素敵な部分が少しでも大きくなればいいと思っていて、「そういう夢を見ようぜ」みたいな歌詞なので、 一応トラック的にはフューチャーベースを取り入れ、新しいことに挑戦はしていますが、歌詞としてはパーソナルな部分を歌っていて。「マジックアワー」という夕方の美しい瞬間の歌なので、夜の訪れに合わせて聴いて欲しいです。
――歌詞に関しては共作も多いですが、男子目線、女子目線が混在して、やりにくい部分はないですか?
佐々木:そこが難しいですよね。男子目線でいうと「そんな女子目線なのか」みたいな(笑)。何がエドサリらしさになっていくのか、誰の歌詞なのか、どういう書き方なのかなとかは、今はまだ模索中という感じです。
坂本:「春URARA」は実験的にみんなで書きましたが、他の曲は二人というのもあるし、そこが一番発展途上な部分かもしれないですね。音の面もそうですが、これがハマった時に3人とも色々できるというこの空気感も含めて、すげえバンドになるぞっていうのが、3人が出会った時の元のイメージだったので、それが一作品一作品、少しずつ見えつつあるという感じです。バラエティー感が強いという強みを持って3人で結成して、それが取っ散らからないように、それぞれがエドサリン像みたいなものを丁寧に考えてやっていきたいです。
――エドサリは先日『アミューズフェス』という大舞台で、2万人の前でパフォーマンスするチャンスに恵まれました。
坂本:逆に2万人もいるともう面白くて笑っちゃいました。それより裏の方が緊張しました(笑)、有名アーティストばかりいたので。
佐々木:あの広さのハコが自分達の音楽にはすごく似合うなって思いました。そこにいる全員を踊らせることができる可能性のあるサウンドなんじゃないかなと思いました。
坂本:それにしてもPerfumeのみなさんの顔の小ささは、あり得なかったですね(笑)
取材・文=田中久勝 撮影=三輪斉史

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