OGRE YOU ASSHOLE × ROVO・勝井祐二
 “日比谷野音”をテーマに語り合う
座談会

9月17日、OGRE YOU ASSHOLEが自身初の日比谷野音ワンマンを開催する。これまでオウガが日比谷野音のステージに立ったのは2回。いずれも、実に16年連続で野音にて開催されているROVO主催のフェス『MDT FESTIVAL』出演時であり、またそこでのライブがバンドにとっての転機ともなったという。そこで今回はROVOの勝井祐二を招き、オウガのメンバーとの座談会を行った。両者のこれまでの交流や音楽的に惹かれあう部分、そして“野音の奥義”とは。
ーー9月17日に OGRE YOU ASSHOLEが初の日比谷野音ワンマンを開催されるということで、野音の大先輩であるROVOの勝井祐二さんに、「野音の奥義」を伝授していただくべく、お集まりいただきました(笑)。ROVOは毎年、日比谷野音で『MDT FESTIVAL』を主催しています。なんと今年で16年連続16回目。そのほかのバンドでのご出演も含めると、勝井さんは日比谷野音出演回数では現役最多のひとりではないでしょうか。
勝井:そう……ですかね?
出戸:16年連続って凄いです。
勝井:よくやれてると思います。
ーーオウガもMDTには2回ゲスト出演されてますね。
出戸:はい、呼んでいただいてます。
勝井:2013年に初めてやってもらって、ほんと素晴らしくて(5月26日/ROVO、OGRE YOU ASSHOLE、salyu✕salyuが出演)。で、2017年にまた出てもらったんです(5月28日/ROVO, OGRE YOU ASSHOLE, D.A.N.が出演)。2013年に出てもらって以降、いろんなところで対バンさせてもらってるんですよ。京都とか名古屋とか。そういうのを経て去年、またやってもらいました。
ーーこのタイミングで野音をやろうと思った理由は?
出戸:2013年に出させてもらった時から、いつかは野音でワンマンやりたいと思ってたんです。でも人気のある会場なんで、僕らみたいなのが急に参加しても抽選で弾かれてしまうみたいで。なので3〜4年ぐらい待ってたね。それで今回ようやく譲ってもらえて。
ーー2013年にMDTに出た時の印象が素晴らしかったから。
出戸:いやもう……助かったという感じでした、僕らは(笑)。
ーーバンドにとって大きな転機となったライブだとお聞きしています。
出戸:そうですね。ちょうど『homely』(2012年)ってアルバムから音楽性が変わってきたところで、もともとのお客さんもちょっと困惑してた時期だったんですよ。自分たちとしてもこれで大丈夫なのかという気持ちにさせられるような、そんな空気感がワンマンのライブでもあったんです。でもMDTでやったら、ワンマンでもお客さんの反応がそれ以降全然変わってきて。なので今のモードでライブをやってていいんだって自信がROVOの野音に呼んでもらってから出てきたって感じですね。
ーーMDTの時はオウガのファンもかなり来ていた感じですか。
出戸:僕らのファンも少しはいたと思うんですけど、でもROVOのファンの方が当然多かったと思います。ふだんそういうライブだと初見の人が多いので様子見で大人しく見ている感じになるんですけど、ROVOのファンの人は僕らのワンマン以上に盛り上がって狂喜乱舞してくれて(笑)、こっちが困惑するぐらいの。「そういうつもりでもなかった」みたいな(爆笑)。でもあれは嬉しかったですね、すごく。
ーー音楽性が変わりつつあった時期にROVO野音で大歓迎を受けて意を強くした、と。
出戸:はい。この感じでやっていけそうだな、というのが見えましたね。
OGRE YOU ASSHOLE・出戸学
ーー勝井さんはそもそもオウガに対してどんな印象を持たれてました?
勝井:サイケデリックなバンドだと。そういう意味ではROVOと通じるものがあると思います。日本では数少ない、サイケデリックという枠の中に入るバンド同士として、共鳴するものがあると感じてました。
ーーオウガの方はそれまでROVOのライブはご覧になってました?
出戸:大学生の時、名古屋で初めて観ました。
馬渕:22,23歳の頃。だから12,13年前。「得三」(名古屋のライブハウス)だったね。
出戸:まさか後に呼ばれるなんて思ってもいなかった。なので野音に呼んでもらったのはびっくりしたし、めちゃくちゃ嬉しかったです。
ーー野音は実際にやってみてどうでした?
勝浦:いい場所ですよね。会場としてもいいし、いつかやりたいと思っていた場所だったので。興奮しましたね。
ーーROVOの音楽性についてはどういう印象ですか。
勝浦:「本物の音楽」をやっているバンドってイメージがすごく強いですね。ほんとにリスペクトしているし。
ーー勝井さんが2013年のタイミングでオウガを呼ぼうと思った理由は?
勝井:もちろん、かっこいいバンドだし、ぜひ出てほしいと思ってましたから。2012年にTAICOCLUBに出たでしょ? その時の「ロープ(Long Version)」のライブ映像がYouTubeにあがってて。凄いなと思った。これを野音で聞きたいと強く思いましたね。
ーー野音に呼びたい、野音で聞きたいと思うバンドってどういう共通点があるんですかね。
勝井:ああ~~これが難しいところなんですよね(笑)。かっこいいバンドであるに越したことはないんですけど……
ーーかっこよければなんでもいいというわけではない。
勝井:そういうことじゃないですね。MDTはフェスなので。時間の問題とかあって僕たちと、あと2つのバンドという形で定着してるんですけど、その3バンドがただかっこいいってだけじゃなくて、その日1日の流れをすごく考えます。
ーーこのバンドが出て、次にこのバンドが出て、最後にROVOが出て……
勝井:そうそう。このバンドが日の高いうちから始まって、次のバンドでだんだん薄暗くなってきて、夜になっていく、その時間の経過も含めて考えます。野外ですからね。ただ人気があってかっこいいバンドを2つ並べればいい、というものではない。その流れはすごく考えます。特に去年のオウガとD.A.N.の場合は、思いついた時に、もうこれしかないなと確信しました。
ーー確かに音楽的にも、各バンドのキャリアや位置づけも、バランスがとれていて、流れもいいと思いました。
勝井:うん、あれは近年の中でもヒット作だと思いますね(笑)。思いついた瞬間、これしかない!と思った(笑)。周りのスタッフも全員同じ意見だったし。
OGRE YOU ASSHOLE・馬渕啓
ーーオウガは2013年に出た時と去年と、やっていて何か違いはありましたか。
勝浦:その間にいろいろライブをやってきて、それなりに自信をつけたつもりだったんです。でもROVOのリハを見て、粉々になるんです(笑)。いつものライブとは全然違う感覚になる。なのでもう考えるのをやめようと(笑)。
勝井:でも2回目は1回目があっての2回目って思いましたね。あの特殊なお客さんと雰囲気っていうのを一回経験してもらったうえで、やってくれた。複数回出てもらったバンドはいくつかあるんだけど、あの場所の雰囲気を知ってるかどうかでずいぶん違いますね。話はちょっとずれるけど、今年坂本慎太郎君のバンドに出てもらったんだけど、坂本君はそれまでよく観に来てくれてたんです。あの場所の雰囲気をよく知ってて、そのうえで引き受けてくれたのが嬉しかった。
ーー勝井さんはROVO以外で野音をやったのはフィッシュマンズやUAなど何度もあると思いますが、MDTの時の野音と違うものですか。
勝井:(笑)、違う、全然違う。
ーー訊くまでもなかったですね(笑)。
勝井:僕らのやってきたMDTは「フェスティヴァル」ってついてるんですけど、同じ野音のライブでも、かなり特殊だと思うんですよね。環境として、全席自由、飲食物持ち込み自由っていうやり方をずっとやらせてもらっている。いつも来てくれるお客さんと僕たちの関係性も特殊だと思うし。ROVOにとっての野音はMDTでの野音なんで、ほかの、たとえばオウガにとっての野音とそもままイコールで語れるかどうかわからない。ただ、あの場所の持ってる力は変わらないですけどね。
出戸:ROVOみたいな感じにはならないと思いますけど、一応僕らも全席自由で持ち込み自由というのは継承させていただこうかと思ってるんです。
勝井:ほんと? それは素晴らしい!
清水:それはあまり疑問もなくスッと決めたんですけど、あとになってそれは特殊なんだと言われて(笑)。普通じゃなかったんだって。
勝井:今年のMDTの打ち上げで毎年一緒にやってくれてるイベンターのスタッフと飲んでて、全席自由持ち込み自由ってよく出来てるよなって話になったんだよね。ほかの人もやればいいのに、って。でも実際にやろうと思うといろいろ大変だから、オウガがそれを決断したのは素晴らしい。
出戸:MDTでしか出てないから、それが当たり前だと思ってる(笑)。
ROVO・勝井祐二
ーー2回やってきて、野音でうまくやるコツみたいなものは掴めましたか。
出戸:いやあ……まだわからないな……まだ暗い時間帯ではやったことがないんですよね。
勝井:ああ、そうかそうか。
出戸:たぶん明るいところから暗くなるまで、2時間半ぐらいやると思うんですけど、その間の流れというのも初体験だし、野外でのフェス経験はあっても野外でのワンマンというのは初めてだから。
清水:どうセットを組んでやっていくか、とか。
ーーゆったりした長い時間の中で自分たちの世界観をどう見せていくか。
出戸:ですね。フェスでの30分や40分よりもワンマンの方がいい……かな?(笑)
ーー長い時間だと曲も一杯できますね。
出戸:やるのは大変ですけど。
ーー勝井さんは野音でやる際に注意してることとかコツとかありますか。
勝井:注意してることはないですけど、あれはやっぱり何度も繰り返し来てくれてる人たちとみんなで作ってるものなので、「いい一日にしたい!」という思いはすごい強いですね。なのでうまく運べるように、声をかけるバンドも含め、最初からしっかり考えてます。
ーーただ単にいいライブをやりたい、というだけでなく、観客と共に「場を作る」という意識。
勝井:そうです! その通り。できれば2013年のオウガがそうだったように、あるいは去年のD.A.N.のように、初めてやるって人たちがいてくれると、もっといい場所になると思う。そういうことはいつも考えてます。あとは……当たり前ですけど晴れるかどうかはすごく重要で。もちろんそれは自分ではコントロールできないことだけど
ーーでもROVOは今までわりと天候に恵まれてますよね。
勝井:16年間やって雨が降ったのは2回だけですね。それもROVOがやる時には晴れた。
オウガ一同:それはすごい!
ーー誰か強力な晴れ男がいるんですか。
勝井:いや、そういうんじゃないですね。バンド全員というか、あそこに来ている人たち全員の総意というか(笑)。
ーー頼むから晴れてくれ!と。
勝井:晴れるに越したことはないけど、でも雨降ったらダメなのかっていったら、そんなことはない。野外はどっちもアリなんで。それがあって、その一日をどうするかだから。僕はやっぱり日比谷野音みたいなすごく歴史のある、日本のロックの黎明期からの聖地、そういう場所でやりたい、というのが一番最初の動機だったんですけど、ちょっと違うベクトルでもっと具体的にいうと、その前からフジロックに出てて、フジロックみたいなことを東京で自分たちの手でやりたい、というのが動機だったんです。形式はもちろん違うけど、フジのフィールド・オブ・ヘブンがあの場所に、一年に1日だけ出現するみたいな。だからヘヴンのやり方……というよりはフジロックのあり方を参考にさせてもらったところもあります。
ーーなるほど。
勝井:小学生までの子供は入場無料なんですけど、子供を連れてきてください、というのは強く言ってますね。子連れでライブとか行きづらいっていうでしょ。泣いたらどうしようとか。でも野音だったら泣こうが叫ぼうが走り回ろうがまったく関係ない(笑)。ぜひ来てください、という。僕らのお客さんはお酒をたくさん飲まれる方が多いんですけど、でも子供がいるとね、わりと常軌を逸しないというか(笑)。和やかな感じになる気がするんですよ。
ーー自分の子供でも人の子供でも、見られてたらそんなに羽目を外すわけにもいかない。
勝井:そう。うちの子も第一回目からずっと来てるんですよ。小学生だったのが大人になったんですけど。「昔より雰囲気良くなってるね」って言ってました。
出戸:へ~~~
勝井:昔はけっこう酷かったけど、今はすごく良くなったって(笑)。大人達頑張ってるね、って。
OGRE YOU ASSHOLE・清水隆史
ーーオウガの野音はまだ少し先ですけど、こういうものにしたい、こういう雰囲気にしたい、というのは何かありますか。
出戸:少しでもそういうROVOの野音のような、みんながライブを観に来てるという感じよりは、あの場の雰囲気を楽しみにきてるみたいな、そういう雰囲気に少しでもなれば、めちゃちゃくちゃ嬉しいですね。
ーー会場のお客さん全員がすごい集中力でライブを見ているような、すごい緊張感の漂うライブもあるし、後ろでお喋りしてたりお酒飲んでたり踊ってたり、みんなが自由に振る舞っているMDTのようなライブがあれば、どっちを目指したいですか。
出戸:ROVOみたいな感じのほうがいいですね。でもROVOのライブでも真剣に観ようと思えば観られるし、どっちでも……いろんな人がいる感じがいいかも知れないですね。
ーー2時間半のライブはけっこう長丁場だし、すべてを集中して観るのもしんどいから、時々は肩の力を抜きながら見るのがいいかもしれません。
出戸:そうですね……あと明るいところから暗いところになっていくのも考えて。その場、その時に適した音が出せればいいかな、と思います。
ーー夕方になって陽が落ちて暗くなる。その時間は予めわかるわけですが、そのタイミングも計算している?
勝井:してますよ。1曲目から2曲目、3曲目でだいたい何時何分ぐらいになるから、これぐらいに陽が落ちる。それを計算しながら大まかな流れを考えて曲順を決めたり、照明を工夫したりします。でもMDTがやってる5月と、オウガがやる9月じゃ日の長さも違うからね。
出戸:日の入り時間を計算してセットリストを決めようと思ってます(笑)。
ーー今度の野音は「クアドラフォニック・サウンド・システム」を導入するということですが、詳しく説明していただけますか。
出戸:単純に、4つスピーカーがあって、客席の後ろにもスピーカーを置いて鳴らすということですね。
ーーサラウンドということですか?
出戸:そんなに派手なものじゃなく、一個楽器が後ろに回るぐらいの感じで。
ーーどこから出たアイディアなんですか。
出戸:もともと渋谷のwww xがオープンしたとき、そのシステムで一回やったんです。
清水:2016年ぐらいかな。せっかくだからなんか面白いことしようってことになって。
出戸:中村さん(中村宗一郎/エンジニア)もギターの音をグルグル回せるようなエフェクターを持ってたりしたんで、そういうアイディアが浮かんできたんです。www xの時は、場所によっては変な聞こえ方をしたみたいですけど、いいところで聞いてた人は凄かったって言ってて。なので野音でやることがあったら、ぜひやってみたいと冗談半分で話していたら、できることになったんです。後ろにスピーカー置くって、野音では初めてらしいんです。なのでどうなるかわからないんですよね。
ーーつまり。そこで聞けばサラウンド効果がばっちり体験できる、音響的なスイート・スポットがあるわけですね。
出戸:たぶん。
ーー全席自由だからその場所は争奪戦になりそうですね(笑)。
清水:それも含めて全席自由っていいと思うんです。好きに移動して確かめてもらえばいい。
出戸:www xの時よりも会場が大きいので、いい場所は広いと思います。PAエンジニアの佐々木(佐々木幸生)さんが下見に行って、できると言ってくれたので。
ーー佐々木さんはサカナクションでサラウンド・ライブを手がけた経験があるので、ばっちりでしょう。
出戸:そう思います!
ーー普通のライブではなかなか聴けないような刺激的な体験になりそうです。
出戸:だと思いますね。
清水:それはバンド側ではなかなかいじれない部分ではあるので。考えたり議論したり提案することはあると思いますけど、本番ではコントロールできないので。
ーー佐々木さんと中村さんにお任せということですね。
出戸:そうですね。何を後ろ(のスピーカー)から出すか、とか。
馬渕:さっきも話にも出ましたけど、流れのあるライブというのをいつも以上に意識して、落とすところは落として、集中して見るところもあって、パッと上を見てキレイな空だなと思ったりとか。そういう音に圧迫されないようなゆったりした時間が欲しいと思うんですよね。「ライブじゃない瞬間」というのはあっていいんじゃないかと思います。
ーー「ライブじゃない瞬間」。
馬渕:(手で視界を狭めて)こうやって見るんじゃない、みんなが自由に見るイメージ。音数も少なくして。
出戸:普通の会場でできないような音。どんな感じかわからないですけど、なにか特別なものができる気がします。
OGRE YOU ASSHOLE・勝浦隆嗣
ーー晴れ渡った秋の夜空と、クアドロフォニックの立体音響とサイケデリックなオウガの演奏と、色とりどりの照明と。なにかこことは違う別世界に連れていかれるような、そんなライブになるといいですね。
出戸:そうですねえ……
勝浦:以前、オウガって家畜臭がするところがいいって褒められたことがあって。
ーー家畜臭?
勝浦:けっこう童謡っぽいメロディがあるからだと思うんですよね。郷愁がある感じ。そういう曲と秋の空の色とかがぴったり合うといいなと。
ーーああ、いいですね。俄然イメージが湧いてきました。
馬渕:それで夜になったら、もうちょっと速いサイケな曲とか。せっかくの野音なんで。
ーーワンマンっていろんなことができますよね。たとえば間に休憩を入れて二部構成にするなら、その休憩の間にどんな演出をするかってことも考えられるし。ROVOは2014年にMDTでワンマンをやりましたね。
勝井:はい。その時は、せっかくのワンマンなんでいろんなことやろうと思って、ちょっと詰め込み過ぎましたね(笑)。野音って音出しができる時間が限られてるので、リハーサルにかけられる時間が、ほかのコンサートホールに比べると短いんです。なのでけっこう大変でしたね。
ーー(オウガは)野音の実現まで3年待ったということですが、その間になにか自分たちの中で変化がありましたか。
清水:どうだろう……これよりも早くやってても困ったかも知れない。今だから良かったとも言えるし。
馬渕:それだけいろいろ考えてきたから。最初にパッと思ってパッとできちゃった、というよりは、ずっと深くいろんなことを考えてきたと思うし。そのぶんいろいろ熟成してきたと思うし、いい結果になればいいと思います。
ーー3年の間に自分なりの「理想の野音ライブ像」みたいなものが固まってきた?
清水:でもその間ROVOの野音しか行ってないので(笑)。
勝井:それ面白いね。非常に特殊なケースしか知らないわけだ(笑)。
馬渕:あれが普通だと思ってるんですよね(笑)。
ーー野音に合う、溶け込みやすいアーティストっていますよね。ROVOもそうだし、勝井さんが参加したフィッシュマンズやUAもそうかもしれない。その共通項ってなんでしょう?
勝井:うーん、それは簡単に言葉にできないですけど……ただ数年前に見たキセルのワンマン(2015年8月30日)は素晴らしかったですね。その日は大規模な国会前のデモ(安保法案に反対するデモ)があって、野音の周りに人がぐわーっといて、騒がしくて全然リハがやれなかったらしいんですよ。僕はたまたまそのデモに行って、いろんな友達に会ったり、そこで起きたことを見て、いろいろ思うところがありながら、そのまま歩いて野音に行って、見たキセルのライブは本当に素晴らしかった。
ーーそれはライブがライブの会場内だけで完結するものではなく、周りの現実と溶け合うことで印象深いものになったということでしょうか。
勝井:うん、そういうことはあったでしょうね。なので、そういうことがあった時にヴィヴィッドに反応するバンドなのかそうでないのかってことだと思うんですよ。何がどう違うのかはっきり言葉にできないけど、そういうバンドのタイプってあると思います。僕も長年野外フェスにいろいろ行ってるんで、その場所で起きてること、天気とか、お客さんの空気とか、そういうことにビビッドに反応してるバンドと、リハーサルしてきたことだけ、やりにきてるバンドと。今起きてることに反応してない。いい悪いじゃなくて、フェス的な感覚でいうと、反応してるバンドを見る方が面白いですね。個人的には。
ーーなるほど。室内でやるオウガのライブはディープで張り詰めたものがあって凄いんですが、野音のワンマンだと音が拡散する野外だし、もう少し緊張が解ける感じのライブになるのかな、と思います。
出戸:そうですね。夜に向けてだんだん濃くなっていく感じで、ずっとステーキだときつい、というか(笑)。ちょうどいいコース料理になればいいかな、と思います。
勝浦:コーヒーまで美味しいコース料理ってなかなかないから(笑)。前菜は美味しくても、だいたい途中で崩れるから難しいですね。
ーー最後ステーキで終わるバンドが多いですけど、コーヒーまで出しますか。
勝浦:(笑)。出したいですねえ。
勝井:僕らの野音って、すっごい酔っ払う人が多くて。どうしてあんなに酔っ払ってるんだろうと思って、こないだのMDTの翌日が休みだったので、天気も良かったし、家で庭を眺めながら、野音の開場の時間からお酒を飲み始めたんです(笑)。
一同:ははははは!
勝井:そうしたら、僕らが出る予定の時刻になると、ベロベロに酔っ払ってましたね。
一同:わはははは!
勝井:これか!と。よくわかりましたね。天気のいい昼間に飲み始めると、ペースが速くなっちゃうんですね。フェスとかもそうですけど。
ーー明るいうちから飲むのは美味しいんですよね。
勝井:美味しい。で、いい音楽とライブがあればね。ひとりでベロベロになって(笑)。そんなMDTのハードコアなリピーターの人たちもお邪魔すると思うので、よろしくお願いします(笑)。
一同:(笑)。こちらこそよろしくお願いします!

取材・文=小野島大 撮影=小田部伶
OGRE YOU ASSHOLE / ROVO・勝井祐二

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着