【ライブレポート】山崎まさよし、ホ
リエアツシなど4組が『音楽と人』イ
ベントでアコースティックな夜

雑誌『音楽と人』主催イベント<音楽と人LIVE 2018 東京アコースティック百景 vol.2>が7月10日、渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて開催された。
タイトル通り弾き語り形式で行われた同イベントは、『音楽と人』と縁が深い山崎まさよし、ホリエアツシ(ストレイテナー)、井上竜馬(SHE’S)、オープニングアクトにHaiRiという世代やバンドやソロといった垣根を越えて4組が集結。開演前のオープニングアクトとして登場したHaiRiは長崎県在住の18歳のシンガーソングライターだ。1曲目の「小さな光」から、澄んだ歌声がすっと会場に染み込んでいく。軽快なリズムを響かせる「少女」を経て最後に披露された「未来のつぼみ」は、2018年3月に高校を卒業する際に書いたという歌で、未来へ思いを馳せるような力強い歌声が印象に残った。
そして、この日トップバッターを務めたのは山崎まさよし。まずはその場でパンデイロとループマシンを使ってリズムトラックを作り、そのビートに合わせてギターを鳴らしてから、スティングの「Englishman In New York」のカバーへ。「今日の出演者の中で、一番の最年長で気恥ずかしい限りです。どうか最後まで我慢してください」と彼らしい照れ隠しの挨拶で客席を和ませると、ブルースハープの音色がノスタルジアを誘う「Passage」をしっとりと唄いあげ、「今のは1999年の曲です。今日は古い曲をどんどんやっていきます!」と宣言する。

間奏で山崎が仰け反るようにギターを激しくかき鳴らすなど観客を大いに沸かせた「カルテ」のあとには、「今の曲が1999年リリースの「カルテ」です」と告げ、さらにループマシンで自分の声を逆再生させて会場を笑いで包む。「Fat Mama」では赤と紫の照明でアダルトな雰囲気に様変わりしたステージからアグレッシブな歌とプレイを響かせる。そんなメリハリのあるパフォーマンスはステージと観客の間の距離を縮め、ラストの「セロリ」でより温かな一体感を生み出した。キャリア20年以上のシンガーソングライター、さすがのひと言に尽きるパフォーマンスであった。
2番手を託されたのは、SHE’Sの井上竜馬。1曲目の「Tonight」から、切なる思いを解き放つように鍵盤でメロディと歌を紡ぐ。MCでは、この日が彼にとってメジャーデビュー後、公式では初の弾き語りライブであることや、「新人中の新人をなぜレジェンドの後にやらせるのか」と、山崎の次に舞台に立つ緊張感を正直に語った。さらに「普段はバンドをやっていて、1人は寂しいけれど、自分に打ち勝てよと言われているような気分」と打ち明け、この日のステージへの不安と気合い、楽しみをにじませながら「Over You」を鍵盤の伴奏で唄いあげた。

ギターを手にして、自身の失恋経験を描いた「グッド・ウエディング」、彼がずっと大好きだというオアシスの名曲「Don't Look Back in Anger」のカバーを披露。そして「まさよしさんが1996年とか1997年に曲を出していた時、僕はまだ4歳とか5歳でした。僕にとってストレイテナーはヒーローでした。音楽をやってるとこういうミラクルが起きます」と、この日の共演について改めて感慨に浸る。さらに豪雨に見舞われた西日本について触れ、「何気ない生活が早く戻るように願いを込めて唄います」と「aru hikari」を鍵盤で演奏し、ステージを後にした。
トリのホリエアツシは、自身が敬愛するレディオヘッドの「High and Dry」のカバーからスタート。ギターを抱えたままストレイテナーの「彩雲」、チャットモンチーのカバー「コンビニエンスハネムーン」を立て続けに披露すると、「年の離れた後輩ですが、竜馬くんと1曲やりたいと思います」と井上を呼び込んだ。ホリエは主催者からの“飛び入りゲストと何かセッションをしてほしい”という要望に応える形で、レーベルメイトでもある井上との共演を提案したそうだ。そんな2人の音楽的共通項として披露されたのは、コープランドというアメリカのロックバンドの「Brightest」。2人の声とメロディが重なり美しいハーモニーが映えるカバーだった。

井上がステージを去ると、ホリエはストレイテナーと秦 基博の共作共演による「灯り」(2017年発表)を単独で熱唱。その優しく温もりある歌と鍵盤の音色に、会場は幸せな空気で満たされていた。その後のMCで現在ストレイテナーは全国ツアーを開催しており、このイベント直前のライブで喉のコンディションを崩してしまったことを告白する。実際この日もコンディションも本調子ではなさそうだったが、「この間(札幌)のライブで声が出なくなった時、お客さんが自分の代わりに唄ってくれて泣いてしまった曲を最後にやります」と前置きをしてから「シーグラス」をエモーショナルに唄い上げ、本編を締めくくった。
アンコールではこの日の出演者がステージに勢揃い。本番前の楽屋での会話の内容や、楽器の話題でひとしきり盛り上がった後、山崎がギター、井上がタンバリン、ホリエが鍵盤を担当し、HaiRiも交えてビートルズの「Hey Jude」のセッションが始まった。1人1コーラスずつ唄いつなぎ、サビで全員の声が合わさると、世代やそれぞれの音楽性を超えて、音楽が好きな気持ちが通じ合うかのように、4人が歌でひとつになった。こうして約2時間におよぶ歌でつながる特別な一夜は幕を閉じたのだった。

取材・文◎音楽と人
撮影◎伊藤 惇

■<音楽と人LIVE 2018「東京アコース
ティック百景 vol.2」>2018年7月10日
@渋谷 duo MUSIC EXCHANGEセットリス

【HaiRi】
01. 小さな光
02. 少女
03. 未来のつぼみ
【山崎まさよし】
01. Englishman In NY
02. Passage
03. カルテ
04. Fat Mama
05. セロリ
【井上竜馬 (SHE’S)】
01. Tonight
02. Over You
03. グッド・ウェディング
04. Don’t Look Back In Anger
05. aru hikari
【ホリエアツシ (ストレイテナー)】
01. High and Dry
02. 彩雲
03. コンビニエンスハネムーン
04. Brightest with 井上竜馬
05. 灯り
06. シーグラス
【ENCORE (SESSION)】
01. Hey Jude

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