【ライヴレポート】BREAKERZのAKIHI
DE、「失くすこともまた奇跡のひとつ
かもしれません」

BREAKERZのギタリストAKIHIDEが7月5日、マイナビBLITZ赤坂にてソロワンマン公演<AKIHIDE MUSIC THEATER -Electric Wonderland->を開催した。同公演はソロ6枚目のアルバム『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』を掲げて行われたもの。7月5日は自身の誕生日でもある。
『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』の構想は、2年前の誕生日に行ったライヴ<AKIHIDE MUSIC THEATER 想い出プラネタリウム>で披露した「プラネタリウム」「Wonderland」からスタート。その後の<AKIHIDE Premium Night Show 月の舟>、2017年9月から四季をテーマに開催してきた<AKIHIDE SEASON LIVE 2017-2018>にて、新曲の数々をビルドアップしてひとつにまとめ上げたものが同アルバムとなる。

これまでよりも時間を掛けて完成させた新作は、ギターと唄はもとより、ストーリーや作画を自ら手がけた120ページにおよぶ絵本を付属。多彩なサウンドアプローチによる楽曲と、リアルとファンタジーを描いた絵本の世界観を体現すべく行われた<AKIHIDE MUSIC THEATER -Electric Wonderland->は、<SEASON LIVE>の集大成とも位置づけられた。
“雨男”の異名を持つAKIHIDEだが心配された雨雲も去り、空が明るさを取り戻した赤坂周辺には開場時刻の17時半よりも前からファンで賑わっていた。開演は19時。少し早めの開場は、AKIHIDEがこれまで創作してきたアートがロビー展示されるがゆえ。アート展は、2年前のEX THEATER ROPPONGI公演<想い出プラネタリウム>以来2度目となる。館内には、記念撮影が行えるニューアルバムのジャケット写真のセット再現、絵本の原画の一部、アルバムが出来上がるまでの制作風景を捉えたメイキング写真、構想やアイデアをメモした手書きノートの実物などを展示。また七夕にちなんで行われたのは、会場内に設置された“願いの樹”に願い事を書いた短冊を飾るというファン参加型企画だ。AKIHIDEをはじめ、バンドメンバーや、絵本の主人公:お化けロボットのフィーリー、その大切な存在となるリスのアリスの願いも飾られるなど、夢に溢れるものとなっていた。

そして、定刻の19時に場内暗転。時計の秒針が時を刻むサウンドに続いてスペーシーなSEが場内を包み込み、下手からバンドメンバーが姿を現した。少し間をおいてAKIHIDEが登場、ステージ中央に到着したところで、絵本の冒頭の一節を朗読した。「ようこそ! Electric Wonderlandへ。」という言葉に続くオープニングナンバーは、音源同様「プラネタリウム」だ。エレクトロなアプローチながら、一音一音にヒューマンな息吹が宿る。

「音の魔法を操る素敵なミュージシャンと一緒に、その深く深くへと旅していきましょう。さあ不思議な時間の始まりです」──AKIHIDE

静かな口調が導いた2曲目はニューウェーブ調ナンバー「Wonderland」。曲中で早速メンバー紹介を挟み込むアレンジで客席との距離を近づけ、「春に舞う綿毛の弾むような気持ちを込めた楽曲です」と「タンポポ」ではアコギを奏でたほか、各メンバーのソロパートがサウンドを躍動させた。そして、再びAKIHIDEがストーリーテラーとなり、絵本の世界へ。

この日のライヴは曲間にAKIHIDEのナビゲートを挟みつつ進行していくというカタチ。複雑な構成や変拍子を組み込んだ「砂の海」、ガットギターの音色が切なくも温かな「ブリキの花」、ウッドベース、ピアノ、アコギ、ソプラノサックスなど高速フレーズによるソロの応酬を繰り広げたアダルトな「月夜のララバイ」など、バンドサウンドももちろん饒舌だ。加えて、編成を変化させたセクションが秀逸。「月の舟」はAKIHIDEが1人残ってアコギの独奏を。「Namida」は小林岳五郎の豊潤なピアノと、AKIHIDEの柔らかなガットギターのみのアレンジが美しく、胸を締め付ける。
メンバー全員がステージに戻ってスタートした中盤は「風の歌」から。サックス奏者の中村尚平が奏でるフルート、砂山“Sunapanng”淳一の弓によるウッドベースソロ、AKIHIDEがストラトで表現した風の音色は絶品。この日最も激しかった「瓦礫の王様」、ニューアルバムを象徴するヴォーカルナンバー「Ghost」に続いては、スペシャルゲストの登場だ。アルバム収録曲「My Little Clock」のヴォーカルを務めたのは、「絵本に登場する天上の声を持ったキャラクター“時計姫”のイメージに合う」とAKIHIDEからのオファーを受けた女性シンガー蓮花。ポリリズムの中で響き渡る歌声はあまりにも清らか。さらに『天空の城ラピュタ』主題歌の「君をのせて」を蓮花のヴォーカルによりカバーして、<AKIHIDE MUSIC THEATER -Electric Wonderland->に華を添えた。

本編も残すところ2曲。<SEASON LIVE>でお馴染みの「朝顔のマーチ」ではオーディエンスとの息のあったクラップで会場の一体感を高め、城戸絋志のドラムと砂山“Sunapanng”淳一のベースのシャレた掛け合いにフロアも笑顔。本編最後は音源のラスト曲でもある「夕凪のパレード」だ。その前のMCでAKIHIDEがこう語った。

「僕は夕焼けを見るのが好きです。それは、決して同じ夕焼けが二度と見れないからかもしれません。綺麗だなと夕焼けを眺め、目を閉じ、また開いた時には、夕焼けはオレンジから深い紫に、そして夜の黒へと色を変えていきます。僕達は色んなものを手にしては失くしていきます。でも、何かを失くす事で手に入れたものや、その景色を奇跡と感じられる事が出来るのであれば、失くす事もまた奇跡の1つなのかもしれません。今日のこの素敵な時間も終わっていきます。この瞬間、皆さんと出会えた奇跡を大切に、感謝の思いを噛み締めながら次の楽曲を送りたいと思います。皆さんにとってまた素敵な朝日が昇ってくることを願って」──AKIHIDE
アンコールはバンドメンバーとスタッフからのサプライズ、AKIHIDEの誕生日を歌とケーキで祝うシーンが。これには本人も満面の笑みを浮かべて感謝の言葉を伝えた。

「聴いてくださる皆さんが居るからこそ、色んな音楽に挑戦でき、今作も全身全霊を尽くして作ることができました。誕生日というのは僕にとってお祝いしてもらうというよりも、応援してくださる皆さんに感謝すべき日なのかなと改めて思いました。本当にありがとうございます」──AKIHIDE

七夕にちなんで「星祭りの夜に」、ソロライヴの定番曲「黒猫のTango」の2曲にインプロビゼーションを盛り込みながら届け、2時間半にわたるライヴがエンディングを迎えた。全ての演奏を終えると出演者全員で挨拶、1人ステージに残ったAKIHIDEは再び絵本を取り出し、「最後に1つ歌を送らせていただきたいと思います」と告げて物語のラストに登場する「おやすみの歌」を読み上げた。

アルバムに添えられた絵本は、棄てられた遊園地にひとり残されたお化けロボットのフィーリーが、“大切な想い出と新しい自分に出会う物語”だ。2017年秋より始まった四季の旅の最終地となった本公演は『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』の世界観はそのままに、“音の遊園地”とも言うべきAKIHIDEの創作世界が思う存分繰り広げられた。ソロ活動開始から5年目の集大成を経て、AKIHIDE自身もまた新たな旅を続けていく。

撮影◎達川 範一 (Being)

■<AKIHIDE MUSIC THEATER -Electric Wonderland->2018年7月5日@マイナビBLITZ赤坂 セットリスト

01.プラネタリウム
02.Wonderland
03.タンポポ
04.砂の海
05.ブリキの花
06.月夜のララバイ
07.月の舟
08.Namida
09.風の歌
10.瓦礫の王様
11.Ghost
12.My Little Clock ※Vo.蓮花
13.君をのせて (カバー) ※Vo.蓮花
14.朝顔のマーチ
15.夕凪のパレード
encore
en1.星祭りの夜に
en2.黒猫のTango

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