斎藤里菜(集団行動)×MICO(SHE I
S SUMMER)対バンツアーに先駆け“あ
りのまま”対談

結成から1年半を経過し、バンドらしさを増してきた集団行動。このバンドからボーカリストのキャリアをスタートした齋藤里菜の存在感も日に日に鮮明になってきた印象だ。一方、女の子のリアルをオリジナリティあふれる言葉と声で届けるSHE IS SUMMERは、プロデューサーに片寄明人を迎え、作曲には片寄やTENDRE、高橋海(LUCKY TAPES)、森山公稀(odol)、コレサワらを迎えた1stミニアルバム『hair salon』を8月1日にリリースする。新たな扉を開いたタイミングで2マンライブツアー『避暑2トーク』を開催する二組から、齋藤里菜とMICOを迎え、お互いの印象や音楽性、20代の女性としての普遍的なテーマに至るまで、存分に対話してもらった。
――まず、どんなきっかけでお互いの存在や音楽を知ったんですか?
齋藤:私はSHE IS SUMMERの一番最初のライブを見に行っていて。その時に“何?この可愛い声!”と思って。
MICO:やばい! 一番最初、恥ずかしい(笑)。
齋藤:私がライブっていうもの自体を見るのが2回目とかだったので、衝撃でした。とにかく可愛いし、女の子の味方になってくれる感じの音楽というか、歌詞もそうですけど、“聴いたことない!”と思いました。それまで音楽をほとんど聴いていなかったということもあるんですけど(笑)。だからその時は衝撃でした。
――それがMICOさんとの1stコンタクトだったんですね。
齋藤:そうですね。私にとってはそれが最初で。すごい人だなと思ってました。その時は自分がステージに立っている姿とかも全然、想像できてなかったので、すごく遠い存在でしたね。
MICO:その時はもう歌うっていうことは決まってたの?
齋藤:決まっていたけど、ライブは全然決まってないし、“人前で歌う”っていうことを知らなかった時だから。
――MICOさんが齋藤さんに出会ったのは?
MICO:私は真部(修一)さんが関わっているプロジェクトの音楽は全部チェックして聴いていたので。それで新しく集団行動っていうのを始めて、まず名前から“うわー、真部さんらしい!”っていう感じがして(笑)。でも音楽はすごく新鮮で、新しい感じがして。複雑な部分もあってかっこいいなと思ったのが一番最初のイメージかな。
――じゃあ、齋藤さんとの出会いというよりは、集団行動っていうバンドに対して、ですかね?
MICO:ですかね。一番最初はミュージックビデオにも顔を出してなかったので。
齋藤:後ろ姿しか映ってない(苦笑)。
――ずっと走ってる「ホーミング・ユー」のミュージックビデオですね。
MICO:そうそう。“ボーカルの子はどんな子なんだろう?”っていう感じで、声も演奏として楽器の一部みたいに馴染んでいる感じだったので、バンドとして“あ、こういう新しいプロジェクトが始まったんだ”って思いましたね。
――いわゆる真部さんの仕事をずっと追っている典型的な音楽ファンの一人としてっていう感じですね。
MICO:そうですね(笑)。ほんとにそうです。結構周りにも同じように好きな人が多いので、ほんと始まった瞬間「あれ聴いた?」みたいに噂になってました。
齋藤:へぇ~。
MICO:LUCKY TAPESの(高橋)海くんとも、「あれかっこいいよね」みたいな話をしました。
――では、齋藤さんはSHE IS SUMMERのどんなところに魅力を感じましたか?
齋藤:私、ずっと気になっているんですけど、MICOちゃんは歌詞を書いてるじゃないですか? 実体験なのかなとか……。
MICO:あー、結構実体験もあるんだけど……感情としては実体験だけどエピソードとしては違うとか、そういうのが多いかな。あんまり詞先で作っていなくて、曲から作っているので、曲を聴いて“この感情が思い起こされるな”というところから始まって、そこから曲に沿ってエピソードとかをつけて行ったりするので、全部が実体験というわけでもない(笑)。
――齋藤さんがSHE IS SUMMERの曲のなかで、特に歌詞で気になっているものはありますか?
齋藤:「女の子の告白」ですかね。
MICO:コレサワちゃんが曲を書いてくれたやつですね。
齋藤:これめっちゃ好き。中学生とか高校生の時を思い出すというか。
MICO:失恋の曲をけっこう歌っていたので、去年1年で恋愛相談が書かれたファンレターをたくさんもらうようになったんです。
齋藤:えーっ!
MICO:みんなすごい長文で手紙を書いてくれて。でも一つひとつに返事はできないので、ファンレターのお返事を書くつもりで、本当に女の子の背中を押す曲をと思って全力で作った曲だったんです。
――主体的に恋愛したいんだけど、期待に沿おうとしている女の子が多いんですかね?
MICO:うーん……恋愛相談を聞いていたり、手紙で私が一番思ったのは、最近の女の子って結構強い子が多いと思うんですよ。友達もちゃんと自分で選べるし、仕事も自分で選べるし、仕事で嫌なことがあってもちゃんと言える。けど、こと恋愛に関してはそれが急にできなくなっちゃう、うまくいかなくなっちゃう子って、自分も含めて多いんだなと思って。恋愛だと思っちゃうからおかしくなっちゃうと思うんですよね。でも、恋愛も人と人だし、そう思えばなんてことないことの方が多い気がするなと思って。
齋藤:なるほど(笑)。
MICO:そう思うだけで、だいぶ違うと思うから。落ち着きたい時に一回この曲を聴いて、落ち着いてほしいなと(笑)。
――それは現代の20代の女性らしいイシューですね。仕事は頑張れちゃうんでしょうね、社会的な自分というか。
MICO:そうなんですよね。
MICO(SHI IS SUMMER) 撮影=横井明彦
恋人といる時間でも、音楽をやっている時間よりも音楽のためになっている時間もあると思うし。相対的に幸せならそれが一番いいなと。
――齋藤さんはそういうところで思うことはありますか?
齋藤:確かに恋愛になると一気に、考えなくていいことをちょっと悪い方向に考えちゃったりとか。仕事とかそのほかのことだったら割り切れることが、恋愛だと割り切れなかったりすることはあるかもしれない。
――たまにいますよね、恋愛モードに入っている時は、仕事が全然できなくなる人。
MICO:確かに。私、結構そうです(笑)。
齋藤:ははは。
MICO:仕事はちゃんとやりますけど、私は“この時間は仕事の時間”とか“この時間は恋人との時間”とか区切る感覚がなくなってきて。なんだろうな……今までは、音楽をやるために生活の時間を使っていたと思っていた時代があったんですけど、SHE IS SUMMERを始めたぐらいからかな、“生活を豊かにするために音楽をやっているんだ”っていう風に変化してきて。結局、行動していることは同じなんですけど、全く逆の発想みたいなものにスッと変わったタイミングがあって。その時から、あんまり時間の境目みたいなものがなくなって。例えば、恋人といる時間でも、音楽をやっている時間よりも音楽のためになっている時間もあると思うし、その逆もあると思うし。あんまり区切りを考えてないからそうなのかも(笑)。相対的に幸せならそれが一番いいなと。
――区切りをつけない方がいいとか、まだ今はつけちゃうとか、齋藤さんはいかがですか。
齋藤:ああ、でも私も音楽を始めた時……どうなんだろ? 大学からそのまま、就職をせずに音楽を続けることになったから。
MICO:大学は受験してるの?
齋藤:大学受験はして、もともと地元の大学に行こうとしていたけど行けなくて、東京に出てきて、体育学部に入って。音楽を始めたのは4年の就活の時期で、就活をして。
MICO:あ、就活してたんだ?
齋藤:就活が始まる頃に、焦って説明会とかに行こうとしてましたね。
――MICOさんは就活の経験は?
MICO:就活はしてないです。私、受験も一度もしたことがないんです。大学にも行ってないですし。高校の頃から音楽を始めて、高校を卒業するぐらいの頃に前のバンドのボーカルとして活動を本格的にスタートしたので。
――お互いに知らない世界ですね。
MICO:知らない世界です、本当に。
齋藤:高い学費を払ってくれたお母さんに申し訳ないと思いながら、大学はムッチャ暇で。まぁでも、私は体育の先生と救急救命士の免許を取ったから、それほど暇ではなかったんだけど、暇な人はほんとに暇で(笑)。
MICO:里菜ちゃんみたいな体育の先生だったら大変だよね?
齋藤:えっ!? そんなことない……。
――仕事と恋愛の境界線の話でしたね(笑)。
齋藤:そうでしたね(笑)。大学の時はごちゃ混ぜでしたね。
MICO:へー、どうして?
齋藤:学校生活も、恋愛も、全部ひとまとまりで。分ける場所がなかったといえばなかったから、同じ枠内で全部成立していて、逆に一つだったのかも。
MICO:私はその“分ける”みたいものを高校までで教え込まれちゃったかな、っていう感じだった。
――ところで、今のアーティスト人生としても、一女性としても、重大なイシューが何なのか興味深くて。
MICO:テーマが広いですね(笑)。
齋藤里菜(集団行動) 撮影=横井明彦
部活では目標にゴールがあったけど、今は目標設定してもそれ以上もあるし、天井がない感じがするので、生きやすいかもしれないです。
――じゃあ音楽活動においては今、どういうタームに入ったと思いますか?
齋藤:私は集団行動として、みんなの前に出てきてから1年2ヶ月ぐらいですけど、この1年2ヶ月は、今までこんなに自分と向き合ったことはないっていうぐらい向き合った時間が多かったので、この間で自分のことをだいぶ知りました。それに、周りの人たちが私のことをどう見ているか?っていうのも知ったから、ここからは知った自分を世間にどう見せていくのか、自分のいいところとか、悪いところも含めて、どういうところが自分の魅力なのかを自分でも勉強しながら、ボーカリストとしてどんどんみんなに自分の存在を植えつけていきたいな(笑)。
MICO:そういった意味では、私も最初の1年は本当に自分と向き合って、自分で自分のルーツみたいなものを探しに行ったりとかして。自分ってどういうものが好きだったんだろ?みたいなものを思い出して書き出す作業をしてみたりとか。嫌いなものを逆に知る、みたいな。嫌いな食べ物を聞かれた時にいつも「あんまりない」とか答えちゃってるんですけど、実はあったりするんですよね、忘れちゃってるだけで。で、「ない」とか言ってた人とご飯を食べに行ったときに、「これあんま好きじゃない」って言うと「あるじゃん、嫌いなんじゃん」っていう。食べられないことはないけど、好きじゃないっていう。あ、これが嫌いっていうのかって、結構忘れちゃうんですよね。
――確かに。
MICO:自分ってこういうものが好きだったのか、と。それは全然音楽に関わらない、“犬好きだったな”とか、そういうことから一個ずつ書き出して。バンドの時は、自分っていうよりもバンドのボーカルとして活動していた感じなので、SHE IS SUMMERを始めてから、自分と向き合って気づいたこともいっぱいあって。最近、一番意識していることは、好きなものと自分の性格の中身のギャップが大きいなということです。例えば、ガーリーな服はほんとはすごく好きなんですけど、“そういうガーリーな服を好きな女の子はこういう性格だ”みたいに先入観を持たれて、本当の自分を知ってもらえないことも多々あったなと思って。今までは何も気にせず着てたんですけどね。
齋藤:あー。
MICO:人は外見から入るし、難しいんですよね。自分をどっちに振るか?って。でも、今の自分の性格やものの見方を大切にしたいと思ったので、自分の性格に気づいてもらいやすくなる服装をすることはすごく大事なのかなと、最近は思ってますね。
――今は一致してる?
MICO:そうですね。音楽もそれに寄っていったっていうのもあると思うし。だから自分が考えていることが反映されている時期だなと思いますね。何年か前に2週間ロンドンに行った時に、それまでは体験にお金を使うっていうよりも、モノとして残る方にお金を使うように教えられてきたので、そっちを選んでいたんですけど、“体験の方がこんなにも有意義なんだ”と思ってからちょっとずつ気持ちが変わり始めて。去年ぐらいにほんと、服は自分の主張だなと思って。オシャレだとかオシャレじゃないとかじゃないなっていう感覚に変わってから、そうなってきましたね。
――それ、生き方がだいぶ変わったってことですね。
MICO:そうですよね。どんどん変わっていくんですよね。まだ変わるか?と思うけど、変わるんでしょうね(笑)。
――そういう変化は齋藤さんはありましたか?
MICO:歌を急に始めて変化だらけ?
――去年と雰囲気が違いますよ。
齋藤:そうですかね? 1枚目の「バックシート・フェアウェル」のMVを見るとみんな笑うんですよ。真部さんとか、超笑う。「やばくない? 変わりすぎじゃない?」とか「めっちゃイモくさい」みたいな(笑)。
――どこかのタイミングで変わったという自覚はないですか?
齋藤:もちろん、変わろうとは思ってました。1年の間で色々あったし(苦笑)。いろんなインタビューでも話しているんですが、バンド内で喧嘩もしたし。でも、その間にボーカルとして変わらなきゃいけない部分はたくさんあって。それはもちろん自分が変わりたいと思って変わるのもそうですけど、バンドのためにというと言い過ぎかもしれないですけど、変わろうとは毎日のように思ってました。どうすればいい方向に行くのかな?っていうのもずっと考えていたので、この1年はとにかく“変わろう”と思ってましたね。
――自意識のベクトルが二人は真逆な感じがするけど、齋藤さんはこれから色々発動されていく感じがします。
齋藤:ああ、どうなんでしょう?(笑) でも学生の頃までは、部活をやってても目標にゴールがあったり、試験では合格がゴールだったり、卒業がゴールだったり、見えてるゴールがあったから。今の生活だと、目標設定してもそれ以上もあるし、行こうと思えばどこにでも行けるっていう。楽しいですね。なんか天井がない感じがするので、生きやすいかもしれないです。
――背景が全く違う二人が出会って、今回ツアーまでやることになって。
齋藤:ほんとに嬉しいです。
MICO:私も。SHE IS SUMMERとしては、自主企画でライブ毎に別々のバンドを招いてツアーをやったことはあるんですけど、同じバンドとツアーを回るのは初めてなので、すごく楽しみですね。普通に1回対バンするだけとは違うので、仲も良くなるし、お互い影響し合えたりするし。楽しみです。
齋藤:確かに。私も6月にodolとのツアーで3公演回ったんですけど、ほんとに面白くて。音源は聴いていたけどライブを見るのは初めてだったから、最初は窺う感じだったんですけど。3公演目には声が違う感じに聴こえたりとか、深い部分まで知ることができたなと思って。そういうところがすごくいいなと思ったから、今回もすごく楽しみですね。
――それぞれのファンの人もタイプが違うでしょうから、どんな感じで混ざるのかも楽しみですね。
齋藤:私、対バンで全然違うタイプのバンドさんとやる時、割とハラハラしちゃうんです。お客さんの層も違うし、反応する場所も違うし。曲によってお客さんの表情もぜんぜん違くて、自分たちのお客さんが笑ってるところじゃないところで笑ったり。顔の緊張が緩んだりすると、“あ!”って思う。
MICO:あははは。
――しかもSHE IS SUMMERは1stミニアルバム『hair salon』で音楽性も新しくなってるタイミングだし。かっこいい曲ばかりだし、今回の作家陣でピンと来た人たちにも見に来てほしいですね。
齋藤:そっか、リリースからすぐですもんね。
MICO:そう、リリースして初めて回るツアーだから、ガッツリ新曲たちをやることになるのかなと思います。
――共演はしないんですか?
MICO:まだ全然何も決まってないので言えないです(笑)。

取材・文=石角友香 撮影=横井明彦
MICO(SHI IS SUMMER)×齋藤里菜(集団行動) 撮影=横井明彦

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着