北原里英、味方良介らがつかこうへい
の想いを「次に繋げていきたい」『新
・幕末純情伝 FAKE NEWS』上演スタ
ート!

2018年7月7日(土)東京・紀伊國屋ホールにて、つかこうへい生誕70周年記念特別公演『新・幕末純情伝 FAKE NEWS』が初日を迎えた。初日直前に行われた公開ゲネプロ(通し稽古)では、主人公・沖田総司役を演じる北原里英、味方良介らが本番さながらの迫力と熱を感じさせる舞台を披露した。
ゲネプロの後に行われた囲み会見では、北原、味方のほか、小松準弥、田中涼星、増子敦貴、松村龍之介、細貝圭、そして今回の演出を務めた河毛俊作が登場し、初日に向けた今の心境を語った。
(左から)田中涼星、松村龍之介、小松準弥、北原里英、味方良介、増子敦貴、細貝圭、河毛俊作
幕末の日本に一瞬の煌きのごとく登場した新撰組。その著名な隊員の一人である沖田総司が実は女だったという、演劇界を代表する劇作家・つかこうへいのユニークな着想から生まれた本作は、幕末の志士たちの熱い生き様と共に沖田と土方歳三、そして坂本龍馬との恋愛模様を描き、1989年の初演から今日に至るまで様々なキャストで何度も上演されてきた大人気作。今回は十代目の沖田総司役にAKB48グループを卒業したばかりのNGT48元キャプテンである北原を迎えて上演することとなった。

『新・幕末純情伝』FAKE NEWS

囲み会見で北原は「約1ヶ月、空調も切ったなかで汗だくになりながら稽古をしてきました。その想いを全部、ここからの公演にぶつけていけたら」とこれが初主演とは思えない落ち着きを見せる。とはいえ「緊張して夜は寝れなかったりドキドキしていました」と打ち明けていた。
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
坂本龍馬役の味方は、以前の公演では桂小五郎役を演じ、また『熱海殺人事件』にも出演してきた。「濃密な稽古をしてきました。ここにいるメンバーはもちろん、この会見にはいないメンバーのことも大好きになったので、この好きというパワーを使っていい物を作っていけたらと思います」
田中は桂小五郎役を演じる。「1か月かいた汗を信じて、自分を信じて千秋楽まで頑張っていきたい」とコメント。また、岡田以蔵役の松村も「梅雨も早々に明け、暑い日が続く中、皆で鍛錬してきましたが、この夏の暑さに負けないぐらいの気持ちで、精一杯やらせていただきたい」と静かに語った。
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS

ところが、土方歳三役を演じる小松の番となると「とにかく総司を愛し、百姓出身の武士魂、見せつけてやりたいと思います!」といきなり声を張り上げたので皆大笑い。味方は「バキバキじゃない……どうしたの? 稽古場でも一か月見たことがない姿だ(笑)」と突っ込んでいた。
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
新撰組隊士・二宮役の増子は小松のハイテンション挨拶の次、ということで、味方が「やりづらくない?」と気を配ると「大丈夫」と微笑みながら「(座組みの中で)最年少ですが、新撰組の二宮らしく最後まで突っ走りたいと思います。熱い稽古をずっとやってきたので、それを本番でガツンと全力でやりたいと思います」とアピール。
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
細貝は『新・幕末純情伝』に4回目の出演となる。「今回の『FAKE NEWS』は、河毛さんが、今まで伝わりにくかった部分をかなり分かりやすく、初めてつかさんの作品を観る方にも楽しんでいただけるような作品にしてくださいました」と過去の作品をいちばん知る立場からコメントした。
最後に河毛は「僕が稽古場でひと月やってきた事は、小屋(劇場)に入ってから、稽古場以上の事をお客様に見せるための基礎。映像作品では撮ったものがすべてですが。(舞台の)本番はこれからですから。1か月間の稽古場で僕が見られなかったものを本番で見せてもらえるのでは、と楽しみにしています。彼らを信じています」と彼らに期待を寄せていた。

『新・幕末純情伝』FAKE NEWS

質疑応答では、つか作品に出演できたことについて質問が飛んだ。北原は「初めてつかさんの作品に関わらせていただくんですが、もう一生会うことが出来ないつかさんに、作品を通じてどこかで繋がれたような気がします。同じ空間を共有できることは幸せだと感じています」と想いを馳せていた。また味方も北原の言葉にうなづきながら「つかさんの想いや、つかさんを支えてきた人たちが紡いできた事を、僕らの世代がきちんと伝え、10年、20年と僕らの力で繋いでいけるように頑張らないと」と力を込める。
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
また、沖田総司が土方歳三、また坂本龍馬と見せるラブシーンについて話がおよぶと、北原は味方と小松に向かって「緊張してない……よね?どう?」と問いかける。すると小松は「多少します(笑)。でも気持ちを込めてハグしています」、味方は「緊張もするけど、その緊張も必要なんだと思います」と照れながらも素直に語っていた。
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS

初日が七夕ということで、願いごとを聞かれると「そうですね。絶対聞かれそうな事なのに考えていなかった……」と北原。「この作品を一人でも多くの方に観てもらい、最後まで誰一人ケガなく、走り抜けられたらいいなと思います」と一旦答えたものの、この回答に自分自身が納得していない雰囲気。「あ、待ってください! 考え直します」とアピール。
北原のシンキングタイムの間を繋ごうと「代わりに圭くんがおもしろい事を言いますから」と無茶振りされた細貝は「ガンバルヨ!」とカタコト日本語で答え、田中は「満点の星空のように、たくさんの人に来てもらえたらな、と。七夕だから星にかけてみました。(自分の名前も)涼星だし」とリアクションに困る回答を続ける。ようやく考えがまとまった北原が「沖田総司と坂本龍馬みたいに、命をかけた素敵な恋愛ができますように!」とまとめると拍手が沸き起こっていた。
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS

公開ゲネプロでは、役者たちが膨大な台詞をマシンガンのように放つ、つか作品ならではの迫力と熱さを感じさせる芝居が繰り広げられた。斬っては喋り、また斬っては喋る。どこで息継ぎをしているのかわからないくらいの迫力で、観る者をあっという間に作品世界に引きずりこんでいく。
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
女であり、かつ当時は死病と呼ばれた労咳を患う総司を、新撰組の男たちがあたたかく受け入れるなか、敵である坂本龍馬と出会い、真っ直ぐに総司を好きだと言う龍馬に心惹かれていく総司。月日は流れ、総司を取り巻く環境が急速に変化していく。そのなかで何がFAKEで、何が真実であるかが浮き彫りとなっていく。「真実」を知り、傷ついていく総司の姿は痛々しく切ない。労咳で吐く血が心の底からも吹き出しているかのようだった。

『新・幕末純情伝』FAKE NEWS

最初は緊張のせいか、どこかぎこちなさを感じた北原だったが、物語が進むにつれ、まるで沖田総司が今目の前で成長しているかのごとく、変貌していく様が魅力的だった。そして総司を激しい愛で支える龍馬役の味方の圧倒的な存在感と熱量は、最後まで揺らぐことがない物語の柱となっていた。出演者全員がありったけの力で魂を燃やし続け、全力で駆け抜ける、夏にぴったりの芝居。必見である。
取材・文・撮影=こむらさき

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