『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』(C)NHK

『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』(C)NHK

【芸能コラム】井浦新 エンタメから
硬派な作品まで、幅広い活躍で見る者
を魅了 「アンナチュラル」から『返
還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』

 モデル出身の端正な顔立ちと183センチの長身から漂う繊細さ。加えて、どことなく愁いを帯びた表情から醸し出される孤高の存在感。俳優・井浦新の特徴を一言で表すとこんなところになるだろうか。
 その持ち味を生かして、数多くの作品で活躍中の井浦。今年1月から放送された連続ドラマ「アンナチュラル」には、石原さとみ演じる法医学者・三澄ミコトの同僚・中堂系役で出演。解剖医としての腕は確かだが性格に難あり、だがその裏には恋人を殺した犯人を捜し続ける悲しみと強さを秘めた人物を、人間味豊かに演じて好評を博した。
 他にも大河ドラマ「平清盛」(12)、「HiGH&LOW SEASON 2」(16)など、さまざまな作品で活躍してきた井浦だが、その傾向の一つとして、骨太な社会派作品に多く出演していることが挙げられる。
 全国順次公開中の主演作『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』は、1972年の沖縄返還に尽力した外交官・千葉一夫の姿に迫った社会派ドラマ。千葉を「昭和の豪傑」と呼ぶ井浦は、出演が決まった時点で「僕自身、身体的にもメンタル的にも、千葉さんを受け入れる器としては、不足していると感じた」と当サイトのインタビューで語った。
 そこで、千葉本人に近づくために体重を増やすなど、入念な役作りを実施。その結果、声はいつもより低く太いトーンに変化、持ち味の繊細さに力強さが加わり、意気込みが伝わる入魂の演技となった。
 社会派の作品に対する意欲については、同インタビューで「僕自身、さまざまな事件や、戦争、社会問題を題材にした作品が好きなので、役者としてもやっていきたいという気持ちを持っています」とも語っている。その言葉を裏付けるのが、彼のフィルモグラフィーだ。
 世間を震撼(しんかん)させた、あさま山荘事件の内幕を描いた『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07)。防衛庁内で割腹自殺を遂げた作家・三島由紀夫を演じた『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(11)。北朝鮮と日本の間で引き裂かれた在日朝鮮人家族の悲劇を描いた『かぞくのくに』(11)…。いずれも国内外で高い評価を受けた骨太な作品だ。
 前述の「アンナチュラル」も、基本はエンターテインメントでありながら、その裏には奥深い人間ドラマを内包していた。
 そんな井浦は現在公開中の『菊とギロチン』(18)にも出演。大正末期を舞台に女相撲一座とアナーキストグループ、ギロチン社の若者たちの生きざまを描いた群像劇だ。
 さらに、10月には『止められるか、俺たちを』(18)も公開予定。こちらは、『実録・連合赤軍』、『11・25自決の日』を生んだ若松孝二監督の製作会社、若松プロダクションに集った若者たちの青春を描く。井浦が演じるのは、その若松監督本人。数々の作品に出演し、告別式では弔辞まで読んだ相手を演じるということで、相当な覚悟を持って臨んでいるはずだ。
 一方、テレビドラマでは7月17日からフジテレビ系で始まる「健康で文化的な最低限の生活」に出演予定。こちらは吉岡里帆演じる新人ケースワーカーを主人公にした心温まるヒューマンドラマといった趣だが、“生活保護”という社会的な問題を扱っているあたり、井浦らしい作品と言える。
 クールで繊細なイメージとは対照的な、硬派で骨太な出演作の数々。2018年後半もその持ち味を生かした活躍で、見る者をうならせてくれるに違いない。(井上健一)

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