BRADIO『YES』全肯定の傑作を語る合
言葉は「ファンキー」

ファンキーパーティーピープルに贈る、
BRADIOからの『YES』!ナイスグルーヴ
の秘訣とは?

BRADIOがメジャー1stアルバム『YES』をリリースした。シングル『LA PA PARADISE』や『きらめきDancin’』を含む全12曲には、途方もない熱量と最高のグルーヴが詰め込まれている。これまで以上にファンキーな作品には特有の土臭さと洗練されたアーバンミュージックが融合され、エロスとペーソスを感じさせる。BRADIOにとって、現時点で紛れもなく最高傑作のアルバムに仕上がったと言えるだろう。こうしたグルーヴはどのようにうまれていったのか? 真行寺貴秋(Vo.)、大山聡一(Gt.)、酒井亮輔(Ba.)へのインタビューを通して、傑作『YES』の秘密に迫る。

Photography_Reiji Yamazaki
Interview & Text_Sotaro Yamada
Edit_Kenta Baba
(BRADIO『YES』アルバムティザー映像)
左から:大山聡一(G)、酒井亮輔(B)、真行寺貴秋(Vo)

みんなの気持ちが一致した『YES』

――メジャー1stアルバム『YES』、素晴らしい仕上がりで、超カッコ良かったです。これは相当な手応えがあったんじゃないですか?

大山:そんなふうに言ってもらえて嬉しいです。その手応えがそのままタイトルになっていると言っても過言ではないですね。『YES』という言葉にはいろんな意味を持たせているんですけど、レコーディングや制作の過程で「これだ!」とみんなが感じる瞬間がたくさんあったんです。新体制になって最初のアルバムだし、勢いをそのままパッケージできた感触がありました。曲自体のパワーもそうですけど、レコーディング時の熱量にも手応えがあってすごく良いアルバムになったと思っています。タイトルは最後に決めました。『YES』という言葉が出た途端、3人とも「イイねえ!」って盛り上がりました。
ギターの大山聡一さん。

酒井 : ライブリハーサル終わりの帰りの車のなかで話していて、誰かが「YES!!」って言ったんですよね。で、「それ、良いんじゃね?」と。あれは誰が最初に言ったんだっけ?

真行寺 : ヤスじゃなかった?

大山 : そうだ、何の気無しの普通の会話のなかで「シンプルなタイトル付けたいよね」という話になって、サポートでドラムに入ってくれているヤスが「YES!!」って叫んだんですよね。その言葉がみんな印象に残っていて、いざタイトルを決める段階で「ていうか、あの言葉めちゃくちゃ良いんじゃない?」と。
ボーカルの真行寺貴秋さん。アフロヘアがトレードマーク

――みんなの気持ちが一致した肯定の『YES』だったんですね。今すごく良い雰囲気ですけど、2017年10月にメジャーデビューしてから現在まで怒涛の日々だったと思います。勢い良くスタートを切ったと思ったら、2018年1月にまさかのメンバー(田邊有希)脱退。BRADIOにとってキャリア最大のターニングポイントになる出来事だったと思います。年末年始、大変だったんじゃないですか?

大山 : 年末にはまだ脱退は決まっていなかったんですよね。ただ、みんなその雰囲気は感じていました。年明けてすぐ『きらめきDancin’』のレコーディングだったんですけど、彼(田邊)はその時には意思を固めていて。新年一発目ですごいピンチが訪れたという状況にはなりました。もちろん大変だったけど、このバンドを始める前にみんないくつもバンドを組んでいろんな経験をしてきているし、すべて順調に進むわけではないということもわかっているので、「どうしよう」というより「どうやろう」というモードにすぐ頭がシフトしました。サポートメンバーのヤスがクイックに動いてくれたり、いろんな人が手助けしてくれたりして、チームみんなが「やってやろうぜ!」という雰囲気になったんです。不安がなかったわけではないけど、いろんなことが制限されることが確定したことで、逆にチームとして今まで培ってきたチカラがぐっと出せたんじゃないか。そんな気がしています。良いムードでアルバムに向かえました。
ベースの酒井亮輔さん。体幹を鍛えている

「ああ、グルーヴってこういうふうにつ
くっていくんだ」

――今回のアルバムはファンク要素がかなり強いですよね。

大山 : リズムセクションが変わってグルーヴがあたらしいものになったので、そこから必然的にアレンジも派生していきました。曲をつくっている時よりもレコーディングに入った時にみんなでつくるグルーヴがめちゃくちゃファンキーだった、ということだと思います。

――ちなみに、最初にできた曲はどれでしょう?

酒井 : 昔から持っていたネタを使いつつ全部あたらしく作り直しているので、全曲あたらしいと言えばあたらしいですね。でも順番でいうと、年始にレコーディングした『きらめきDancin’』が最初かな?

大山 : そうだね。レコーディング時のグルーヴや熱量がすごく良かったんです。「ああ、グルーヴってこういうふうにつくっていくんだ」ということが肌感でわかったし、みんな成長できたと思う。そういう勢いや気持ちが『きらめきDancin’』とは曲調の違うほかの曲にも反映されていきました。

――『きらめきDancin’』のギターはすごく大胆ですよね。ファンクのなかに日本のロックを感じます。
(BRADIO『きらめきDancin’』MV)

大山 : 自分が通ってきたサウンドをうまく取り入れるということは、昔からテーマにしていることでもありますからね。今回は面白く取り入れられたと思います。

――ギターソロにはLUNA SEAを感じます。もうちょっとBPM上げたら『ROSIER』のSUGIZOさんパートが聴こえてきそう。

大山 : それは……どうでしょう(笑)? もしそうだとしたらかなり嬉しいです。SUGIZOさんの血は確実に自分のなかに入っているので。
――MVでは3人とも演奏しながら踊っていますが、ダンスも練習したんですか。

大山 : 少し期間をいただいて練習しました。

――身体の強さとリズムには何か関連があると思いますか? (酒井)亮輔さんは身体を鍛えていると聞きましたが。
酒井 : 体幹がしっかりしている方がリズムの重心が安定する気がします。海外のアーティストはみんな体幹強そうですよね。

――以前、田島貴男さんとの対談で亮輔さんが体幹トレーニングやボクシングの話をされていたのが印象的でした。その後、ボクシングは始めました?

酒井 : やってないです(笑)。もうちょっと身体をつくってからやらないと、たぶん手首をやられるなと思って。家で体幹トレーニングをするくらいですね。トレーニング系の本を買って読みながら。

――サッカーの長友選手の本とか。

酒井 : まさにそれです(笑)。あの本を参考にして、毎回1時間半くらい体幹トレーニングしていますね。普通の筋トレと違うので、今まで痛くなったことのないところが筋肉痛になります。あれはおすすめですよ。

――最近のBRADIOには、そういうスポーツモードもありますよね。貴秋さんはマラソン始めるし。

真行寺 : (笑)。歌とマラソンも、関係なくはないと思いますよ。マラソン初めてからステージ持ちがだいぶ良くなりましたし。

――走ると声が通りやすくなる、みたいなことは……。

真行寺 : どうですかねえ……ありそうで、なさそう(笑)。

「『Boom! Boom! ヘブン』は自分にしか
歌えない歌」

(BRADIO『Boom! Boom! ヘブン』MV)

――アルバムのリード曲は『Boom! Boom! ヘブン』です。こんなに楽しい曲なのに、ふっと悲しい歌詞が挟まれていますよね。「涙に溺れて」から始まり、「華々しくともいつかは散るじゃない」という部分など。貴秋さんは、自分の経験を反映させて歌詞を書くのか、それとも完全に自分とは別の空想として書くのか、どちらでしょう。

真行寺 : 両方ありますけど、『Boom! Boom! ヘブン』は想像ベースでした。僕はパリピではないしクラブにも行きません。なんならキャバクラにも行ったことないしお酒も飲めない。だから憧れがあるんですよね。それと、今回はちょっと皮肉も入れてみました。「みんなこういうのが楽しいんでしょ?」という。『Boom! Boom! ヘブン』を通して、自分にしか書けない歌詞や歌えない歌があるとすごく感じましたね。
――自分にしか歌えない歌というのは、具体的に言うと?

真行寺 : 下ネタとか(笑)。

大山・酒井 : (笑)。

――でも、貴秋さんの下ネタっていやらしくないですよね。

真行寺 : いろんな人にそう言ってもらえることが多いんですよね。「チ◯コを握っていても許せるシンガー」とか言われる。

――MVでも思いっきり股間握ってますもんね(笑)。

真行寺 : 周りにそう言われたことで自分の見え方を知りました。その気付きを活かせたのかなと思うし、そういう意味ではふっきれたとも言える。これが自分らしさなのだとしたら、それはどんどん出していった方が良いと思うようになりました。

――いやらしさがないのはなぜだと思いますか?

真行寺 : 夜のお店に行かないから(笑)。

大山・酒井 : (爆笑)。
真行寺 : 真面目に答えると、僕はムッツリなのかもしれないです。歌や歌詞でしかエロスを表現できないという。

――でも、『Sparkling Night』はちょっとエロいと思いました。

大山 : こういうセクシーな表現ができる人もなかなかいないですよね。

真行寺 : この曲では、それまで自分が行けなかったところまで行って書けたかなという気がします。それはプロデューサーさんに引き出してもらいました。

――アーバンな感じもあります。歌詞はどこからインスピレーションを得ましたか?

真行寺 : 僕はいつも音ができてから歌詞を書くので、インスピレーションは音の雰囲気です。そこに言葉を乗せていく。

――「シャンパンにダイビング」などの歌詞は、簡単なフレーズだけどあまり思い浮かばない気がします。
真行寺 : 日常では使わない言葉がメロディに引っ張られてふっと出てくることはあります。やっぱり歌詞は単なる言葉じゃないし、音と密接に関係している。というか、そもそも言葉には音がありますもんね。『Sparkling Night』は、サビから歌詞を書いていきました。頭の3行は最初にパッと思い浮かんで、仮歌詞の時から変えてないです。後半部分はいくつかパターンをつくったんですけど、前半はそのままの箇所が多いです。

「ファンキー」は、合言葉

――BRADIOにとって、現在の日本のバンドシーンはどう見えているんでしょう? というのも、BRADIOのようなファンクバンドは、日本の若手のなかではかなり珍しいです。ライバル視、あるいは目標にしている先輩はいますか。

大山 : すごく良いバンドがたくさんいると思っています。僕らより若くてもしっかりした意志を持っている人がたくさんいて、そこはもう、素直にすごいなあ、という気持ちです。アプローチは違うけど素晴らしいライブを観る機会も多いし。SCOOBIE DOや鶴、田島貴男さんなど、器が違う先輩もたくさんいます。本当にみんなすごいな、というのが率直な気持ちです。でも、僕らは僕らがやるべきことを突き詰めていけばいいと思うし、僕らにしかない魅力もあると思っている。そういう部分を色濃く出していきたいですね。

酒井 : 僕は、たとえば東京スカパラダイスオーケストラさんは観ていてやっぱりえぐられる感じがあります。マインド面ですごくファンキーだし、ああいうひとつのファンクな塊になりたいなと。

――では最後に。今のBRADIOにとって、「ファンキー」とは何ですか?
真行寺 : 最初は意味もわからず雰囲気だけでファンキーって言ってたけど、最近はBRADIOを象徴する言葉になってきたのかなと思っていて。僕らは日本人なので、「ファンキー」という言葉の使い方が本家とは違っていても良いんじゃないか。音楽がどうこうではなく、ファンキーという言葉=BRADIO、という感じ。
酒井 : 僕もジャンルではなくマインド面が重要だと思っています。ファンキーには「共有する」という意味合いが強い。そこにはハッピーも含まれると思う。
大山 : 僕は自分のことをわりと安定と平和を望むタイプだと思っていて、バンドや人生に対してもぶっ飛んだイメージは持っていないんです。ファンキーという言葉に対してもそうで、自分がファンキーな人間だからああいう音や空間をつくっているわけではない。むしろファンキーという言葉は、合言葉として使っているかもしれない。「ファンクしようぜ」って口に出して言っているからファンキーな音や場がうまれていくというイメージです。同じことをお客さんに対しても思っていて、ファンキーなお客さんだから来てほしいわけではない。一見ファンキーに見える人だって、いろいろ事情はあるわけですよね。落ち込むこともあるし人間関係で悩むこともある。そういう様々な人たちがBRADIOのライブで「一緒にファンクしようぜ!」と言って楽しむ、それがBRADIOのファンク。だから、一般的に言われる「ファンクミュージック」の定義からは少し外れるかもしれないけど、ファンキーとは僕らにとっての合言葉、くらいの感覚だと思っています。

作品情報

1st Album「YES」(通常盤)
2018.07.04 RELEASE

通常盤(CDのみ)
品番:WPCL-12896
価格:3,000円(税抜)

・収録楽曲(全12曲)
1. Funky Kitchen
2. スキャット・ビート
3. Sexy Lover
4. Boom! Boom! ヘブン
5. きっと遠く キミともっと遠く
6. Sparkling Night
7. Shout To The Top
8. きらめきDancin’
9. INAZUMAジャケット
10. Feel All Right
11. 人生はSHOWTIME
12. LA PA PARADISE

■シングル・アルバム連動特典
デビューシングル「LA PA PARIDISE」、2ndシングル「きらめきDancin’」そして今作メジャー1stアルバム「YES」に付属する『ファンキー応募券』の特典内容も遂に近日公開!
3枚の応募券を手に入れた人だけが応募できる豪華特典にご期待ください!
※『ファンキー応募券』は各CD帯に付いています。


BRADIOオフィシャルサイト
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真行寺 貴秋Twitter
大山 聡一Twitter
酒井 亮輔Twitter

BRADIO『YES』全肯定の傑作を語る合言葉は「ファンキー」はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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