【ライブレポート】OBLIVION DUST、
ツアー開幕「さらに追加で披露できる
曲がある」

OBLIVION DUSTが6月30日(土)、千葉・柏PALOOZA公演を皮切りに全国17ヵ所を廻るツアー<OBLIVION DUST Tour 2018 Adrenaline - Come Get Your Fix>をスタートさせた。同公演のレポートを事後コメントと併せてご紹介したい。
「いや、いつも通りっすよ。毎度のことですけど」とはRIKIJIの言葉。今やすっかり休みなく動き続ける事が定番化しつつあるOBLIVION DUSTの、このツアーへの取り組みに対する意気込みを訊いた際の返答だ。なんとも素っ気ないRIKIJIの返事には“常に日々、全身全霊が当たり前”という主張が込められている。彼ららしいと言えばそうだが、淡々というわけでもなく、かといって決して浮き足立つこともなく、ピリピリした空気でもない。どうやって自分たちのベストパフォーマンスをステージで出すかという事に関しては、もう彼らなりのルーティンがあるのだろう。ならば初日ステージのそこかしこに見え隠れする些細な変化は何か? その答えはこのライブが終わったときに見えてくるはずだ。
「In Motion」「Under My Skin」と最新作『DIRT』の定番曲でショーがスタート。相変わらず演奏は、凶暴な野獣性を抜群のコントロールで操りながら、リミットギリギリのところを的確に突いてくるような緻密さだ。ある関係者が、「よくあの演奏の中で引っ張られずに歌えるよね」と、前回のワンマン後に呆れながらKEN(Vo)に告げたというエピソードにも頷ける。

ショーの中盤には「Again」「Bed of Roses」「Baby It’s All Good」と、ここ最近ではほとんどセットに入らなかった楽曲群が次々と披露された。「ここ2回のツアーでは、セットリスト全体の完成度を求めてたからなんだけど、ちょっとパターン化されたみたいになってたというか。ここらでもう一度見直してみようかなって」と明かしてくれたのはKEN。今回のセットリストはKENが監修することになり、リストを考えているうちに、いろいろな発見があったとKENが続ける。「オブリは絶望的な気分で暴れてなんぼというか、野生と知性っていうか、そういう逆の要素を組み合わせることが魅力だと思ってるけど、『DIRT』では特にその面を強烈に出したかったっていうのはあって。でもその圧力を出すことに集中しすぎて、異様に肩の力が入り過ぎちゃって、これはこれで自分らしくないというか」。

確かにこの一年のステージでのKENは、まるで全てを振り絞って、身体の中の感情を肉声として出し切るかのような、ある意味苛烈な歌い方をしていた。OBLIVION DUSTのボーカリストは、クリーントーンも歌いながら、時として強烈に叫び、その直後にはファルセットで締めるなどという、おおよそ喉を使う仕事としては基本原理に反するようなことを強いられる。その上でステージ上では常に飛び跳ね回っているのがKEN LLOYDなのだ。普通は“これじゃあ歌えないかも”とか、上手くやろうというバランス感覚が働きそうなものなのだが、それが一切ない。ただひたすら仕上がりの完成度だけにフォーカスしており、ここに緻密極まりないK.A.Zの作曲やアレンジが組み合わさることが、このバンドの異質な魅力と言える。
ショーがいよいよ後半戦を迎えた頃、80’s調の特徴的なシーケンスのイントロが流れ始めた。怪しくもアップテンポな雰囲気に若干観客も戸惑い気味……かと思いきや、実際は固唾を飲んで次の展開を見守っている。そして、扇情的で伸びやかな、非常にOBLIVION DUSTらしいコーラスが放たれた途端に、一気に場内が飛び跳ねだした。その軽妙なシーケンスからは想像が付きにくいアレンジは、楽曲が進むにつれてコロコロと表情を変えながら、サビにたどり着く頃にはすっかりOBLIVION DUSTらしいアッパーな曲へ。最終的には締めの“サテライト”という言葉の響きばかりがやたら頭に残る、なんとも不思議な魅力を放つ曲だった。これがツアー直前に予告されていた新曲「Satellite」だ。

「ツアー中にさらに追加で披露できる曲があると思います」とはKENがライブMCで語った言葉だが、その新作についても突っ込んで訊いたところ自信をのぞかせる答えが返ってきた。「あの「Satellite」は自分が書いてストックしていた曲で、ちょっとだけ未完成のままだったのね。それをK.A.Zが“これはすぐにまとめられる”って言うから、バックトラックをやってもらう間に、こっちは急いで歌詞を仕上げようってことになって。そしたらRIKIJIも細かいアイディア出してくれて」。“作り始めたらあっという間ですよ”と言わんばかりのドヤ顔で語るKENだが、これに続く新曲も観客の予測を気持ち良く裏切る展開を企んでいるようで、「今回はライブで一曲ずつ確かめながら、微調整しようって言ってるんですよ」と教えてくれた。

「Satellite」は幾パターンものBPM(テンポ)を試した上で決定したとはRIKIJIの弁。アンサンブル面で彼の意見は常に最終的に重要視される。曲を仕上げていく過程で、他の二人が見えていないポイントを指摘し、新たな視点を提案しながら、時として大きく差し替えるようなアイディアも出すのがRIKIJIの役目であり、事実ライブで披露された同曲には前述したように不思議な心地よさがあったのだ。
そして、KENはOBLIVION DUSTの展望をこう語ってくれた。「次の作品は『DIRT』と並べると、より引き立つようなものになると思う。全然違うようで、統一されているところもあったり、でもライブでやると一体感が生まれたりするような」。彼らは今年に入ってから完全に次作の制作モードに入っており、それは同時に、KEN自身の歌声に対する新たな挑戦に繋がっているという。「伸びやかに歌う時と、強く歌うときは使う筋肉の場所を変えていて、それを瞬間でスイッチ出来るようにしながら、身体全体を振動させるようにしてるんだよね」。全て感性のみで突っ走ってきたかのように見える総天然男子のKENが、まさかの理論的なアプローチに一瞬耳を疑ってしまったが、しかしよく聞くとこれも実際は皮膚感覚に根ざした話である。バンドの圧倒的な演奏力に対して、単なる肉体的なパワーだけでなく如何に共鳴させるか? それは爆音の中で、自分の声をさらに響かせるために自然と出て来た進化なのだ。

「You」「Evidence」「Designer Fetus」と代表曲を畳み掛けてショーを締め括った時に残る残響感が、これまでのOBLIVION DUSTと一味違う印象を大きくしていた。同じ曲で同じメンバーが演奏しているにも関わらず、まだ何か奥の手を隠しているかのような、このバンド特有の悪巧みの匂いと言ったらいいのか。

全国17ヵ所の規模で行われるツアー<OBLIVION DUST Tour 2018 Adrenaline - Come Get Your Fix>は始まったばかり。その奥の手はこれから徐々に明かされていくはずだ。

撮影◎緒車寿一

■全国ツアー<OBLIVION DUST Tour 2018 Adrenaline - Come Get Your Fix>

6月30日(土) 千葉・柏PALOOZA
open17:30 / start18:00
7月01日(日) 埼玉・HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
open17:30 / start18:00
7月07日(土) 埼玉・HEAVEN'S ROCK熊谷VJ-1
open17:30 / start18:00
7月08日(日) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA
open17:30 / start18:00
7月14日(土) 山梨・甲府KAZOO HALL
open17:30 / start18:00
7月15日(日) 栃木・HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2
open17:30 / start18:00
7月21日(土) 岡山・YEBISU YA PRO
open17:30 / start18:00
7月22日(日) 山口・RISING HALL SHUNAN
open17:30 / start18:00
7月28日(土) 長崎・DRUM Be-7
open17:30 / start18:00
7月29日(日) 福岡・DRUM Be-1
open17:30 / start18:00
8月04日(土) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
open17:15 / start18:00
8月10日(金) 愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
open18:30 / start19:00
8月11日(土) 静岡・ LIVE HOUSE浜松窓枠
open17:30 / start18:00
8月12日(日) 広島・CLUB QUATTRO
open17:30 / start18:00
8月18日(土) 宮城・仙台darwin
open17:30 / start18:00
8月25日(土) 兵庫・神戸VARIT.
open17:30 / start18:00
8月26日(日) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
open17:30 / start18:00

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