THEイナズマ戦隊 20年かけて辿り着
いた初の野音ワンマン、「素晴らしい
景色をありがとう」

俺とオマエと野音と応援歌

2018.5.26 日比谷野外大音楽堂
SEの「20th Century Boy」(T.REX)に背中を押されるように登場したメンバーは、大きく手を振り、会場を見渡し、それぞれの楽器の元へ。<笑って泣いて人生があって その瞬間を心臓に刻め バカ者よ!!>。挨拶の代わりのオープニングナンバー「バカ者よ大志を抱け」は、THEイナズマ戦隊が歩んできた20年の軌跡であり、20年かけて辿り着いた初の日比谷野外大音楽堂ワンマンライブを全身全霊で楽しもうぜ!という宣誓でもあったと思う。満員御礼のオーディエンスは、曲中の<No.1>に合わせて人差し指を高らかに掲げ、賛同する。
THE イナズマ戦隊 2018.5.26 日比谷野外大音楽堂 撮影=浜野カズシ
THE イナズマ戦隊 2018.5.26 日比谷野外大音楽堂 撮影=浜野カズシ
「俺達がTHEイナズマ戦隊だ!」、「20周年ありがとう。21周年始めるよー」みたいに、曲アタマ・曲終わりに上中丈弥(Vo)が叫んだりするけれど、MCらしいMCは挟まず、高鳴る胸の内は「ドカン行進曲」、「情熱の風」、「赤い命が燃えている」、「Ban & An〜バカ万歳アホ万歳〜」というとびきりのロックンロールに代えてガンガン演奏していく。上中のハープを皮切りに、山田武郎のギター、中田俊哉のベース、久保裕行のドラムへと繋がるメンバー紹介的ソロリレーでは、すり鉢状に広がる客席が小刻みに揺れた。音的にも、存在的にも、キャラクター揃いの4人の音だけで構成された唯一無二のアンサンブルが、まだまだ明るい日比谷の空に吸い込まれていく気持ち良さを、ステージの上下関係なく、野音にいる全員が噛みしめていた。
「20周年やってきましたんで、懐かしい曲をやっちゃっていいかい?」そう言って歌い始めた「雨上がり」。<中途半端な大人達よ 良く分かるぜ でも負けるな>メンバーもファンも、発表時の14年前よりしっかり中途半端な大人になって、それぞれ置かれた状況も、見える景色も変わっていて。けれどこの曲で一緒に手を叩きながら<ララララララ……>と歌えば、いつだって見上げた空をキレイだと思える。
THE イナズマ戦隊 2018.5.26 日比谷野外大音楽堂 撮影=浜野カズシ
上中が語りかけるみたいに歌い始めた「喜びの歌」は野音バージョン。<続けるっていうことが誰かを支えることになるなら~死ぬまで歌おう THEイナズマ戦隊続けよう>。新たに加えたのは、バンドを続ける理由、そして生涯THEイナズマ戦隊宣言だった。途中、同曲でコラボした桐谷健太がサプライズゲストとして登場し、息の合った激アツパフォーマンスでさらに会場の温度を上げると、上中が「なぁ、武道館で一緒にやるっていうのはどうだい?」と歌の中で問いかけ、満面の笑顔の桐谷が「それ、最高!」って歌い返す。イナ戦が野音から次の夢、日本武道館へ新たな一歩を踏み出した瞬間だった。
ここで初めてのMC。上中が抱えたギターをぽろりぽろり弾きながら、少し早口気味に話しだす。「これがそうか、野音か。1000本くらいね、ライブをやってるんやけど、野音でワンマンやるの初めてやから。こんな景色があったんや。連れてきてくれてありがとう」。歩んできた20年を振り返り、決して平坦ではなかった道を噛み締めた上で、「夢が叶わない気がしない。4人で武道館目指します。『紅白歌合戦』も行きたいと思ってます。皆さんの愛を背負って立つバンドになれたらなと思っております。引き続き我々の夢の続きにお付き合いください。どうぞよろしく」。このあとの「各駅停車」はズルいなぁ。イナ戦の自叙伝的「各駅停車」は、聴き手が心を震わせた瞬間、その人の人生と重なってどこまでも一緒に進んでいく曲だもの。そんなこと言ったら、マジックアワーを狙ったかのように披露された「オマエだけを」も、「OLD ROOKIES」も、まさに<茜色した夕焼け空が 震える俺の背中を押すんだ>だった。
THE イナズマ戦隊 2018.5.26 日比谷野外大音楽堂 撮影=浜野カズシ
デビュー曲「月に吠えろ」から突入した後半戦。すっかり暗くなった野音に無数のコブシが揺れる。「オマエ・がむしゃら・はい・ジャンプ」では全員参加の渾身のジャンプで野音が激しく揺れる。上中が幼い頃に他界した父のことを想って作った「33歳」は、声を合わせることでみんなの大切な人への歌になった。優等生じゃない4人が20年掛けて辿り着いたというドラマも含めて、THEイナズマ戦隊の日比谷野外音楽堂なのだ。だからこそ、我々大人げない大人が大声で歌ったり、笑ったり、踊ったり、叫んだり、たまに泣いたりもできるのだ。幾度となく観てきた「応援歌」。会場が心を合わせて叫ぶ<ソーレ!!>と、上中がアカペラで届ける<オイ!! オマエ!! がんばれや!! 俺がそばで見ててやるから!!>のコントラストにグッときて、なんだかとても眩しくて、胸が熱くなった。
THE イナズマ戦隊 2018.5.26 日比谷野外大音楽堂 撮影=浜野カズシ
THE イナズマ戦隊 2018.5.26 日比谷野外大音楽堂 撮影=浜野カズシ
アンコールに応えて再登場したメンバーが野音のステージで歌うことをイメージして制作した曲「夜空に浮かぶ月のように」を丁寧に手渡すと、客席のあちこちから湧き上がる感謝のキモチ。「ライブをやって“ありがとう”って言われるようなバンドになれたんや」上中が嬉しそうに笑う。そして改めて今日が“Road to 武道館”の1回目であること、2019年4月21日に中野サンプラザでその2回目が決定したことを発表。未来に向けて加速度を増す新曲「あぁ、バラ色の日々」と、必ずまた会う約束「合言葉~シャララ~」で大団円、かと思いきや……。
鳴り止まぬ歓声に応えて再再登場した彼らが向かったのは、客席中央に設けられた小さなセンターステージ。18歳の時に初めて入ったスタジオと同様に、1本のマイクを4人で囲むカタチで「ラブレターフロム俺」をプレゼント。ほぼ生音だし、全方位の観客、一人ひとりに歌うから、音の波も割れもひどい。けれど音楽のチカラを信じる情熱の塊みたいな歌と演奏は、今も耳の奥から消えない。上中が最後に口にした「素晴らしい景色をありがとう」は、あの日あの場所にいたみんなの想いだったんだ。
取材・文=山本祥子 撮影=浜野カズシ
THE イナズマ戦隊 2018.5.26 日比谷野外大音楽堂 撮影=浜野カズシ

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