『生誕100年 いわさきちひろ、絵描き
です。』展の見どころを紹介 作品の
細部に迫り、童画家としてのイメージ
刷新を試みる

『生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。』展が、2018年7月14日(土)〜9月9日(日)まで、東京ステーションギャラリーで開催される。
2018年、いわさきちひろ(1918-74)は生誕100年を迎える。にじむ色彩で描かれた子どもたち、花々、そして大きく空けられた余白。絵本や挿絵、カレンダーなど、さまざまなメディアを通じてその絵は生活の隅々にまで浸透し、没後40年を超えてなお膨らみ続ける人気は今や世界に広がりつつある。
一方で、その作品に関しては、「子ども、花、平和」などのモティーフ、あるいは「かわいい、やさしい、やわらかい」といった印象ばかりが注目されやすいようだ。「いわさきちひろ、絵描きです。」――のちの伴侶と出会った際に自己紹介したちひろの言葉をタイトルに掲げる本展は、「絵描き」としてのちひろの技術や作品の背景を振り返る展覧会。ちひろはどのような文化的座標に位置し、どのような技術を作品に凝らしたのか。新出の資料も交えた約200点の展示品を通じて作品の細部に迫り、童画家としてのちひろイメージの刷新を試みる。
第1章 私の娘時代はずっと戦争のなかでした
家族と(左端・ちひろ) 1928年 ちひろ美術館蔵
冒頭では、終戦までの揺籃期のちひろを追い、画家としての原点と感性の形成を探る。1918年に生まれたちひろ(岩崎知弘)は、陸軍築城本部の勅任技師であった父・正勝と、女学校教師の母・文江、そして二人の妹とともに、恵まれた家庭環境で少女時代を過ごした。幼い頃から絵を得意とし、絵雑誌『コドモノクニ』に憧れた少女は、第六高等女学校におけるモダンな教育、岡田三郎助に学んだデッサンと油画、小田周洋に学んだ書など、幅広い文化に触れていく。少女期のちひろが出会った出来事や事物を立体的に再構成し、ちひろがいかなる時代に育ち、何に出会い、何を吸収したのかを通覧する。
第2章 働いている人たちに共感してもらえる絵を描きたい
ヒゲタ醤油広告 1950年代前半 ちひろ美術館蔵
ちひろがかねてから抱いていた宮沢賢治への共鳴は、日本共産党入党という形で具体化する。疎開先から上京したちひろは、新聞記者として活動する傍らで丸木位里・丸木俊(赤松俊子)夫妻のアトリエを訪れて技法を学んだ。そして、1947年に手掛けた紙芝居『お母さんの話』(1950年出版)を皮切りに、画家の道を選び、童画家として駆け出します。第2章では、ちひろが誇りとしていた家庭生活と作家活動の両立の様子などを追いながら、同時代の文化史における位置づけも探る。プロレタリア美術に連なる紙芝居や幻灯、まとまって見られる機会の少なかった油絵など、これまで掘り下げられていなかったちひろ像に迫る。
第3章 私は、豹変しながらいろいろとあくせくします
引越しのトラックを見つめる少女『となりにきたこ』(至光社)より 1970年 ちひろ美術館蔵
ちひろの原風景、そして時代や文化状況との呼応関係を追う本展の前半部を踏まえて、後半では作品の魅力に分析的に迫る。いわさきちひろといえば子どもや花の絵、という多くの人々に抱かれている定型の印象をより細密にするべく、画面に凝らされた技術に焦点を当てる。ちひろはどのように体を使っていたか。座って描いたか、立って描いたか。どんな道具や素材を、いかなるスピードで、いかに操作していたかーー。本章では特にちひろの絵における「線」に注目することで、図にとらわれがちなちひろの作品の見え方が、他の作品と接続して広がっていくことにもつながるだろう。
第4章 童画は、けしてただの文の説明であってはならない
小犬と雨の日の子どもたち 1967年 ちひろ美術館蔵
最終章では、明るく輝く水彩画の数々によって、ちひろの開放的な色彩の魅力を示す。また、2017年に開催された『高畑勲がつくるちひろ展』の成果を踏まえ、原画の拡大によってちひろの作品の中に没入する空間を作り出す。絵本を読むときの距離感覚と展示空間の融合と、みずみずしい彩りが、本展のフィナーレを飾る。映像番組「黒柳徹子さんと『いわさきちひろ』」のダイジェストも、併せて紹介する。

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