【インタビュー】リーガルリリー、温
かみや透明感を湛えていると同時に陰
影に富んだ魅力的な一作『the Telep
hone』

バンドらしさに溢れていながら、ギターロック/ポップという言葉では括れない独自の音楽性を備えているリーガルリリー。6月6日にリリースされた3rdミニ・アルバム『the Telephone』は彼女たちの持ち味が十二分に発揮されて、温かみや透明感を湛えていると同時に陰影に富んだ魅力的な一作に仕上がっている。また、新たに、「うつくしいひと」のMVも公開されている(https://youtu.be/CJhEV-tP2m0)。今回のインタビューでは『the Telephone』を軸にしたうえで、リーガルリリーの素顔に迫るべく、様々なことを話してもらった。
■自分たちが一番ロックだと思うものをやろうという気持ち
■それは今回も変わらなかった

――リーガルリリーの結成のいきさつから教えてください。

たかはしほのか(以下、たかはし):結成……どこからがリーガルリリーに、なるんだろう?(笑)

ゆきやま:出会いから話すと、私たちは違う高校に通っていたんですけど、私は1年生のときに学校で友達とコピーバンドを組んだんです。その頃(たかはし)ほのかは一人で弾き語りをしながらメンバーを探していて、一緒に対バンをしたときに、ほのかからバンドをやらないかと誘われました。

たかはし:一目見て運命を感じました(笑)。すごく良いドラマーだなと思って、声をかけたんです。当時の私は、ガールズバンドを組みたいなと思っていました。私は元々男の子たちとバンドをやっていたんですよ。オリジナルをやるバンドで、男の子たちが土台を作って、その上に私がメロディーと歌詞を乗せるというやり方をしていたんです。それで結構うまくいっていたんですけど、私が1から曲を作って自信満々で持っていったら、ギターの人に「おまえの曲はダサいから、やりたくない」と言われて。そのギターの人が、すごく怖い人だったんです。しかも、その後やっぱり男だけでバンドをやりたいという話になって、私はクビになりました。それで、女の子だったらもっと優しくて、私の曲をやってくれるだろうと思って、“よし、ガールズバンドを組もう”と(笑)。そういう中で、ゆきやまと出会って、一緒にバンドをやるようになりました。

――いい出会いがありましたね。結成当初はたかはしさんが弾き語りで歌っていた曲を、バンドでやるという感じだったのでしょうか?

ゆきやま:……どうだったっけ?

たかはし:弾き語りの延長ではなくて、バンドらしい曲をやろうと思っていました。ただ、当時の私は洋楽はニルヴァーナしか知らなかったんです。カート・コバーンという神様しかわからなかったので、ニルヴァーナの邦楽バージョンをやればいいんじゃないかな…みたいな。あとは、暗ければカッコいいと思っていたから、サウンドガーデンにも惹かれたりしていて。要するに、グランジですよね。当時は、それだけしか方向性はなかった。でも、その後いろんな音楽と出会って影響を受けて、リーガルリリーの曲調も幅が広がっていきました。
▲たかはしほのか(Vo.Gt.)

――現在のリーガルリリーを聴くと、始まりがグランジだったというのは意外です。では、それぞれの音楽的なバックグランドなども話していただけますか。

ゆきやま:私は小学生の頃に、母の趣味が急に音楽になって、ギターやドラムを習うようになって、私も一緒についていって、横でハイハットを叩いたりしていたんです。それが楽しくて自分もドラムを習うようになって、少し叩けるようになったんですけど、すぐに飽きてやめてしまったんです。その後、中学生になったときに、すごく仲のいい子と一緒にバンドをやりたいねという話になって……。

たかはし:そういう感じだったんだ、初めて聞いた。ゆきやまの知られざる過去を(笑)。しかも、その友達ってギャル系だよね?

ゆきやま:うん、イケイケ(笑)。

たかはし:なんで、あの子とバンドという話になったのかが不思議。

ゆきやま:そうなんだよね(笑)。二人ともバンドとかは聴かないし、私もバンドという概念を知ったのは高校に入ってからだったんですよ。楽器隊をバックに歌っている人は、みんなシンガーソングライターみたいな人だと思っていたんです(笑)。だから、中学生のときは一緒になにか音楽をやろうよという意味で、バンドという言葉を使っていたんですよね。私がドラム叩けるからと言って、その子はサックスに興味があると言っていて(笑)。一緒に音楽をやりたいねと言ってるうちに中学校は卒業して、高校に入ってから軽音部に入ったんです。軽音部でコピーバンドを組んで新宿JAMというライブハウスに出たら、ブッキングの人がうちの高校のバンドをいろんなイベントでライブをさせたりしていて。そういう中で、ほのかと出会いました。

――そのコピーバンドは、どういう音楽をやっていたのでしょう?

ゆきやま:ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんとかSCAMDALさん、YUIさん、ONE OK ROCKさん…みたいな感じです。特定のバンドのコピーではなくて、メンバーがやりたいといった曲は全部やっていました。

――高校生らしいですね。その頃、憧れていたドラマーなどはいましたか?

ゆきやま:その頃は、特にいなかったです。その後、めっちゃカッコいいと思ったのはレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムです。初めて聴いたときに、すごい衝撃を受けたんですよ。ジョン・ボーナムを知ってからドラムがいっそう好きになって、今までコピーしてきた人達もみんなすごいなと思うようになりました。

たかはし:私は子供の頃から家に電子ドラムがあって、元々はドラムをやっていたんです。小学校の頃は吹奏楽部に入っていました。それに、父親がバンドをやっていたので、家にエレキギターとかギターアンプ、ベースもあったんですよ。それで、中学3年生のときにSEKAI NO OWARIさんがすごく好きになって、自分はドラムが叩けるし、バンドメンバーを探そうと思うようになって。でも、メンバーが見つからないまま高校生になって、2年生のときに母親と初めてカラオケに行ったんですね。そうしたら、私、歌が結構上手くて(笑)。しかも、自分が歌ったのを録って聴いてみたら、自分の喋る声はすごく嫌いだけど、歌う声がすごく良かったんです。自分の得意分野はドラムと剣道しかないと思っていた……というか、剣道はセンスないんですけど(笑)、歌も歌えるんだと思って。だったら歌いたいなと思ったんです。それで、ギター&ボーカルに転向することにして、バンドをやりたがっている子がいたのでドラムをやってもらうことにして、ベースはいなかったけど、家にキーボードがあったからキーボードでベースを弾いてもらうことにして。それで、三人で父親の部屋で初めて曲を合わせたんですね。そうしたら、涙が出てきちゃって。本当に感動したんです。それまでの私は夢中になれるものが『ドラクエ』しかなかったけど、『ドラクエ』よりも面白くて、お菓子を食べるよりも幸福感が得られるもの、感動できるものがあるんだと思って。そこから音楽にのめり込んでいきました。

――歌い始めたことが、大きな転機になりましたね。シンガーで影響を受けた人などはいませんか?

たかはし:いないです。自分らしい歌を歌いたいし、それでいいと思っているので。
――自分の感性を大事にされていることがわかります。では、6月6日にリリースされた3rdミニ・アルバム『the Telephone』の話をしましょう。今作の制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?

ゆきやま:アルバムは、絶対に新曲が多くなるということはわかっていたんですよ。だから、どんなアルバムになるのかなと思っていました。

たかはし:“ヤバくね?”って(笑)。本当に、できるのかな…みたいな(笑)。そんなふうにわりと真っさらな状態で、今の自分たちの中から自然と出てきて、なおかついいなと思えるものを詰め込んだアルバムにしようと思っていました。私たちはジャンルとかは特定しないで、いろんなことをやりたいという気持ちもあるんですよ。なので、方向性とかは決めなかったです。

――自然体で取り組んだんですね。『the Telephone』は全体的にウォーム&ドリーミィーでいながら、ポストロックやプログレッシブ・ロックなどの匂いもあるという独自の音楽性になっています。

たかはし:ポストロックも、プログレも好きなので、そういう要素も自然と入っていますね。私はメロディーがポップであれば後ろのサウンドはどんなものでも良くて、サウンドもポップである必要は全然ないなと思っているんです。だから、自分たちが一番ロックだと思うものをやろうという気持ちがあって、それは今回も変わらなかった。

――一見ソフトなようで、決して生ぬるい音楽ではないというところは大きな魅力になっています。曲調の幅広さもポイントになっていますが、それぞれ今作の中で特に印象の強い曲をあげるとしたら?

たかはし:私は、「うつくしいひと」です。今回のアルバムの制作に入る前に、私は半年くらい曲を作らない時期があったんですよ。私は無理やり曲を作れなくて、作ろうという気持ちになったときにしか作れなくて。でも、その半年間は、そういう気持ちにならなかったんです。その半年間に入る前に「うつくしいひと」の断片はできていたけど、そこから進まなくなってしまって。それで、無理やり作るのはやめて、半年間眠らせておいたんですね。そうしたら、いきなり「うつくしいひと」がパッとできて、歌詞もパッとできて、しかも納得のいく歌詞だった。そこからトントン拍子で曲ができるようになったんです。だから、「うつくしいひと」は、私にとってすごく大きな曲です。

――「うつくしいひと」は、いわゆるAメロ、Bメロ、サビというようなフォーマットではなくて、繊細に始まってドラマチックに盛り上がっていく構成が印象的です。

たかはし:私は数学的に曲を作れないんです。物事も数学的に見られないし。

ゆきやま:この曲の構成は、物語感がありますよね。言われたとおりポップスのフォーマットではなくて、ものすごく展開がうねる感じがあって。作ったときはほのかの中にイメージがあるので、それを伝えてもらうんですけど、「ここは、“ドンドンドンッ!”みたいな感じで」とか言うんですよ(笑)。「ここは、16分の感じ」とか。それで、“ああ……ちょっとわかった”みたいな感じで形にしていったんです。今回の新曲の中では「うつくしいひと」を一番最初に作ったので、私の中では結構新しいことをいろいろしました。パソコンで作ってみたりもしたんです。そういう作り方を他の曲にも反映させたことも含めて、この曲で新しい扉が開いた感覚がありますね。
■「overture」は中学時代の色がテーマになっています
■今の自分が思い返してその色を思いながら書いた曲です

――たかはしさんがデモを作るのではなくて、探りながら作っていったんですね。曲を完成させるきっかけになった歌詞についても話していただけますか。

たかはし:私はずっと実家に住んでいたんですけど、独り暮らしを始めたんです。そこで、母親の存在の大きさに気づいたというのがあって。それで、母親だったり、大切な人に向けて書いたのが「うつくしいひと」です。なんか……弟とか、お父さんがもしも戦争に行ったら、人を殺せないだろうなとか考えながら書いていました。

ゆきやま:「うつくしいひと」は歌詞も良くて、ぜひ聴いてほしいです。あと、私の中では「overture」も印象が強いですね。この曲は最初はもっとテンポが速くて、ギターもずっと同じパターンのストロークを弾いていたんです。それに合わせて私が考えたドラムのフレーズをほのかに送ったら、めっちゃギターを減らしてきたんだよね?

たかはし:うん。ドラムを聴いて、Bメロでアルペジオを使ったりすることにしたんです。

ゆきやま:そういうやり取りを重ねて、どんどん曲の雰囲気が変わっていくのがすごく面白かった。この曲の始めのほうはドラムというよりは、パーカッションみたいなイメージですね。
――「overture」は、ほのかに香るグラス・ミュージック感が心地いいですし、ロックに憧れる10代の心を描いた歌詞とのマッチングも光っています。

たかはし:もろにカントリーみたいにするのは嫌で、この曲もちょっとポストロックを入れました。「overture」の歌詞は、中学時代の色がテーマになっています。人生を生きていると、今過ごしている自分の色というのはわからないんですよね。時が経つにつれて、色というのは鮮明に見えてくる。今の自分が中学時代を思い返すと、絶対に色がついているんですよ。その色を思いながら書いた曲です。私は福生に住んでいて、横田基地の通り沿いをずっとチャリで走っていたし、高校時代のアルバイト先が横田基地のほうだったんです。その頃の自分を結構リアルに描きつつ、福生のことが取り上げられている本を読んで感じたことも混ぜた歌詞になっています。

――たかはしさんが書かれる歌詞は具体的な心情や情景の描写を用いつつ、フワッとしていることが特徴と言えます。

たかはし:そう言われると、そうですね。……言われて思ったんですけど、今回の歌詞は「僕のリリー」と「スターノイズ」以外は全部テーマが一緒なのかもしれない。どの曲も母親を思って書いた気がするんですよ。私の中で、母親はすごく大きな存在なんです。

ゆきやま:ママは偉大だよね。

たかはし:偉大です(笑)。母も自分と同じ人間だと気づいたのが大学1年生のときで、そう気づいてから自分の生み出す芸術とつながるところが多くなったというのがあって。歌詞も母性みたいなものが核になっているから、柔らかい印象になっているんじゃないかなと思います。全部、私の中では愛があるから。
▲ゆきやま(Dr.)

――そこも個性といえますね。話を『the Telephone』の楽曲に戻しますが、マニアック&キャッチーということでは「スターノイズ」も外せない1曲です。イントロは変拍子で、歌中はウォームで、プログレッシブな中間セクションを経て、不安感を煽って終わるという展開に強く惹き込まれました。

たかはし:高校3年生のときに、いろんなジャンルの要素を織り交ぜたバンドしか聴いていなくて、リーガルリリーもそういうバンドにしようと思ったんです。それで、「スターノイズ」を作ったんですけど、みんなの技術が追いつかなくて(笑)。そういう方向性は、これ1曲だけで終わりにしました(笑)。曲調的にも、こういうのは1曲あればいいかなと思ったというのもあるし。

ゆきやま:「スターノイズ」は、私が受験でバンドを個人で活動休止していたときに作った曲なんです。ほのかがパソコンでドラムを作って、それをそのときのサポート・ドラマーに送って、そのドラマーがその人なりの解釈で仕上げたんですね。最初はすごく難しかったらしくて、それをちょっと簡単にしてできた…みたいな。その後私が帰ってきて、この曲を聴いたときは“うわっ!”と思いました(笑)。

たかはし:全然、叩けなかったよね。

ゆきやま:うん、ぜんっぜん(笑)。拍がどうなっているのかわからなかったし、その頃の私は速いビートは苦手だったんですよ。そういう状態から入っていって、かなり練習して、ようやく叩けるようになりました。

たかはし:ゆきやまがこの曲をものにしたときは、“さすが!”と思いました(笑)。「スターノイズ」の歌詞は、星を見ながら自転車を漕いでいたら、『星を追う子ども』という新海誠さんのアニメ映画がフッと浮かんできて。そのときの自分の感覚とアニメの世界がリンクしたので、それをもとにして書きました。

――新海誠さんのアニメも好きなんですね。「スターノイズ」のような曲はもういらないと思われているようですが、本当に魅力的なので、また作ってほしい気がします。

たかはし:わかりました。じゃあ、作ります(笑)。

――ありがとうございます(笑)。『the Telephone』の後半には「僕のリリー」「せかいのおわり」というアッパーな曲も入っていますね。

たかはし:「せかいのおわり」は、珍しくスタジオで作ったんです。私がスタジオでギター・フレーズを弾いていたらジャム・セッションみたいなことが始まって、そこから形にしていきました。

ゆきやま:そうやって作ると、こうなるよという(笑)。この曲を作ったときは、私はNUMBER GIRLさんとかをイメージしていましたね。私たちはストレートなロックも好きだし、こういう曲を入れることでアルバムとしてのバランスも良くなっているんじゃないかなと思います。

たかはし:それは、私も思った。ただ、「せかいのおわり」の歌詞は、なにを言っているのかわからないと思いますけど(笑)。

――たしかに比喩的ですね。個人的には、10代が終わってしまうことに対するせつない心情を描いたのかなと思いました。

たかはし:いえ、違います。これは、もうそのままです。核戦争とか、環境破壊とかで世界が終わる前に、みんなが月に移住するという。なんの比喩も隠されていない(笑)。月に移住したほうがいいのはわかっているけど、地球が捨てられない…みたいな。

ゆきやま:すごく暗示的な歌詞のようで、実は一番ストレートという(笑)。

――そうなんですね(笑)。その辺りからも発想の自由さを感じます。では、続いて、プレイに関する話をしましょう。今作を録るにあたって、プレイや音作りなどの面でこだわったことは?

ゆきやま:ほのかが作った曲をもらうと、“うわぁ、ここはどういうドラムにしよう?”ということが結構多いんですよ。

たかはし:同じ音楽を聴いて育っていればたぶん感覚でわかるんですけど、ツェッペリンとポストロックなので、絶対に合わさらないんですよね。でも、そこでがんばって、がんばって合わさることで独自のものが生まれるんじゃないかなというのがある。だから、曲を作るときは、ゆきやまのルーツとか、好みとかは考えないようにしています。

ゆきやま:私も、それでいいいと思っています。ほのかが作った曲を聴いて、“ああ、あれか”とわかったら、どうしても元になっているものに近寄ってしまいますよね。そうじゃなくて、“どうしたらいいんだろう?”と思って、いろんなことを試して、答えを見つけるのが楽しいから。ドラムのフレーズを考えるときは、温度感をすごく大事にしています。ほのかの温度感とか、盛り上がり方は、肌に馴染むのに時間がかかるんですよ。そういうときは好きな曲をいっぱい聴いて、この辺の温度感が混ざる気がするというのが見つかったら、それを曲に良い感じに合うようにアレンジする。自分の引き出しの中にあるものだけでなんとかしようとは思わないです。

――普通にビートを叩いている場所が少ないという凝ったアプローチやレンジの広さに惹かれました。

ゆきやま:ありがとうございます。ドラムは小さい音で叩くのが難しいんですよね。自分では、それがあまりできていない気がしていたので、そう言ってもらえると嬉しいです(笑)。普通にビートを叩かないのは、リーガルリリーはトリオ形態でライブをしているから、ドラムで埋めないと…と思っているというのもあって。あと、ほのかに「もっと歌に合わせてよ!」と言われたことがあって。

たかはし:ずっとギターに合わせていたんだよね?

ゆきやま:そう。そうじゃなくて、もっと歌ってよと言われてから歌を意識するようになったことも大きいですね。今回のドラムは、そういういろんなことをうまく反映できた感覚があって、お気に入りのフレーズが多いです。

たかはし:ギターは普通にヘタなので、やれることがあまりなくて(笑)。自分の中では最大限のことをしているつもりですけど……どうなんでしょうね。

――埋めないアプローチやモジュレーション・エフェクトを掛けた音色など、自分のスタイルを持っている人だなと感じましたよ。

たかはし:個性だと感じてもらえたなら良かったです(笑)。コーラスはカート・コバーンがELECTRO-HARMONIXのスモール・クローンを使っていたので、自分も使うようになりました。コピーバンドをやっていた頃から私の足元は変わっていなくて、お父さんにもらったRATと友達の従兄のお父さんにもらったBOSSのコーラスをずっと使っています。譲り受けたものを組み合わせたら、ああいう音になったという。つまり、狙ったわけではなくて、偶然なんです(笑)。歌に関しては……いつも適当なんですよね。こだわりとかは、特にないです。自分の中では喋るみたいな感覚ですね。

――温かみや透明感のある歌声が心地いいですし、アッパーな曲でもスタイルが変わらないことは個性になっています。

たかはし:へぇー、そうなんだ。

ゆきやま:他人ごと?(笑)

たかはし:自分では、わからないです(笑)。本当に歌にはこだわりがなくて、どの曲も2~3テイクくらいしか歌わないんですよ。

――早いですね。でも、決して粗い歌ではなくて、歌中で表情を変えたり、微妙な温度感で歌ったりされていますよね。

たかはし:……それは偶然です。歌うたびに温度感は違っているんですよ。

ゆきやま:そう。それを聴き比べて、こっちのほうが雰囲気がいいかな…みたいな感じで決める。細かいニュアンスにこだわって、何度も歌ったりすることはないですね。ほのかは自分で曲を作っているから、どういう歌が合うかは自然とわかるみたいです。

たかはし:それは、ありますね。今回の歌は、どうだろう?……私は、自分の低い歌声のほうが好きなんですよ。なので、「僕のリリー」の“茶色くなった手首で”というところのすごく低い声とかはいいなと思います。今までは高ければいいと思って高い声に挑戦していたけど、今回は低さにも挑戦してみました。

――二人のいろいろなことに挑戦する姿勢もいい方向に出て、『the Telephone』は聴き応えのある一作に仕上がりました。さらに、アルバムのリリースに合わせた全国ツアー『遠距離恋愛』も、6月6日から始まっています。

たかはし:ここまでガッツリまわるツアーは、初めてなんですよ。今までは東名阪ツアーしかしたことがなかったし、3マンとかだったので、いろんなバンドのお客さんがいたんですよね。今回はワンマンや2マン主体なので、大丈夫かなと思って。私は日本中にリーガルリリーのお客さんがいるということが、全然信じられないんです。だから、怖いです。その怖さを払しょくできるといいなと思っています。

――各地で待っている人が沢山いると思いますよ。リーガルリリーのライブは、どんな空気感なのでしょう?

ゆきやま:日によって違うんですよ。明るい感じの曲が多いときもあれば、暗い感じの曲が多い日とかもあるよね?

たかはし:うん。毎回同じような表情のライブをしていると、飽きちゃうので。

――ということは、今回のツアーはいろんな顔を見せていって、ファイナルの渋谷CLUB QUATTROで集大成を見せるという流れでしょうか?

たかはし:あっ、それいいですね。そうします(笑)。

ゆきやま:そうしよう(笑)。『the Telephone』のほとんどの曲は今回のツアーで初めてセットリストに組み込むので、それがワンマンでどう映えるかというのがあって。長尺のライブがいい感じになりそうな気がしているので、ワンマンが楽しみですね。いろんな空気感のライブを重ねていくことで、今の自分たちが本当にやりたいことが見えてくると思うし。だから、すごくファイナルを観てほしい。ツアー先で観た人も、ぜひファイナルにも来てほしいです。

取材・文●村上孝之
リリース情報

3rd mini album『the Telephone』
2018.06.06(wed) release
BIOTOPE-003/\1,600-( 税抜)
1.スターノイズ
2.うつくしいひと
3.いるかホテル
4.overture
5.僕のリリー
6.せかいのおわり

ライブ・イベント情報

『the Telephone』レコ発「遠距離恋愛ツアー」
6/06(水) @ 下北沢SHELTER
(出演) リーガルリリー、paionia
6/10(日) @ 札幌Bessie Hall
(出演) リーガルリリー、NOT WONK
6/16(土) @ 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
(出演) リーガルリリー、さよならポエジー
6/17(日) @ 仙台enn 3rd
(出演) リーガルリリー、SUNNY CAR WASH
6/23(土) @ 福岡the voodoo lounge
(出演) リーガルリリー、tetoドミコ
6/24(日) @ 広島4.14
(出演) リーガルリリー、teto、ドミコ
6/30(土) @ 池下CLUB UPSET
(出演) リーガルリリー、SAKANAMON
7/01(日) @ 梅田Shangri-La ※ワンマン
7/05(木) @ 渋谷CLUB QUATTRO ※ワンマン

関連リンク

◆リーガルリリー オフィシャルサイト
◆「うつくしいひと」Music Video


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