天月-あまつき- 「自分なりに、お返
しをしていきたい」 様々な形の“ラ
ブソング”が詰まった最新アルバムを
語る

天月-あまつき-(以下、天月)が、2年ぶりのフルアルバム『それはきっと恋でした。』を6月27日にリリースした。

「前々からやってみたいなと思っていた」という“ラブソング”がテーマのアルバムには、佐香 智久やまふまふ、Eveほか多数のクリエイターとタッグを組み、様々なタイプの愛や恋の形を描いた楽曲がラインナップしている。そんな色濃い楽曲の解説に加え、MV撮影の裏話や初の武道館ワンマン含む今後控えているライブに向けてたっぷりと語ってくれた。
――3rdアルバム『それはきっと恋でした。』は、前作『箱庭ドラマチック』をリリースして以来、2年ぶりのフルアルバム。どんな想いで制作がスタートしたのでしょうか。
次はどんなアルバムにしようかなということは、3枚目のシングル「Mr.Fake/ツナゲル」を出したあたりから考え始めていて。シングル「DiVE!!」にしろ「Mr.Fake」にしろハードな曲だったわけですけど、前々からやってみたいなと思っていた“ラブソング”がテーマのアルバムにしたくて、新たにリード曲をたくさん作っていったんです。
――いつものことではありますけど、本当にどの曲もシングルリード曲のような曲力があります。
すみません、毎回カロリーが高くて(笑)。
――いえいえ、素晴らしいことです。しかも、いろいろなタイプの愛や恋の形が表現されていますよね。
恋愛として成就しようがしまいが、一方的に相手を想っている最中だろうがお互いに想い合っている最中だろうが、ハッピーな結末だろうが哀しい結末だろうが、すべて“ラブソング”と呼べるわけで。さまざまな方向から、描いてみたいなと思ったんです。
――佐香 智久さん、HoneyWorksさん、まふまふさん、Eveさん、halyosyさん、みきとPさん、宮田‘レフティ’ リョウさんなど、親交のあるミュージシャンによる曲は、それぞれどういう意図で依頼したのでしょうか。
曲のイメージが明確になった上で話をさせてもらうということが多かったですかね。「月曜日の憂鬱」みたいなポップでキュンとするようなラブソングはHoneyWorksさんが得意とするところだし、「Flight Light ~星くずとBoeing ~」みたいなちょっと翳を帯びた世界観や切なさはみきとさんらしいものだと思うし。
――天月さんの歌い方にしても、柔らかで青春感あふれる「月曜日の憂鬱」、あまりに寂しげな「Flight Light ~星くずとBoeing ~」と、そのギャップに驚かされます。
作家さんそれぞれがほかにない色合いをたたえた曲を作ってきてくださるし、僕はいちファンとしてどの曲も好きになってしまうので……自分なりにこう歌ったらいいのかな?という感じで曲ごとにアプローチすると、自然とそういうことになるんです。
天月-あまつき-
――「月曜日の憂鬱」のようにステージに立つ人に恋をしてしまったり、「Flight Light ~星くずとBoeing ~」のように夢を追う想い人を応援したり、まるでそういう経験があるかのように歌声がリアルに響きますが……。
そこはもう、想像力をふくらませて。妄想力は、わりと高いほうだと思います(笑)。それから、halyosyさんには、今年2月に動画をアップした「マリオネットラヴァーズ」に続いてめちゃめちゃ盛り上がる曲を作ってもらいたい!と思ってたくさん打ち合わせもして……。
――底抜けに楽しいパーティー感ある「Sing! Swim! Swing!」が生まれたわけですね。
そうです。これはもう、ライブでも絶対に楽しくなるんじゃないかなという期待感もあります。
――自身で作詞や作曲をされた曲については、まず軸となったのは……。
アルバムの最後に収録した「君が僕の心に魔法をかけた」ですね。このアルバムの中心軸になるものだなと思いながら作って。
――“僕”の心に魔法をかけてくれた“君=ファン”へ恩返ししたいという気持ち、“君が君でいられるように”という願いに、どうしたってグっときてしまいます。
これまでも、灰色だった世界をカラフルに変えてもらったことへの感謝は歌ってきましたけど、あらためて自分の作る曲でそれを表そうと思うと、本当に魔法のようだったなと思ったんですよ。それを恋になぞらえて、自分なりの想いを曲と歌詞に託しました。
――これまでも事あるごとに口にしている、天月さんの歌を愛する人への感謝や想い。それは、どんどん大きくなってもいるのでしょうか。
それはあります。やりたいことがどんどん増えて、少しずついろいろなことにチャレンジできるようになっているというのは、僕の歌を愛して、応援してくださる人がいるからこそ、なので。自分なりに、お返しをしていきたいんです。
――その真心、歌からもひしひし伝わります。また、夜の野外に電球を飾りバンドとともに撮った「君が僕の心に魔法をかけた」のMVも、とても素敵な雰囲気ですね。
そう感じてもらえてよかったです。あれ、都会のど真ん中で撮影したんですよ。太陽が沈む前の絶妙な空模様もきれいに撮れたし、映像も含めてたくさんの方に届いたらいいなと。

――かと思えば、「僕のことなら忘れてくれていいよ」は喪失感があまりに大きくて。
これまで編曲で参加してくれていたSaku.さんと一緒に、2017年末のツアー用に曲を作ろうという話になったんですけど、これまでオリジナル曲にあまりなかった静かなバラード曲を作ろうということになり……未練たらしい曲になりました(笑)。
――でも、未練ってこじらせると恨めしい気持ちに変わってしまいますけど、「僕のことなら忘れてくれていいよ」はタイトルから歌詞から、あまりに純粋で優しすぎます。
この歌詞を書いたとき、読んでいた漫画があるのですが、​女性が花だとしたら男性はその花をきれいに見せる額縁でいないといけないというところから、相手を一途に想う姿をイメージして歌詞を書いたんです。
――だから、<君という花の額縁になれずに>という表現をしているわけですね。加えて、ピアノやアコースティックギター、ストリングスの優しい奏でにも泣かされます。
Saku.さんはストリングスを入れるのも得意な方なので、シンプルな構成にストリングスの音色や時計の音も重ねて。切なくて美しいサウンドにできたかなと思います。
――それから、「かいしんのいちげき!」は、恋する人が力をもらえる応援歌のようでもあるなと。
少女漫画をめっちゃ読んでいた時期があって。まさに、恋に頑張っている女の子を応援する曲にしたかったんですよ。少女漫画を読み始めてみると、元気で強気な女の子が主人公で、男の子は振り回されることも多くて。
――なるほど、“好きの気持ちは止まらないのです!”という最初のフレーズにしても、まさにそういう少女漫画っぽいですね。
そうそう、結構影響されている歌詞だと思います(笑)。
――曲的には、ライブでみんなでクラップすればとても楽しくなりそうだなとも思ったり。
そういうイメージはすごくあって。2サビのあとにある楽器のソロ回し、あれは最初2倍の尺(長さ)でバンドメンバーにがっつりやってもらっていたんですけど、音源で聴くとちょっと長いかなと思ったので、半分にして。でも、ライブでやるときには、ちゃんとフルバージョンでやりたいなと思っていたりはします。
――絶対盛り上がりますね。佐香 智久さん作曲、佐香さんと天月さんが一緒に歌詞を書いた「きっと愛って」は、結婚式シチュエーションのMVも楽しくて。
あれだけたくさんのキャストさんがいる中でMVを撮るっていうのは初めてでしたけど、バンドメンバーさんとかダンサーさんとか知り合いも多かったから、撮影していてもすごく楽しかったんですよ。
――式の参列者になったり、突然探偵になったり、いろいろと変化(へんげ)しつつ。探偵になるシーンでは、大きな虫眼鏡を手に持っていましたね。
あれ、実は全然見えていないんですけどね(笑)。歌詞に関しては、僕と智久で2人なりに愛について考えて「どう思う?」っていう投げかけをしたら、彼氏や彼女とケンカした人がこの曲のMVを観ていろいろ感じてツイッターでリプライをくれたり、結婚式でこの曲を流したいと言ってくれる人がいたりもして。愛し方や愛の在り方は人それぞれではあっても、考えるひとつのきっかけになったらいいなと思います。

――なお、アルバムの中で天月さん的にもっとも印象的な曲、思い入れの強い曲を挙げるとすると?
友人が書いてくれている曲は、直にメッセージをもらっているような気がして。歌詞について考えることが多かったですね。まふくん(まふまふ)の書いてくれた「ヒロイックシンドローム」とか、Eveくんの書いてくれた「ガラクタモンスター」とか。
――「ガラクタモンスター」には<君を照らす月になりたいと願ったの>というフレーズがありますけど、それを天月さん本人ではなくEveさんが書いているんですよね。
ここ1、2年くらい、Eveくんとすごく仲よくなって一緒に遊んだりご飯を食べるようになったんですけど、僕から見れば彼は独特な世界観を持っているし、彼から僕を見ると自分を削りながらも生きている切なさを感じるみたいで。それを肥大化して表現すると、“ガラクタモンスター”という言葉が相応しいらしんですよ(笑)。でも、自分としてなるほどと思うところもあって、すごく新鮮でした。
まふくんと僕は、作ったり歌ったりする曲がわりと反対を向いているかなと思いつつ、性格が似ていて。「ヒロイックシンドローム」に関しては、お互いに抱いている自信のなさや劣等感をテーマに作ったんですよ。
――お互いに自らの生み出す音楽が多くの人に認められ、歌声がたくさんの人の心を動かすようになった今も、そうした劣等感は消えないわけですか。
それはたぶん、いつになっても、どういう状況になっても消えることはないんだろうし……。
――それが原動力にもなる、ということですかね。
そういうことだと思います。ちなみに、「ヒロイックシンドローム」ではnqrseくんにラップを書いてもらうという初の試みをしまして。
――あのエモーショナルなラップ部分、天月さんではないように聴こえるくらい、ガラっと雰囲気が変わりますね。
nqrseくんが書いてくれたラップなので、nqrseくんを意識して、雰囲気が合うようにラップしてみたら……nqrseくん本人からも、「俺がラップしてるのかと思いました」って言われて。「いや、僕がラップしてるよ」って言っておきましたけど(笑)。だいぶテンポが速いので舌が回らない!と思いつつ、あのラップはやっていてすごく楽しくて。ライブでも頑張る所存です!
――なにしろ、“ラブソング”をテーマにさまざまな色で鮮やかに彩られている『それはきっと恋でした。』は、聴き手それぞれの人生に長く寄り添ってくれることでしょう。CDジャケットは“ピュア”を感じさせますが、天月さんのこだわりポイントは?
まさに恋や愛の純粋さを表現したくて、真っ白なセットに布をかぶせたら、儚い雰囲気を醸し出せて。ラブレターに埋もれたいという僕の希望通り、足元にはたくさんの手紙を散らしてもらいました。そして、人工的に生み出された青いバラの花言葉は、“奇跡”や“夢が叶う”。それを僕が持っているということも、メッセージにしたかったんです。聴いてくれる人がそれぞれどう聴いてくれて、どんな曲を気に入ってくれるのかが本当に楽しみだし、いろいろな感想をもらえたらうれしいなと思っています。
『それはきっと恋でした。』初回限定盤ジャケット写真
――アルバム発売後、『サマーパーティー2018~ぼくらの家へようこそ!~』と題し、7月20日に千葉県・松戸 森のホール21にて、8月12日に大阪府・オリックス劇場にて行う主催ライブイベントに関しては、どんなものにしたいと考えていますか?
これまでいろいろなライブをしてきて、また新しい見せ方をしたかったので、今回は千葉公演にEve✕Sou、大阪公演にしまさか(志麻✕となりの坂田)をお招きして、天月とそれぞれのユニットで2マンライブをしようと。Souくんも志麻さんも、これまで会話やゲームをしたことはあっても、一緒にライブをする機会がなかったから、もうワクワクしております! 5人がルームシェアをしているという設定なんですけど……。
――“ぼくらの家へようこそ!”とは、そういうことでしたか。
公演それぞれの組み合わせでコントをしようとか、みんなでわちゃわちゃ作戦会議をしているので。楽しみにしていてほしいです。
――そして、8月23日には初の日本武道館単独公演『Loveletter from Moon』が開催されますね。決定したときには、どう思いましたか?
友人たちがどんどん大きなステージに立つ姿を見て、憧れや焦りみたいなものも少なからずあったんですけど……After the Rainにしても浦島坂田船にしても、ちゃんと自分たち単独で武道館に立っているわけで、僕もほかの人の力を借りるのではなく、単独で武道館に立ちたいなとずっと思っていて。武道館でやることが決まったときには、やっぱり喜びの気持ちが大きかったです。
――またひとつ、夢が叶うわけですもんね。
僕が武道館ライブの告知をしたとき、公開した写真でアルバムのジャケットと同じく、“夢が叶う”という花言葉の青いバラを持っていることに気づいてくれた人がいたということも、うれしかったですし。正直言って、今はまだ……なるようになるかな、体調崩さないといいな、くらいのふわふわした感じなんですけど、さまざまなアーティストがいろいろな想いを馳せて立ってきた、大きな舞台ですからね。武道館だからこそできる演出も考えながら、自分らしく、来てくださるみなさんにちゃんと想いが届けられるようなライブにしたいです。ただ、僕は武道館を目指して走ってきたわけではなく、自分がやりたいこと、楽しいことの延長線上として歌い続けてきて、今があるので。武道館はあくまでひとつの通過点と して、その先もまだまだ挑戦し続けていきたいなと思っています。

取材・文=杉江優花

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