咲人(JAKIGAN MEISTER、NIGHTMARE)
ソロ始動から1年、挑戦と模索の日々
、そしてバンドへの想いを語る

現在活休中のバンド、NIGHTMAREのギタリストである咲人のソロプロジェクト・JAKIGAN MEISTER(ジャキガンマイスター)がCDとDVDをセットにした新作『Yin-Yang』をリリース、全国ツアーを行なっている。今回は「咲人✕SPICE特別企画」として、前回大好評だった「ドラえもんをお箸でつまんで積み上げる」というバランスゲームに続いて、東京ミステリーサーカスに出向いてリアル脱出ゲームの謎解きに挑戦した咲人。そんなお楽しみ企画の後に、ソロ始動して約1年が経ち、ソロでは音楽活動以外に様々なことにも挑戦してきてぶっちゃけどうだったのか?という話を、新作の話題、さらには再始動が待たれるNIGHTMAREのことも交えながらざっくばらんに訊いた。
――「咲人✕SPICE特別企画」、今回も楽しんでいただけたでしょうか?
楽しませてもらいました。前回はドラえもんのバランスゲームでしたよね? SPICE企画は毎回お題が変わってて面白いよ。
(■「ドラえもんバランスゲーム」ダイジェスト動画を視聴する)
――それはよかった。咲人さんがソロで動き出して1年。その間にJAKIGAN MEISTERの活動はもちろんですけど、フォトグラファー・咲人としての活動もスタートしていて。
そんなに語るほどではないですけどね。
――またあるときは、フォトグラファーの西田航氏の写真展『Color of Hong Kong』の映像作品に音楽をつける音楽家・咲人がいたり。
あぁ、そうですね。
――あるときは、Dの浅葱さんのソロアルバム『斑』に収録された「月界の御子」でギターを弾くギタリスト・咲人がいたり。
あぁ。参加させていただきました。
――HAKKYOU-KUNという名義でゲーム音楽を作るコンポーザー・咲人がいたり。
やってたりしますね。
――ソロになってこの1年。いろいろな咲人さんがあちこちのフィールドに顔を出すようになった印象があるんですが。そこは意識されていたんでしょうか?
自分的にはあちこちに、という感覚はなくて。コンポーザーでもギタリストでも、もっともっといろんなことをやりたい欲求があるので。さらにアウトプットできる場所を増やしたい気持ちなんですけどね。
JAKIGAN MEISTER(咲人) 撮影=西槇太一
NIGHTMAREのときは分かる人だけ分かればいいやって思ってたけど、いわなければ分かんないこともあるなと思ったので最近はMCで伝えてる。
――なるほど。では、それらの活動の主軸となるJAKIGAN MEISTERについて。こちらは活動を始めてみて、ぶっちゃけどうですか?
最近は「フロントマンとして、ギターを弾きながら歌うスタイルにもそろそろ慣れたでしょ?」とよくいわれるんだけど、緊張感はずっと変わらずあって。元々心配性だから、いくら練習しても練習し足りないし。俺の場合、ただバッキングを弾いていればいいという感覚ではないので。ギタリストとしてのアイデンティティーも保ちつつ、歌もやるというバランスだから、曲の分だけ練習を重ねないと身体に馴染まないんですよ。こればかりは日々の努力でしかカバーできない。身体に染み込んでも、これがライブとなると、さらに別のファクターが入ってきて。フロントマンとして場内を盛り上げなきゃとか、次のMC何しゃべろうとか。いろんな部分に意識がいっちゃうので。そこも1年経っても、いまだに試行錯誤してますね。
――フロントマンとしてステージに立ってみて、なにが一番大変でしたか?
MCかな。元々、性格的にカッコつけられる人間ではないんですよ。どちらかというと。
――そこは「咲人✕SPICE企画」を見てもらったら分かる通り。
そうそう。元がそうだから、しゃべると完全に素が出ちゃうんで(笑)。そこもまだまだですね。でも、俺が(MCで)いいたいことはシンプルで。自分の音楽で楽しんでほしいということと、あとは自分がこの曲をどんな気持ちで作ったのかということ。NIGHTMAREのときは分かる人だけ分かればいいやって思っていたんだけど。いわなければ分かんないこともあるなと思ったので、最近はMCで伝えたりしてる。そこは。
――なんで伝えようという風に意識が変わったんですかね。
こっちが意図していないような伝わり方をするのは悔しいし、一番悲しいことだなと思ったから。どうしても自分の曲は表現方法が難解だったりするから、そこを少しでも自分が言葉で補うことで正しい伝わり方をしてくれるのであれば、いわない手はないなと思うようになった。
――単純に難解じゃない表現を使えば、そういう手間も省ける気がしますけど。
そうなんだよね。それでも好き勝手やりたい自分と、“いや待てよ”という自分。昔からそういう両極端な二面性が自分の中にはあるんで。いまだにブレーキをかけてる自分と、アクセルをガンガンに踏んでる自分が常にいるんですよね。
――その二人が咲人さんの中でバトルを繰り返している。
そうですね。そういうところも含めて、ソロは“試練”の連続。だって、ジャッジするのはすべて自分ですから。曲作りも試練の連続ですよ。作った曲を採用するのもしないのも自分ですからね。バンドのときみたいにメンバーに聞いたりすることはできないので。
――NIGHTMAREのときは聞いたりしていたんですか?
うん。困ったら「これどう思う?」ってすぐ聞けてたけど、いまは自分しかいないから。自分との戦いがずっと続いてる感じ。なんかね、ずっとサバイバルしてる感じですよ、ソロになって以降の俺は。明日はどこにキャンプを構えて、食料をどこで取ってこようかとか、そういうことをずっと毎日考えてる気分。俺は心配性だからそういうのはキツイんだけど、かといって弱音を吐く訳にもいかないし。だから、ずっと毎日修行してる感じ。
――そうでしたか。キツそうですね。
うん。あとはね、自分は本当は何をやりたいのか?っていうこともずっと考えてる。好きなことはたくさんあるけど、自分が生涯を通してやっていきたい音楽の方向性。これをやらせたらこの人は一番だよね、こういうのはあの人っぽいねっていうのがあるじゃないですか? ギターは“これ、咲人さんっぽいギターですね”という意見をもらったりするけど、ギターだけじゃなくて、もっと大きな意味での自分の音楽の方向性。それを模索してる。
――俺はどんな音楽をやりたいんだ? ということを。
うん。“自分の名刺代わりになる音楽”が欲しいといえばいいのかな? それを探してる感じっスね。好きなものがあまりにも多すぎるので、ネタは尽きないんですけど。あれも好き、これも好きってなっちゃうから、ふとした瞬間に自分の音楽的な軸はどこにあるんだろうなって思うんです。真逆なものが平気で好きだったりするので。よくいえば、俺の軸はたくさんある。
――難解なものもあれば、エスニックなもの、ヴィジュアル系っぽい王道からオシャレソング、EDMと、なんでもありですからね。
そのなかでも、パッと一瞬聴いただけで“この曲いい曲だ”って分かる、一目惚れされるような曲を書きたいんですよ。たぶん。
――あぁ。咲人さんの作品は、まずヘンテコな音だったり変わった音階だったりというところに先に耳がいっちゃうところがあるので。
分かる。それも俺自身なのかもしれないね。俺自身、初見の印象はあんまりよくないからね(苦笑)。“冷たそう”とか“気難しそう”とかいわれるんだけど、“しゃべったらいい人だった”っていわれたことが何回かあるし、一目惚れされるタイプではないんだよね。それが音楽にも出ちゃってるのかな。だから、とっつきやすい音楽……そこを自分らしくまとめたものってどんなものだろう? というのも探してるし。自分の人生のなかで、そういう“迷い”って必要な要素なんですよ。
――え? 答えじゃなくて?
うん、迷いが必要。安心しちゃうと何もうまくいかなくなって、自分を見失いそうだから。俺は迷いとか葛藤とか、それは辛くて嫌なんだけど、自分が生きていく上では必要な要素なんだと思う。辛くてネガティブになるんだけど、それをエネルギーに変えて模索する。そういう生き方なんだろうな、俺は。今回の新作の歌詞にもちょいちょいそういう俺が出てるね。
JAKIGAN MEISTER(咲人) 撮影=西槇太一
自分は本当は何をやりたいのか?っていうこともずっと考えてる。好きなことはたくさんあるけど、自分が生涯を通してやっていきたい音楽を模索してる。
――ミニアルバム『Yin-Yang』はどんなコンセプトで作った作品だったんですか?
俺のなかで一貫してるテーマというのがさっき話した二面性、自分のなかの光と影みたいなところがずっとあって。そういう自分の人間性を表すものが、今回は音楽を作るときに出た感じ。だから、曲のなかにはこの曲は陰だけどこの曲は陽だなというものもあれば、その両極なものが一緒に存在しているものや、それが混ざってグレーなものもある。ほんと、そこは自分に近い。
――その、模索している感じが。
うん。だから、これを聴いて、同じような悩みとか迷いを持ってる人に安心してもらいたい。ここにこんなヤツがいるから君は大丈夫だよって伝えたい。なので、曲順は意識的に、陰からだんだん明るくなって、視界が開けて夜が開ける感じにしたんです。
――リード曲でDVDにMVも収録された「Di陰stortion」はまさに中二病、メンヘラな方々に届けたい一曲ですよね?
これは去年からある中二病的闇ソングなんだけど。自分は、中学時代というのが創作活動の軸になっているんです。ギターを始めたのもその頃だし、ミュージシャンになりたいと思ったのもその時期。自分の音楽人生のすべての始まりがそこなんです。
――元ネタが中学生時代だから、MVでも学ラン姿に?
そうそうそう。学ランをベースに、俺が大枠のデザインを考えて。どうしても校章を作りたくて、ロゴでピンズも作ったの。よく見るとついてますから、襟に(笑顔)。
――中学って学ランでした?
学ランでした。普通に標準服着てましたけど。
――では、「Superviser」は中学生から離れたものがテーマになっていますよね?
そうですね。例えば恋人でも友達でもいいんですけど、誰かを支配したい。それは人でも物でもいいんだけど、そういう感情になっちゃうときってあると思うんですよ。自分がそうなってしまったら嫌だなというのを、うまく表現したいなと思った曲ですね。
――咲人さんは、人の鬱屈した部分を表現するのが好きなんですか?
人間、いい部分だけじゃないでしょ? 誰しも一度は脳内で人殺したりしてると思うし。そういうねじ曲がった部分のほうが自分は表現しやすいんですよ。俺はみんなで“ウェーィ!!”っていう曲を作るタイプの人間ではないから。
――「Tokyo Underworld」は、陰は陰でもウェーイ的なエンタテインメント性があって。ハロウィンを感じるような曲になってましたね。
なんかそうなっちゃった(笑)。俺はハロウィンに参加したり仮装したりしない人ですけど、みんな血糊や包帯みたいな格好してなんか楽しそうじゃないですか? あの、ある意味両極なものが合わさった感じを表現したら、ああいう感じになった。歌詞のことを話すと、自分が異分子であると感じたとき……例えば、田舎から東京に出てきたときに感じる疎外感とか、誰しも大なり小なりはあると思うんだけど。そんなものはどうでもいいから、この状況を楽しんじゃおうよという歌です。それを全編英語詞でチャレンジしたいなと思って作りました。あとは、打ち込みベースの曲を1曲は入れたくて。そのなかでも曲調的には新しい感じではあるかな。
――1メロとかは歌とラップの間をいく感じで、そこも新しかったですね。
英語ってこういうのがやりやすいんですよね。
――「プラセボ」はシティポップなオシャレサウンドが新しかったですね。
いまの自分の気分に一番合ってる(笑顔)。昔から、夜中に都会を車で走ってるときに似合う曲がすごい好きで。自分の曲でやっとそういう曲が作れた。夜の街に似合う曲といえばエレピがマストだろうと思って。ギターソロの後のエレピソロは、デモの段階から俺が弾いて入れてました。すごい気持ちいい感じに仕上がって、気に入ってます。
――最初に入ってる、ふにゃんとした口笛は咲人さんですか?
そうそう。歌詞とリンクさせて、下手くそな口笛を入れたくて。キーに合ってない、ちょうどいい下手くそっていうのが難しかったです。
――では、「From 19951208」の数字の羅列、これにはいったいどんな意味があるんですか?
これは、俺が完全にギターをやりたい、エレキギターが欲しい、と思うきっかけになった中学2年生のときのこと。『ミュージックステーション』にLUNA SEAが出ていたときの日付です。そのときからいままで続いてる気持ちとか、その時々に思い返して自分を肯定してあげる感覚。それは、さっき話した迷いとか葛藤、これがあってこそ自分なんだと、受け入れてあげる感じと似てる。
――歌詞は、自分自身を赤裸々に綴っていますよね?
ああー。今回のなかでは特にパーソナルな部分が出てるかもしれないですね。だから、歌詞のなかに“咲”って文字を入れ込んだの。それぐらいパーソナル中のパーソナルが出てるからこそ、歌うと辛い部分もあるんです。自分の恥ずかしい部分を表に出してるから。
――だからこそ、逆にグッときましたけどね。この歌詞が。
よかった(笑顔)。この間、ファンクラブの企画で俺とNi~yaとゾジー(YOMI)で潮干狩りに行ったんですけど、そのときにゾジーがこのアルバムを事前に聴いていたみたいで。俺には直接いわないけど、後でスタッフから「“この曲めっちゃきた”ってベタ褒めでしたよ」って聞いて。それも嬉しかった。
JAKIGAN MEISTER(咲人) 撮影=西槇太一
100%ギタリストで居られる場所が欲しくて。気持ちの面ではできるだけ早くやりたいので、徐々にそういう風な流れにできればいいな。
――そこから「DAWN」で夜が開けていって、最後にたどり着くアウトロのギターソロがまた素晴らしくて。感動して涙が出そうになるんですよ。
あそこのギターソロ、ヤバイよね(超笑顔)。「プラセボ」のソロの前のカッティングも手前味噌ですけど、すごくカッコよくて(笑)。あのカッティングを聴くためにこの音源を聴く、それぐらいの快心のカッティングができた(笑顔)。めちゃめちゃ気に入ってる。両方ともNIGHTMAREの「the WORLD」の頃から使ってるテレキャスで弾いたんだけど。すごくいい音で録れた。なんにせよ自分はギタリストですから。歌と同じか、それ以上にいいギターが弾けてないと、ギタリストである自分がソロをやる意味はないと思ってます。
――そうこうして、今回も間違えて隠しトラックが録音されていましたけど(微笑)。あれも咲人さんの声?
そう。往年のハードロック、ヘヴィメタルのボーカリストの声を目指しました。ギターを始めた当初は必ず一度はハードロックはコピーするから。いまだに好きなんですよね、ハードロックは。ギタリストとして。
――なるほど。そして現在開催中のツアー『JAKIGAN MEISTER TOUR 2018 Yin-Yang』のファイナルは、昨年同様、咲人さんの誕生日と重なっています。どんな気持ちでこのファイナルを迎えたいと思ってますか?
この日、ライブをちゃんとやってから1年を迎えるんですけど。今回のツアーを経て、1歩進んだ新しい自分を見せられたらいいなというのと、そこからさらに次に向けて新たな可能性を感じられるものができたらいいな。
――“次”というところでは、NIGHTMAREはまだ活動を休止したままですけど。そろそろどうでしょうか?
どうでしょうね。個人的にはいろんな条件が揃えばいつでもいいと思ってます。ギタリストとしてステージに立てる場所がいまはないので、懐かしく思っちゃうんですよね、その感覚を。だから、100%ギタリストで居られる場所が欲しくて。気持ちの面ではできるだけ早くやりたいので、徐々にそういう風な流れにできればいいなと思ってます。“なる早”でやりたいね。
取材・文=東條祥恵 撮影=西槇太一
JAKIGAN MEISTER(咲人) 撮影=西槇太一

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