サイダーガールが語る“らしさ”が詰
まった新シングル、そしてメジャーデ
ビューから約1年経って今思うこと

炭酸系ロックバンドのサイダーガールが、本日・6月20日(水)に3rdシングル「約束」をリリースした。爽快感が詰まった“ザ・サイダーガール”な1枚となっている今作の楽曲解説や制作秘話を明かしてくれた。昨年の7月にリリースしたシングル「エバーグリーン」でメジャーデビューし約1年経って“今思うこと”を語ってくれた。
──3rdシングル「約束」は、爽快感や瑞々しさがパッツパツに詰まっていて、サイダーガールのど真ん中な感じですね。前シングルの「パレット」は、1stアルバム『SODA POP FANCLUB 1』で拡張した部分が色濃かったですけども、今作はある意味原点回帰的な印象を受けました。
Yurin(Vo/Gt):「パレット」を作るタイミングで、こういう曲にしようっていう話は決まっていたんですよ。「パレット」は映画の主題歌だったし、リリースが春だったのもあって、春っぽい感じにしようと。で、「約束」はリリースが6月でもうすぐ夏だし、我々に対して「夏」というイメージをお客さんはすごく持っていると思っていたので、今回の曲は知さんにお願いしようっていうのは最初から決まっていて。
──知さんとしては、テーマがしっかり決まっていることもあって作りやすかったですか? 自分たちの王道を踏まえてという面もあるので、もしかしたら難しさもあるのかなと思ったんですが。
知(Gt):そうですね。元々は僕が「バンドをやりたい」と言って結成して、僕が曲を作ってきていたんですけど、そのなかで「同じだね」と言われることが結構怖くて。でも、僕としては同じことをやりたいんですよね。バンドを始めたときに、こういう曲がやりたいと思っていたイメージがずっとあるし、それも変わっていないので。だから、自分がやりたいと思っていたものを、いかに違う形で出すかを悩んだりして。だから作るのは結構大変ではありました。
フジムラ(Ba):最初はワンコーラスのみのデモだったんですけど、聴いたときに、あの頃の知くんが帰ってきた感じがしたというか。別に最近いなかったわけではないんですけど(笑)、サイダーガールを組んだときに「群青」っていう曲を出して、お客さんの中ではその曲にサイダーガールのイメージを持っている人が多いと思っていて。聴いたときに、自分もそのときの気持ちに戻った感じはありました。
──歌詞の<青臭い感情を君の為に捨てないでおくよ>という一節は、まさに約束であり、こういう王道な曲に乗ることですごく意味がある言葉だなと思いました。
知:ありのままの自分を知ってもらいたかったというか。やっぱり好きなものは好きってちゃんと言いたいし、それはこれから先もずっと思っていたいんですよね。歌詞を書いているときはそういう気持ちが特に強かったです。
サイダーガール・Yurin
──でも、なぜまた「約束」をテーマにした歌詞が出てきたんですか?
知:僕、最近感動することがあんまりないんですよ(苦笑)。なんか、心が枯れてきている感覚があって。バンドを始めたときって、すべてが未知の経験だったから新鮮だったし、全部楽しい気持ちのまま音楽をやっていたんですけど。
──なんか、すごく心配になる発言なんですが……(苦笑)。
知:あははは(笑)。枯れてきたというか、昔は1のことで満足していたけど、今は1のことが起きても、「ああ、また1か」っていう。2じゃないと満足できなくなってきているんですよね。そういう感じをリセットしたかったというか、もう一度あの頃の気持ちを大事にしたかったというか。
──なるほど。メジャーデビューしてからだいたい1年が経つわけですけど、どこか慣れてきてしまっている自分がいて。
知:そうですね。マンネリ感というか。それを自分が感じているのもすごい嫌だし、受け手の人が自分たちの発信しているものからそれを感じるのも嫌だなっていうのはすごく思ってて。なんか、新しい感覚を得たいんだろうなっていうのは、歌詞を書いてみて客観的に思いました。
──Yurinさんは、知さんが話していた心が枯れていくような感覚ってあります?
Yurin:個人的にはあまりないですね。なんか、メジャーに行くときに、いろんな人に聴いてもらいたいという気持ちをメンバー全員持ってきたんですよ。同じことを続けていくうえで、今まで届かなかったところに届けるにはどうしたらいいかということを考えながら曲を作っていて。で、1stアルバムはギターロックを軸にしつつ、ギターロックを普段あまり聴かない人にも届けられるような曲を入れたり、2ndシングルの「パレット」は、今まで鍵盤をあまり入れてなかったんですけど、結構入れていたり。そういうことを踏まえたうえで、この3rdシングルを出せたことはすごくよかったと思ってます。ずっと同じレールの上で作っていると、それこそ枯れていくじゃないけど、どうしたらいいんだろうって僕も思っていたと思うので。
──フジムラさんはいかがです? 心が枯れるというか、マンネリを感じたことがあるというところで。
フジムラ:昔の話なんですけど、自分はバラードしか作れなかった時期があったんですよね。で、もうだめだ!ってそこでマンネリを感じたというか。それで、1stアルバムのときに、自分はアップテンポな曲も作るんだっていう覚悟を決めて、いろんなものにチャレンジしてみたんです。パワーポップだったり、ロカビリーみたいな曲だったり。そうやって打破できたところもあったから、もしそうなった場合に、どうしたらいいのか案を出せるようになったことはよかったなと思って。
Yurin:僕らは3人全員が曲を作るんですけど、曲を作れない時期がバラバラに来るんですよ。
フジムラ:誰かがダメなときに、誰かが曲をすごい作ってくるんで、もしかしたらそいつのエネルギーを吸い取ってんじゃねえかっていう(笑)。
──うまい具合にバンドとしてのスランプを回避できているんですね。
Yurin:今は全員一斉にそうならないことを祈ってるんですけどね(笑)。でも、3人が曲を作れることで助かっているところはかなりあると思うんですよ。僕もそうなんですけど、自分の好きなことを入れようと思うと、どうしても一辺倒になりがちなところがあるので。そこを2人に補ってもらいつつ、協力していけばマンネリ感は打破できると思うし、王道感を大事にしつつも違うアプローチを入れながら、サイダーガールらしさはちゃんと守っていきたいなっていうのはすごく思っていますね。
サイダーガール・知
──カップリングのお話もお聞きしたいんですが、「リバーシブル」は、それこそバンドサウンド以外の音をかなり詰め込んでいますね。
知:この曲はタイアップのお話(映画『わたしに✕✕しなさい』挿入歌)があって、それに向けて作りました。「パレット」と同じプロデューサーにお願いしたんですけど、結構いろんな音を入れる方で、僕らが普段やらないようなアプローチをしてくれるので、それに乗っかっていく感じでしたね。
Yurin:「パレット」と同時期に作ってたんですけど、やっぱり鍵盤が加わると全然印象が変わるなと思って。元々はそこまで音数も多くはなくて、バンドサウンドではあるんだけどギターはそんなにジャカジャカ鳴ってないオシャレな感じで、それはそれですごくよかったんですよ。そこにいろんな音色や今までやってこなかったフレーズが入ってきて、新鮮でよかったです。
フジムラ:銅鑼で始まるのも新鮮でしたね。前のアルバムにもいろんな音を入れていたんですけど、この曲はクラビとかも入っていて、また違う音の使い方をしてるんで、これから曲を作る上での幅がまた広がった1曲だと思います。これよりも、もうちょい先のことまでできるんじゃないかなって。
──歌詞は映画の世界観をイメージされたんですか?
知:それもありつつ、「言いたいことを言えない」というのをテーマにしました。こういうリバーシブル的な面が僕自身にあるんですよ。そことリンクして結構書きやすかったです。あと、最初はそのまま最後のサビに行く展開だったんですけど、プロデューサーと相談して、何か入れたほうがいいんじゃないかっていうことになって、3代目サイダーガール(杉本愛里)の声も入れたりしていて。結構おもしろいものになったんじゃないかなと思います。
──でも、声を入れるにしても、なんで「バカヤロー」だったんです?
知:自分の心の内を歌っている曲なので、それに対して「そんなこと気にしなくていいじゃん」みたいな第三者からの言葉が欲しくて、たぶん「バカヤロー」にしたのかなと思います(笑)。
──「大丈夫だよ!」とか「元気出せ!」じゃなくて「バカヤロー!」だったんですね。
フジムラ:(知は)Mなんで(笑)。
知:いや、Mとかそういうことじゃなくて!(笑) そうやって言いたいことを言えない自分が好きじゃないから、思いっきり言ってもらいたかったというか。
──知さん的にはそういう強めの言葉で背中を叩かれるほうが響きます?
知:そこは日頃からありますね。なんか、優しくされるとどうしていいかわからなくなっちゃうっていうか。褒められるのも慣れてないから得意じゃないし、おもいっきり言ってもらったほうがいいなっていうのは、普段からあるかもしれないです。
──もう一曲の「カメレオン」はフジムラさんが作詞作曲をされていますけど、音に厚みのあるスロウナンバーになってますね。
フジムラ:知くんが「約束」みたいな曲を作ったように、僕も久々にバラードを作ったんですけど、ギターを結構歪ませてほしいってお願いしたんですよ。今まで自分が作ってきたバラードは結構繊細な音使いが多かったんですけど、この曲はロックバラードにしたかったので、壁感を作りたくて。泥臭い感じというか、ちょっとくすんだ感じにしたかったんですよね。で、一回自分がベースを作ったものを知くんがグレードアップしてくれて、それを基にバンドでアレンジして、今の形になりました。
知:尺もみんなでアレンジを詰めたときに直したんですけど、飽きさせないようにするのが難しかったですね。あとは、歌が大事になると思ったので、そこを邪魔しないフレーズにしないとなっていうところに気を遣ったりはしてました。
サイダーガール・フジムラ
──歌詞のイメージも最初からしっかりあったんですか?
フジムラ:夏のリリースなんで、最初は花火をイメージしようと思って歌詞を書いてたんですよ。でも、何を伝えたいのかがわからなくなってきて。あと、夏に固執する必要もないなと思ったんで、そのときの自分の悩みを書きました。その悩みというのが、僕は人に流されてしまうことが多くて。そこは今もそうなんですけど、それをみんなに語りたかったというか。
──「こういう人間になりたい」という意思というか目標というか。
フジムラ:そうですね。あとは願いとか。
Yurin:あとは自戒とかね。最初は恋の歌だったんですけど、最終的には自分の心境を歌っているものになったので、歌い方は自分の気持ちを出している感じを強めたほうがいいのかなって。あとはバラードなので、間というか、全体を通してちゃんと聴かせられるような歌を歌わないといけないなと思っていたんで、わりとプレッシャーはあった曲ですね(笑)。
フジムラ:作った本人としても、これは難しいだろうなと思ってました(笑)。僕の気持ちを代弁しなきゃいけないところもあるので。
Yurin:(フジムラが)まさにこういうふうに思っていたのをリアルタイムで見ていたから、「そうだよなあ、ドンマイ」みたいな感じで(笑)。
──気持ちが入りやすかったですか?
Yurin:そこはあったんですけど、逆に難しかったですね。歌詞をパッと見た感じであれば、まあだいたいこんな感じかなっていけるんだけど、本当に近かったというか、悩んでいる隣にいたので(笑)。
──近すぎるぶん大変だったと。そして、ワンマンライブが決定しています。6月23日にマイナビBLITZ赤坂にて『CIDER LABO Vol.5 -赤坂ノ陣-』、7月1日には梅田バナナホールにて『CIDER LABO Vol.6 -大坂ノ陣-』を開催されますが、どちらもチケットがソールドアウトしていると。
Yurin:ありがたいです。
──この2本のワンマンライブは「約束」が軸になるんですか?
Yurin:というよりは、今までを総括する感じにしようと思っていて。最近はアルバムツアーでワンマンをやっていたんですけど、自主企画は久々なんですよ。だから、シングルのリリース日とは近いんですけど、自分たちの中では、ここ1年ぐらいやっていない曲とか、昔の曲もやろうっていう面のほうが大きいかもしれないです。
知:ここまでの集大成というか、積み重ねてきたものを自分たちの自主企画で出して行きたいなと思って。
──そうなってくると、「行きたいのにチケットがもうない……!」って思う人が出てきそうですね。
Yurin:なるといいですね(笑)。
知:行けなかった人が悔しいって思うぐらいのものにしたいです。セットリストも東京と大阪で雰囲気を変えようと思ってるんですよ。
フジムラ:演出も東京と大阪で変えたいなと思っていて、今練っている最中ですね。赤坂BLITZは、自分が音楽を始める前から知っていたライブハウスなので、そこに自分たちのワンマンで立てるというのが夢のようではあるんですよ。だから、当日嬉しくて泣かないようにしつつ(笑)、これからに繋いでいけるようなライブにできたらなと思っています。

取材・文=山口哲生 撮影=菊池貴裕

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