【ライヴレポート】sads、SUPER BEA
VERを迎えた対バン・シリーズ第2夜は
“ロックの日”

6月9日、東京・渋谷CLUB QUATTROにて、sadsの対バン形式シリーズ<The reproduction 7th anniversary『EVIL 77』 VS 7 days>が第2夜を迎えた。彼らがこの日の対戦相手に選んだのは、先ごろ結成14年目にして初の武道館ワンマンライヴを成功させたSUPER BEAVER。この意外ともいえる組み合わせは、終始フロアに大きなうねりを生み、“ロックの日”にふさわしい賑やかな一夜となった。
割れんばかりの拍手と歓声に迎えられて、先行を務めたのはSUPER BEAVER。「今日はsads先輩のイベントに呼んでいただき、すごく嬉しいです! 初めての方もたくさんいると思いますが、名前と曲、全部覚えて帰ってください!」と渋谷龍太(Vo)が叫ぶと、場内には一気に一体感が生まれた。彼が静かに強く歌い出したのは「それでも世界が目を覚ますのなら」。圧倒的な光を放つメロディと歌心。初めて彼らの演奏を観たsadsファンも、次第にその音楽に惹かれていくのがわかる。
それにしても、一回聴いただけで思わずシンガロングしてしまうような佳曲揃いである。次から次へとアンセムのような曲が飛び出すのは非常に気分の良いもの。渋谷の周りを固める柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原”30才”広明(Dr)の息のピッタリ合った演奏やコーラスワークにも目を見張るものがあった。

MCにおいても扇動力を発揮し、観客一人ひとりの心に言葉を突き刺していく渋谷。「音楽を長く続けてるだけのバンドはカッコいいとは思わないけど、意志を持って長く続けてるsads先輩のようなバンドはカッコいいです。そんな先輩に、今日はひっかき傷の一つでもつけられればと思います!」という発言は、sadsとSUPER BEAVERのファン双方をおおいに喜ばせていた。
手拍子の鳴り止まない「証明」、サビの大合唱を誘発する「東京流星群」、ただただ美しい「青い春」などが畳み掛けられたブロックでは、自分が忘れかけていた大切なものに気付かされ、思わず涙が滲むほどだった。最後は真っ直ぐなメッセージの込められた「ありがとう」で劇的に締め括ると、場内には笑顔が溢れていた。多くの人々に愛されるのがわかる、堂々たるステージだった。

そんな眩しいSUPER BEAVERがステージを去った30分後に再び場内が暗転すると、今宵の宴の首謀者であるsadsが姿を現す。観客の頭上に掲げられた無数のメロイック・サインを切り裂くように、彼らが1発目に放ったのは「LIAR」。一音出しただけで、それまでの空気を変えてしまう存在感はさすがの風格である。続く「Liberation」で揉みくちゃになったフロア前方を、驚きの表情で眺めるSUPER BEAVERのファンの姿が印象深い。
SUPER BEAVERのメンバー達と普段から親交のあるYUTARO(B)の推薦により実現したというこの組み合わせ。ステージ袖で彼らの熱演を観ていた清春(Vo)は「歌と演奏に見とれて、思わず準備するのを忘れるほどだった」と述べている。「『ありがとう』って曲が良くて、YouTubeで全部のヴァージョンを3~4回は観ました」とも告白。そんな惚れ込みように、その場に居合わせた全員が嬉しくなるようなひと時だった。

この日は「DISCO」の演奏を途中で止めて始めからやり直したり、「May I Stay」と「GIRL IN RED」に見切りを付けてすぐに次の曲へ移るなど、彼ら特有の自由度の高さがやや心配になる場面も見られた。だが、一旦“ゾーン”に入ると誰にも手が付けられなくなるような猛獣ぶりは健在。「FREEZE」「MAKING MOTHER FUCKER」「NIGHTMARE」の凶悪グルーヴの連発は、その一例と言えるだろう。そんな柔と剛の瞬時の切り替えこそが、このバンドのたまらない魅力である。本編最後の「THANK YOU」では、SUPER BEAVERの「ありがとう」に対するsads流の回答とでも呼ぶべきロックンロールが暴発していた。
一旦ステージ袖に退いた彼らが再び観客の前に姿を現す。この日のアンコールは1曲のみという潔さ。sadsのメンバー全員がキュートなSUPER BEAVER Tシャツに着替えて客席に撃ち込んだ「CRACKER’S BABY」は、もちろん強烈だった。K-A-Z(G)が暴れ、YUTAROがフロアになだれ込み、GO(Dr)が爆音を轟かせる。この空間に集った全員を支配するのは、カリスマ清春の咆哮だ。激烈な音にまみれながら、オーディエンスは歓喜の表情を浮かべていた。

従来なかなか交わることのなかったバンドが目の前でぶつかり合うのは、非常に刺激的だ。この日は東京ゲゲゲイを迎えての第1夜で見られたようなコラボレーションこそなかったものの、sadsのワンマンライヴとは異なる種類の幸福感が新鮮だった。この対バン形式シリーズ<EVIL 77>は、想定の範囲に収まりそうもないバラエティ豊かな顔ぶれが今後も目白押しである。毎夜、何が起こるかわからない。観衆の先入観を蹴散らすかのように、自由気ままに振る舞うsadsの進撃はまだまだ続いていく。
取材・文◎志村つくね
撮影◎尾形隆夫

■<The reproduction 7th anniversary「EVIL 77」VS 7 days>
6月01日(金) 恵比寿LIQUIDROOM w/東京ゲゲゲイ
6月09日(土) 渋谷CLUB QUATTRO w/SUPER BEAVER
6月10日(日) 渋谷CLUB QUATTRO w/a flood of circle
6月12日(火) 横浜BayHall w/LOUDNESS
6月15日(金) 恵比寿LIQUIDROOM w/BiSH
6月23日(土) 新宿BLAZE w/HER NAME IN BLOOD
7月09日(月) 代官山UNIT w/ミオヤマザキ


■<The reproduction 7th anniversary「FALLING」>
【chapter 1】
7月06日(金) 赤坂BLITZ
7月21日(土) 梅田CLUB QUATTRO
7月22日(日) 梅田CLUB QUATTRO
7月28日(土) 名古屋BOTTOMLINE
8月03日(金) HEAVEN'S ROCK さいたま
8月17日(金) 高崎club FLEEZ
8月23日(木) 柏PALOOZA

■<The reproduction 7th anniversary「FALLING」-EVERLASTING TRUTHS->
9月29日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM

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