いいだ人形劇フェスタ、前身から40年
“世界人形劇フェスティバル”をキャ
ッチフレーズに5大陸から多彩な人形
劇がやってくる

 長野県飯田市に今年40回目を迎える、「いいだ人形劇フェスタ」がある。日本でもっとも大規模な人形劇の祭典だ。長野県の南端に位置する街は、日本の真ん中と言えば真ん中にあって、江戸時代は交通の要所だったが、今は東京からも名古屋からもちょっぴりアクセスが悪い。けれども、数年後にはリニア中央新幹線の駅もできるから、そのときに向けて、さらに人形劇でにぎわうようもっとPRしてほしい。ちなみに飯田市は、全国でもっとも焼肉店が多い街とも言われている。ここの焼肉文化はちょっとユニークなので実際に訪れてほしい。話がずれてしまった(あ、僕の中では人形劇と焼肉はつながりが深いと思っている)。ともかく「いいだ人形劇フェスタ」だ!
人形劇が地域に根付いた長野県飯田市
 今年で40回目を迎える「いいだ人形劇フェスタ」。僕が少し携わっているセイジ・オザワ松本フェスだって、まだ四半世紀だ。すごいことだと思わない?
 飯田市、そして少し北上した伊那市あたりまでの地域には伝統芸能がたくさん残っている。映画でも有名な大鹿歌舞伎をはじめとする地歌舞伎もそう。神楽や飯田の屋台獅子なども。人形劇に関しては、かつてはこの地域に30もの劇団があった。今も残っているのは阿南町の早稲田人形芝居、箕輪町の古田人形芝居、伝統芸能ではないが伊那谷に引き寄せられるようにやってきた百鬼どんどろの岡本芳一の遺志を継ぐ百鬼ゆめひな(飯田美千香)もいる。飯田には黒田人形浄瑠璃伝承館、今田人形の館、竹田扇之助記念国際糸操り人形館と歴史ある人形劇団や施設がある。そんな背景がきっかけとなり“人形劇の街”は生み出された。市役所に就職して以来、職員としてトータルで20年近くも「いいだ人形劇フェスタ」にかかわっているという北林克己さんは語る。
お話を聞かせてくれた北林さん。ホール隣接する人形工房にて
「飯田市は公民館活動が盛んで、そこに人形劇が取り入れられてきた歴史があるんです。人形劇フェスティバルを飯田より前からやっているところ、飯田よりあとから始めたところ、あるいは先進的に進んでいる札幌といろいろあるんですけど、飯田のような根付き方をしているところはないんですよね。フェスティバルのきっかけは飯田市側から国際児童年に合わせてプロの劇団に公演を依頼したところ、人形劇の古い文化があることから関係者が集まる全国規模のイベントをやりたいという逆提案があったとのこと。そして1979年に「人形劇カーニバル飯田」が始まりました。いくつも公演があるのをどう引き受けるかということで、公民館単位で会場を用意し、地区の住民が受け入れる形でスタートしました。今も130余りの会場がありますが、半分は公民館の受け入れで、運営もしているんです」
 オリンピックで海外の代表チームを受け入れて市民が選手と交流するみたいなものだ。第20回の1998年には国内外から379劇団を迎え、過去最大のカーニバルとなった。第21回の99年からは市民が主体となった実行委員会での運営となり、名称も「いいだ人形劇フェスタ」に変更された。公立の飯田人形劇場が設立されたり、記念モニュメントが製作されたりと、人形劇を核としたまちづくりがされてきた。人形アニメの草分け川本喜八郎人形美術館が開館し、NPO法人 いいだ人形劇センターもできた。
 「いいだ人形劇フェスタ」に足を運ぶと、中心市街地の野外ステージなどには人だかりができたりもする。人形劇をはしごするのに会場から会場へ、一緒に見ていたお父さんお母さんが車で大移動する様子も見られる。参加の仕方は見るばかりではない。小中学校のクラブも含め、50もの人形劇団があるというのも驚く。その流れで、昨年は国内外で活躍する人形劇師・沢則行が演出をつとめて市民と一緒に巨大人形劇をつくったり、地域の劇団として舞台に立つ人も多い。さらには大人に混じって中高生のボアンティアがけっこういるのもいい感じだった。
巨大人形劇さんしょううお
アフリカからも初参加。5大陸コンプリート!
 「いいだ人形劇フェスタ」には国内外で活躍するプロの劇団から、アマチュア・学生劇団まで、さらには現代人形劇から伝統的な人形芝居まで、さまざまなスタイルの人形劇が一堂に会している。そうした公演のほかに「わいわいパレード」に、人形劇の基礎を学ぶ「わくわくワークショップ」、「シンポジウム」など硬軟交えた企画も盛りだくさん。
 そして、40年目の今年は、「世界人形劇フェスティバル」がテーマになっている。
 「市民が中心になった実行委員会でフェスタ20周年、人形劇の街が生まれて40年の取り組みの意義を総括して、これから先のことを考えるというのが今回のコンセプトです。内容については人形劇の多様性に注目して、いろんな地域の、いろんな人形劇を紹介しようというわけです」(北林さん)
クルガン人形劇場ガリバー『かぐや姫』(ロシア)
アルファ人形劇場『三銃士』(チェコ)
David Zuazola『時間のゲーム』(チリ)
 「人形劇による交流」を目的とした友好都市関係を締結している、国際人形劇連盟の本部もあるフランスのシャルルヴィル・メジェール市、ウニマ(UNION INTERNATIONALE DE LA MARIONNETTE)からの推薦、実行委員が直接見てきた作品、ホームページから自分たちで参加表明をしてくる劇団を含めて、全5大陸すべてからカンパニーが参加することに。海外のカンパニーと作品は次の通り。
バーバラ・メロワ『Meeting with a Puppeteer』(フランス)
日本ポーランド共同制作作品『冬からはじまる物語 <Pory Roku>』
 アルファ人形劇場『三銃士』(チェコ)、ジャンルーカ・ディ・マッテオ『ナポリの人形劇プルチネッラ』(イタリア)、ステファン・ブリン『ステファン・ブリンの寄席人形劇場』(ドイツ)、バーバラ・メロワ『Meeting with a Puppeteer』(フランス)、ヌーメン・カンパニー『マント』(ドイツ)、サンクトペテルスブルグ・プラスティック・ハンド・シアター・ハンドメイド『楽しい時間』(ロシア)、新興閣掌中劇団『孫悟空大戦紅孩児』(台湾)、クムソル複合芸術研究所『鏡よ鏡』(韓国)、劇団マルハン『ちびチャンソンの家出記』(韓国)、飛鵬木偶團『中国の伝統人形劇』(香港)、プチ・アーム劇場『POMME-りんごの話』(カナダ)、David Zuazola『時間のゲーム』(チリ)、クリスタル・パペティアズ『Tears By The River ~ゆうかんな猿のはなし~』(ケニア)、ヤセ・タマム『Count to One』(イラン)、クルガン人形劇場ガリバー『かぐや姫』(ロシア ※国際共同制作・友好提携交流事業等)、日本ポーランド共同制作作品『冬からはじまる物語 <Pory Roku>』。
プチ・アーム劇場『POMME-りんごの話』(カナダ)
ヤセ・タマム『Count to One』(イラン)
 もちろん国内からも数々の劇団が参加する。特に注目なのは、東京と大阪で上演され、大評判を得たITOプロジェクト 糸あやつり人形芝居『高丘親王航海記』だ。ITOプロジェクトは2001年に関西で糸あやつりにかかわる劇人有志が劇団の枠を超えて結成したチーム。そもそも数年おきにしか集結した公演は行われないので、これは貴重な機会となる。実はこのフェスタで昨年、『高丘親王航海記』をワーク・イン・プログレスとして上演もしていた。文末のイベントデータでは、まずは、始まったばかりの先行発売で扱われる作品を紹介する。
誰もがワッペンを購入してフェスタを支える温かさ
 このフェスティバルがユニークなのはお客さんばかりではなく、ボランティア、上演劇団などすべての参加者が分け隔てなく同じワッペンを購入すること。みんなでこのフェスティバルを支えているのだ。ぜひ、都会で見るのとはひと味、ふた味違うお祭りに参加してみてほしい。大勢でやってきて、わいわい焼肉を食べていってくださいな。
フェスタキャラクターの「ぽぉ」

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