NBAバレエ団「ショート・ストーリー
ズ・9~バレエ・インクレディブル」
~NBA男子の魅力が光る宝満直也新作
『11匹わんちゃん』

NBAバレエ団の次回「ショート・ストーリーズ・9~バレエ・インクレディブル」はバレエ団で好評を得た9作品を集めたガラ公演だ。今年3月に大好評を博した同バレエ団の『海賊』のパ・ド・ドゥをはじめ、アイルランドの民俗舞踊を題材とした『ケルツ』(ライラ・ヨーク振付)、アメリカのピアニスト、ルイス・モレウ・ガチョークの作品に振り付けた『ガチョーク賛歌』(リン・テイラー・コーベット振付)など、このバレエ団でしか見ることのできない個性豊かな作品が並ぶ。そしてこの公演で先の『海賊』で振付家としても高評価を得た宝満直也が新作『11匹わんちゃん』を発表する。今回はそのリハーサル現場に伺い、宝満に新作について話を聞いた。(文章中敬称略)
■わんちゃん達と猫ちゃんの織りなすコメディ
撮影:西原朋未
今回の作品『11匹わんちゃん』は宝満曰く、「11匹のわんちゃん達が、かわいい猫ちゃんを追いかける」ショートコメディとのこと。リハーサル現場は通し稽古を終えたあとに、振付家・宝満が注意点を洗い出し、ブラッシュアップをする作業が行われていた。
わんちゃんなる11人の男性陣を猫ちゃん役の竹田仁美がキュートに翻弄。宝満が時には撮影した動画を見せ、あるいは自身も踊りながらダンサー達に動きを指示する。全員の揃った動きを敢えてずらし、タメを効かせて飛び跳ねるなど緩急をつける動作を盛り込み、短いながらも動き自体はなかなかハードだ。
「もっと自分が思った通りに思い切り表現していいから。やりすぎたら止めるので」とダンサーに語る宝満。話を聞くダンサー達の目は真剣だ。何より印象的なのはダンサー達の表情が生き生きとしていて楽しそうなこと。猫ちゃん役の一人、プリンシパルの竹田は「ハードだけどすごく楽しい」と充実感たっぷりに語る。宝満の天才的感性がダンサーとどのような化学反応を起こすのか、楽しみなリハーサルであった。
撮影:西原朋未
■改めてダンサー達と向き合い創作
――今回の『11匹わんちゃん』ですが、これを作ろうと思ったきっかけは。
宝満 今回はガラ公演ということで、7~8分の小作品を作ってほしいと久保監督に言われました。そこでまずワークショップをやりました。入団前に観た『死と乙女』で、ここのダンサー達が、全身全霊で作品に身を投じることができるのは分かっていました。そのみんなが僕のコンテンポラリーの振り付けをどう踊るのか見てみたかったんです。また『海賊』を振り付けたときはその作業で精一杯で自分がみんなの動きをはかる余裕もなかったので、改めてもう一度ちゃんとみんなと向き合い直して作品をつくりたいという気持ちもありました。
どういう作品をつくるかというのはまったく決めずに、ワークショップをやり、男女含めて20人くらいが集まってくれました。いろいろな曲を使って動いてもらっているうちに、男性ダンサー達の動きがわんちゃんに見えてきた。NBAの男性ダンサーって小柄ではありますが、すばしっこくて動きのキレがよくはつらつとしている。それでわんちゃんでつくってみたらおもしろいかなと。今回自分で踊ってみたら思った以上にハードでした(笑)。
――コメディ系で楽しそうだなという感じがしました。
宝満 今回のガラの演目を見て、ホッとできるような気の力の抜けるような作品が必要かなと思ったのでコメディ調にしてみました。
撮影:西原朋未
■振り付けは曲に対する挑戦でもある
――曲もポップ音楽で、歌のようなラップのような部分が犬の「ハッハッハッハ」という息遣いにも似ていますね。あの曲は?
宝満 スティーヴ・エトウの『早口なイヌ』という曲です。曲のタイトルと「わんちゃん」の一致はたまたまですが。ワークショップに使ったときにイメージにぴったりだったので採用しました。
――今回の「わんちゃん」で表現したいものは何なのでしょう。
宝満 とにかく楽しんでほしいということです。あの曲はすごくゴチャゴチャしているんです。ひょっとしたらあの曲を聞くのが辛い人もいるかもしれません。でもそういう曲を使っても、お客様に楽しんでいただけるような作品を作れるのかという挑戦がしたかったので。
――曲に対する挑戦ですか。
宝満 僕の場合はそれが結構多くて。以前つくった『Disconnect』も曲はリヒター『On the nature of Daylight』でしたが、あの曲調を無視して踊ったらどうなるのかなという思いがありました。『三匹のこぶた』はショスタコーヴィチ(『ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調 Op. 67』より第4楽章)の複雑なクラシックをどう使えるかな、と。「ちょっと無理かな」と思う曲に振り付けたらどうなるかな、というのが僕は好きみたいで(笑)。
今回の「わんちゃん」にしても、そのためにはダンサーが単調に踊るのではなく、たまにパッと抜いたり、ずらしてみたり、敢えてテンポを崩したりするとお客様を引き付けられるかなと。みんなにチャレンジして欲しいです。
――宝満さんにとってもダンサーさん達にとってもチャレンジであるわけですね。
撮影:西原朋未
■「みんな絶対にできる」。NBAダンサーならではの作品を
――振り付けの動きのインスピレーションはどういったところから得るのですか。
宝満 自分のダンサーとしての経験もありますし、僕には人の個性や「この人が何をしたらよく見えるか、おもしろいか」という"人"を見る感覚があるのかなと思っています。だから「ダンサーの良さを引き出す」という意味で、個人の動きの面白さを考えながら作っています。
コンテンポラリーに関してはまず動いてみて、出てきた動きを組み立てていくことが多いですね。昔はリハーサル前に動きを考えたりしていましたが、 やはり頭で考えた動きと実際の動きにはギャップがある。『海賊』の花園のコールドはノートにフォーメーションを書いて作りました。
――本番まで間もなくですが、それまでに「わんちゃん」をどう仕上げていこうと思いますか。
宝満 NBAのダンサーにしかできないことが絶対あるので、「そこまでやるか」というところまで持って行きたいですね。ほかのバレエ団の人達が見に来た時に「これはNBAでしかできないね」というものにしたいです。そしてお客様に純粋に楽しんでほしい。
――先ほどリハーサルで「やりすぎたら止めるから」と仰っていました。それはこの踊りを通してダンサー達の成長に繋がればいいなということもあるのですか。
宝満 みんな絶対できるはずなので。それぞれが自分達の中から出してきてくれるのを待っています。でも闇雲にやりすぎるとお客様が引いてしまうので「その部分は僕が見て調整するから、怖がらずに自分を出していこう」ということは伝えていこうと思っています。
――今回はブルッフ『ヴァイオリン協奏曲第1番』にも出演されます。
宝満 本当は振り付けだけに集中したかったのですが (笑) ブルッフはバランシンにも影響を受けた人ですが難しいです。ダンサーが余計なことをしなくても成立する作品だけれど、自分も出さなければならないという、その塩梅が難しいというのか。僕はシンプルに踊りたい方なのですが。本番前にはゲストティーチャーが来て指導していただけるので、楽しみにしています。
取材・文=西原朋未

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