復活から再生へ、豪雨の日産スタジア
ムで見た東方神起のプライド

東方神起 LIVE TOUR ~Begin Again~ Special Edition in NISSAN STADIUM

2018.6.10 日産スタジアム
東方神起にとって3度目の全国5大ドームツアーとなった『東方神起 LIVE TOUR 2017 ~Begin Again~』。札幌ドームを皮切りに、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡と、追加公演も含め自己最多ドーム公演数となる全国5大ドーム17公演を行ない、2017年と2018年を跨いで78万人を動員して締めくくられた壮大なツアーとなった今ツアーは、2015年に入隊したユンホとチャンミンとの約2年ぶりの再会の場でもあったことから、いつも以上にそこは、特別な場所となっていた。
そんなドームツアーから約4ヵ月。彼ら東方神起は日産スタジアムのステージに立った。6月8日、9日、10日に行なわれたライブは言うまでもなくソールドアウト。日産スタジアムでの3日間単独公演はアーティスト史上初の偉業である。
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム
彼らが日産スタジアムに立つのは5年ぶりのこと。5年前に見た景色と同じ景色を再び目にした彼らは、何度も何度も感謝の言葉を口にしていた。もはや、【東方神起】と聞いて、その存在を知らない者はいない。そんな存在になった今も、彼らは常にステージの上から謙虚な言葉をオーディエンスへと投げかける。今回の日産スタジアムでのライブでもそうだった。
その言葉に決して嘘は無い。今では、チケットを入手するのが困難なほど、即日完売してしまう彼らだが、日本デビュー当時は小さなライブハウスから活動をスタートさせているのだ。母国では既に絶大な人気を誇っていたこともあり、戸惑うことも多かっただろう。基盤の整った場所に立ったわけではなかった。彼らは新たに課せられた試煉の中、一から開拓していったのだ。彼らはきっと、今もそんな景色を忘れていないのだろう。故に、徐々に自分達を愛してくれる人達が増えていった喜びは本物であり、それこそが彼らの支えとなっていったに違いない。
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム
彼らが今、自分達を愛してくれる人達を“東方神起のプライド”と呼ぶのは、応援してくれる人達と共に、自らの努力と実力で築き上げた地位と歴史を意味する言葉であると同時に、それは強い絆を意味するものであると私は思う。
MCでユンホが言った「いつまでも初心を忘れることなく、頑張っていきたいと思っています」という言葉からも、その想いが強く感じ取れた。そして。何よりも、ユノもチャンミンも、一瞬たりとも手を抜くことのないパフォーマンスと歌唱で、見る者を楽しませようと全力を尽くすその姿からは、言葉以上の愛とプライドが放たれていた。
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム
日産スタジアムの2日目は真夏日となったが、最終日は一変して豪雨。そんな豪雨の中でも彼らは、まったく動じることなく、3時間越えのライブを全力で魅せきったのだ。まさに、その雨の量は、中止となってもおかしくはないほどの雨量であり、彼らがヴィジョンに大きく映し出される場面では、彼らを打つ雨の量の激しさがはっきりと見えた。3曲目に届けられた「Humanoids」では、ステージに堕ちた雨が、2人のダンスによってしぶきとなって再び宙に舞った。ときおり濡れた髪をかきあげながら躍る2人。狙ったわけではないさらなる激しさが、いつも以上にパフォーマンスをダイナミックに浮き立たせた。
雨に濡れたステージは滑りやすく、躍りにくい環境にあったことは間違いない。しかし、彼らは手加減することなく、完璧なスタイルで全曲と向き合った。
Superstar」ではダンサーたちと阿修羅的なパフォーマンスを力強くも美しくキメ、「B.U.T(BE-AU-TY)」ではメインステージからフライングで一気にステージ後方のサブステージまで移動した。今回のライブは『東方神起 LIVE TOUR 2017 ~Begin Again~』のスペシャルヴァージョンということで、東京ドームでも同じ演出が行われたのだが、なんとフライング距離は東京ドームの3倍であったというから驚きである。歯切れの良いサウンド感と中毒性のあるフレーズでオーディエンスを引っ張ると、続けて大きなスケール感のダイナミックな歌モノ「Spinning」へと繋げ、スラップがフックとなったハネ感のあるサウンドが特徴的な「Survivor」で勢いを止めることなく盛り上げていった。
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム
ゆったりとしたバラード曲「One and Only One」では、2人の声の相性の良さを感じさせるコーラスワークでオーディエンスを魅了した。時おり目を閉じて声を伸ばすチャンミンの甘く丸みを含んだ歌声と、最後の言葉を柔らかく歌ったユンホの歌声は、とても心地よいものだった。
映像を挟んで届けられていったミドルナンバー「シアワセ色の花」では、2人それぞれの声の指紋をしっかりと感じ取れたあたたかい歌声に、オーディエンスはまっすぐに向き合った。この曲に込められた“永遠の愛”は、彼らから曲を通してオーディエンスに贈られた、変わらぬメッセージであったことだろう。何処までも、変わらずにずっと愛し続けると誓うこの歌は、雨の中で美しく響いた。チャンミンの願いが込められた叫びに引き込まれる「Bolero」にも、オーディエンスは大きな拍手を届けたのだった。
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム
ライブ後半の見せ場はソロシーン。客席から“チョン・ユンホ”のかけ声がかかる中、風格漂う硬派なダンスと、さすがなダンススキルを見せつけたユンホの「Drop」と、キーの高さの美しさと刹那的なメロディを感情たっぷりに歌い上げたチャンミンの「Forever Love」(X JAPANカバー)に大きな歓声と拍手が沸き上がった。さらに「Purple Line」「Why?[Keep Your Head Down]」で拍車をかけ、ラストまで一気に畳み掛けた彼らは、アンコールでも代表曲である「Rising Sun」を届けるなど、余すところなく東方神起を堪能させてくれたのだった。
そしてこの日、彼らの口から9月からの全国32公演のアリーナ&ドームツアーの開催が発表された後、7月25日にリリースされる新曲「Road」が披露された。とてもナチュラルな世界観の新曲を、彼らは大きく左右に手を振りながら歌って届けた。
“ここから再び東方神起の歴史が始まっていく”ことを意味する“Begin Again”というタイトルを掲げたライブであったことから、「Begin~Again Version~」を彼らが届けたときには、配布されたライトが客席に【WE LOVE TOHOSHINKI】の文字を浮かび上がらせた。
2年の活動休止を経ての新たな歴史の始まりを、改めて感じたライブだった。壮大な敷地が、東方神起カラーである赤で染まった日産スタジアムの景色と、共にずぶ濡れになって声を重ねたそのかけがえのない時間を、彼らはこの先も決して忘れることはないだろう。
9月から始まる新たな未来にも、いままで以上に彼らと彼らを支えてきたファンに笑顔が広がっていることを切に願う。
取材・文=武市尚子
東方神起 2018.6.10 日産スタジアム

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