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【aiko インタビュー】
aikoが全身全霊で紡いだ
濃密な最新アルバム

約2年振りとなるニューアルバム『湿った夏の始まり』。シングル「恋をしたのは」「予告」「ストロー」を含む全13曲には、心地良い湿った体温を感じさせるaikoならではの世界が色濃く滲んでいる。そこに込めた想いを本人にたっぷりと訊いた。

このアルバムが作れたことで
自分の中に大きな希望が生まれた

ものすごく濃密なアルバムが完成しましたね。

はい。“音当たりしそうやな”って思ってしまうくらい、一曲一曲が濃くなったし、重さがすごくあると思いますね。全ての曲を並べて聴いた瞬間、自分としては“もう全部出たー!”っていう感覚になりました。

そういう感覚はアルバムを作るたびに生まれているものなんじゃないですか?

そうなんですけど、今回は今までで一番って言えるくらいそう思えたんですよ。このアルバムが作れたことで自分の中に大きな希望が生まれた感じがすごくしたんです。ただ、これをみんながどう聴いてくれるのかが楽しみでありつつ、ちょっと不安でもあって。

不安なんて一切排除しても大丈夫な仕上がりだと思いますよ。ほんとに素晴らしいアルバムだと思います。

そうかな。そうだったらいいな。自分ではまだ客観的に聴くことができていないので、ツアーをしながら絶賛咀嚼中です(笑)。

アルバムに掲げられた“湿った夏の始まり”という印象的なタイトルにはどんな想いが込められているんですか?

私は『桜の木の下』(2000年発表の2ndアルバム)というアルバムから春夏秋冬シリーズというか、タイトルに季節を入れることをやっていたんです。で、それが一周した時に一旦やめて、それ以降はその時々に自分が感じたことをタイトルにしていたんですよね。そんな流れを振り返っていた時に、2001年に出した『夏服』というアルバムからもう17年経っていることに気付いたんですよ。そこで今回は『夏服』の17年後、『夏服』のあとに私が過ごした夏を感じてもらえるようなアルバムにしたいなって思ったというか。そういう流れで“湿った夏の始まり”というタイトルにしましたね。

“湿った”という表現がいいですよね。aikoさんが生み出す曲たちは人と人とが触れ合った時の体温を感じさせるものばかりだし、本作はそれがより鮮明に描かれたアルバムだと思うので。

今回はレコーディングをした帰りに渋谷の街を通ることが多かったんですよ。そこでね、人と人との触れ合いを求めて街に繰り出している人がこんなにも多いんだなって改めて思ったというか。“スマホだけあればいい”“彼氏や彼女なんていらない”“結婚願望なんてないです”みたいな人が増えているって巷では言われたりしますけど、いやいや実際はみんな触れ合いを求めているやんってすごく感じたんですよね。お店に入るために深夜に長蛇の列を作って、そこでは夜な夜なパーティーが繰り広げられてて…みたいなことって一見、健全ではないように思えるけど、私にはそれがすごくいいなって思えたんですよね。例え健全ではなかったとしても、そこでみんなが抱いているような気持ちを、私は曲として書いていたいなってすごく思ったというか。

人と触れ合いたいと思うことは、むしろ健全なことだと思いますしね。

そうそう。私もそう思うんです。だから、ちょっとホッとしたところもあって。普段、アルバムを作る時にはコンセプトを考えることはないんやけど、今回はそういう街の様子をいつも見ていたから、自然とそういう内容の曲が多くなったし、それが結果的にこのタイトルにもつながっていったような気がしますね。

アルバムはシリアスなヴォーカルが切なく響く「格好いいな」で幕を開けます。

この1曲目と最後の「だから」は久しぶりに島田昌典さんにアレンジをしていただきました。だからなのか、「格好いいな」の雰囲気って『夏服』の1曲目だった「飛行機」をちょっと思い起こさせてくれるんですよね。あそこからの17年後というか。偶然ではあるんですけど、なんか不思議やし、面白いなって思いましたね。ものすごく熱く関わっていただけたのが嬉しかったです。

2曲目は「ハナガサイタ」。ライヴで活躍すること間違いなしのアップチューンです。

この曲、演奏がめっちゃ難しいんですって。みなさん、“自分のミュージシャン史上一番難しい!”って言ってましたね。NHKの『SONGS』で歌わせていただいたんですけど、その時にギターの(石崎)光は“こんなソロを考えた自分を呪う”って言ってました(笑)。歌詞に関しては2コーラス目のサビ、《この曲が終わる前に》《鍵をポケットに入れて帰らないと》のところは“分かるー!”って思いながら書きましたね(笑)。

あははは。もう帰ろうと何度も思うけど、彼と離れるのが嫌だからなかなか帰れない。で、《何回目だよ》と自らツッコむという。

そうそう(笑)。この曲は大切な人と過ごす部屋の中のこもった空気を上手く表現することができたなって思います。

今回のアルバムはいつにも増して歌詞の素晴らしさが際立っている印象がありました。より鋭く、よりふくよかな表現で、聴き手の耳に心地良く突き刺さってくるというか。

今回は自分の中の決まり事を一切なくして、いつも以上に頭の中を言葉でいっぱいにしながら歌詞を書くことができたような気がしていて。“私は今、何を思っているんやろう?”って自分のことを改めて考えながら、毎日、四六時中、何をしてても歌詞に向き合うことはすごく楽しかったですね。想いを言葉にすること、言葉に接することが自分にとってすごく大事なんだなって、このアルバムを作って改めて思えました。

OKMusic編集部

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