K × fox capture plan 極上な音楽
が届けられた一夜 『Special Living
Live produced by ”K” Vol.2』を
レポート

Special Living Live produced by ”K” Vol.2

2018.5.28 eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
Kが5月28日(月)から5月30日(水)の3日間に渡って、『Special Living Live produced by ”K” Vol.2』を、渋谷・eplus LIVING ROOM CAFE & DININGにて行なった。
Kがプロデュースする企画イベント『Special Living Live produced by ”K”』。好評に終わった昨年の第一弾に引き続き、今年も開催された『Vol.2』には、5月28日にfox capture plan、5月29日にAnly、5月30日に佐橋佳幸をゲストに招聘。このレポートでは、「現代版ジャズ・ロック」をコンセプトに掲げているピアノトリオ・fox capture planを迎えた初日公演の模様をお届けする。
K

K、fox capture plan

会場のeplus LIVING ROOM CAFE & DININGは、上質な雰囲気でありながらも、リラックスできるカジュアルさもある居心地の良い空間で、来場者はそれぞれのテーブルで談笑したり、食事を楽しんだりと、なんともいい空気が流れている。そんなところに、Kが姿を現わした。ちなみに、eplus LIVING ROOM CAFE & DININGのコンセプトは、「アーティストが友人を招きもてなすLIVING ROOM」。ハイテンションなわけでも、かといって厳かでもない、まさにそのコンセプトのような程よい温度感で、「こんばんは」とKが一言。今回のイベントについて話し始めた。
K
今年のゲストを誰にするか決めるときに、Kが最初に思い浮かんだのがfox capture planだったそうだ。昨年、Kがとあるイベントに出演する際に、資料用のDVDに収録されていた彼らの演奏に感銘を受け、その後ラジオ番組で共演。そのときにセッションした手応えから、もっと一緒に音を出してみたいと思い、今回声をかけたとのことだった。岸本 亮、カワイヒデヒロ、井上 司の3人をKが招き入れると、「ラジオでやったときに相性がよかったので」と、レオン・ラッセルの「This Masquerade」を披露。イントロで3人が合わせている音を聴いたKは、その心地よさに笑みをこぼす。3人の優麗なアンサンブルと、Kの伸びやかな歌声が美しく絡み合っていたのだが、曲が終盤に向かっていくにつれて、徐々に熱を帯びていく。最初は椅子に座って気持ちよさそうに歌っていたKは途中で立ちあがり、アウトロではKのスキャットと岸本亮のピアノがインプロ的に掛け合うという、1曲目にしてなんとも極上な演奏が繰り広げられていた。
K、fox capture plan
曲を終えると、Kは一旦ステージを離れ、fox capture planのステージが始まった。「選曲を非常に迷ったんですが、“僕たちはこういうサウンドです”という名刺代わりの曲をやろうと思います」と、岸本が話すと、「Acceleration」「繰り返される時空のワルツは千の夢を語り」の2曲を続けて披露。「ジャズ」と言ってもその形は様々だが、端的に言うと「おしゃれ」というイメージを持っている人が多いだろう。多分に漏れず、彼らのサウンドもそういう印象を与えるものなのだが、彼らの音楽は、ジャズはもちろん、それと同じくポストロック的な要素も強い。凄まじい勢いで動き回る岸本のピアノに、クールにビートを刻みながらも時折強烈なフィルを叩き込む井上のドラム、その間をカワイのベースがうまく取り持っていたかと思えば、メロディアスで心地よいフレーズを入れ込んでくる。向かい合う形でプレイしている3人の音がせめぎ合うように、それでいて絶妙に調和しながら進んでいく圧巻の演奏に、会場からは大きな拍手が送られていた。
fox capture plan

fox capture plan

近年はドラマや映画の劇伴を多数手がけている彼らだが、この日は現在放送中のドラマ『コンフィデンスマンJP』のメインテーマである「We Are Confidence Man」を披露。観客は身体を軽く揺らしたり、プレイをじっくり見つめたりと、各々の形で曲を楽しんでいると、次に岸井が弾き始めたのはKの「Y.E.S.」! クラップが自然と起こり始めると、「もう一度彼をステージに呼び戻していいですか!?」と、Kがステージに再登場し、心地よくも熱のあるセッションでオーディエンスを喜ばせた。
fox capture plan

fox capture plan

休憩を挟んだ後、Kが登場。キーボードの前に座った彼は「お待たせしました」と、まずはトークで場を盛り上げる。この会場が好きな理由として、「音響もいいし、お客さんとの距離が近いのもいいんだけど、トイレのウォシュレットが僕の一番好きなタイプのやつ」と、要所で笑いを交えてくるところはなんとも彼らしい一面なのだが、先ほどのセッションを振り返る場面もあった。
K「セッションって、自分と相手のグルーヴが一致しないと、ただ演奏しただけになってしまう感じになることが結構あるんですよ。でも、3人と演奏してるとすごく熱くなってくるものがあって、僕はすごくよかった。声をかけて本当によかったなと思いました」
K
Kのライブは、『Storyteller』に収録されていた「GATE11」からスタート。空港で別れる2人の風景を描いたこの曲は、原曲ではホーンセクションを擁したAORなアレンジが施されていたが、柔らかい鍵盤の音色と彼の歌声のみで届けられることで、よりメロウに、よりセンチメンタルに胸を打つものになっていた。曲を終えると、グランドピアノに移動するK。そして「久々に歌います」とピアノを奏で始めたのは、「Brand New Day」だった。歓喜の拍手が起こる中で歌い始めるKだったが、いきなり歌詞を飛ばしてしまい、「もう一回やっていいですか?」と苦笑い。しかし、そのまま演奏を止めることなく、アドリブでピアノを弾き続けて、再び頭から歌い始めるというリカバーは見事。物理的なだけでなく、気持ち的な意味でも客席との距離が近づいていく。
K
また、「ベン・フォールズ・ファイヴみたいな曲を作ってみようと思った」というエピソードが語られた「スニーカー」では、ファルセットを交えながら軽やかに、「さっきから迷っている方、結構いらっしゃると思います。手拍子していいんですよ」と、オーディエンスを巻き込んで始めた「反省ゼロ」では、シャウト気味に荒々しく歌い上げ、曲によって歌声をガラリと変えていく。そして、fox caputure planの3人を呼び込み、「Louder」をセッション。「せっかくの機会なので、僕の楽曲を3人の色にしてもらいたい」ということでKがこの曲をチョイスしたそうなのだが、ソウルやファンクといったブラックミュージック色の強いオリジナルバージョンが、強烈なまでに跳ね感のあるジャズナンバーに生まれ変わり、4人の濃厚な熱演に大きな拍手と歓声があがっていた。
K、fox capture plan
アンコールに応えて登場した4人。年齢が全員近いこともあり、演奏のみならず会話もかなり弾んでいて、客席からは何度も笑い声があがる。好きなアーティストも似ていたそうで、挙げていく中で最初に出てきたのがスティービー・ワンダーだったことから、「Overjoyed」をセッションすることに。珠玉の名バラードに会場全体が酔いしれていたのだが、それは演者も同じだったようで、歌い終えると「気持ちよかった~」とK。岸本も「めちゃくちゃよかったね」と返していた。
K、fox capture plan

fox capture plan、K

そして、Kから「最後はfox capture planの曲にしよう」と提案。すると岸本が「僕らはトリオでやってますけど、Kくんが加わるとカルテットになるので」と、TVドラマ『カルテット』のテーマ曲である「Theme from Quartet」を披露。シンガーソングライターのKを、ボーカリストではなくキーボーディストとして起用するというシチュエーションになったのだが、3人の超絶プレイに加わり、Kもソロパートでは鍵盤を情熱的に叩き上げる。客席からも大きなクラップがあがり、この日最大の盛り上がりで初日公演を締め括ったのだった。
MCで「またやりたいですね」という話も出ていたこの日のライブ。プレイしている側としてかなり手ごたえがあったようだが、観ている側としても、両者が音楽で心を通い合わせていた様子がひしひしと伝わってきた。相性抜群な4人の再演を期待せずにはいられない夜だった。

文=山口哲生 撮影=大橋祐希
K、fox capture plan

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