【ライブレポート】セパルトゥラ、メ
タル・ミュージックによる人間讃歌

5月23日(水)、渋谷duo Music Exchangeにてセパルトゥラの来日公演が行われた。
1980年代からメタル界の頂点の一角を占め、最新アルバム『マシーン・メサイア』でも特異な進化を遂げた世界観を提示した彼らは、ライヴ・バンドとしても世界を熱狂させてきたが、日本のステージに立つのはなんと17年ぶり。2001年の<BEAST FEAST>フェス以来となるヒーロー達の帰還に、開演前から場内は熱気に満ち溢れていた。

熱されて膨張しきった空気にスペシャル・ゲストUNITEDのライヴ・パフォーマンスが点火。ステージ上に立ちこめるのはスモークか湯気か、セパルトゥラが姿を現すと観衆のテンションは一気に沸点に達する。

現在のバンドが孕む殺傷力を誇示するがごとく、ショーは最新作からの「アイ・アム・ジ・エネミー」「ファントム・セルフ」でスタート。1980年代からセパルトゥラ・サウンドの背骨を貫いてきたアンドレアス・キッサーのギターとパウロJr.のベースは、観衆の脳天に墓石を振り下ろす。さらに威力を増したサウンドは、一種の痛感すら伴っていた。

ヴォーカリスト:デリック・グリーンもまた、圧倒的なまでの存在感を見せつける。褐色の巨神像とでも呼ぶべきステージのプレゼンスはもちろん、その咆哮もまた、セパルトゥラの音楽性に新たなディメンションをもたらすものだ。彼はまた「カイロス」などでパーカッションを担当、観衆の獣性を駆り立てることにも大いに貢献した。
ドラマーのエロイ・カサグランデもまた、バンドを未来へと驀進させていく動力源だ。1991年生まれの彼は2011年に加入、既に7年が経つが、日本には初見参。デリックと彼のアイデンティティを注入されて、『ケイオスA.D.』(1993)からの「テリトリー」は新しい姿へと変貌を遂げていた。

デリック加入後、初のアルバムとなる『アゲインスト』(1998)から20周年という節目となる今回の来日公演。それを記念して、同作から「アゲインスト」「チョーク」「ボイコット」が一挙にプレイされる。デビュー以来のフロントマンであるマックス・カヴァレラを欠いた作品としてリリース当時賛否を呼んだアルバムだが、20年の月日は正しい判断を下した。今、この3曲はセパルトゥラのカノン(正典)としてファンを熱狂させている。
最新作の「マシーン・メサイア」「アイスバーグ・ダンセズ」がさらなる昂ぶりを呼び、ショーもいよいよ終盤戦。日本公演の直前に行われた大洋州ツアーはデス・エンジェルとのダブル・ヘッドライナーだったため、ショータイムを若干絞っていた彼らだが、今回は堂々のフルセット。「インナー・セルフ」「レフューズ/レジスト」「ポリシア」「アライズ」というクラシックスの連打によって、完膚無きまで日本のオーディエンスを叩き伏せた。

その勢いは止まることがなく、彼らはアンコールに突入。「スレイヴ・ニュー・ワールド」をぶちかました後、UNITEDの湯浅正俊を呼び込む。そして披露されるのは、『マシーン・メサイア』のボーナス・トラックであり、これがライヴ世界初演となる「ウルトラセブンの歌」だ。湯浅は若干うろ覚えだったのか、スマホを見ながら歌っていたが、観衆の大半は歌詞を熟知しており、会場がひとつになって「セブン!セブン!セブン!」と熱唱していた。

エロイが全身を炎に包まれたような凄まじいドラミングを聴かせる「レジスタント・パラサイツ」から、再びクラシックスの「ラタマハタ」、そして「ルーツ・ブラツディ・ルーツ」でショーは大団円を迎える。その鮮烈なライヴは、17年のブランクを一夜にして埋めてしまった。

「次の日本公演まで、こんなに長く待たせたりしないよ」とアンドレアスは約束してくれた。まだライヴ後の身体の火照りが冷めやらぬ状況にも拘わらず、次回の来日が待ち遠しくなる、そんなショーであった。『マシーン・メサイア』のコンセプトは、機械に支配されたディストピア世界。だが、この日のステージは人間が奏でるフィジカルな音楽が今日でも有効であることを証明するものだった。セパルトゥラのステージは、メタル・ミュージックによる人間讃歌だったのである。

取材・文:山崎智之
写真:Yuki Kuroyanagi

【メンバー】
アンドレアス・キッサー(ギター)
デリック・グリーン(ヴォーカル)
エロイ・カサグランデ(ドラムス)
パウロ Jr.(ベース)

セパルトゥラ『マシーン・メサイア』

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1.マシーン・メサイア
2.アイ・アム・ジ・エネミー
3.ファントム・セルフ
4.アリシア
5.アイスバーグ・ダンセズ
6.スウォーン・オース
7.レジスタント・パラサイツ
8.サイレント・ヴァイオレンス
9.ヴァンダルズ・ネスト
10.サイバー・ゴッド
11.チョーズン・スキン※ボーナストラック
12.ウルトラセブンの歌※ボーナストラック

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