6月1日(金)@東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE

6月1日(金)@東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE

ヘクとパスカル、
アジアツアーのファイナル公演は
既視感と未視感が交差した風景に

岩井俊二監督率いる6人組の音楽集団、ヘクとパスカルが6月1日(金)に東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEでアジアツアーのファイナル公演を行った。5月6日の大阪公演を皮切りに、中国・深セン、上海、香港、台湾を周った彼らは、1月24日に発売した1stアルバム『キシカンミシカン(既視感未視感)』の楽曲を中心に、岩井作品に使用された楽曲のカバーなどを交えた全20曲を丁寧に紡ぎ、聴き手の脳裏に様々なデジャヴュ(既視感)とジャメヴュ(未視感)が交錯する風景を届けた。
岩井俊二監督率いる6人組の音楽集団、ヘクとパスカルが6月1日(金)に東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEでアジアツアーのファイナル公演を行った。5月6日の大阪公演を皮切りに、中国・深セン、上海、香港、台湾を周った彼らは、1月24日に発売した1stアルバム『キシカンミシカン(既視感未視感)』の楽曲を中心に、岩井作品に使用された楽曲のカバーなどを交えた全20曲を丁寧に紡ぎ、聴き手の脳裏に様々なデジャヴュ(既視感)とジャメヴュ(未視感)が交錯する風景を届けた。

ヘクとパスカルは2013年にトータルプロデュースを務める岩井俊二(Gt)と映画音楽などを手がける桑原まこ(Pf)、女優でシンガーソングライターの椎名琴音(Vo)によって結成され、2016年に開催された中国ツアーを機に荒井桃子(Violin)、林田順平(Cello)、ヨースケ@HOME(Gt)がバンドメンバーとして加入。6人体制となったがドラムレス、ベースレスであることは変わらずに、ビートはギターやチェロなどが担当。電子音も桑原がわずかにエレピを弾くのみで、凛とした美しい歌声と楽器の豊かな音色が心と体に優しく沁み込んでくるアコースティックサウンドが基調となっている。

この日のライブは、岩井が監督、脚本、撮影、編集、音楽、プロデュースの一人6役を務め日本・アメリカ・カナダ合作の映画『ヴァンパイア』(’12)のメドレーでスタートさせた。ピアノ、バイオリン、チェロのトリオによるインスト演奏に続き、ヴォーカルの椎名が登場。松たか子主演の映画『四月物語』(’98)でヒロインの卯月が住んでいたアパートの部屋をイメージしたという「引っ越し」からアルバムに収録された新曲「冬の小鳥」「アルカード」を歌い終えたところで、椎名が「なぜか中国より緊張してます」と語ると、場内からは温かい拍手が沸き起こった。
 
さらに、映画『Love Letter』(’95)のオリジナルサウンドトラックに収録されている「A WINTER STORY」「HE LOVES YOU SO」、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(’93)の挿入歌「Forever Friends」、岩井が企画や脚本を担当したドラマ「なぞの転校生」(’14)の主題歌でバンドの始まりの歌でもある「風が吹いてる」から、映画『スワロウテイル』(’96)コーナーへ。劇伴「Ageha Shows Up」と「Theme Of Yen Town –Ending-」、主題歌「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」と、岩井の映画に使用された楽曲をオリジナルのアレンジで披露。映画音楽として誕生した楽曲たちが、桑原のアレンジによって、長く歌い継がれて行くだろうスタンダードナンバーに変化している瞬間を見たような思いがした。

MCでは、岩井から「あなたにとっての東京とは?」というテーマが投げかけられたメンバーが「なんだかオーディションを受けてるみたい」と苦笑しながらも、和やかなムードで進み、NHKの東日本大震災復興支援ソングとして作詞を手がけた「花は咲く」の歌唱前には、宮城県仙台市出身である岩井が自身の正直な思いを吐露する場面もあった。

岩井が「僕の映画を追いかけてくれてる方でも知らないかもしれない」と説明した岩井俊二プロデュース、熊澤尚人監督による映画『虹の女神 Rainbow Song』(’06)の主題歌で、種ともこのカバー「The Rainbow Song〜虹の女神〜」から浅野忠信主演のドラマ「FRIED DRAGON FISH」のEDテーマであるChara「Break These Chain」のカバーで本編は終了。

アンコールでは、映画『スワロウテイル』でCharaがグリコ's houseで歌った「南海姑娘」(日本ではテレサ・テン『南国少女』として有名)を中国語で歌唱し、最後はアニメーション映画『花とアリス殺人事件』(’15)の主題歌「fish in the pool」で締めくくった。

場内では涙を流す観客も多かった。彼/彼女たちは、大好きな映画の主題歌や挿入歌が生音で聴けたことに感動したのか、映画の1シーンを思い出して涙したのか、それとも、自身のいつかの思い出と投影させて泣いたのかはわからない。しかし、ヘクとパスカルが奏でる心地よい音色と旋律が引き連れてきた風景に心を動かされたことは間違いないし、アルバムのタイトル通り、聴いたことがあるような曲なのにもかかわらず、まるで見たこのない景色が浮かぶライブとなっていた。
撮影:峯山導雄/取材:永堀アツオ

【セットリスト】
1.ヴァンパイアメドレー
2.引っ越し
3.冬の小鳥
4.アルカード
5.A WINTER STORY
6.HE LOVES YOU SO
7.Forever Friends
8.風が吹いてる
9.君の好きな色
10.テレビの海をクルージング
11.Ageha Shows Up
12.Theme Of Yen Town -Ending-
13.Swallowtail Butterfly~あいのうた~
14.花は咲く
15.花の歌
16.休日の歌
17.The Rainbow Song〜虹の女神〜
18.Break These Chain
ENCORE
1.南海姑娘
2.fish in the pool

【番組出演情報】
『KIRIN BEER “GoodLuck” LIVE』
放送日時:6月9日(土)16:00~16:55
※TOKYO FMをキーステーションにJFN系列全国ネットで放送
■『KIRIN BEER “GoodLuck” LIVE』オフィシャルHP:https://goo.gl/7vdorY
6月1日(金)@東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
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6月1日(金)@東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
6月1日(金)@東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE

【番組出演情報】

『KIRIN BEER “GoodLuck” LIVE』
放送日時:6月9日(土)16:00~16:55
※TOKYO FMをキーステーションにJFN系列全国ネットで放送

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