中島卓偉

中島卓偉

中島卓偉、
東名阪ツアーでは“16ビート”の楽曲
のみを演奏!? その試みの真意に迫る

中島卓偉が、2018年6月に東名阪ツアー<(16 BEATS ONLY!!)Dance!Feel The Noize.>を開催する。このツアーは、その名のとおり16ビートの楽曲のみを演奏するという挑戦的な構成だ。なぜ、彼はこのようなリズムにこだわったライブを行おうと考えたのか。ツアー直前の5月下旬に中島のもとを訪れ、その真意を聞いた。
中島卓偉が、2018年6月に東名阪ツアー<(16 BEATS ONLY!!)Dance!Feel The Noize.>を開催する。このツアーは、その名のとおり16ビートの楽曲のみを演奏するという挑戦的な構成だ。なぜ、彼はこのようなリズムにこだわったライブを行おうと考えたのか。ツアー直前の5月下旬に中島のもとを訪れ、その真意を聞いた。

──2018年6月に東名阪で<(16 BEATS ONLY!!)Dance!Feel The Noize.>と題したワンマンライブを行いますが、そもそも16ビート縛りのライブをやろうと思った経緯をお聞きしたいです。

これがすごく長くなるんですよ(笑)。どこから話せばいいのか……。まず、自分が16ビートの曲が好きだからというのは当然あって。そもそも日本人ってリズムの受け止め方が全部8ビートなんですよね。僕はデビューして19年目で、2000年に1stアルバムを出したんですけど、そのアルバムは12曲中、8ビートは2曲しか入ってないんですよ。基本全部16ビートで、8ビートの曲であっても符割りが16であることをマストにして曲を書いてきたんですけど。だから、初期の頃から、なんでこんなにみんなスウィングしないのかなってずっと思っていて。それは別にファンが悪いとか、コール&レスポンスがどうこうという話じゃなくて、グルーヴの話。そこが通じ合えないというか。

──齟齬みたいなものがずっとあったと。

こっちも人間なので、そういう状態が続くと、こういうリズムはやっぱり難しいのかなっていう気持ちにもなってくるし、僕も若かったから、レコード会社から“お客さんがノリにくいから、8ビートの曲を増やしたらどう?”って言われるわけですよ。で、わりかしエイトタッチの曲を書いてライブでやると、実際に盛り上がるんです。そうなのであればこれでもいいのかなって思う気持ちもあって、8ビートの曲を増やした時期があったり、バラードだけやっていた時期があったり、いろいろ試行錯誤しながらやっていたんですけど。でも、8ビートでずっとライブをやっていると、正直、ヘドが出るほどつまんないんですよ(笑)。

──(笑)。確かに、自分の思い描いているものとは違うわけですし。

僕は小さいときから洋楽どっぷりだったんで、いろんな人のライブや映像で、みんながスウィングしてノっている光景を見てきたんですよ。ロンドンのクラブに行ったときも、みんなそうやってリズムを取っていた。LAでブライアン・セッツァー・オーケストラのライブを観たときも、もう50代とか60代のお父さんたちがいまだにリーゼントにしてツイストを踊っているんだけど、やっぱり16でリズムを取っていた。だから、ロックンロールってやっぱりこうだよなっていう気持ちがずっとあったから、お客さんと血が通い切っていないまま時間が経っている気がしてならなくて。それならもう、これをライブのテーマにしてしまおうと。

──それで今回のライブに至ったと。

とにかく自分の好きなように踊らせてもらって、ライブに来たお客さんが演奏している曲をどう理解しようが、今日は16ビートの曲しかやっていないということを知っていれば、“これがスウィングなのか”“これがダンスビートなのか”とわかってもらえるだろうし、話も早いなと。それに、僕が知っている限りではこういう企画は見たことも聞いたこともないし。
中島卓偉

中島卓偉

──そうなると、“16ビート縛りのライブをやってみる”というのは、“そもそも自分は16ビートでリズムを取り、曲を作ってきた”という証明みたいな意味合いもあるんですね。

そうですね。基本、洋楽ってエイトタッチの歌はほぼないですし、リズムのとり方も1拍目と3拍目ではなく、2拍目と4拍目が絶対基本で。でも、日本はどうしても祭りの国だから、揉み手というか、1拍目と3拍目にクラップがくるっていう。これはもうDNAレベルの話だからしょうがないのかもしれないんですけど(笑)。

──土着的な問題というか。

ロックが入ってくる前までならそれでもOKだったんですよ。でも今は違うじゃないですか。みんな“ロックが好きだ”とか“テンポが速い音楽が”と言って楽しんでいますけど、リズムの捉え方を変えるだけで、音楽ってもっと楽しめると思うんですよね。僕が見ている限り、8ビートと16ビートの違いを理解している日本人って少ないし、僕としては、それは自然と身につくものだと思っていたんです。僕はごくごく自然にビートルズを聴いて、パンクが好きで育ってきたんですけど、8ビートのシンプルな曲でも、16ビートのタンバリンとか、ゴースト(ノート)とか、シェイカーが入っていることによって、この曲は16でとるべきなんだなっていうのを小さい頃から理解していたんです。

──なるほど。

それから90年代になり、たとえばイギリスだとジャミロクワイが出てきて、すごくわかりやすいダンスビートに16ビートのループを足して、これはそういうノリなんだと。キックは4分打ちだけどノリは16なんだっていうのを、言葉ではなく音源やライブでもって説明してくれたことに感動したし、そういうものだと思って自分はフロアで踊ってきたんですね。でも、自分が20代のときはそういうことをファンに説明してこなかったんです。自然とわかってほしいと思ってたから。

──むしろ“なんでわからないんだ”ぐらい?

というよりは、説教くさくなるのが嫌だったし、そこは自分が提示するものを理解してくれればいいと思っていたんですよね。音源であったり、パフォーマンスやリズムのとり方であったり。ライブの曲順もそうですよね。なぜ同じようなテンポの曲を続けてやっているのかとか。そういうことを汲み取ってほしかったんですけど、いやあ、もう全然伝わらない!(笑)

──難しかったと。

そうこうしているうちに僕も歳をとり、音楽シーンを19年見てきた客観視というものが生まれてきて。やっぱり今のジャパニーズロックシーンは跳ねてないだろと。もちろん僕にも好きな日本のアーティストやバンドがいますし、ロックンロールが海外から入ってきたものだとしても、日本人だってこれだけできるんだっていうことを証明している人たちもたくさんいるわけじゃないですか。おこがましいかもしれないけど、自分も音楽をやってきた道のりが19年あるし、こういうことをちゃんと伝えるべきときがきたんじゃないのかなって。“音楽ってもっと楽しいんだぜ”“ロックンロールってもっと踊れるんだぜ”っていうことを、少なからず自分のファンには伝えたいんですよね。
中島卓偉

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──あと、最近はライブで新曲をいち早く披露されていて、「今宵MOVE ON」と「Baby Crazy Love」という2曲を聴かせていただいたんですが、どちらもそれこそ踊れるものになっていますよね。「今宵MOVE ON」はベースラインがもろにディスコですし、「Baby Crazy Love」は、デジタルサウンドではあるんだけど、ブラックミュージック的な土臭さがある。今年の10月からデビュー20周年という大きなタイミングを迎えるわけですが、今ライブで披露している曲がそこへ目掛けていくうえでの大きな軸になっていくんでしょうか。

ここ数年の流れとして、ダンスビートや16ビートにこだわったもの、かつデジタルチックというか、打ち込みを重視したものにしていたんですよね。

──昨年リリースされた「我が子に捧げるPUNK SONG」は、まさにそういう曲でしたよね。

そうです。そういう流れできてはいるんですが、たとえばこの曲達をアルバムという形でリリースしたとして、そのツアーをやった先にどうなるかはまだちょっとわからないです。デジタルサウンドをもう一段階あげたものにするのか、はたまた全然変えるのかは、そのときのテンションに委ねようかなと。でも、今の自分としては、今回のようなツアーをやるぐらいですから、そういったデジタルチックなものでありながらソウルフルであり、どこかブラックテイストがあって、ダンスチューンであるというものがきているのかなと。
中島卓偉

中島卓偉

──今やりたいものはまさにこれだと。今日のお話を聞いていて、個人的にものすごく同感といいますか。音楽は自由に楽しむものだとは思いつつも、ライブを観ていて1拍目と3拍目でリズムをとる人が多いことに違和感はあったんですよね。そこは、それこそ土着的な問題だと思っていましたし、そもそも2拍目と4拍目でリズムをとることを知らない人もいるでしょうし。

あとは、リズムが跳ねているのか、いないのかっていうのがわからない人もたぶんいると思いますしね。でも、わかりやすいからという理由で、日本人にあった曲だけをリリースしていくというのは、僕は違うと思うんですよ。やっぱり壊していくことがパンクであり、自分がやりたいと思うことを貫き通すことがロックであり、それを共感していくことでロールしていくと思うんですよね。だから諦めちゃいけないんだけど、ただ、僕は説教をしたいわけではないんです。もっと楽しいことがあるのに、それを味わわないまま死んでいくのはもったいないんじゃない?っていう感じ。たとえばですけど、刺身にわさびをつけるとうまいけど、わさびを知らずに死んでいく人生って僕は最悪だと思うんですよ。

──味気ないですよね。

そうですよね? 僕からすると、わさびが16ビートなんですよ。これをつけたら、こんなにも香りが違うんだっていうことを知って、“ああ、刺身っておいしいんだね”っていう。これってもう全然意味が違うじゃないですか。

──知ると知らないとでは大違いっていう。

それぐらい日本人のエイトタッチがやべえなって思ってるんです。このままだと日本の音楽がどうなっていくか……ということを、正直考えない手もあると思うんですよ。でも、今以上にオーディエンスと盛り上がるために、もう一歩先に行きたい。そのための今回のツアーです。それに、グルーヴだったりスウィングだったり、ロックで踊ることやその楽しみ方を知ることで、ジャパニーズロックシーンはまだもうちょっと先があるんじゃないか、可能性があるんじゃないのかなって思ってます。

インタビュー&文:山口哲生
撮影:村上龍介
【ライブ情報】
『(16 BEATS ONLY!!)Dance!Feel The Noize.』
出演者:中島卓偉 
サポートミュージシャン:生熊耕治(Gt)/鈴木賢二(Ba)/安東祐介(Dt)

※全公演学割対象¥1,000キャッシュバック
※小学生以外の方は学生証を、小学生は年齢を証明できるものを公演当日ご持参下さい。

6月08日(金) 大阪・Music Club JANUS
<チケット>
オールスタンディング ¥4,800(税込)
お問い合わせ:グリーンズコーポレーション 06-6882-1224
■チケット情報:http://www.greens-corp.co.jp/schedule/info/index.php?event_id=6631

6月17日(日) 愛知・JAMMIN’
<チケット>
オールスタンディング ¥4,800(税込)
お問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
■チケット情報:http://www.sundayfolk.com/liveinfo/606hxd2

6月22日(金) 東京・渋谷 WWW X
<チケット>
オールスタンディング ¥4,800(税込)
お問い合わせ:DISK GARAGE(平日12:00~19:00) 050-5533-0888
■チケット情報:https://goo.gl/7MqeqJ
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【ライブ情報】

『(16 BEATS ONLY!!)Dance!Feel The Noize.』
出演者:中島卓偉 
サポートミュージシャン:生熊耕治(Gt)/鈴木賢二(Ba)/安東祐介(Dt)

※全公演学割対象¥1,000キャッシュバック
※小学生以外の方は学生証を、小学生は年齢を証明できるものを公演当日ご持参下さい。

6月08日(金) 大阪・Music Club JANUS
<チケット>
オールスタンディング ¥4,800(税込)
お問い合わせ:グリーンズコーポレーション 06-6882-1224
6月17日(日) 愛知・JAMMIN’
<チケット>
オールスタンディング ¥4,800(税込)
お問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
6月22日(金) 東京・渋谷 WWW X
<チケット>
オールスタンディング ¥4,800(税込)※学割あり
お問い合わせ:DISK GARAGE(平日12:00~19:00) 050-5533-0888

OKMusic編集部

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